TomoPoetry、粥。
粥をすくって
スプーンから喉へ流しこむ
南西諸島にしみ込むスコール
地に足を埋めたマングローブ
千切った地球が
きみを通過する
チンギスハーンの剣のように
炎がひろがるジャングルのように
宇宙をながれゆく銀河系のように
きみは飲む
熱をもった時間を
青白く凍った歴史を
あかくながれるいのちを
スプーンには
あおい星とあかい河
きみを焼きつつ
あたらしいいのちを
流しこむ
粥
七草粥
傷だらけのきみは
粥だけで生きる
木の器とスプーンを洗うと
おびただしい魚が
排水管にすいこまれる
夜
からっぽの器に
雲があふれ
雨と雪そしていのちが
降りつずける
きみが眠りの底にいる時間
朝には
流しには海の泡があふれ
魚が跳ねる音が聞こえる
お椀で
海へ返すべきは返す
きみの海を満たすと
きみは粥を
きみのものでない火の上で
ぐつぐつといわせる
あたらしい器を
粥で満たし
きみはあたらしい時間を
スプーンですくっては
舌にのせる
眠っていた時間の味
人類が生まれる前の
燃える雨の味
一杯の粥で
きみはきみの一日と
宇宙のはじまりから
終わりまでを
味あう
きみのなかを
銀河がとおりぬけ
きみは生きていることを確認する
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