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Tomo Poetry、あおく透きとおった瞼。


目の色は変わる
時の色に合わせて
記憶の痛みによって
雨は黒
河面をながれる風は白
ことばが
きれぎれに落ち
水の色になる

きみはそのことばの外辺で
額をつくる
命のための
すでに失われたものの
探しきれなかったきみの
宇宙のための

毎朝
きみは額の前に立つ
額の奥にひかるものに
見てもらうために
きみの
枯れていく一本の苗を
実が地に落ちたあとの
ひとりの
生の朽ちる姿を

聞き取れない悲鳴
ひび割れる氷河
馬の足音
青い音
マントをまとった一日が駆け抜ける
額のなかを

ガラス窓がふるえる
クラリネットのリードのように
松の林は
待ちきれずにびっしょり濡れている
窓は開けるな
間違っても歌を口ずさむな
間もなく街を駆けぬけるのは
きみが見たことがない
きみの
内にひろがる宇宙

わたしは駆け抜けるものといっしょに
過ぎていく
きみは
わたしを見ることができない
だから窓が震えたら
目を閉じるとよい

落ちた白い花弁
夜の花びらはひろってはならない
触れたのは
過ぎゆくものだ

天井も黒
宙も黒
空はもうわたしの枕だ
きみの宝は
見えるだろうか
真っ暗なこの世界のどこかに

わたしがすぎると
よこたわるのは枯れ木と
コスモスの種
夜が三度
夜明けが三度
明るさのない昼が三度
そのあと
すべてが漆黒になった時
ひとつの芽がのびる
茎は虹の弧を描く
虹のしたに横たわる
肉体と魂は
きみだろう
青い脚
イエローの希望

動かない
白い雨が降るまで
白い空が見えるまで
きみは動かない
根が伸び
枝が空に罅をひろげていくまで

空が割れるとむこうに
きみの世界があるだろう
あとすこし
目を閉じていると良い

きみが頰にかんじるのは
わたしが
駆け抜けたあとの

深い息
もうすぐとまるだろう

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