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語ってほしい、ユーリー(ユーリーのはなし②)

朝 わたしのとなりはびっしょり濡れている ベッドからのびるのは 青い歴史の時間 ユーリーは イルカのように 星を叩き飛んでいった あたたかい水のながれる ふるさとへ あおい筋の カレンダーを織ってもどして きみのほそい今日の呼吸を 深く吸う 藍色の星の いのち わたしは要らないのか もういちど訊く わたしは要らないのか 海が泣いている だれにも読めない あなたとわたしの罪 風の音は 罪のふるえ きみが体験しなかった望み わたしが自覚しなかった望み 海のふるえが聞こえる 深い底から きみの姿が揺れる ひかりはさらさら降る 毛の花弁のように ひかりがあふれる時 わたしは読む ながれるような ユーリーの指を溶かした 輝く銀色のインクで書かれている ユーリーからの手紙 わたしはユーリーのメロディに合わせうたう 歪に列んだ足跡のように ユーリーの 軌跡を追っていく 上へと上へと ゆれる泡のあいだを 羊は死んでくれた ユーリーは言った もう闇は来ない あの羊はユーリーかもしれない

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