♯57 田中が「NPO2.0」を語るの巻

石井さま

石井さんの前回の話はおもしろくて、①事業対象を明確にすると、こぼれ落ちるものも明確化されてしまう②事業の明確化は、スタッフに選り好みされないか、の2点が指摘されたのでした。

で、さらに議論を深めるため、僕の言う「NPO2.0」を明確化しようと。賛成なので、これまで曖昧だったNPO2.0の必要要素を羅列してみます。足りない点はここで補足していきましょうね。

 1. NPO2.0は「格差社会」をあらゆる事業考案時に前提化している

いきなりきましたが、つまりはここが出発点なのです。この視点があると、大学新卒でNPOに入った人も(奨学金借金ではなくミドルクラス〈上〉〜アッパークラス親からの学費で大学卒業)、ある程度の資金を準備して(アッパークラス親からの借り入れ含む)NPOを立ち上げた代表理事も、自らの出身階層を常に意識する必要があります。

現代日本は格差社会化したと僕も思います(是非はおいといてピケティの言うヨーロッパ型に日本は入ると言われます)。

そこで起こる矛盾を元に社会課題は形成されるから、格差社会を法人ミッションの前提とし、法人スタッフ自らの階層を常に意識して自己研鑽しないと、「透明」な存在として貧困階層を無意識に差別してしまう罠に陥ると僕は思います。

2. NPO2.0は、ミッションが明確である

これはこれまでも書いてきた、曖昧な「市民」や「幸福」等ではなく、あくまでも具体的に、①誰に、②何を、③何のために、④どのようにして、行なうのか提示するのがNPO2.0です。

ご指摘のようにドーナツトークもまだまだ発展途上なのですが、下に書いてみますね。

①貧困ハイティーン(主として女性)に、
②サードプレイス(とソーシャルワーク)を、
③現実的な自立(現実的な職業〈スキル獲得と収入確保〉、住居、PTSD治療等)のために、
④高校内居場所、中間的就労支援、ソーシャルワーク・生活支援等を通して、支援サービスを提供する。

とりあえず2つ並べてみました。まだまだありそう。★

                                 田中

田中さん

ありがとうございます。逆にNPO1.0を定義すると、以下になるんですね。
①格差社会を前提に事業が構築されていなかった。
②ミッションが不明確であった。

でも、もはやそんな甘っちょろいことじゃ社会課題の解決はなく、社会への訴求生を失うので、団体の存在意義すらも危くなるぞ、という田中さんの危機感が、NPO2.0という概念を生み出しているんですね。

前2回で②についての危惧をぼくは書いたと思うので、今回は①についての私的な感想を書いてみたいと思います。

結論から言うと、①は多いに賛成です!まさに、NPO法人パノラマを立ち上げた危機感というか、切迫感はそこにあります。そして、シェアコロを立ち上げた6年前に、ぼくにはその思いはなかった。

あの頃のぼくの頭の中は1.0だった。もっと明確に言うと、ホームレス問題は認識しいていたけど、そこと若年者の問題とをリンクした危機感は持ってなかったですね。

恥を晒せば、それより遥か前に、ぼくは足立区の生保世帯の若年無業者に対するアウトリーチ・チームのリーダーで、福祉課の生き字引き的な方に散々レクチャーを受けたけど、特別なこととしか思えなかった。

格差の問題が自分ごととして一気に火が点いたのは、課題集中高校で相談員をはじめてからだし、自分自身の当事者性に気がついたのもそのときだった。

今思うと、本当にイマジネーションの欠如だよね。なにがぼくの貧困に対するイマジネーションを奪っていたのかは個人的に検証するとして、とりあえず①に納得です。

最後に、田中さんの「まだありそう★」に答えるなら、ぼくは寄付=市民とのパートナーシップ性だと思うな。

                                いしい

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