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TomoPoetry、鳥が目覚めるとき。

鳥が目覚めるとき
世界は
いつも燃えている あるいは
燃えた黒い炭 あるいは 
灰色のフイルム
純白の
死骸
馬が砕く
装甲車がこなごなにする
そのあとを
ひとびとは托鉢用の
器を持って歩く
器のなかには
忠誠心のバッジ
ウルトラマンのような
裏切りを指摘されたときの
弁明書
東京観光案内のように
カラフルで簡明
死刑宣告を受けたときのための
移植ゴテ
躑躅のような
アイディーカードを立てるため
砕いた肥料を
埋めるため

墓標が並び
映画館が爆発し
テレビが溶ける都市
鳥が
目覚めるとき
国は
いつも赤い夕暮れ
その先には
まだ開いていない
黒い緞帳

鳥よ 向こうでは羽根を折られるか
銀河系の外への
上昇気流に乗る
飛ぶことか落ちることしか選択できないが
いづれもあなたの意志が決定できる
それがあなたが望んだものだ
鳥よ

鳥は
赤い夕暮れの
次の頁へ
移動する
赤いインク壺
赤い博物館
赤い文字で書かれた
躑躅の
名前
ひかりのなかに
入るのを期待して

燃える星 あるいは
青く凍った空と地表
ひとは
枯葉のような上着で
アスファルトに頰こする
これから死にむかう
儀式
あるいは
記憶を地に
かすかに書き込む
小さなよろこび
かれは
まだひとである
空が輝いていても暗くても
空であるように
ひとは
生きてていても死んでいてもひと

わたしは黙ってポプラになっていた
鳥は
今日の空の広さを確認して
わたしに話しかける
わたしの行くところは
どこなのだ
行きたいところはない
この先に
階段を少し降りると
ひとが歩くことは許されない
裏通りがある
そこのひとつの扉から
わたしは
出ていく
ひとでない存在として

そこは
昔は海
世界が海だった頃
わたしが希望をもって
渡った世界

鳥は
わたしの腕を折り
咥えて飛び立った
聞こえるか
鳥の声
あなたは
海に浮かぶ
魚類になって
深く深く沈む夢をみる
夢は
少し湿っぽい
潜っていく先に
あなたの
あたらしい大陸がある
そこには夜がない
夕暮れもない

鳥は
わたしを海へまっすぐ落とすと
赤い空をめくり
消えていった
それ以来
わたしは風に揺られ
あたらしい朝を
待っている

鳥が
目覚めて
もうひとつの空に
夜をくぐるのを
待っている

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