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TomoPoetry、ある午後の散歩。

都市の地図から
少女の肌のいろが消える
老いゆく薔薇の絡まりが細切れにされる
純白の皿に
乗っかっているのは
あなたの欲望と
ひとびとの過去を刻んだ
炒めもの

わたしの皿には
四季の野菜の記憶
塩と死だけで食べてください

脚を包むストッキングは青
動かない肉体をくるむのは
青を真似た
ビニールシート
内側で宇宙はうごきつずける
とおくへ
遠くへと

死体からできるだけ遠くから
自分をみることが理解することだ

わたしは
わたしの過去をナイフで切る
白い断面は
呼吸している プクプクと
スースーと
星雲がひろがり捩れ
わたしのフォークに絡まる

地球上の生と死を
銀河のソースにからめる
きみは味わえない
この
まるいフォークの先の宇宙

涙がとまらない
地球は死の味がする
いろいろな切先が喉にささる
時間は
呑みこむことができるまで
生きているものを
傷つけていく

わたしはわたしの喉と
過去の宇宙にスプーンをあてる

まだ生きるつもりでリズムとる鰹の鼻がみえる
こんなテーブルで
スーツのバラは
錆びた鉄と
銀色の滝のように匂う

ねえ きみ
こたえてくれないか
死が生きているのか
わたしたちが生きているのか

それとも わたしたちが生きているのは
歴史的認識のなかなのか

羽をもった存在は
銀色の窓と時間の向こう側を
一瞬わたっていく

都市をあるく
死を忘れたじぶんとなって

そこを 黄色や赤いドレスが裂かれた都市を
わたしは泳ぐ

餃子が腐るから
はやく食べなさい
チェロが黴つくから
はやく存在を震わせなさい

季節の音に合わせて
本郷をくだる
二千年のくだりと二千年ののぼりを
かきわける
わたしはくだっているのだろうか
のぼっているのだろうか

わたしの骨の砕ける音を聴きながら
宇宙は
わたしのなかで
黒い球になる

老いた一歩で
カラフルな星座を踏む
いつの音だろう
どこを
いつを歩いているのか忘れて
ハミングする

きみの底の黄色
宇宙の落ちていく先のきらめき
それをつま先で
踏みしめながら

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