#12 支援・被支援関係を超えた不思議なワールド

田中さん

前回、田中さんが書いてた「支援・被支援関係を超えた不思議なワールド」って、相談中にふっと出現しますよね。

自己開示というのをテクニカルに展開していくというよりも、人間的関心、或いは好意的関心というものをお互いが持つことで、そのワールドが出現するんじゃないかと僕は思います。

僕は高校生たちを若者文化の先生だといつも思ってて。知ったかしないでわからないこと(例えば「イツメン」=いつものメンバー、知るかっ!)を聞くことでこのワールドを出現させてます。

今僕は、横浜の某相談機関で39歳以上の方の相談も受けているんですけど、この間、僕と同い年の相談者の方に、相談後、こんなメッセージを頂いたんです。ご本人に承諾いただいてるので紹介しますね。

これまでに僕が受けた就労相談では、「経歴を聞かせて下さい」「高校を中退し、フリーターをしながら音楽活動していました」「なるほど」とサラッと流されてしまうだけでした。あとは「高校中退者」「フリーター」という枠の中だけで話が進められてしまう。そこに「自分」という独立した人格と人生経験を持った人間はいないんですよ。だけど、石井さんとの面談はそうじゃない。僕的には自己肯定感・・・のようなものを感じています(^_^;)

まあ僕も音楽をやるので、「楽器の担当はなんだったんですか?」「ジャンルは?」「僕もずっとバンドやっててえ」という流れから、お互いの作品を聴かせ合おうよとMySpaceでつながったりして。

そうやって支援を進めているんですけど、まさに「支援・被支援関係を超えた不思議なワールド」なんですよね。相談中にガレージバンドの使い方を僕が教わったりして(内緒)。

で、本題なんですけど。頭打ちになっているひきこもり支援業界の突破口はこれしかないんじゃないかなって僕はずっと思ってるんです。だけど、このワールドの共通認識できる支援者ってどれくらいいるのかな?すごく多いようにも、少ないようにも想像してしまいます。田中さんはどう思う?                                

                                石井

石井さま

この話題、僕は実は20年は考え続けてるツボ中のツボ話題でして、そんなわけで、いきなり本題に行きますね。

結論から言うと、「“ワールドを持つ支援者”は昔はそれなりにいたけど、支援者の資格化・専門家(臨床心理士等)が進んだいま、ものすごく少なくなったのでは?」と思っています。

青少年支援を、教師や民間機関の元福祉職員等が中心で担当してる時、「ワールド」は常時出現していたと思います。

それは我々のワールドのような音楽やアニメのほか、ゲーム、旅行、文学、食べ物、ファツション等幅広いものでした。

教師や元福祉支援者は、自分が体験してきた様々なジャンルを青少年たちに開陳(まあ、自慢ですね)しながら、自分の興味・関心ワールドを全面展開した。

その展開の仕方は時に異常にマニアックになるため普通の大人は引きますが、同じようなマニアック道を追求している若者たちは「この話題をわかってくれる大人が現実に存在する」と大きな驚きと喜びをもって受け入れたわけです。

僕などはそれをきっかけに何人もの青少年たちと語らってきました。その語らいは支援の現場にも持ち込まれ、ともにプロレスやK-1を見に行ったり、ライブに行ったり(PUFFYとか!!)、渓流に魚釣りに行ったりしました(僕は淡水魚マニアだったんですね)。

もちろん全部の教師や福祉職員がそうした話題に強いわけではありません。そんな人は少数派です。けど、その少数派の存在感がまったくもってすごかった。

それがいつの頃からか、いや、初期の臨床心理士(資格取得の前に長い現場経験があった人たち)が徐々に引退するかマネジメントに専念した頃かなあ、言い換えると、学校現場も福祉現場も医療現場もその他いろんな遊びも含めて何も知らない若手臨床心理士や即席キャリアカウンセラーが増殖し始めたここ5〜6年、こうした「ワールド」は激減していっているように思います。

それは、専門支援としては良いのかもしれないけれど、ものすごく大事なものを喪失してしまったのでは、と僕は思っています。★      

                                田中

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