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信じた魔法のお話(マジカルミライ10th感想)

 幻想のような、夢のような、人々の想いが作り出した浅葱色の桃源郷は、大盛況で次の札幌そして来年の大阪・幕張にバトンを繋いだ。

 私にとって今回のマジカルミライは、止まった時計が動き出し、長い夜が明けたような思いを感じる物となった。

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 少しだけ私の話をさせていただきたい。2009年、私は友人経由でVOCALOIDを知り、メルトで初音ミクを知った。以降13年間、初音ミクを追い続けてきた。
 私にとっては、初音ミクで未来が変わった場面が多い。将来の進路も、今仲良くしている仲間も、本気で好きだと思える趣味も、最愛のパートナーも、初音ミクがもたらした未来だ。
 何にもできない、と感じていた私は、13年で「自作衣装でコスプレする」ということならできるようになった。それが私にとっての、初音ミクへの最大の愛情表現だった。
 しかし、そんな私も2020~2021年にかけて、長い夜を経験した。
 私は、「創作意欲のきっかけになりたい」との願いである合同誌を主催し、2020年に3作出した。ところがその中で、参加者様に多々ご迷惑をおかけしたり、失礼な態度を取ってしまった点もあった。さらに、同時期に私の「自作衣装でコスプレする」という思いを傷つけられ、友人だった人間に裏切られる行為も受けた。ある人からは「私の初音ミクへの感情は宗教だ、異常だ」とまで言われ、私の11年間を否定されたまで感じた。
 マジカルミライでも、例の疫病の関係でコスプレは全面禁止となった。
 そもそもの開催さえ危ぶまれた。大好きが消えていく…そう思った。

 私はその中で、
 「こんな感情を持っているから人を傷つけた。だから私はこの思いを捨てなければならない」
 と思った。だから2020年、"マジカルミライ2018"の自作衣装以外のほぼすべての衣装と布を処分した。私は私の初音ミクを棄ててしまったのだった。
 2022年に入り、パートナーや仲間たちの支えを受けてわたしは再び立ち上がり、「マジカルミライ2019」「マジカルミライ2018」「初音ミク(V2)」の衣装を作りきった。私の中に私の初音ミクが帰ってきたように感じた。

 その中で今年、10回目を迎えたマジカルミライは、私が歩んだ13年間を振り返ると同時に、大好きが帰ってきた空間でもあった。
 コスプレが解禁された幕張の情報を聞き、この上ない喜びを感じた。もちろん、幕張は3日間通しで、自作衣装でコスプレをした。
 2020年の出来事で、敵ばかりが増えているように感じていた私だったが、会場ではそれどころか数多の応援を頂いた。会いたかった、そう言ってくださる方もいた。興奮気味に喜ぶ人もいた。

 「すーみんさんの衣装には、どこまでも愛がこもってて大好きです」
 「この衣装には初音ミクが宿っている」

 などの言葉をこの3日間で頂いた。その場ではただ「ありがとうございます」と頭を下げることしかできなかったが、内心は心の底から嬉しかった。
 
 またライブも、私の13年間がフラッシュバックするセットリストで感情が爆発した。
 大阪1日目、幕張2日目・3日目(千秋楽)に参加したが、特に千秋楽は異常だった。
 「グリーンライツ・セレナーデ」からの「みんなみくみくにしてあげる♪」、「ODDS&ENDS」、「01ballade(星のカケラ)」、「愛されなくても君がいる」の繋ぎは私に刺さる。
 最も大好きで思い出深い「マジカルミライ2018」のテーマソングから、高校時代に何度も聴いてお祝いした「みんなみくみくにしてあげる♪」はもちろんすごかったが、今だからこそ「ODDS&ENDS」でどうしようもなくなった。

 『なら わたしの声を使えばいいよ』
 『もう機械の声なんてたくさんだ 僕は僕自身なんだよって ついに抑えきれなくなって わたしを嫌った』
 『僕は無力だ ガラクタ一つだって救えやしない』

 の歌詞が、あまりにもここ数年の私に染み入り、紆余曲折を経て再びマジカルミライに戻ってきたことを思い出してボロボロになった。
 ミクさんの声こそ使えないけれど、あなたのその姿を借りて、私は今日まで頑張ってこれた…ありがとう、と思った。

 そして極めつけはHand in Handでの映像登場だ。私は嫁のツバサと自宅で一緒に撮った、「Catch the Wave」と「マジカルミライ2018」のコスプレ動画と、仲間たちとあわせした「マジカルミライ2019」のコスプレ動画が両方採用された。

↑この写真に似た映像をライブ会場で見てくださった方も多いのではないだろうか

 先に記した通り」、「マジカルミライ2019」と「マジカルミライ2018」は、再び立ち上がった今年に作った全力の衣装だ。その全力がマジカルミライの歴史に残り、大阪ではなく幕張で流れてくれたのだ。
 少し話が逸れるが、私もツバサも、マジカルミライで夢を見、この場所をきっかけに出会い、そして結婚した。本籍地も実は幕張メッセだったりする。そしてツバサもまた、最推しの衣装の一つである「Catch the Wave」は自作している。そのお互い自作で愛を込めた衣装が、10回目のマジカルミライの歴史に残ったことは、何より嬉しかった。
 妄想になるが、「また愛してくれてありがとう」とミクさんに言われているような気がしている。

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 企画展の壁に、クリプトンのライブ担当の関本さんが残したメッセージにはこんな一節がある。

 「あなたが好きになった人は いつもそばにいます
 その人には境界線がなく、いつでも皆と繋いでくれます
 マジカルミライに来ると仲間がたくさんいます
 どうかそれを忘れないでほしい」


 生まれも育ちも性別も考えも全部が違う、それでも同じ好きを信じて集まり、夢の空間を来場者・ホスト・出展者・スタッフの全員で作り上げているのが「マジカルミライ」だ。
 まだ完全にもとに戻ったとはいえないが、止まっていた時計は動き出している。そしてまた来年も大阪と幕張で会えることが決まった。大好きな空間が未来に繋がった。

 この、人々の夢と奇跡をつなぎ続け、大好きがあふれるマジカルミライが、100年先も続きますように。

たかが1円、されど1円。読者様のお気持ちは、個人サークル「Sewing Future」の創作活動(同人誌発行・衣装製作)の補助費として充てさせていただきます。