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町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」を読んで
「52ヘルツ」は、どの仲間にも届かない周波数
誰にも届かない「声」を発しながら
世界にただ1頭だけ
いまも海洋を漂うクジラがいる
でも、この物語は違う
実の母親から「ムシ」と呼ばれ、
虐待を受けていた少年
その身体に浮かぶ無数の傷跡は
少年の声にならない叫びのよう
その叫びを、主人公「キナコ」は聞き逃さなかった
自らも心に傷を負い、逃れるようにやってきた田舎町
キナコもまた、声にならない声を発して
「金持ちジュリエット」
シングルマザーのジュリエットは今朝も末っ子のジュリ子にお乳をあげながらなかなか起きてこない四男のジュリ夫に「いつまで寝てるの!さっさと起きなさい!」と声を張り上げる。するとジュリエットの向かいでご飯を食べていた次女のジュリ江が「ジュリ夫兄ちゃんはさっきトイレに行ってたょ」と言うので「あらそうだったの?それよりあんたも早く学校行く準備しなさい」と急かしていると食卓にあった携帯が鳴るので覗いて見たら長
もっとみる「株式会社リストラ」
ここ株式会社リストラの会議室ではガランとした長テーブルの隅で高山と室田が神妙な面持ちで話していた
「まずいな」
「あぁ、いままで気づかなかったなんて迂闊だったょ」
高山の問いかけに室田は苦虫を噛み潰したような顔で答える
「それで、うちの株を買い占めてる会社っていうのは何ていうとこなんだ?」
「株式会社キジトラというそうだ」
「キジトラ?何やってる会社なんだ?」
「それは俺にもわからん、ただ…」
「
「コロコロ変わる名探偵」
最初の俳優Aは違法薬物使用の罪で逮捕され3話目には降板していた
次にキャスティングされたBという俳優はハラスメントの疑いがもちあがり、これも5話目には降板させられた
また次の俳優Cに至っては7話目の撮影途中で「俳優としての自分を見つめ直す」とのことで自ら降板してしまった
全12話をかけて一つの謎を解く長編推理ドラマは、主人公である名探偵が物語の途中で急死したり蒸発したりする設定を余儀なくされる異常
「1億円の低カロリー」
その名前は瞬く間に世界中を駆け巡った
それもそのはず、誰もあの石を動かせるなんて
思いもしなかった
しかも、その偉業を成し遂げたのが
あのひ弱な子どもだったのだから
王様はたいそう喜び、賞金の1億円を
その男「ロリー」に与えた
こうしてここに真の英雄
「1億円の底力をもつ男『ロリー』」が誕生した!!
1億円の底力 ロリー!
・・・・・・・
「こんな感じでいかがでしょうか..?
「アナログバイリンガル」
さっき江戸時代に着いたばかりの孝は早速貸衣装に着替えツアー会社からレンタルしてきたアナログバイリンガルを試そうと土地の人と会話を始めた
「いまのお殿様は何ていう人か、あんた知ってるかい?」
「なんだテメェは、田舎からでてきたばっかりってツラしてるな、いまの将軍様は綱吉様といってそりゃぁ徳の高いお人よ」
聞いた孝は「ほぉー」っとニヤニヤしながら頷いた
時間旅行の格安ツアーに参加した孝は現代語訳が上手
「空飛ぶストレート」
「なんだ?あれ」
午前の得意先回りを終え社へ戻るためビル街の歩道を則之が歩いてると、空から黄金色をした棒状の物が降りかかろうとしていた
(5分前)
そのビルの一室では料理研究家の妙子が今日収録予定の料理の準備でてんやわんやの大忙しだった。それというのも本来5人だったゲストの人数が倍の10人になったとついさっき番組のプロデューサーから電話があったからだ
「そんな急に言われても準備できるわけないでしょ