見出し画像

TomoPoetry、過去へむかう鳥。

鳥がないた
別れの知らせ
巣からはばたく
過去へむかって
かれが知らないはずの
わたしたちには見ることができないはずの
ひらく扉がない方向へ
鳴き声と羽ばたきもきこえない方向へ
空がない
方向へ

鳥に
一本の光が見える
ほかに見えるものも
聞こえるものもない
かれが生まれる前の
世界へ
空がない
鳥は眼をとじている
あおい波も
みどりに揺れる星も
あかくながれる涙も
すべてをうけいれる闇も
空もない
かれが飛ぶはずの

鳥は去った
記憶を
ふたたびたどるために
生まれる前の

わたしは泣く
出発を知らされて
海と地がゆれる
オーロラ
きみの脚をかくすように
光になったきみに
触れることはできない

ひかりにキス 
ゆれてきえつつあるきみに
キス
記憶からきえさる
きみに
さよなら
わたしも出発するときだ

世界はふるえている
かなしみに
孤独に
手繰り寄せることができない
過去に

そんな気はなかった
きみから過去を奪うとは
そんな気はなかった
きみから
空を奪うとは
わたしたちが
闇をみとおす眼をうしなうとは

今夜も
わたしの空は鳥の羽音で満ちる
その中を
きみは飛んでいく
全身を凍らせ
かたちをくずしながら
一滴いってき
記憶を
ながしながら
深夜 カーテンを湿らし

凍りついた夢が割れ
きみの声が
あふれる
カーテンのはるかむこうで
風も光も
とどかない
きみの
生まれるまえの
位置
指先にふれるあたり
きこえてくる
きみの呼吸が

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?