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TomoPoetry、春のかなしみ。


春が空に鋏を入れる
細くほそく
子午線にそって
中世の旅人の足跡の速度で
かがやく刃を
やさしく滑らしていく

万華鏡の黴
数世紀息をこらしていた下着
青い石のボタン
満月を埋めた眼
傷つけないように
はだかにする
ときに
気づかれないように
心を奪われないように
キスをしながら

歴史のなかの春
口にひろがる

スカイブルー
昨夜の死者の
眼に見た宇宙
まんなかにミントの星
舌にのせる
あまいオーロラが揺れる
銀河をめぐる風は春
さくらの下に列をつくる
ライトブルーの影
先頭は
アンドロメダで
コバルトに溶けている
声は届かない
振りかえらない
名を無くしたものの道
春の風が
時間と色彩を
かすかに震わせる
あたかも
過去の涙を再現するように

わたしはたどる
首に風を感じながら
冷たくあたたかく
はるかな過去の香り そして
まだ開かない
真っ白な歴史書の
頁がめくれる音のように
わたし自身が
存在しない時間の
風を
瞼にかんじながら
星の結晶を散らす

わたしに青が
沁みていく春
透きとおったブルーになりつつ
死を思いだすだろうか
炭酸水をのぼっていきつつ
水の冷たさを感じるだろうか

春の墓地で
ライラックがゆれている
花が咲かない国で
ひとびとの眼は紫
かなしいカシオペアの色

あなたは口笛を聴く
青い空から
挨拶のように
心はそこまでのぼっていけない
透きとおった星
その遠くに
すべてのブルーを溶かした
ミントジュース
星が湧きあがる
誰もいない天で
笛が鳴る
あなたは泳ぎながらのぼっていく

涙のコバルトの花を
春風が
まきあげ散らしていく


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