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よあけの前に


灰色の空気
色なくくすんだ風
そこを歩く

どこへ向かうのか
背がななめのきみは 
こたえない
灰と水を踏むわたしは
何も
知らない
何も知ろうとしなかった

今朝もきみは
その道を踏んでいる
赤いヒールを捨てようかなと思いつつ
コートと
合成皮革のかばんを
捨て去ろうと思いつつ

わたしは もう
凍えている しかし
はだかだ
風も声もつき刺さる
わたしの
色がするところ
わたしのなかの
かくせないところに

そこでは
死んだ彼のかおりがする
もういない彼女の
声を風がはこぶ

あと
すこしだ
ひかりと風をつくった
その口が語る

その風を
ほおにうけて
わたしは角をまがる


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