#5 子どもができて、よけい「変な大人」になった
石井さま
この前はそれぞれ「死」について語り、なかなか我々の個性が出ておもしろかったですね。
今回は逆に、新しい「命」について、です。
石井さんは20代で父親になられたとこの前書いていましたね。僕は反対に、50才になった今年、初めて父親になりました。赤ちゃん、かわいいですね!
いま父になって支援者として何か変化あったかと石井さんからご質問いただきました。まだよくわからないんですが、一つだけ毎日意識していることがあります。
それは、僕が僕として意識と記憶を持つまで数年単位の長い時間が流れていて、その時間を僕は記憶しておらず、いわゆる赤ちゃんや幼児として過ごしてきたんだなあということです。
いや、通俗心理学のように、だから乳幼児期が大切と言いたいのではありません。
胎児の頃も含めて「命」は躍動しており、それは意識のあるなしにかかわらず、老いて認知症になろうが最後に脳死状態が長く続こうが、「命」はそこにあるということです。
子どもと毎日接するようになって、これが以前にも増して実感として僕に迫るようになりました。
すると不思議なもので、毎日の一瞬一瞬のシーンを、より大切にしたいと思うようになり、同時にこれも不思議なんですが「嫌なこと」はしたくない! という気持ちも強くなってきたのです。
せっかくの命、我慢して生きるのはもったいないよ、と。
前から子どもや若者にはこのように語ってはきましたが、ここのところ完ぺきな確信を持って語っているように思います。
というわけで、僕の「変な大人」ぶりが加速されております。
田中俊英
田中さん
病気から回復して来て、「田中さんが面倒臭くなった」という話を聴くことが僕はありましたよ(笑)。
命の限りを意識してリミッターを外した生き方を選択した田中さんは、周囲を気にしながらリミッター効かせて生きている人からすると、それは面倒くさいだろうなあと僕は思いました。
何分、僕はちょうどいい距離にいたので面倒くさくなかったし、歯切れの良くなった田中節に、随分励まされたものです。でも、近くにいたらうざかったでしょうね。…ふふっ。
そんなリミッターの外れた田中さんにお子さんが出来て、さらにフリーダムになった。もう怖いものなしっすね!
そんな近頃の田中さんに、僕は後期のジョンレノンを感じています。曲でいえばホワイトアルバムの「Happiness is a warm gun」。
繊細なアルペジオのイントロとささやくようなボーカル。リンゴのドラムがダダダダダッと来てからの饒舌さ、ギターソロを挟んで人を小馬鹿にしたような語り口のあとに、低く説得力のある決め台詞。もうあとは好きなだけ喋り、飽きたら止める。これはまさに今の田中さんだよ。
お子さんのためにも益々のご活躍を!
石井正宏
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