【書き起こし・前編】 国会パブリックビューイング 「緊急ライブ配信 検察庁人事への内閣介入問題」ゲスト解説:山添拓参議院議員(日本共産党)/進行:上西充子(国会パブリックビューイング代表)(2020年3月22日)

※ トークの中で言及しているスライドは、下記の映像からご確認ください。
https://www.youtube.com/watch?v=p147niwR7mQ&feature=youtu.be
※ 私(上西)が用意したスライドについては、下記からの連続ツイートでもご確認いただけます。
https://twitter.com/mu0283/status/1241294233568309249

<はじめに>

●上西充子 国会パブリックビューイングを始めます。今日は検察庁人事への内閣介入問題ということで、参議院議員の山添拓さんに来ていただきました。よろしくお願いします。
「#山添さんに聞きたい」というハッシュタグで、既にたくさん質問を頂いていまして、「ヤマタク」さんでいいんですか、という。略称は。呼び名は、という話があったんですけれども。

●山添拓 「ヤマタク」でいいです。山崎拓とよく間違えられていますので、国会でもですね。略して「ヤマタク」で一緒ですから。

●上西 「拓ちゃん」という話もあるらしい。

●山添 なんでもいいです。呼びやすい呼び方で。お願いします。

<本日のテーマ>

●上西 今日取り上げるのは、黒川検事長の勤務延長問題と、その後に、検察庁法を変えて、そこにも内閣が、黒川氏のことだけではなくて、検事長のあり方みたいなものに介入ができるようにするというところの3月16日と3月18日の質疑を取り上げたいと思っているんですけれども。
今日は山添さんの方からたくさんパワーポイントの資料も作っていただいたので、それに沿いながら、あと、私の方で聞きたいこともスライドで用意しましたので、それを説明いただきながら、そこに国会質疑を挟んでいくという形でやろうと思います。

●山添 ちょっとややこしい問題なのでね。

●上西 はい。ややこしい問題なんです。技術的にもうまくいくかどうかわからないんですが、そこはご容赦ください。

●山添 よろしくお願いします。

●上西 よろしくお願いします。

<三権分立を脅かす検事長違法人事と検察庁法改定案>

●山添 これは私の作らせていただいたスライドですけど、三権分立を脅かす検事長違法人事と検察庁法改定案というふうに書かせていただきました。
もともとは黒川さんの人事が問題になってきたわけですけども、そしてその違法な解釈変更ということが言われてきましたが、それにとどまらず、と言うか、むしろそれをやってしまったがために、それを正当化させるために、法改正までいじってきたということで、連続した問題ですし、かつ、それは安倍政権だけの、あるいは黒川さんだけの問題ではなく、今後も引き続き、続いていきかねない問題だということで、そういうタイトルにさせていただきました。

●上西 法改正は、これから国家審議が始まる?

●山添 そうですね。まだ出されたばかりですので。

●上西 出されてはいるんですよね。

<なにが問題か>

●山添 私の方のスライドの2枚目を出していただけますでしょうか。
「なにが問題か」ということで、この間、起こってきたことを少し整理して。まぁ何を言いたいのか、何が一番問われているのかということなんですが、これは多くの皆さんがもう了解されていることだと思うんですが、検察の人事に官邸が介入をすると。
検察官も内閣の一環ですので、政府の一環ですので、純粋な裁判官とはちょっと違いますけれども、しかし司法の独立を支えるひとつの役割を担っている大事な仕事だと。準司法官というふうに、ここでは書いていますけど。
弁護士・検事・裁判官と、「法曹3者」と呼ばれている中で、弁護士は在野ですね。権力からは離れたところにいるわけですが、裁判官と、そして検察官。これは司法の独立を支えている担い手だと思います。
特に、なぜそう言えるのかといえば、刑事事件で、刑事事件を起訴して、罪に問う。被告人を罪に問う。この仕事ができるのは、検事だけですね。「起訴独占」ということになっています。
だからこの、その重い職責を担っている検察人事に、内閣が関与する、介入するということが、大問題になってくると。
特にこの間、森友、加計、桜を見る会やカジノ汚職や、あるいは選挙違反。もう政権そのものの、特に安倍政権の場合は安倍首相自身の疑惑も含めた、刑事責任に問われるような問題が相次いでいる中で、それに切り込んでいく検察が、権力から独立していなければ、捜査をし、立件をする、起訴していくということはできないだろうと、脅かされていくだろうということで、問題になっていると思います。
ただ、これも書いていますように、今でも検察の忖度っていうかですね、権力寄りの姿勢というのは問題にされてきたと思うんですね。
この間、森友問題で亡くなった、自ら命を絶った赤木さんの遺書が公にされて、裁判も起こされていますけれども、あの事件も最終的には大阪地検が不起訴にしたと。
それ以外にもいろんな、政権に近いところの事件を、軒並み不起訴にするという扱いがあって、今でも怪しいじゃないかということをいろいろ言われていると思うんですね。言われてはいますけども、しかし仕組みとしては、そこまで公政治が露骨に介入することができないような立て付けに、一応なっていると。
それを今度は大手を振って介入していこうという姿勢が見えているので、大問題と言えるのではないかと思っています。

<そもそも三権分立とは>

●上西 で、基礎からちょっとおさらいをしようということで、三権分立って何でしょうっていう、私の方のスライドを出していただきたいんですけれども。
司法の独立という話ですよね。これ衆議院のホームページにあるんですけれども、立法と司法と行政。この関係を、ざっと説明していただいていいですか。特に司法のところ。

●山添 立法府っていうのが、国権の最高機関とされている国会ですね。法律、国民の、市民・国民の権利を制限しうるような法律を作ることができるのは国会だけだと。
しかし、その法律が間違った法律を作る時があると。権力といえどもですね。国会といえども間違った法律を作ることがありうる。そういう場合にただすことができるのは司法権で、これは違憲立法審査権を持っていると。憲法違反の法律を国会が作ってしまったような場合には、それをただす役割が司法権にはあると。
ですから、戦争法、安保法制が違憲だという裁判を起こされていますけども、裁判所がそれを判断しうるという意味で、対立関係と言いますか、監視すべき役割があるんですね。
それから、立法府と行政府との関係は、書かれていますけど、今、国会議員から内閣総理大臣を選びますので、内閣は国会に対して連帯して責任を負うという規定になっていますけども。
ですから、もし、その内閣が国会の意志に反するようなことをやる場合には、内閣不信任案で退陣させることができるのだということになっている。
そして内閣と司法の関係が今回、問題になっているということだと思いますが、さっき言いましたように、司法は国会が行った憲法違反の法律も判断しますけれども、内閣が、行政が行った行為についても判断できるわけですね。
それは、国家賠償訴訟なんかが起こされて、内閣が違法なことをやったら、それによる損害を賠償するとか、行政訴訟を起こして違法な裁判、違法な処分について、取り消しができると。裁判所で、ですね。こういう適法性の審査が司法にはできるということで。
そういう意味で裁判所がもし、司法がもし、内閣のことを慮って、遠慮して、忖度をして、妥当な判断をしないということになると、国民の権利が守られない。国民の権利を脅かすような行政のやり方について、チェック機能が働かなくなるということで、司法の独立というのは、そういう意味で「最後の砦」と言いますか、法律からも守るし、行政の違法な行為からも守るという意味で大事なものになっているということだと思います。

<検察官とは>

●上西 その司法の中で、先ほども検察官が行政の一員であるって話があったんですけど、そもそも検察官ってどういう人でしょうっていうので、私のほうの3ページ目、お願いします。
検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事に区分されますということで、今、問題になっているのが、この中の検事長と検事総長ですね。この人たちは、普段はどんなふうに任命されるんですか。

●山添 任免はここにありますように、内閣が任免をするということになっています。任免ですから、就任する際にも、その任務を解く時にも、内閣の判断が必要だということになっています。

●上西 ただ、内閣が恣意的に選ぶという話では、本来はないわけですよね。

●山添 そうなってしまうとまずいということで。実際の運用のされ方としては、検察庁が次の検事総長、次の検事長は、まあ、検事長というのは、高検の検事長、高等検察庁ですね、検事総長はその親玉みたいなものですけども、その、そういう上層部の人事について、こういう人を就けたいということを提案をし、それを内閣が認めていくという形で、実際は運営されている。
ですから、もともと結構、微妙な問題をはらんでいると思うんですね。もともと内閣が任免するという仕組みになっている以上は、内閣の一存が入り込みやすいと思うんです。
しかし、司法の独立、あるいは検察官の独立。検察官が、何者にもその捜査や公判の方針を左右されずに、法と証拠に基づいて事件に取り組む。これを確保するためには、検察官の独立が必要だと。
そこで検察庁法の中でいろいろ工夫して、今の仕組みを作っている。ですから、任免そのものは内閣でやるけれども、実際の人事を考えるのは現場の検察だということにされてきたわけです。

<なにが問題か(続)>

●上西 その人事に今、介入がされてきているということで、山添さんの「なにが問題か」っていう、2枚目の方お願いします。それの次ですね。ちょっと説明してください。

●山添 この間の一連の流れというのを整理してみたんですけども、まずは安倍首相に近いと言われている黒川検事長の、その任期をさらに伸ばすと。半年伸ばすという、この勤務延長が、閣議決定で、されました。
で、この時点でみんなびっくりしたんですね。検事長が63歳を超えてその役職を続けるということは、法律上、想定されてないはずだと。過去にもやったことがないと。ですから、皆びっくりしたわけです。
で、びっくりしてですね、そして当然、国会でいろんな議論になって追及が進んでいく中で、やっぱりやっちゃいけないことだったということがはっきりしてきた。検察官は勤務延長しちゃいけないという法律だったはずが、法解釈だったはずが、その解釈がいつのまにか変わっていたということがわかってきたわけです。
2番目の問題で、黒川人事を正当化しようとして法解釈を変えた。というか、変えたことにしたと言った方が正確だと思うんですけども、そういうことになったと。
ところがですね、それはもう無理な話なので、法解釈自体は1981年に、後から出てきますが、検察官には勤務延長は適用されないということをはっきり述べていたものですから、その解釈変更はもう、説明がつかないと思います。
説明がつかないことを説明しようとしてですね、森法務大臣などがいろいろ取り繕って話すと。その中で例の、「東日本大震災の時、検察官はいわきから逃げた」と。「理由もなく釈放をして逃げた」と、こういう発言、暴言が飛び出すことになった。
そして、この黒川人事や、それを正当化するために行なった解釈の変更を、してしまったものですから、これもあとから述べますが、今度やろうとしている検察庁法の改定案、その改定案も修正をして、修正するだけじゃなくて、さらにもっと端的にですね、露骨にですね、内閣が検事総長、検事長、検察上層部の人事に介入できるような法案に変えてしまったと。何段階かにわかれて問題が深刻化してきているんだと思います。

<定年引上げと勤務延長の違い>

●上西 ちょっと複雑だけれど、がんばって理解をしたいということで、もう一回さっきのこれ、出してください。
検察官の中で、検事総長だけが、定年が65歳なんですね、今ね。その他の人たちは63歳で、検事長も63歳であると。で、この63歳のところの検事長の黒川さんの勤務延長ということになったわけなんですけれども、次の、じゃあ、5枚目。
この間、「定年延長」と「定年引き上げ」と「勤務延長」と、3つ言葉があって、なんか「定年延長」って言ったら間違っていたのかなというふうに思っていたんですけれども、まずは定年引上げと勤務延長の違いを説明していただいていいですか。

●山添 図でわかりやすく示していただいているんですけども。
今、民間企業も含めて定年の引き上げということが議論されていると思います。そして今度、国家公務員についても、60歳の定年を65歳に引き上げようということが言われていまして、これは定年ですので、定年年齢の引き上げだと。

●上西 定年60歳を定年65歳にしていくと。そうするとみんなが65歳まで働けると。

●山添 検察官の場合にはすでに今63歳ですので、それを65に引き上げるということですけど。とにかく全員一律に引き上げになるというのが定年の引き上げの問題です。
今、定年延長、定年延長と言われているのは、厳密には、法律上は勤務延長のことを指すと言うべきだと思うんですが、ある職務に就いている職員について、その職務を引き続き定年後もやってもらおうと。

<黒川検事長の勤務延長問題>

●上西 今、言及されているというのは、黒川さんのは、厳密にいえば勤務延長だと。

●山添 黒川氏について定年延長と言われているのは、わかりやすいのでそういう言葉遣いになっていますが、法律上の適用されている条文としては、勤務延長の条文だと思います。
勤務延長は、そこにもありますが、特定の職員について特例的に定年後も同じ職務を担わせるということで、みんなに適用されるわけじゃなくて、法律上は公務の運営に著しい支障が生ずる、こういう場合に引き続きやってもらいましょうと。この人だけやってもらいましょうと。ですからこれは、個別に判断をして、この人だけ、この期間だけやってもらうというもので、意味は全然違う。

●上西 検事長は、本来定年が63歳だけれども、黒川さんだけ例外的に63歳を過ぎて、そのまま検事長をやってもらいましょうというのが、勤務延長ですね。
で、その勤務延長なんですけれども、これですね。拡大をしていただいて。
なぜ、黒川さんだけ異例の勤務延長ということが行われたかということで。黒川さんはこれ、もう勤務延長されたんですね。

●山添 はい。

●上西 今年の2月8日に63歳で、本来はその前日に退官のはずだったと。けれども、異例の勤務院長ということが、まぁ本来、違法なんじゃないかと。違法なんですね。

●山添 はい。違法ですね。

●上西 違法なんだけれども、こう解釈変更できるんだというふうに閣議決定をして、半年間勤務延長がされている状態であると。それは、その上にあるお二人の方の動向と絡んできているらしいんですけれども。説明していただいていいですか。

●山添 これ、いろいろ言われていますが、正確なところは検察内部でないと本当のところはわからないわけですが、推測される事情としては、こういうことがあるのではないかと。
元々、先ほど申し上げたように黒川さんというのが、かなり安倍首相に近いと言いますか、安倍政権にとって、割と都合のいいことを法務省の中でやってきた。検察官ですけど法務省に。

●上西 法務省の事務次官でいらっしゃったんですね。事務次官は官僚のトップ、法務省のトップ。

●山添 そういうことですね。事務方トップということになると思うんですが、まあそういうなかで、いろんな疑惑を隠したり、あるいは共謀罪の法案を通したり、そういう時にも事務方のトップとしてやってきたと。

●上西 その時の事務次官なんですね。

●山添 そういう人なので、できればまあ今、特に安倍政権、いろいろ課題を抱えて、課題と言いますか、刑事責任を問われる疑惑を抱えているので、その時に検察トップに置きたいという思惑があったんだろうと。

●上西 検察トップがこの検事総長ですね、この一番上に。今、検事総長が稲田さん。

●山添 この稲田さんが、昨年のうちに辞めてくれれば、そのまま黒川さんを就けることができたわけですが、辞めなかったと。辞めなくて、別にこれ、2年と決まっているわけじゃないんですけれども、大体2年くらいの任期をやる方が多いので、今年の夏までは、どうもやるのではないかと。

●上西 その辞めなかったというのは、辞める・辞めないは、誰が決めるんですか。

●山添 これはですね、検察の中のいろんな人事の組み合わせの問題があるので、この人がこの年齢だったら次はこっちにこういくとかですね、全国の高検の検事長や検事総長も含めた、パズルのように組み合わせがあるんだと思うんです。で、そういうなかで、ちょっと掛け外したんだと思うんですね。ボタンの掛け違いがあったんだと思うんですよ。ですから、12月の人事なので、もうちょっとこう・・・・・・。

●上西 昨年12月。

●山添 昨年12月ですね。もうちょっと安倍政権が描いたような、あるいは検察が抱いたようなですね、人事になることが予想されたわけですけど、そうならなかった。ならないままきて、そうするとですね、このままだと黒川さんが検事総長になる芽がなくなってしまうと。2月に。

●上西 そうですね。もう定年になった後から、夏になって検事総長にはなれないわけですね。

●山添 はい。検事総長は65までできますので、63のうちに滑りこんじゃえばやれるわけですが、そうならない可能性があると。
そこで、稲田さんが、まぁだいたい夏までには辞めるんじゃないかという想定のもとに、これもいろいろ事情があるようなんですけども、そのもとに黒川さんを半年延ばすという判断をしたわけですね。その時にですね……。

●上西 8月7日まで勤務延長して、ポジションを保っていれば、そこから稲田さんが辞めると検事総長になれると。

●山添 はい。そして、そのときに黒川さんとともに検事総長の候補者として名前が挙がっているのが林真琴さんという、今、名古屋高検の検事長をやっている方で、同じくらいの年齢なんですよね。ですから、しかも誕生日がやっぱり接近していますので、当然。
このまま行くと、黒川さんではなく林さんになりそうだと。というか、どうも検察の方は林さんを検事総長にしたいようだったと。
で、そこで黒川さんを勤務延長して、林さんは今年の7月30日が誕生日で定年の予定ですので、林さんも、なれなくして……。

●上西 定年していただいて。

●山添 定年していただいて、そして黒川さんに検事総長になる道を残そうというパズルを考えた。

●上西 検事総長に黒川さんを置けるように、無理やり勤務延長をしたと。

●山添 と言われています。

●上西 で、そういうことがおそらくあるだろうということで、じゃあその勤務延長っていうのは違法でしょっていう話が、この間ずっとマスコミでも問題になってきたし、国会でも問題になってきたわけですね。じゃあそこに行きましょう。

<閣議決定の問題点>

●山添 ちょっと重なるところもありますけど、私のスライドの……。

●上西 「閣議決定の問題点」ですね。

●山添 若干誤字があるんですけども、黒川さんの勤務延長が閣議決定されたのが1月31日。

●上西 今年ね。

●山添 先ほどのスライドで、2月8日が黒川さんの誕生日。

●上西 63歳。

●山添 ということがありましたので、もう直前ですね。直前に勤務延長が閣議決定をされた。
その理由として、誤字がありますが、東京高検の管内で遂行している重大・複雑困難事件の捜査公判に対応するためには、黒川弘務の検察官としての豊富な経験・知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が必要不可欠だと。
検事長ですので、実際の現場で起こっている事件を担当するということではないんですよね。管理職みたいな立場ですので。だから指揮監督のために必要だということを、一応閣議決定では言っています。で、そのもとで、勤務延長をやらせるということにしたわけですね。
2枚目、その次のスライド、お願いします。
黒川さんというのは、さっき言いましたけども、現場の検察官としての経験以上に、法務省、役人として働いている期間の方が長いぐらいの方で、特に2010年の8月には大臣官房に入って、11年の8月に大臣官房長ですね、これ、要するに大臣直轄で、そこで仕事をしているということですので、法務行政の重要な役割を担ってきたと。2016年9月に法務事務次官になられています。
その間に、右に。これだけじゃないですけども、いくつか特筆される出来事としては、小渕優子経産大臣の政治資金疑惑で、ドリルで壊したという事件がありました。

●上西 パソコンをドリルで壊したという。

●山添 そこまでしていたけれども、立件されなかったという問題や、あるいは甘利明経済再生大臣、これも政治資金の疑惑の問題があり、しかしこれも立件されなかったと。

●上西 体調不良で休んで、うやむやにしたってやつですね。

●山添 2017年共謀罪法の強行の時も事務次官でした。
ちなみに、さっきの出世レースを争っていると言われる林真琴さんというのは、共謀罪法の時には刑事局長だったんですね。ですから、国会で答弁に立ったのも林真琴さんで、私も質問したんですが、あの時の金田大臣ですね、金田法務大臣が答弁に立てなくて、かわって何度も答弁する役割を果たしたのが林さんでした。
ですから実際に現場で、国会の質疑なんかも刑事局長として対応したのは林さんなんですが、それを裏で操ってと言いますか、裏でこう・・・・・・。

●上西 その時は、林さんの上のポジションに黒川さんがいたと。

●山添 そうです。事務次官ですので、そういう立場にいたのがこの黒川さんだということです。

●上西 で、今は東京高検の検事長であると。そこで勤務延長がされたと。
はい、じゃあそこまで大体、頭に入ったでしょうか。そこまで、ある程度、前提知識が得られたということで、実際の国会質疑を一つ見ていただこうと思うんですけれども、3月16日参議院予算委員会で、定年の引き上げと勤務延長の違いを説明をされて、勤務延長は社会情勢の変化と関係ないでしょうという話が指摘をされて、じゃあそれに森大臣がどう答えたかという場面ですね。そこを見ていただこうと思います。

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<2020年3月16日参議院予算委員会;山添拓議員 vs 森まさこ法務大臣>

●山添拓議員 森大臣は、検察官にも勤務延長を適用する必要性として、社会情勢の変化を挙げました。その背景として、今のいわきの事例を持ち出したわけです。これ自体、説明になっておりません。
 しかし、そもそも社会情勢の変化、これは勤務延長の理由になるんでしょうか。
 人事院は、2018年の8月、一般の国家公務員の定年を60歳から65歳へと引き上げるべきだと、こういう意見を表明しました。民間企業で65歳までの雇用確保措置が義務付けられた、あるいは若い世代が減少している、雇用と年金の接続が必要だ、複雑高度化する行政課題への対応など、これは確かに社会情勢の変化が理由とされているんですね。
 しかし、定年の引上げと勤務延長とは違います。今問題となっている勤務延長は、全ての職員に適用される定年の引上げとは違うわけですよ。定年の引上げというのは画一的に定年年齢を引き上げるものですが、勤務延長というのは特定の職員について特例的に定年後もその同じ職務を担わせるというものです。その趣旨というのは、個々の業務について見た場合に、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務上、公務遂行上どうしても必要なことがあり得るんだと、どうしても必要なことがあり得る。そこで、公務遂行に支障を生じさせないようにしようというのがこの勤務延長の趣旨ですね。ですから、社会情勢の変化は関係ないんですよ。
 大臣、改めて伺います。検察官も勤務延長ができるとした、その解釈変更の理由は何ですか。

●森まさこ法務大臣 勤務延長制度が導入された昭和56年当時と比べ、社会経済情勢は大きく変化し、多様化、複雑化しており、これに伴い犯罪の性質も複雑困難化しております。このように、犯罪の捜査等に当たる検察官を取り巻く情勢は昭和56年当時と比べ大きく変化している中、国家公務員一般の定年の引上げに関する検討の一環として、検察官についても改めて検討したところ、検察官についても特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要があると考えたためでございます。

●山添拓議員 大臣、今の答弁は刑事司法の基本に反すると私は思うんです。特定の個人にその業務を担当させなければ公務遂行上支障があるとおっしゃいました。特定の検察官にという趣旨だろうと思います。しかし、この人にしか任せられないという検察実務を想定すること自体が私はおかしいと思うんです。検察の仕事というのは法と証拠に基づく、大臣も常々おっしゃっています。事実に基づいて独立公平、これが刑事司法の基本ですよ。
 大臣、黒川氏にしか任せられないような事件処理、これがあるということですか。

●森まさこ法務大臣 解釈変更については、今ほど行ったような考え方について解釈変更いたしました。
 その上で、個別の人事についてのお尋ねでございますが、これについては、勤務上の必要性に鑑み閣議請議を行い、適正なプロセスで人事を行ったものでございます。

●山添拓議員 全然答えになっていないと思うんですね。
 定年の引上げと勤務延長、これは似て非なる別物です。しかし、別物であるにもかかわらず、その制度を意図的に混同させて無理な説明をしようとする。だからこそ、無理に無理を重ねるような答弁がこの間続いているわけです。

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<社会経済情勢の変化は関係ない>

●上西 今、質疑を見ていただきましたけれども、定年の引き上げと勤務延長は違いますという話を山添さんがされて、森まさこ大臣の方は、国家公務員一般の定年の引き上げに関する検討の一環として検討したんだというような話で、ごまかしがあるんだろうとは思うんですけれども、改めてもう一度、これとからめて……。

●山添 解釈変更の理由として、社会経済情勢が変化をしたというわけですけども、もともとですね、いわきの検察官がどうこうという、その問題が黒川さんの勤務延長には何の関係もないと。これはこれとしてあると思いますが、そもそも社会経済情勢が変わると勤務延長が必要になるのかと。

●上西 特定の個人がね。

●山添 そうですね。下のほうですね。これで言うと。そういう議論はこれまで、法務省も、あるいは人事院も内閣人事局も、つまり国家公務員一般についてですね、そういう議論はしてきていないんですね。

●上西 国家公務員の定年の引き上げは、年金とか、いろんなこととのからみで、全体として、職員の定年年齢を引き上げていくと。そういうような社会情勢の変化という話ではない、と。

<勤務延長がある1981年国家公務員法と、勤務延長はなかった検察庁法>

●山添 ええ。条文上もそれはそうだと思うんです。なぜかといえば勤務延長という仕組みは1981年に導入されたわけですが、なぜ勤務延長をさせなくちゃいけないのかというと・・・・・・。

●上西 えっとごめんなさい、81年に導入されたのは国家公務員の勤務延長ですね。

●山添 そうです。失礼しました。国家公務員です、一般のですね。検察官以外の。

●上西 国家公務員は、定年は60だけれども、あれで言うと、あの下の方のオレンジの人たちね。国家公務員の中で、この人はどうしてもこの仕事を続けてもらわなければいけないというので、勤務延長の仕組みが1981年からあった。

●山添 導入されたと。それはこれですね。下のほうです。ちょっと字が小さいですけれども。

●上西 これは現行法ですね。

●山添 現行法です。で、検察庁法は63歳。検事総長以外ですよね、63歳に達した時に退官するというのが原則です。
で、これしか条文はありませんので、勤務延長はないんだ。これは明確なんですが、国家公務員については、下にあります81条の3という条文で、定年による退職の特例が定められていると。
で、ここには赤で書いていますが、職務の特殊性又はその職員の職務の特別の事情から見て、公務の運営に著しい支障が生ずる場合。その場合に勤務延長をすると。

●上西 特定の個人について。

●山添 そうですね。ですから・・・・・・。

●上西 例えばどういう場合ですか。

●山添 これは人事院規則で、どういう場合に延長するかという目安があるんですけれども、その中の一つは例えば「名人芸」だって言っています。

●上西 名人芸というのは。

●山添 国家公務員で、名人芸で仕事をやっているのはどのくらいあるのか、よくわかりませんけど。もう、その人が特技、特技的なものでやっているという、なんていうのか、その個人の特殊な技能を活かした仕事というのがありうるということを言っているらしい。
あるいは職場の環境ですね、離島などが例にあげられていますけども、離島で、どうしてもその後、その場所でやってくれる人がいないと。やれる条件のある人がいないと。この場合に、そこに住んでいる人に、もうちょっとやってもらいましょうというもの。
あるいは、もう一つは大型プロジェクトだと言っています。プロジェクトがチームとしてやってきた中で、途中でその人だけ抜けられると困ると。このプロジェクトが終わるまでは、少なくともやってもらいましょうというようなケースが言われています。
ですから、かなり属人的な、その人の特殊性に着目した考え方だと思うんですね。
ですから、その職務の特殊性や、職員の、その職務の遂行上の特別な事情。条文で書いてあるように。それって別に、社会情勢で変わらないんですね。

●上西 そうですね。

●山添 社会情勢がどうあれ、そういう仕事はあるだろうし、その場合に延長しなくちゃいけないというケースがあるんだと。ですから、それを81年の段階で一般の国家公務員には導入したわけですが、その時点で、検察庁法は変わらなかったわけです。
変わらなかったということは、検事総長なら65歳に、その他の検察官は63歳に、もう、きれいさっぱり辞めると。

<国家公務員法の勤務延長は、検察官については適用除外されていた>

●上西 国家公務員については、あ、違う、検察官については、この国家公務員法の勤務延長は適用除外ですっていっていたのが、その話ですね。

●山添 そうですね。次のスライドを見てください。
これが1981年の国会答弁で、これは2月の、今年の2月の10日に山尾さんが衆議院で引き出した答弁ですけども、示した答弁ですね、過去の答弁で、検察官について、現在すでに定年があると。ですから、今回の定年制、今回の定年制というのは、この時初めて勤務延長が導入されましたので、勤務延長を含む定年制は適用されないんだということを、明確に答弁していると。

●上西 ごめんなさい、この時初めて導入された勤務延長というのは何の話?

●山添 1981年ですので。このときに……。

●上西 1981年の時の国家公務員法ですね。

●山添 国家公務員の定年が導入された。そもそも。国家公務員に、それまでなかった、定年が。

●上西 定年がそれまでなくて、退職勧奨だった。

●山添 そうです。

●上西 それが、定年が60歳になったというのと同時に、勤務延長の仕組みも、そこで入っていた。

●山添 その全体の定年制度、国家公務員に導入された定年制度は、検察官には適用されない。

●上西 検察官は、別ですよと。

●山添 これを、国会でも答弁していますが……。

●上西 ということを当時、国会で答弁していた。

●山添 国会で答弁していたのを裏付けるように、想定問答集もあったと。

●上西 当時はね。

●山添 はい。これは参議院の小西洋之さんが見つけてきたものですけれども、下にありますように、検察官、当時は大学の教員もそうですが、どうなのか、ということで、答えとしては、定年、特例定年、勤務の延長、再任用、ま、勤務の延長ですね、適用除外されることとなるということを、明確に想定問答として作っていたと。ですから・・・・・・。

●上西 国家公務員は60歳定年だけど、検察官は違いますよ、と。それから国家公務員は60歳定年で、例外として勤務延長があるけれども、検察官は違いますよ、ということが明確にあった。

●山添 そうですね。検察官はもともと、検事総長65歳、その他63歳。明確な定年制度があったので、国家公務員の方でいろいろやったとしても、それは関係ないんですと。

●上西 検察官は、あくまでそっちのほうの、なんだっけ、検察庁法が適用されるんだと。

<人事院は2月12日には、検察官は別枠だと答弁していた>

●山添 で、その、次に見ていただきますが、そのことをですね、人事院もそうだと思っていたんですね。
これ、2月12日の答弁ですけれど、今年の2月12日の人事院の松尾局長の答弁ですが、人事院としては、国家公務員法に定年制を導入した際、さっきの1981年ですね、その際、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は、検察庁法により適用除外されていると理解していたと。
検察官は別枠だと言っているんですね。しかも、現在までも同じ解釈を引き継いでいるということを、明確に述べたわけです。ですから、まあ、これ以上、あまり説明してもしょうがないんですけれども。

●上西 これはだから、本来、それは正しい答弁なんだけれども、正しい答弁をしてしまうと、解釈変更で黒川さんの勤務延長をやりましたということと整合性が取れなくなってしまうと。

●山添 取れなくなってしまうということが……。

●上西 というので、そのあとまたこう、答弁が変わってくるわけですね。

<2月13日に政府は、検察官にも国家公務員法の規定が適用されることとしたと答弁>

●山添 はい。それはただちに問題になって、次ですね。
これは2月13日、その翌日の安倍総理の本会議答弁ですけども、ここでさっきの人事院の局長と同じようにですね、昭和56年当時はそう理解していたと承知していると言っているんですね。当時はそういう解釈だったと、安倍首相も承知していると。
で、他方、というところからですね、他方、検察官も一般職の国家公務員であるため、云々かんぬんと、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されることとしたと。

●上西 「こととした」っていうのは、解釈変更ってやつですか。

●山添 いや、「こととした」というのはですね、よく分かりませんよね。何を言っているのかね。

●上西 あの、解釈変更した日っていうのは、実はいつかはわからない?

●山添 はっきりしないです。はっきりしないですが。

●上西 口頭決裁したっていうのがそれですか。

●山添 そうですね。

●上西 それがだから、文書がなくて、いつやったのか、わからないという話になっているんですね。

●山添 そうです。少なくとも法務省がこれまで国会に出してきた文書の中で、解釈を変更したということが書かれているものは一つもないんです。一つもないんですね。

●上西 1月31日に黒川さんの勤務延長は決めたわけだけれども、それは何の根拠があって決めたのかはっきりしないで、とにかく閣議決定で決めちゃって、じゃあ、なんでそういうことができるんだって問われていく中で、この日に初めて、「こととした」っていうのが出てきたっていうことですか。2月13日に。

●山添 厳密には向こうが、法務省が出してきている文書の中で、1月17日だとか1月21日だとか24日だとか、いくつかの文書があるんですが、その中でも、適用されるという言い方はしているんですよ。だからあの……。

●上西 国家公務員法の規定が適用される。

●山添 そうですね。黒川さんの人事をどうしてもやらなくちゃいけないと、2月8日が迫っていますので、それに目がけて、勤務延長の規定を適用できることにしなくちゃいけないということで、法務省の役人の皆さんも、知恵を絞ってですね、やり方を考えたわけですね。
考えて、考えて、じゃあ、あれが使えるんじゃないかということで、勤務延長の規定を使えることにしたんだというのが、この安倍総理のこの時の答弁にも、よく表れていると思います。この時は……。

●上西 官僚が用意しているわけですよね。答弁書はね。

●山添 そうです。ですが、その時には解釈変更したとは言わなかったんですね。それはなぜかといえば、法務省としては、解釈変更をしたというつもりはなかったと思います。

●上西 うーん。

●山添 なぜなら山尾さんに言われるまで、81年にあんな答弁があるなんて知らなかったと思われるからです。それは森大臣自身も、そういう答弁、会議録、承知していませんと言っていましたから。山尾さんに最初に示された時にですね。解釈の変更だとは、露ほども思っていなかったんだと思うんです。

●上西 ごめんなさい、よくわからない。その前日の松尾さんは……。

●山添 これ、言っちゃったわけですね。

●上西 これは、方針に、こういうふうにごまかそうという方針に反して、言っちゃったわけね。

●山添 こういうふうにごまかそうという方針が定まる前に言っていると思います。ごまかそうという方針は、翌日の安倍総理の答弁だと思います。

●上西 なるほど。

●山添 もう、ごまかしきれないと。81年当時の答弁がありますから。それとの矛盾は・・・・・・。

●上西 81年当時の答弁がありますよね、と示されたうえでの、この2月12日の松尾さんだったわけですね。

<矛盾を問われて2月13日に人事局長は答弁を修正>

●山添 はい。ですので、人事院としては、もう、こう言うしかない、その時点ではまだ、たぶん、答弁調整は、できていなかったんでしょう。
しかし本会議で安倍総理が問われるということになって、本会議の答弁の場合は、代表質問の原稿、全部、送りますので、質問、何を言われるかわかっていますね、わかっていますので、答弁の原稿も書いてくるわけですが、その時に整理したのが、これなんだと思うんです。

●上西 じゃあ、2月12日から13日に、答弁の内容が変わった。

●山添 はい。で、それはさらに突っ込まれて、下にありますように、17日には森大臣が、「これ、いつなのか」と。「いつ変えたんだ」ということを追及されて、1月と。1月のいつなのかと。

●上西 都合のよいように1月と答えたけれども、じゃあ本当かと。

●山添 ええ。1月にやっていないと1月31日の人事に間に合いませんので、1月になるんでしょうが。

●上西 閣議決定より前ということですね。

●山添 そうですね。で、こう言ったと。

●上西 ということにしたと。

●山添 そうなると松尾人事局長ですね。

●上西 2月12日の答弁と、整合しないわけですね。

●山添 これが問題になる。ということで、またこれ、当然、追及されてですね、修正すると。2月19日に至って、2月12日の答弁は修正するというふうに言ったと。
で、これは人事院として言っちゃったけども、そもそも検索庁法の解釈は、所管しているのは法務省なので、法務省がやるものだと。法務省がやるべき解釈を、自分の方で言ってしまったものでした、というのが一つの理屈ですね。
それともう一つは、だけれど、そうは言っても人事院として言ったじゃないかと。今も解釈が変わってないと言ったじゃないかと。
これはもう、答弁修正のしようがないので、「つい言い間違えた」と言うしかなかったんだと思うんですね。

●上西 「つい言い間違えた」ということによって、12日の答弁はなかったものにするというか……。

●山添 撤回された。

●上西 撤回をした、と。

●山添 しかしまあ、この流れ自体がもう……。

●上西 非常に不自然であるという話ですね。次、行きますか。

<いつ解釈変更したのか>

●山添 それで、じゃあ、いつやったのか、その文書はあるのか、根拠はあるのかということが当然、問題になりますけれども、これを追及された森大臣は、「私は口頭で決裁をしています」という、荒唐無稽な話が出てきた。というので、そんなことあるのかということが、まあ突っ込まれたわけですね。
で、口頭決裁と森大臣は言っているんですけど、私も質問で聞いたり、あるいは法務省の役人から説明を受けたりして思ったのはですね、これは決裁って言っているんですけど、決裁じゃないですね。口頭で確認したっていう程度のものを口頭了解とか言っているものもある。

●上西 決裁って、責任ある立場の人がハンコを押すんですよね。

●山添 はい。で、口頭了解のことを口頭決裁と言い換えて、決裁を取っています、と。

●上西 ちゃんとしたプロセスを踏んでいるんだというような。

●山添 それだけの話なんだと思うんです。
だとするとですね。法解釈の変更、かつ、今回のように検察の上層部ですね、しかも安倍首相に近いとされる人を続投させるための解釈変更を、文書もなく軽々しくやって良いのかということになると思うんです。
で、それは良いんだと。まぁそこまで明確に言っていませんけども、そういうことですね、口頭で足りるんだという認識を示しているという意味でも、これはもう大問題だと思いますし、これはもう、先ほど言ったように、そもそも解釈変更だと思ってなかったと。
解釈変更ならそれなりの手続きを取るべきだったと思うんですが、取らずにやってしまったものですから、やってしまったことを、あとから説明しようと思えば、後から証拠を捏造することはさすがにできずに、「口頭での決裁なんです」と、そういう説明になっているんじゃないかと思います。
で、それ次のスライドもお願いします。

●上西 でも黒川さんの勤務延長を、これ、無理矢理やったら当然、国会で問題になるということは分かっていたはずですよね。

●山添 と思うんですけどね。

●上西 国会で問題になっても、もう、そうやって、よくわからない説明で乗り切ろうと思っていたんですかね。

●山添 そこはですね、次のスライドで出しているんですが、一応、手続きを踏んだつもりなんだと思うんです。
解釈変更だというのは、そのつもりが、その認識は全然なかったので、新たに検察庁法22条ですが、検察庁法を解釈したと。新しい解釈を、今、初めてやったという位置付けで、それなりにやったんだと思うんです。
出てきている文書は、ここにある3点なんですが、メモが、1月16日のメモっていうのが、あったりですね、法務省が内閣法制局に……。

●上西 ごめんなさい、この1月16日って、これ、今年ですかね。

●山添 今年です。

●上西 2020年ですね。

●山添 20年1月16日のメモ。こういうタイトルになっている文章があってですね。
その文書と、それから二番目が、法務省が内閣法制局に問い合わせをしていると。こういう解釈にしようと思うけれどいいですかという、お伺いを立てているんですね。で、内閣法制局は、「特に意見なし」という返答を返していて、それが認められたと。
それから人事院に対しても照会文書を作っています。(1月)22日に法務省から人事院へ、(1月)24日に人事院から法務省へと。これ、この3つ目の文書はちょっと怪しいんですけども、日付も入っていませんでしたので、怪しいんですが、一応こういう文書を出してきているんです。
ですが、そのいずれの文書にも、「従来こういう解釈だったけれども、今度からこうします」ということは、書いてないんですね。
ですので、法務省としてはもうちょっと素朴に、この条文って、こう解釈できるんじゃないのっていうことをやれば・・・・・・。

●上西 それだけやれば大丈夫だと。

●山添 それだけやったら大丈夫だと思っていたんだと思います。

●上西 でも、「従来の解釈はこうでしょ」ってことを、野党が堀り出してきたから、説明が難しくなった。

●山添 で、そこからまた、右往左往しだしたということだと思いますね。

●上西 で、その右往左往の中で、森大臣の暴言が出てきたと。

<森まさこ大臣の「逃げた」発言>

●山添 はい。じゃあ、それもいきましょう。
先ほどの話で、社会情勢の変化が理由だということを力説してきたものですから、社会情勢の変化といっても、もうちょっと具体的には何かということを問われて、これ別に、聞かれてないんですけども、勝手に答えたんですね。で東日本大震災の時……。

●上西 例えば、とね。

●山添 例えばといって、で、理由なく逃げたと。理由なく釈放して逃げたということも含めてですね、言ったと。で、これをまた、上塗りしたんですね。3月11日に衆議院で聞かれて、こういう答弁……。

●上西 山尾志桜里議員に対してね。

●山添 そうです。3月9日が小西さん……。

●上西 こういう発言をあなたはされましたけど、事実ですかと。

●山添 「事実でございます」という答弁をしたと。で、しかし、それは事実に反したと。個人的な見解だったと。

●上西 「個人的な評価」とかね。

●山添 個人的な評価を、それと明らかにしないで述べたことは不適切だった。だから撤回したと。

●上西 法務省の認める事実と違う個人的な見解を述べてしまった。で、結局、その個人的な評価は撤回されないんですかっていうような話をしたら、撤回はしないんですよね。

●山添 撤回はしないですね。まぁ事実上、その後の国会審議の中で、事実上撤回したというような状況になっていますけれども、なかなかそれは誤りだとは認めなかったですね。
ついでに次のスライド、これも本当に字が小さくて恐縮ですが、仙台高検が当時の状況をまとめた報告書があり、この中にはいわき支部の状況について、かなり、それなりに丁寧にまとめているんですね。
当時は原発事故があってもう大混乱だったと。私も国会に行く前、弁護士でしたけれども、福島原発の被害賠償の裁判とかやっていたんですが、その中でいわきの市民が国と東電を相手に起こしている裁判っていうのも担当していたんですね。
いわきって割と早い段階で避難の対象から外れてですね、要するに放射能の汚染はこう、北西の方向に広がっていましたので、福島原発より南のいわきは、マシだったんだということで言われたんですが、しかし、当時の実際の状況は、情報が入らない。

●上西 直後の状況ね。

●山添 放射線についての正しい情報もないし、汚染の状況についての正しい情報も得られないと。しかも、ライフラインも寸断をされるという状況で、とにかく大混乱で、半分くらいの方が避難を余儀なくされたということで、もう町としての機能が立ち行かなくなるような、そういう状態にまで至っていたと。
ですから、捜査を続けようと思っても、参考人、証人、こういう人を呼び出して捜査するということ自体が難しい。もう、町として機能がかなり損なわれているような状況だったと。
だからこそ、裁判所も郡山に一時的に移転し、検察も一緒に移転しましょうということになった。それ、1週間のことですけど、そういう意味では、こういう報告書まで一応、作っているわけですね。そこで事実は明らかだと。

●上西 森大臣が野党時代にも、「逃げた」という発言をして、当時の民主党政権も、実はこうだったんだっていうことは、何回も答弁はしてるんですよね。

●山添 だから、そこでも事実関係についての正しい認識をお持ちではなかったし、大臣になってからも、しかも、関係なところで持ち出したっていうのもですね、私はふさわしくないと思うんですね。
特に、「事実です」と、「逃げた」「理由なく釈放して逃げた」「事実です」と言ったのは、3月11日ですよね。今年のですね。
そういう意味でも、これ、検察官を侮辱するということで大問題になりましたけども、それにとどまらず、被災の状況、3.11、東日本大震災と原発事故の、その当時の事実についての認識を、誤ったまま引きずっているという意味でも、私は、やっぱり大臣としてですね、大きい問題なんじゃないかと思いますね。

●上西 はい。で、そこまでが前半。

●山添 はい(笑)。

(以下、書き起こし後編に続く)