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TomoPoetry、消えかけた記憶の出発。

角を曲がる
影にはいる
アルバムを閉じる
黒い壁に囲まれた
そのなかにガラスの部屋
一瞬の記憶
笑う目
日焼けした手
そこであなたは産まれた

毎晩見る白い壁
赤い
箒星を従えて
踊る少女
青い陶器には
パッションフルーツのイエロー
ランブタンのホワイト
種は
銀河系の回転に
スムーズに入る
そこからは
誘惑の道
一度舐めた果実は
あなたのなかで
種子を植えていく
喉に
胃に
生殖器に
芽が出るのは
あなたの欲望が
満たされない時
乾いて
布に包まれ埋められる頃
水道管に
指と生殖器を入れ
ドーム球場で奇声をあげる頃
牛の角
虎の牙
あなたはいっしょに
記念物として
掘り出される
銀のワイングラスを
握った
姿勢で

そのワイングラスから
あなたの額に
落ちた三滴
三十億の
空っぽの眼孔が
真っ青の
海になりつつある
島の奥に
真っ赤な常緑樹
洞には
カラフルな極楽鳥
あなたは
かれのいのちの声を聞く
白い盃が
死骸の
頭に
河の水を注ぐ
死骸と花束と
糞尿と
赤いマンゴーが
ながれる水を注ぐ
盃は紅く満たされる
盃がからになる頃
死骸は
ピンクの花を
咲かせ
甘い香りで
数千年前の納骨堂を
満たす
あなたの唇に
一千年前の風が
吹き込まれる
口から口へと
すべてを凍らせる風
すべてを溶かし
炎をあげさせる風
あなたの口から
胞子が飛んでいく
純白と紫の綿毛
何千年か化石であった胞子
口から出るとき
ちいさく
ファルセットがながれる

あなたに伝える胞子の歴史
あなたを受け入れるあかい花の秘密
あなたのいのちになる
一瞬の

あなたは思いだしたろうか
過去を輪切りにすると
どこでも
生まれる前のあなたが
星を抱えている
赤ん坊のきみが
銀河系に回転を与えている
まもなく
次の角で
あなたは
はじめて少女の下着を見る
笑うスヌーピー
赤いスヌーピーは
少女より
少し速く進んでいく
少女を見失ったとき
何かが落下する
赤い林檎のような
巨大な星

あなたの
はじめてのセックス
そのあと
カタカナの肢体
埋めても埋めても
芽がうまれる
溶ける川に
芽をながす
川からあがり身体を乾かしたあなたは
出発する
枯れた欲望
灰になった誇り
小瓶に
三滴の

名前は
まもなく忘れ去られるだろう
小瓶から三滴
落ちるとき
奇跡を
思いだす
紙魚と黴と埃の
歴史に
輝いているひかりを

あなたは飯田橋地下で
濡れた桜を
肌に擦り込みながら
ながれる
あと三千年

花びらを二、三枚
ポケットに入れておくといい
あとで
思いだす記憶の
入り口かもしれない

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