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廃用性浮腫について

 本日は浮腫(=むくみ)についての自己学習です。

 現在、私が勤務している施設では、多くの利用者に両足の浮腫が認められます。これらの浮腫は医療機関にて明確に診断を受けたわけではなく、心不全や腎不全による原因を完全に除外したわけではありませんが、長時間車椅子上に腰掛けていることによっておこる浮腫であると考えられています。

 この浮腫は医学的に「廃用性浮腫」と呼ばれるそうです。

 今回はこの「廃用性浮腫」の基礎知識について、下記の参考文献を元に学習しました。

 参考文献
武田 亮二:廃用性浮腫について 洛和会病院医学雑誌Vol32:5-10,2021
URL:http://hdl.handle.net/11665/2653

廃用性浮腫とは

 そもそも浮腫とは、組織間隙液が以上に増加した状態で肉眼的に浮腫んだ状態を指します。浮腫は種々の原因によって出現し、その疾患によって全身性に出る場合、局所的に出る場合があります。私が病院自体によく目にした浮腫では心不全や腎不全が原因のものがほとんどでした。

 それらの全身疾患(心不全や腎不全)や気質的要因(下肢静脈瘤や深部静脈血栓症)を伴わない浮腫のことを「廃用性浮腫」と呼ばれています。

廃用性浮腫の病態

 人間は2足歩行の生物であり、日中のほとんどを立位や座位で過ごします。これにより全身の血液は下肢に集中し、下腿での静水圧(静脈にかかる圧力)は約100mmHgとなるそうです。
 この圧力が常に静脈にかかることによって血液が血管外に滲み出ることによって浮腫を生じます。

 しかし、健常人は高齢者ほど浮腫が頻発することはありません。これは下肢の筋肉が収縮することで静脈を圧迫し、静脈を流れる血液を心臓に戻す「静脈還流」を生じさせているからです。これを「下肢筋ポンプ作用」といい、下腿三頭筋が「第2の心臓」と言われる所以です。

 高齢者は
・歩行能力の低下、活動性やADLの低下による下肢筋力低下
・皮膚の緊張度低下
によって下肢の筋ポンプ作用が機能しないために浮腫が生じているわけです。

 介護予防領域で多く浸透してきた「フレイル」「サルコペニア」で称される高齢者も上記の条件を満たしているため廃用性浮腫が見られる頻度が多くなります。2013年の厚生労働省の調査によるとフレイルの状態にある高齢者は65〜69歳で5.6%であるのに対し、80歳以上では34.9%と加齢に伴いフレイルが増加する。施設に入所されている高齢者の年齢やADL状況を考えると廃用性浮腫が生じるのは必然的と考えられます。

まとめ

 高齢者施設に入所される利用者の多くは廃用性浮腫を必然的に発症するリスクを抱えているということがわかりました。

 ここで私に求められることは
 ・離床時間の調整、臥床と離床のバランスを検討
 ・浮腫の低減による皮膚の脆弱性の改善や深部静脈血栓の予防
 ・廃用性浮腫ではない別原因の浮腫が生じている場合の受診判断
 であると思います。診断は施設の理学療法士ではできないが、廃用性浮腫に紛れて、別の疾患が原因で生じたであろう浮腫を早期発見することはフィジカルアセスメントを定期的に行う機能訓練士の仕事の一環でしょう。

 次回は廃用性浮腫の鑑別や治療に関して学習していきたいと思います。

 ありがとうございました。

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