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いつでも準備はできてんぞ

何かが起こればトピックになる。
もちろん世間話の種になる程度のものでいい。
よく思い出すのは通勤時間に起こった以下の話。



混み合う地下鉄の駅で知らないおじさんと揉めかけた。
スーツを着た風貌、見るからに会社員と思わせるには十分なおじさんだ。
乗り換えがシビアな通勤時間だったので皆々がそれぞれの道を急いでいた。
それなのに前述のおじさんは道行く私をわざわざとっ捕まえて「俺の前を歩くな」と文句を言った。

は?まじウケるんですけど。と心の中のギャルが申し立てた。
そしてギャルを押しのけて本質である血気盛んなところがうっかり出てしまい、おう来いよ、やったるか?と思った。
乗り換えできなかったらどうすんだよ、走ってんだよこっちは、という社会人としての自分もいた。

そのときの自分はは乗り換えに成功しなければならない方の気持ちが強かったので「いつからこの道はあなたのものになったんですか?」と返した。
そのあとおじさんはなんか言ってた。後ろで。怒ってそうだった。
乗り換えに成功してしまったばかりに聞き取れなかった。
この双方の怒りと一方的な言いがかり。
どのペルソナも、割に合わねえだろ、と声を合わせた。


まあ、おじさんからしたら見知らぬ女が俺の前を歩いていたんだろう。
しかしそのとき私は「こいつなら言い返してこない」と思われたんだ、と怒りのボルテージが最高潮まで上がった。
これは仮説でしかないが、あのおじさんは相手が私ではなく屈強そうな男性ならとっ捕まえただろうか。
なめられてんな、と腹が立った。
おじさんの前には人がいっぱいいた。
私は選ばれるべくして選ばれたんだろうなと思った。
問答無用でむかついたのでせめてなめられない見た目にしようと思ったし、そういう輩に対する態度はよりふてぶてしくなった。


こんなことはままある。
若い女というカテゴリに括られただけで、もしくは女というだけでなめられる。
そんなことがあっていい訳がない。
よく聞く話だろうか。そうなのだとしたら、なぜよくある話だと思うのか、考えたことはあるだろうか。
あれは人を選んでいる。

今考えると遅刻するも何もどうでもいいから、いくらでも理由をつけてやり合えばよかった。
ぶん殴られてしまえば警察沙汰になる。引き倒されるでもいい。
おまえらそこまで考えてやってんの?暴行だ。犯罪になるんだよ。
考えてないだろ。だからなめてるって言ってんだよ。
いい訳ないだろ。

いつでも準備はできている、とはそういうことだ。
話のネタにはなるなと考えてしまった。
この人に殴られたとて大したことにはならないと、私もなめていたのかもしれない。


どうかな。


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