#15 トップが生み出す「空気感」

石井さま

こんにちは、大阪はすっかり秋モードになってきています。

さて、前回の組織論には意外と反響があり、思いつきのまま始めた僕としては少しびっくりしています。

でも僕が言いたかったのは、事業マネージャークラスのホウレンソウの未熟さを言いたかったわけでも、NPO等のソーシャルセクターの抱える組織的未熟さを第一に言いたかったわけでもないのですね。

僕が関心あるのは、「トップが醸し出す雰囲気が組織全体を覆ってしまう『空気感』」なのです。

この、トップの雰囲気やその結果としての空気感に「良い悪い」はありません。

誰が意図して仕組んだわけでもないのに組織内に漂う「行動の判断基準となるムード」「言語化以前のある種の『倫理』や『美』の基準」をテーマとしたかったのです。

そして、そうした組織の「空気」そのものは、結局はその時のトップの「好み」としか言いようがないものに左右されるのでは、ということです。

我々のソーシャルセクター業界において、トップが自団体の「専門性」(たとえば介護等)を第一に置く空気を出していれば、自然とその専門分野の知識や技量の獲得が優先するという「空気」が組織内に流れるということです。

これがたとえばNPOだとすると、ミッションや戦略がまず第一に考慮されなければいけないのに、戦略よりもそうした専門性を第一とするトップがいる間は、NPOらしいミッションや戦略は後回しにされるという「空気」がその組織に醸成され、それが組織全体の行動原理となっていく。

逆に、専門分野は後回しにして、2010年代のNPOらしく「ソーシャル」なジャンル(広義の社会貢献や寄付等)に一義的にトップが関心ある場合、組織内にもそうした「空気」が流れ始めるのでは、と思います。

その結果、一義的でないものが後回しにされていく。

前回はこんなことも触れたかったのですね。いかが?★

                                 田中

田中さん

横浜では昨日、現役教師、退職教師、支援者が集まってこんな団体が立ち上がりましたよ。僕も運営委員として関わってますのでまたご報告しますね。

「トップが醸し出す雰囲気が組織全体を覆ってしまう」。このことに自覚的なトップがどれくらいいるんだろうか?というのを率直に感じました。

例えば。トップが憮然として煙草を吸い、突然、誰かの発言に対して叱責する。こんな状態ではまともなケースワークはできないわけですよね。

でも、敢えてこのトップの人の気持ちに立つと、この人は正解者としてそこにいて、不正解者に対して正解を教え、団体の質を高めとうとしていたんでしょうね。

ただし、この人は「トップが醸し出す雰囲気が組織全体を覆ってしまう」ことに対して無自覚であり、その結果萎縮したスタッフたちの機能低下によりミッションに対する責任を果たし切れなくなるという、「誰のためなの論」が始まっちゃう。

一方、友だちリーダーってのもいて。実質、役割はバランサーでありマネージャーで。自己実現を追求するスタッフたちの煩悩を制御できずに、個人の専門性を高めることにはとても誠実なんだけど、団体としてのミッションがぼやけ、「誰のためなの論」がここでも始まっちゃう。

まあ、いずれのタイプも「一義的でないものが後回しにされていく」んですよね。

そこで重要なことは、ミッションがどこ(なに)から発動されるのかって問題じゃないかなと思うんです。この初期衝動に僕らはバカみたいに突き動かされてる熱血ロックな人々だと思うんですよ、本来。

この初期衝動の共有と持続が失われたところで、ふと過るのが「誰のためなの論」であり、「組織は誰のもの論」になって迷子になったスタッフが辞めて行くんですね。

                                 石井

田中さんが、このやり取りで僕(編集担当の石井)がカットしたAppleの話を膨らませてヤフーの個人ブログに記事をアップしました。「無風状態」と合わせてお読みいただくと、更に田中ワールドが見えてきます。
トップの「キャラ」と「組織エートス」~アップルのジョブズ(シンクディファレント)とクック(物語)とか

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