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TomoPoetry、さくらいろの記憶。


あちらこちら
白と水玉と
ピンクの川
ゆらりゆらり
流れているのか沈むのか
光は水底に溜まり
わたしの頭にも
吹雪のようにちりぢりの記憶が
黒く白く
赤く
句読点だらけに
残っている

なにも知らない風情の空を
フラミンゴの雲がとんでいく
ふらふらしている
アフリカの空
心もとない
銃声で
波打ち
わたしは現在にもどる
右に左に大きくずれる空
血にちかい桜色だ
過去はいつも

あなたの輪郭の
内側を満たすピンク
この季節
ときどきの
みぞれや冷たい霧雨で
あなたの肉体は
真横に切断された星のように
透きとおった氷の青

わたしはあなたを待ちつづけることができるだろうか
あたらしい季節を
舟に眠らせ
銀漢に流すことで

そろそろ記憶は
カラカラ音を立てて終わる
燃えるモノクロの頭
屈折したレンズ
閉じたままの
プラネタリウムの窓に
プリントされたさくら
空がない道の
桑にもあたらしい芽
オレンジの果実のように
百年前のように
昨夜のように
ひとつの記憶

江戸川に隅田川にも
ピンクの雨が降る
行き場を失った
紙のヘルメットと
青テントの装甲車が
市街戦のなかをさまよう
あたらしい記憶が
ピンクで覆いつくす
青い星には
さくらがまだらに
わたしたちのかなしみを隠すように
はりついている

毎夜
海のそこをながれるさくら
アネモネをめぐるように
夜 ピンクの光は
空にほそい水路をつくる
清らかに泡立つ水路
黒い血があふれる水路
今日散ったさくら
今日死んだむくろ
わたしが脚洗う川も
凍えている
時のながれに
降る時の雫は
凍った水晶

夜わたしたちのたましいは
散歩にでかける
あたたかく流れる
記憶にそって
だれも聞いていない水音
雫となって
一日を
確認する

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