♯54 あなたは所属するNPO法人のミッションを言えますか?

石井さま

告白すると、実は僕は、ここ5年ほど、妙にいらだっていました。

それは、「NPOなどの『ソーシャルセクター』は、なぜミッションがあいまいで(幸せとかワクワクとかの用語はありますが、肝心のミッションや事業に具体性がないというか先行事業のパクリだったりオリジナリティーがない)、現代社会に対して『どう変えていく』というメッセージが弱いのか」ということに尽きます。

そんなことを、出会うNPOの人たちに僕は訴えてきたのですが、代表クラスは人件費捻出か事業継続か団体の継続に誠意一杯、中間管理職は困り顔、現場スタッフはなお困り顔、といういつものパターンでそのトークは終わってきました。

トークを持ちかける僕のほうも「悪いなあ」という気持ちが湧き上がり、同時に諦めもあって、最近は、とにかくドーナツトークの中身を鍛えていくことに専心してきたのでした。

でもこの頃やっとわかってきたんですね。つまりは、ソーシャルセクターの全員がどうすればいいのかわからないんだ、と。

社会の転換期で何かをしなければいけないことはわかる。が、その方法、というかそれに臨む基本的スタンスを誰もが模索しているんだと。

だから、先行事業のパクリになり、ミッションは曖昧になり、戦略が描けない。ミッションや戦略という言葉は踊っているが、じゃあそれはどう創出すればいいのか、実はほとんどのNPO(日本にNPOは50,000あります)は知らないのではないか。

身も蓋もないけれども、我々はそこから始めなければいけないんじゃないか。ここが、我々のスタート地点(ミッションとは何かをあらためて確認する地点)ではないかと。

石井さん、どう思う? 僕のおごりかなあ。★

                                 田中

田中さん

シェアするココロを設立したころ、当時のスタッフたちと古民家をお借りして、ミッションを考える合宿をしました。ミッションに対しては、田中さんと同じ思いをぼくも持っていると思います。

特に設立当初は、なんとか安定しようとあれこれと手を出そうとするんだけど、それって俺らがやることなのか?とか、何かの方針を打ち出すと、石井個人の意見として受け止められ、反対にあったりしてたのにうんざりしてたということもあったからなんだけど。

「そもそも論」をいつまでも言ってると仕事にスピード感が出ない。みんなの考えた団体のミッションに従って動こう。迷ったらそこに戻れば答えが見えるマイルストーンを作ろう。

ぼくが出す方針も、団体のミッションから発想した口のきけない法人格の代弁者として出そう、そんな動機でした。あの時は「クレドカード」まで作ろうと意気込んでたんだけど、時間切れで終わってしまいました。

また、つい最近はNPO法人パノラマの申請手続きのため、定款や設立趣旨書を書きました。特に設立趣旨書は、重要な(例え要約されていなかったとしても)ミッションを書くものですよね。

ということは、どんな団体もミッションらしき思いはいったんは言語化まで必ずはしているんだと思うんです。ただし、この設立に立ち会える創立メンバーはその後の歴史を考えると限定的なんだよね。

創立メンバーまではミッション共有がほぼ完ぺきにできてたりするので、この人たちはその後も重要な役割を担って行くことになるんですよね(だから抜けると痛い)。

大事なことはミッションやビジョンは壁に貼っておけば浸透するものではないということ。だから、創立メンバー以降のスタッフたちにどうミッションを浸透させられるかが課題で、恐らくここができてないんでしょうね。

これは、どうやって創立メンバーはミッション共有がなされたのかを考えると、この話のヒントがあるかもしれません。まあ、結局を膝を突き合わせた時間であると思うんだけど。

ミッションは、理事長の本やブログを読んだからって浸透するものでもないんですよね。また、コアなところでミッション共有できる人数的限界もあると思ってます。

ここのところは数千人単位の従業員がいる上場企業の企業理念と、NPO法人のミッションをしっかり分けて考えるべきだと思ってます。

大事なことはミッションの血肉化です。その血となり肉となる日々の営みを田中さんは力説しているんだよね。もう少しこの話、続けましょう。

                                いしい

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