#32 社会のスタートラインに立てなかった大卒進路未決定者たち

田中さん

僕は最近、進路未決定で卒業した大学生の相談を受けることがすごい増えたんです。

その社会背景も大切なマクロな議論なんだけど、そこは研究者に任せておいて、現場的なミクロな視点でちょっと田中さんと語ってみたいです。

彼らになんで大学に行こうと思ったの?と僕は聞くんです。そうすると、「大学ぐらい出てないとダメだと思って…」とみんな言うんだよね。

社会のスタートラインに立つための最低限の学歴が大卒なんだという思いは、イマドキ的で悪いとは思わないんだけど(それが親の刷り込みだったりもするんだけど)、

結局僕のところに来る既卒者は、アルバイト経験もほぼなくて、スタートラインにも立ててない人が多い。

ここがこの話のポイントなんだけど。話しを聞いていくと、彼らは就活で内定をもらえずに躓いたんじゃなくて、小中高のどこかで抱え込んだ課題を大学に入っても解決できずに、就活ができなかった人たちだってこと。

大学の社会的責任と役割についてはいずれまた語るとして、彼らと付き合っている僕の実感として、彼らは小中高とレールから降りたくても降りられずに、気づいたら大学生になり、あっという間に進路未決定になっちゃってた人たちなんじゃないかと感じるわけ。

レールから降りられなかった理由は、降りた後の居場所のなさ、降りた後のキャリアプランを提示してくれるロールモデルのなさがあると思うけど、それよりも、戻りたくなったら元のレールに戻ることができる「やり直しの効く社会」ではそもそもないこと。

それを、子どもよりもむしろ肌身で痛感している保護者の危機感が、レールから降ろさせない圧力になってると思うわけ。

とまあ、まとまりませんが、この辺でウズウズしてるであろう田中さんにいったん振ってみます。

                                いしい

まずは「暴論」から

石井さま

大学に関して、僕は不思議で仕方ないことがあるんですね。

それは、これだけ「失われた20年」とかなんとか言ってて、日本経済が低迷し、その停滞が固定化し、やがて就労構造も変化し(非常勤4割)20年前とは様変わりな世界になったというのに、なぜ「大学進学率」だけが上がり続けたのか、と。

だってもう50%なんですよ、大学に行く人が。これに専門学校まで含めると70%とか75%とか言われるわけですよね。高卒後「進学」するのが多数派になってしまっている。

半分が大学を出て、そのあと20年前と同じように就職活動をしたとしても、求人数は変化していないのだから(どころか非常勤形態が企業に普通に組み込まれているから)、そりゃ「普通の大学」を出た人は、なかなか就職活動がうまくいかないわけですよ。

関西でいうと「関関同立」みたいな偏差値ハイレベルの大学出でさえもがいているのだから、それ以外は苦しむのは当たり前。

働き方が厳しい働き方も含めて超多様化しているのに、社会に送り出す側はバブル時代のノリを続けている。この「究極のミスマッチ」がいまの大学生の困難さを生んでいると思います。

だから、職業訓練校をリニューアルするなど、喫緊の改革があるはずなのに、今進んでいることは、大学の生き残りです。

僕なんか、偏差値が平均以下の大学は全部職業訓練校とのハイブリッドにしたらいいと単純に思うんですが(いや「関関同立」もハイブリッドにしたらいいな)、大学生支援も取り組んでいる石井さんからすると、僕の議論は荒っぽいよねぇ。

石井さんの日々の支援上の格闘も想像しつつ、大学に関してはまずは「暴論」からはじめてみました。★

                                 田中

添付チラシは、石井さんも出演予定の「子ども若者のクォリティ・オブ・ライフ」フォーラム@大阪市住吉区です。関西のみなさま、どうぞよろしくお願いします〜

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