マガジンのカバー画像

TomoPoetryー友野雅志の詩

150
日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
運営しているクリエイター

2021年8月の記事一覧

朝食はこごえつずける

朝食はこごえつずける

バナナを一本もぎ取る
東南アジアの
川沿いで腐敗する
バナナの幹のように
パンを二つに割る
新疆の青空のしたで
生きる意味が
砕かれ
土にこぼれるように
あたためたミルクに
コーヒーを溶かし
攪拌する
残されたひとびとが
つめたい手によって
死に沈められるように
スプーンがカップを叩く
銃声が
青空と
穴だらけで立つ歴史に
反響するように

きみはその音と

もっとみる
TomoPoetry、いない娘からの手紙。

TomoPoetry、いない娘からの手紙。


わたしにはいない
いないはずの娘が
手紙を書いている
封筒の宛名は
何度も書いては消し
消しては書いて
灰色の果実になっている
腐敗するまえの
あまいかおりがする
娘は
封筒にキスをする
まるめて口に入れ
もぐもぐと噛む

何日
噛んでいたろう
生まれる前の風が
鼻にくすぐったい
違う時代の
埃のにおいだ
カサカサ鳴る樹
極彩色の岩をけずる爪
地に
いろいろな色で
文字を書く風

わたしには

もっとみる
Tomo Poetry、あおく透きとおった瞼。

Tomo Poetry、あおく透きとおった瞼。

目の色は変わる
時の色に合わせて
記憶の痛みによって
雨は黒
河面をながれる風は白
ことばが
きれぎれに落ち
水の色になる

きみはそのことばの外辺で
額をつくる
命のための
すでに失われたものの
探しきれなかったきみの
宇宙のための

毎朝
きみは額の前に立つ
額の奥にひかるものに
見てもらうために
きみの
枯れていく一本の苗を
実が地に落ちたあとの
ひとりの
生の朽ちる姿を

聞き取れない悲鳴

もっとみる