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拳銃と.....

日本に経験なくて、東南アジアで初めて経験したのがいくつかある。

50年近く前のことだ。
学生のわたしは『ミッドナイト*エクスプレス』という映画を観た。トルコで大麻所持で逮捕された男が終身刑で刑務所に入る。絶望的な中で、所長を壁に押さえつけると、洋服掛けの金属が所長の首に刺さる。彼は所長の服を着てトルコからイスタンブール、そしてギリシャへ脱出するという、実話である。
イギリス人のガールフレンドや、カナダ人とアメリカ人の友人に聞くと、イスラム教では麻薬は殺人罪の次に重いから、絶対買うな❗️と日本を離れる前に言われた。

たしかに、インドネシアに到着してから、砂辺に寝そべっていると、あるいは食事をした帰り道、「アッシッシ」と言いながら近づいてくる男が必ずいる。アッシッシ、ハッシッシのことだ。
しかし、どの男もいかつく、目付きが鋭い。普通の人間でないとわかる。多分、相当悪い方か、警察関係か、とわかる。

逮捕して、その親に身代金を要求する警察がいると聞いていたので、NO!と答えてはなれていた。

夜行列車を待っていると、警察官だという男が、拳銃をくるくる回しながらやってきた。荷物チェックをするという。
わたしとガールフレンドの荷物を開けて、手では触れず、拳銃の先でひとつひとつ持ち上げる。
特にガールフレンドの下着は長い時間をかけて、拳銃の先にひっかけて笑っている。

わたしは意識して彼から離れたベンチに座っていた。こちらを挑発して、ともかく逮捕したいというのがわかった。

何時間か、彼はカラフルな下着を拳銃に絡ませ、こちらを見ていやらしい笑いをしていた。

そうしているうちに、バンドン行きの夜行列車が来て、わたしたちは彼からはなれることができた。

その半年後、わたしは自動小銃で背中を突かれながら、全く言葉が通じない兵士たちにかこまれるのだが、まだ、その恐怖はどんなものか知らずにいた。

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