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父親

カフェで期間限定の苺パンケーキを食べた。
お母さんが少しだけ優しくなった。
おいしいご飯を作れるようになった。
好きな人と大好きって言い合えた。

こんなに満たされていても、突然いなくなっちゃいたいとか思うのってきっとあたしがおかしいからだよねっ。 て、今日も落ち着かせる。
大丈夫、あたしがちょっと人よりもおかしいから
こうなってるだけで何も絶望することはないの。
あたしがこうなったのは、全部
ある日お父さんが家に帰ってこなくなったから。
ずっとお父さんとお母さんが喧嘩してたもん。
 分かってはいたけど、分かってなかった。
「じゃあ、行ってくるね」っていつも通りの挨拶と笑顔、決まったスーツ姿にかっこいい父親。
なんら変わりのない日常だったはずなのに。
その日、学校から帰るとお母さんがお父さんのクローゼットがある部屋で泣いていた。カーテンを締め切って真っ暗な部屋で。
「戻ってこない戻ってこないなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
正直、その時のお母さんが怖かった。
どうしたらいいのか分からなかったので
とりあえずリビングに戻り、チューペットを半分に割って幼い弟に渡した。
あの頃幼かった弟は何も知らない。
お父さんの記憶すら曖昧で、今でもたまに出てくる言葉は「お父さんはクズだから」
違う、違うんだよね。
お父さんはちゃんと私達を愛してくれていたし
いろんな景色を見せてくれたよ。
でもそんなの言える訳もないからお父さんとお母さんが離婚して以来、何も言及していないけど。

いつか弟が大きくなったとき
あなたのお父さんはちゃんと私達を愛してくれていたんだよ。って伝えてあげたい。




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