#39 若者支援業界を生き抜く支援者のキャリア形成プラン Vol.03

田中さん

宿泊型支援を経験したスタッフは、通所型の3倍の経験値を持つとかよく言うわけです。

これは、宿泊型支援団体が自分たちの力量を誇示するために言い出したんだろうということは、想像に難くないのですが、実際、宿泊を10年やって、食事を一緒に作る、摂る、夜のトラブル対応経験などを考えると、その通りだと僕は思うので、

僕のキャリアは、ざっと(10年×3年)+5年=35年です(^_^)v

これは、自慢ではなく支援経験の“濃さ”について話すための前振りなんですが。 

例えば、自由な発想が許される自主事業と、仕様書に縛られたマネージャーに管理された委託事業の濃さの違い。自主事業にしても、現場一辺倒だったと人と、若者一辺倒だった人。保護者に対応していた人としない人。

行政や企業、市民などのステークホルダーと対峙した経験のある人と、ひきこもりの若者の部屋に入ったことのある人。

どっちが濃いかは置いといて、この支援経験の濃さが、支援者としとのまさにキャリア形成なわけだよね。この濃さをプランニングして、効率的に有能な支援者が育成されないと、理事長クラスがどんなにナイスアイデアを次々に思いついても、ハリボテの中身のない支援になってしまう。

で、田中さんの言う三重苦(←この呪縛からこの企画は逃れられないかもしれない…)は、まさに薄いんですよね。それじゃあ育たねえよなぁ、と嘆きたくなるわけですが、例のベンチャー系の方々は、けっこう濃い経験をしてるんじゃないかなと僕は想像するんです。

ちなみに、僕はNPO法人育て上げネットの立ち上げ当時から、いろいろお手伝いをさせていただいていたのですが、当時はまさに彼らはベンチャーで、右往左往しながら、それはそれは濃い時間を過ごしていました。

いま、そういう団体がポツリポツリと出てきている。きっと彼らは勉強だけ教えててもこりゃダメそうだな(すみません、たまたま話の流れ上教育系を例にしています)、という新しい課題にどこかでぶつかり、良質なマインドを持った団体は越えて行くんだと思います。

だから、僕は三重苦を回避するにはベンチャー系へ行けと言ってみたい。事実、そういう判断で動いている若い人たちはいると思う。大変だと思うけどね。たった1年の安心のために単年度の契約書に判を押すのか、1年後に潰れてるかもしれないベンチャー系で右往左往するのか。 

考えてみれば、ぼくも田中さんも自主事業の中で右往左往してきたわけだし。なんて、今いるサポステ職員というマジョリティーを敵に回すようなことを書いてしまいましたが、そこで、どれだけ濃い時間を演出できるのかが、マネージャー層のクリエイティブだと思うんだけど、残念ながらそれが失われていると思うんですね。

                                 石井

 ※「反復」してしまうのはなぜ?

 石井さま

石井さんのいう「ベンチャー系」って、若者支援に関して新しいタイプの事業を立ち上げているNPOのことをいうのかしら。それはやはり「就労」系が多いのかな。あるいは「教育」系かしら。 

就労にしろ教育にしろだいたい想像できるけど、大阪にいるとイマイチ想像できないので、「ベンチャー系」に関してもう少しヒントをいただければありがたいです。 

子ども若者支援者の育成に関しては、前回僕が書いたうち(「事業マネージャー研修はラディカルに、現場プレーヤー研修はオーソドックスに」)、特に、現場支援に関するオーソドックスな研修や研鑽が本当に必要だと思っています。 

また専門化への辛口批評になるんだけど、臨床心理士をはじめとした若手専門家たちの技量不足というよりは「タコツボ化」が激しすぎると僕は思っています。 

臨床心理士はもちろん、PSWにしろキャリアカウンセラーにしろ、時代の変革期のいま、それらの専門領域に閉じこもっていると、子ども若者をとりまく状況についていけないのでは、と思います。 

だからそれら専門化は常に交流し、常にオープンでなければいけない。そのために互いの交流が欠かせないと思います。 

あと、「就労」に関しては、専門トレーニングを受けていなくても、アイデア一本でできなくはない世界です。その「アイデア」に乗っていけるのは、最も支援を欲している「ニート/ひきこもり」層ではなく、「準フリーター」層なため(若者支援を受ける全体の10%程度か)、社会全体にはインパクトはあまりないのですが、事業として「数字」は残せる。

これも問題です。なんだか我々、同じことばかり語っているような……。この事自体が問題ですよね。★ 

                                 田中      

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