TomoPoetry、石をつみあげよう。
三千万名を箱に入れて
そのまま忘れてしまった
映画のなかで恋をした後
夕食は釘の味がするだろうか
過去がならぶ
ダイニングテーブルクロスは赤い
痔が耐えられないので
歴史の椅子がカタカタ鳴っている
あなたの痔のいたみと
三千万の
いたみと
どうちがうのか
地殻がパラパラとはがれ落ちる
あなたはわたしの背に爪たてながらいう
いたみはフォークとブロッコリ
ならんで凍えていく
あのいたみをおぼえている
ひとは
経験していないいたみをおぼえる
父に鍬
母にたくさんの指
記憶がとだえるのはそこだ
そこにわたしは立っている
大理石の床にてんてんと
あなたが残した食事と
生活から滴る
永遠の水音
ブルーのナプキンからの波しぶきのように
潰れた苺のような終わりゆく星
わたしは癒されることのないあなたの傷と
乾いた欲望の跡をおぼえている
今日も
風に鳴っている
あなたの内臓 だれが吹いているのか
父の血と母の声 どこから流れているのか
冷たい陽射しをかきわけつつ
あなたは銀座をあるく
あるく群れのひとりの
あなたはいつか死ぬだろう
三千万のひとりとして
わたしが もし
そのとき生きていれば
石を
ひとつひとつ
つみあげよう
あなたのためでなく
わたしのためでなく
重さも形もない石
その意味をこえていく
だれかのために
たくさんの骨が砕けた地表の
銀座の
陽あたりのいい
交差点に
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