2021.03 良かった新譜

12枚、A→Z順、日付はリリース日です!
いつにもましてうるさいのばかり

Brand of Sacrifice - Lifeblood
(Album, 2021.03.05, Deathcore)

捨て曲一切無しの壮絶なシンフォニック・デスコア。デスコアというジャンルは、(物によるだろうけど、)陶酔感ではなく、「カッコいいところをカッコよく聴かせる音楽」故に、作曲も演奏もメリハリを意識し続ける集中力の勝負だと思う。が、一方で、完成されたフォーマットが存在するために、「なんとなく」で曲を完成させやすいジャンルでもある。「なんとなく」を排せば排すほど完成度が高まる(当たり前だけど)。
あえてBoSを「勝った」とするならば、実質的な前身The Afterimageのプログなリフを繰り出し続けるスタイルによって鍛えられた力をデスコアに持ち込んだのが勝因で、アイデアや新たなフォーマットだけに頼らず傑作を生み出すのに必要なのは「集中力」なんじゃないか、という気付きを与えてくれた、素晴らしいアルバム。


Dreamshade - A Pale Blue Dot
(Album, 2021.03.05, Melodic Death Metal/Metalcore)

前述のBrand of Sacrificeにも共通するが、独自性や脈絡のなさ、突飛な発想ばかりを"狂気"という言葉で評価するのは簡単で、出来上がったものは真っ直ぐであっても、そこに注いだ心血、病的なまでの熱意も、同じく「異常」と言い切りたい。「シングルカットできるクオリティのキャッチーなキラーチューンだけでメタルコア / メロデスのアルバム作ってくれ」という、全人類が一度は抱いた、幼稚で、でも崇高な願いの結晶がここにあります。このアルバムを聞いて、あなたはどう思いますか。(僕は、「おもしれ〜」と思いました。)


Drumcorps - Better Days
(EP, 2021.03.12, Cybergrind)

CODE ORANGEのリミックスやメンバーとのコラボレーションでも活躍しているAaron Spectreによるメタル+ブレイクコアプロジェクト。1stアルバムリリースは2006年と、キャリアは決して短くないが、バグった編集感覚と過剰なエクストリームさを受け入れる土壌が(CODE ORANGEのメインストリームでの評価などもあって)整ったこともあり、2021年になってようやく時代が彼に追いついたと言えるのではないだろうか。Cybergrindは、今最も注目すべきジャンルの一つだと思っています。


Gas Chamber / Black Iron Prison - Public Humiliation Ⅱ
(Collaboration Album, 2021.02.26, Powerviolence / Grindcore)

22分ワントラックのパワーバイオレンス組曲。カオティック〜トライバルなグラインドコアを1つのテーマで接続していくというユニークな構成がカッコいい! 終盤の、ドラムとボーカルだけで畳み掛けるConverge「Phoenix in Flames」ぽい展開が最高。


Help Me Plyz - Help Me Plyz
(Album, 2021.03.17, Rap Metal/Trap Metal)


파란노을 (Parannoul) - To See the Next Part of the Dream
(Album, 2021.02.23, Shoegaze)

Rate Your Musicではチャート1位獲得、世界中のリスナーの間で話題になっている韓国のエモ・リリィ・シュシューゲイザー。映画やアニメの本編音声の大胆なサンプリングは、まるで物語のクライマックスのような高揚感...というよりは、投稿者の趣味全開で作られた無茶苦茶な選曲のMAD動画のような歪なエモーショナルさを振りまく。10分に渡る大曲#4をピークとして、後半はやや盛り上がりにかけるが、それすらも語り手の歩みを映しているかのように生々しく迫る。「リリィ・シュシュのすべて」の後にも、雄一の人生は続いていく。激情が諦念へと移り変わる虚しさ。肥大した劣等に火をかける燃料すらも尽き、煙だけが少し残って、やがて消えるように、決してドラマチックとは限らない幕引きを見事に描いた一枚。


SAIDAN - Jigoku: Spiraling Chasms Of The Blackest Hell
(Album, 2021.03.05, Black Metal)

「SAIDAN」というバンド名、「Jigoku」「Noroi // Zotto suru」「Kanashimi」という曲名に、日本文化からの色濃い影響が見て取れますが、興味深いのは「J-Rock chord structures」を取り入れてると語っているところ。一聴するとストレートなブラックメタルだが、#2 3:10~、#4 4:30~など、確かにアニソン的な細かいコード・プログレッションが特徴的で、これが絶妙にキャッチーなドラマチックさを演出している。


Sugar Wounds - Calico Dreams
(Album, 2021.03.25, Screamo + Shoegaze)


Tempalay - ゴーストアルバム
(Album,2021.03.24)


宇多田ヒカル - One Last Kiss
(EP, 2021.03.09)

初日に鑑賞してから、3月は完全に"エヴァ月間"だったので、今月、新曲で一番聴いたのはもちろん「One Last Kiss」でした(でも、新曲以外も含めると「Komm, süsser Tod 甘き死よ、来たれ」の方が聴いてた)。「One Last Kiss」はもちろんのこと、まず新劇『序』の時点で、25歳の時点で(!)、『シン』までの耐用年数を余裕で超える「Beautiful World」を書いてたのが凄すぎる。てか、宇多田ヒカルのデビューが1998年、『序』公開が2007年で、超単純に考えるとキャリアの半分以上がエヴァと共にあることになるのか...。


田所あずさ - Waver
(Album, 2021.01.27, Anime / 声優)

良すぎる。前作までを聴いていないのでハッキリとしたことは言えないけれど、初のセルフプロデュース&サウンドプロデューサー神田ジョンの功績か、まとまりのあるサウンドに仕上がっており、尚且つ粒立った良曲揃い。特に#5「クリシェ」は、個人的に思い出深い初期LiSAさんのアルバム曲を彷彿とさせる名曲。人は14歳の時に聴いた音楽を死ぬまで聴き続けるとは良く耳にする話で、自分にとってのそれはThe UsedやFinchから連なるコマーシャルなスクリーモになるんだと思い込んでましたが、このアルバムを聴いて、自分の骨身にはLiSAさん印のロック・アニソンがすっかり芯まで染み渡ってるんだなぁと気付かされました...。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?