谷口ジローの世界
添付してあるのは、最近寝る前に読んでいる2017年に亡くなった谷口ジローさんの作品一覧と谷口ジローさんの作品の紹介をしているnippon.comの記事である。
元マガジンハウス編集者、その後、古書店経営を経由して、ジャズのプロデュースをしつつ、谷口ジローの著作権管理をしている米澤伸弥君が何冊か送ってくれた。それが私が谷口ジローにのめり込んで行くことになるきっかけとなった。
米澤伸弥君とは大学時代、詩の同人誌を一緒にやっていて、記憶では毎週土曜日集まっていた。もうひとつ共通点があって二人とも油絵を描いていた。同人誌の表紙はいつも米澤伸弥君の担当だった記憶がある。
小学校時代から漫画好きで、中学時代の私は自分の作品を何ページかホッチキスで綴じて薄い手作り漫画を作っていた。大学時代には、大島弓子、萩尾望都、手塚治虫、つげ義春他漫画を揃え、LALAとか女性コミック雑誌も相当買っていた。今でも大島弓子の作品は芥川龍之介の隣に並んでいる。大学時代の私の漫画好きを知っているので、米澤伸弥君は豪華な谷口ジロー全集から3冊送ってくれたのだろうと思う。そして、私は簡単に谷口ジローの世界の中毒者になってしまった。
彼が突然送ってくれたのは、ジャズのCD30枚、私がロンドンに行く時残していった本の中からフランス語の詩集、そして谷口ジローの『「坊っちゃん」の時代』『遥かな町へ』『歩くひと』だった。本当は『歩くひと』から、その表紙と何ページか写真を撮ってアップしたいが、米澤伸弥君は谷口ジロー作品の著作権管理をしている。そうでないなら、何枚か写真を撮ってアップするのだが。
その後、『父の暦』『冬の動物園』『いざなうもの』『千年の翼、百年の夢』『散歩もの』『欅の木』「ふらり。』『捜索者』『センセイの鞄』『野生の中へ』『犬を飼うと12の短編』『犬を飼う そして 猫を飼う』そして谷口ジローの作品で日本で大勢の人にテレビドラマとして知られている『孤独のグルメ』と揃えてしまった。
それでも全作品の五分の一にもならないだろう。
昼の仕事と夕食後の読書ーー主に国家とナショナリズムについて、それと生命とは何か、人間とは何かーーの後、ヒートアップした頭を和らげるために寝る前に谷口ジローの作品はベッドで読んでいる。そして時に、その世界の優しさや哀しさに涙を流してしまう。その後深呼吸して、生きていることの静かなよろこびを味わって眠る。
まだ読んだことがない方は是非お勧めします。先ず、『歩くひと』、『欅の木』、『遥かな町へ』。大型本の見開きいっぱいに描かれた街と自然がある作品、言葉が全く出てこないが、生きていることを心地よく感じさせてくれる作品、この町は川はどこだろうと思わせる写真のような現実感のある作品ーー私はある町の富士塚や川沿いの道、等いくつかインターネットの写真と比べて探し出したーーそして人の心の寂しさや喜びそして哀しさに安堵感をコマの展開と少ない言葉で表現する作品。実際、写真を撮ってきて、一日かけて一コマを描くことがほとんどだったというのが理解できる細かいところまで書き込んだ絵で、心安らぐ物語を描いている。
本当に描くことが好きだったんだとわかる絵である。絵から喜びが感じられる。
町と自然をゆっくり味わい、読んだあるいは観た世界に心をとけこませ、そして優しく生きるって、それだけで幸せだと感じるものだ。多分、谷口ジローはそのように生きたのだろうと想像する。忙しい毎日を過ごしている、あるいは寂しさや哀しさを感じて生きているのでしたら、作品の世界の誠実な優しさの中に入ると、ゆったりと呼吸をできると思う。
その安らぎを味わうために、一冊開いてみることをお勧めします。
【谷口ジローの作品集】
https://booklive.jp/focus/author/a_id/3053
『谷口ジローの世界を求めて』
https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/views/27298/27298.jpg
谷口ジローの世界を求めて今年2月に69歳で亡くなった漫画家・谷口ジロー。原画展「描くひと 谷口ジローの世界」が開催されたのを機に、その足跡を振り返る。
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