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Tomo Poetry、安らぎの陽射し。

霞の隙間からきみは飛ぶ
手には
雲の刺青
コバルトブルーの声が
国にひびいた昼
きみが入りこんだ迷路の
静けさ
きみの記憶から
ざわめきが消えていく

きみが溶けこんだ緑の
四肢は
きみを愛撫し
きみに入りこみ
きみをひきあげる
緑から群青に変わる
時のすきまへ

若葉と蔓が伸びたきみの
血でつながる家系図は
すり切れ
危うく
天を泳ぐものを掬おうと
雲をかき回す
歴史の櫂のように

海流が身体をからっぽにするにまかせるきみ
寝床は
青く染まっている
干された糸のように
絡み合いながらきみは
地球をめぐる衛星を見ている
子午線を枕にして

シルクロードを歴史がながれ
葬送の管楽器が
細く鳴る時まで
きみは安らぎのなかで
待っているといい

星の死をみおくってから
きみは出発する
きみを孤独がむかえる

きみは思いだす あるいは
期待する
あたたかさが一緒によこたわることを
ダイヤモンドのような空の
透明さが
きみを凍らせることを
きみがいない朝
宇宙がきみを満たすことを
期待して

戦場をはしり回った画家
その足跡
小説家の裂けた喪服
あたらしい芽のような
うぶ毛
枯れた蔓のように
絡みあう手脚
死のあとに吹く風のような
安らぎ

きみの宇宙の
理論の枠からながれおちる時間のような
ひかりの波
そこからきみは
もどってくる
にこやかに

フライパンを暖めて卵を落とす
パンをトーストする
スプーンや皿を洗う
宇宙はどこまでも濡れてしまう

生きていることの楽しさは
久しぶり
きみの手に
甘いパンとトマト

きみが身を投げた霞ヶ関のビルは
霧に濡れている
葡萄のかおりの星を
のせる手のひら
生の安らぎの日

窓の外を
トルキスタンの風
きみの寝床を
萌黄色の風が何度も
かわかしていく

きみは外出する
命が安らぐ時のなかへ
きみの内側に陽があふれ
歌がながれる
きみはすでに
透きとおり
わたしはきみのリズミカルな
呼吸を
肌に感じている
なにも見ることなく

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