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お茶好きの隠居のカーヴィング作品とエッセイ-昔ばなし

21.  チドリ


シロチドリの親子

千鳥に寄せて


茜さす朝の砂浜歩みゆく浜昼顔の茂れる中を

さくら貝探し歩める我ひとり千鳥の声と潮騒の中

浜昼顔の茂れる中にシロチドリ擬傷を以て我を惹きつく

我は知る近きにその巣があることを擬傷せざれば気づかぬものを

二羽の雛伏せて動かず石の如浜昼顔の茂れる中に

母鳥の思い知りたる我なれば欺かれたる振りして去りぬ

茜さす浜昼顔の砂浜に思い起こすは可愛ゆき偽傷

腹痛を上目遣いで訴えて我が気遣いを欲しがる君を


Injury Feigning


In the early morning,
Under the rising sun of madder red,
I walked along a sandy beach
Where beach morning glories spread.

A plover, acting an injury feigning
Succeeded to get my attention.
In the cluster of the beach morning glories
She seemed to be in a high state of tension.

In all the plovers’ territories,
Scenes like this commonly take place
And make up common stories
To win the survival race.

Struck with the mother bird’s desperation, though,
I quickly left there knowing it was a fake.
That reminded me of the display at times you show,
The upward glance when you complain of a stomachache.


エッセー


チドリは古くから多くの詩歌に謳われてきて、日本人には最もなじみの深い鳥の一つです。 千鳥の付く言葉は「千鳥足」のほかにも、「波千鳥」や「千鳥格子」と呼ばれる模様や「千鳥饅頭」という饅頭もあります。 私が少年時代を過ごした町のお隣りは千鳥町です。 そんなにポピュラ―な千鳥ですが、思いのほか、この鳥について良く知っている人は多くないようです。 我が国で比較的普通に見られるチドリ科の鳥はコチドリ、メダイチドリ、シロチドリ、イカルチドリと「チドリ」と名のつく4種を挙げておけば良さそうですが、チドリに極めて近縁の鳥にはムナグロやダイゼン、タゲリ等々、色々居て、これらの鳥は十把一絡げにチドリと思っているのが一般だと思います。
チドリの仲間は皆、石ころ混じりの砂浜の窪みに直に卵を産みます。 卵も雛も石ころみたいな模様があって、周りの景色に紛れて見つかりにくいような姿をしていますが、親鳥は敵とみなす動物が巣に近づくと、いわゆる「擬傷」と呼ばれる行動で敵を巣の近傍から引き離そうとします。  自分が傷ついて良く飛べない風を装い、羽をばたつかせながら、敵の注意を自分に向け、巣から離れた場所に敵を誘導する行為です。 この行動を取る鳥はチドリ以外にも地上に営巣する鳥では普通に観察されますが、樹林や藪に住むホオジロやシジュウカラでも観察されたという報告もあるようです。                 <https://www.wbsj.org › public › strix › strix25_23>
親鳥の発する警告の声を聞くと雛鳥は徹底的に死んだふりで石のようになってしまうそうです。 
<http://www2.kobe-c.ed.jp › kansatu>
 
チドリは地上に住む鳥だから、雛でも立派で丈夫な脚を持っていて、頭でっかちのちいさな体に似合わず、すばしこく走り回ってとても可愛らしい様子をしています。
 
「擬傷」に話を戻すと、似たような行為は人間も行うわけで、仮病を使って相手を誑かすのはどうも動物一般に広く見られる本能の一種かもしれませんね。
例えば、妙齢のきれいな女性から「あたし、今、お腹が痛いの。」などと上目使いで艶かしく甘えられると、男はすぐメロメロになってしまうでしょう。
危ない、危ない。  

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