紙の声
家に通りすがりの男がやってきた。
彼は知識が深く、狡猾で、富を持っていた。
男の話は愉快で、家のものたちは彼を屋敷にあげ、上等な酒とたくさんの食事を用意して彼の話で一晩中歓声を上げた。
朝方、家に届け物があった。
配達の男は玄関の敷居を超えた瞬間、苦しみ倒れ死んでしまった。
家長のものは青ざめて言った。
「長押のおふだは!?」
妻が飛んで確認する。
床に逆さに置いてある。
「ああ、この札ですか。」
客の男が口を開いた。
「外したらどうなるだろうと思って、そこに置いたんです。」
その瞬間、家のものたちは全員蒼白な顔で立ち尽くした。
あまりに異様な落胆に、客の男は尋ねた。
「そんなにマズイものですか?」
誰も答えないで客を見る。
沈黙が流れた後、不意に「背後」から声がした。
この時、その場にいた誰もが「背後」と答えただろう。誰もが、まるで自分の真後ろにその声の持ち主がいたかのように感じたからだ。
「五万円です。」
「は?」
と客の男が声を出した。
家のものたちは目を見開いて客の様子を見ている。
「嫌だけど。」客の男が言った。
凍りついた沈黙が場を支配している。
「俺が代わりに出すから!」
家長の男が言った。
しかし時すでに遅く、何が起きたかはご存知の通りだ。
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