見出し画像

独学デザイナーが、 一流デザイナーにサシでフィードバックをいただいた話。

私は今、フリーランスでデザイナーをしています。表題の通り、2020年の7月に前田高志さんという素晴らしいデザイナーに自分の作品やあれこれについてフィードバックをしていただくという機会を得ました。これは、その時の記録です。多分にエモーショナルですが、具体的なデザインの話についてはこれからの作品に反映させる形で出していけたらと思っています。

※こちらのお話を個人noteに投稿することは、前田さんからご快諾いただいています。本当にありがとうございます。


1・一流デザイナーにフィードバックを受けたいと思うまでのこと。


私は独学でフリーデザイナーになりました。今の仕事に至るまでの道はデコボコで、10代はまんが家志望→賞をいただくなどしましたがいろいろあってそちらの道は歩まず。20代~30代は仕事として会社員を選び、事務仕事の傍ら創作活動をしていました。(ギャラリーに作品を展示したり、レーベルを作って仲間と活動したりいろいろやってきました)一度活動を停止したのちに結婚・出産を経て在宅でフリーデザイナー活動を始め今に至ります。

もともとの出発点がまんが描きで独学がそんなに珍しくなかったこともあり、きちんと研鑽を積んでいれば、独学でもやれることはあるのではないかと思って今のお仕事を始めました。(実際に独学です、と表明されている素晴らしいデザイナーさんもたくさんいらっしゃいますし、デザインが本業ではない方が手掛けた素敵なプロダクトも沢山あります。)

この間、美術系の学校に通ったことも、デザイン会社に就職したこともありません。ありません、というかできませんでした。
やりたいと思ったタイミングでは美術学校の手続きを進めていたら家族の病気が発覚。デザイン会社に勤めてみたいと思った時には未経験と年齢制限の壁がありました。なので、独学でやるしかない、というのが私の出発点でした。今までの人生の中で培ったソフトの使い方・好き、楽しいという気持ちだけで読み重ねた書籍・心の琴線に触れたデザインを手元に集めてじっくり向き合ったこと。それを頼りに活動を始めました。

仕事での指針はとにかく目の前のお客様のニーズ(頂く要望と、ヒアリングややり取りの中で引き出すものと)をとにかく満たす+それ以上を目指すことに定めました。目の前のお客様が喜んでくれるものをつくることだけに注力してデザイナーとして4年を過ごし、それはそれでいいと思っていたのですが。
コロナの影響で仕事が少なくなり、その分増えた内省?の時間で不安がむくむくと大きくなってきます。アカデミックな学びをしてこなかった、デザイン事務所や会社でのデザイン業務など体系的な仕事を手掛けたことがないコンプレックスや不安が少しずつ頭をもたげてきました。

コンプレックスは、自分が仕事を受けるときにはプロでありたいと思っていたので、心の奥に沈めていたものです。
自分が仕事をしているときに大切にしているこだわりや美しさは、本当に対価を頂ける基準に達しているのか。
ひとりよがりの製作物をお客様に渡してはいないか。自分はちゃんとした目をもっているのだろうか。
漫画のことならゆるぎなく、これはこうとおもえることがデザインではどこか歯切れが悪く、言いきれない自分がいました。

このままでは次に進んでいけないし、いい機会だから一回手放してみるのもありかとも思っていたところに、
「前田デザイン室のガチ弟子あと一枠あるよ!」というツイッターのツイートを目にして、その枠を押さえて思い切って第一線で活躍されている前田さんにお話してみようと思いました。
多分、前田さんはガチ弟子ってもっと正統派の方を想定しているんじゃないかなーと思いながら。
※前田デザイン室のガチデシ枠はいつも募集や空きがあるわけではないので、詳細については前田デザイン室の募集をご確認くださいね。


2・zoomでサシで前田さんと語ったときのこと。


zoomで前田さんとサシでお話させていただける時間を7月9日にとっていただけることになりました。
その数日前に、前田デザイン室内でポートフォリオのフォーマットがアップされたので、「これに今までの自分の製作物をまとめて見ていただいたらより切りこんだお話ができるかな?」とおもいついたのですがサンプルに挙げられていたポートフォリオの見事さに、へこんで地面までのめり込みました。ああ、わたし、こんなすごいポートフォリオと同じ土俵に自分の製作物を並べないといけない場所に来ちゃったんだ、と改めて思いました。
こんな地面にのめり込んで地球の裏側までいっちゃいそうなメンタルのまんま前田さんとお話する予約をしてしまうなんて!
自然と重くなる手を動かしながらなんとか過去のサンプルをまとめてギリギリzoomミーティングの前にアップして、その時間を待ちました。

zoomでの前田さんは「ごはんたべながら話していい?」と完全リラックス。※緊張していて、何を食べられていたのかは覚えていません。
緊張はしたままでしたが、リラックスしている前田さんにこちらの余計な肩の力は少しずつ抜けていきます。
簡単に私の来歴をお話しして、ポートフォリオを見ていただきながらお話をしました。独学でやってきたことにびっくりされましたが、来歴を聞いてまんがを描くことで培ったものを活かしてデザインしているとどんぴしゃに言い当てられました。

実はまんがは、相当の情報整理をしたうえでないと紙面に落とし込めません。レイアウト・視線誘導・全体を俯瞰した時のコントラスト、1ミリのずれ・1本の線のひき方で印象が変わってしまう世界…デザインとまんがには共通するものがあるのではないかという思いが、一方的でなかったとわかった瞬間でした。

コンペに応募して落選した作品も見ていただきました。落選した悔しさを素直に伝えて、どうすればよかったのかお聞きしたのですが、なおすべき箇所はもう本当にそうですよねその通りですよね、というものでした。

ポートフォリオにはこっそりまんがサンプルも入れておいたのですが、
「もうまんが描いちゃえばいいんじゃない」ということになりました。そうですよね。今は前よりも自由にまんがを発表できる環境が整っています。
やっちゃえばいいんです。

でも、わたし欲張りなのでまんがも描きたいしできることなら装丁とかパッケージとかすみずみまでやりたいことをやりたいんです、といったら前田さんは笑ってらっしゃいました。
デザインはとにかく数をこなせばもっとよくなるというお言葉をいただきました。
あと、話していく中でデザイナーとまんが描きの思考のくせというか違いに話が及びました。
ここは、デザインを続けていくなら切り替えていけないとだめだなというところです。
だからこその「まんが描いたらいいよ」ということなのですけど。

3・前田さんとサシで話してコンプレックスが解きほぐされたこと。


実は、私は私は前田デザイン室は出戻りです。一度目は、仕事や育児の忙しさからただ居るだけで終わりました。
居るだけで終わっていたのですが、前田デザイン室の活動を眺めながら、ここは、私ができなかった美術の学校に入ったり、デザイン事務所で働くのと同じかそれ以上の経験ができるところなのではないかなと感じていました。
本を作るなど具体的な製作に携われる環境があり、学ぶ環境があり、経験が浅い人でも手を挙げればチャレンジできる仕組みもあるし、現場で活躍しているプロもメンバーなのでその具体的な仕事ぶりを間近で見ることが出来たりします。
前田さんにお話しするチャンスの前にここで手を動かしておけばよかったのに!というのは全くもってそのとおりなのですが、これはもうタイミングのようなものもあるので仕方ありません。
そして、ここでの活動を知っていたからこそ、迷った時に自分を前田さんにさらけ出してみようと思えた側面もあったと思います。

zoomミーティングの終わり近くに前田さんにそのことを伝えました。
美術学校や会社でのデザイン経験がないまま仕事をしているコンプレックスを自覚してしまったら前に進めなくなったこと、前田デザイン室は、「デザイン経験3年以上」などの現実の壁に阻まれてそういう経験を積んでこれなかった人達が挑戦できる素晴らしい場所であること。
それは前田さんにとっても新鮮な切り口だったようです。その日の夜にこんなツイートをされていました。
https://twitter.com/DESIGN_NASU/status/1281184608323657730

美術・デザイン系の学校を出る・デザイン事務所またはデザイン業務に携わった経験がないとデザインの仕事に関わることは途端に難しくなります。
わたしはえいやっと独立系ではじめてしまいましたが、これもまた選択肢として選びやすいものではありません。

歌が歌手のものだけではないように。
踊りがダンサーだけのものではないように。
デザインだって、好きだから・やってみたいからという純粋な気持ちがそのまま活かせる場所がもっともっと増えていくといいなと心から思います。

人生100年時代。
いつからだって何歳からだってやりたいと思った時にやりたいことが始められる場所があっていい。
若い人だけではもったいない。
デザイナー・前田さんの元では現実の壁に傷つきあきらめた大人が再び学び・挑戦することができる。
前田さんとお話してそんなことを思いました。
貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。

4・そしてこれから。

デザインを続けながら漫画を描きます!


ここまで読んでくださってありがとうございました。

前田デザイン室の活動が気になった方はこちら↓

https://community.camp-fire.jp/projects/view/66627



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?