早起きは6720文の徳+交通費 後編

そもそも早起きは三文の徳ということわざで登場する「徳」という言葉だが、意味としては品のある行動や、社会的に価値のある物事の性質を指す。

社会的品位を表現するにあたって、問題を起こす派遣社員は品の欠片も無く、自分本位でしか物事を考えられない人が多い。

なので「徳」という漢字ががしっくり来ることはない。

今日は、長い人材派遣営業の中で個人的に印象に残ったスタッフ様の話をしようと思う。

あれは、何年か前の夏ある、食品会社で若年層で募集をかけている企業とやり取りしている時の事だった。

完成した製品を検品それだけで時給は1,400円。
高時給。

そこにエントリーがあったのは、飲食店のバイトを18歳から10年継続し、正社員になったがコロナ禍で転職を余儀なくされた20代の若い男性だった。

第一印象は普通の今どきの若者と言った感じだった。

職場見学の際担当者から
「朝ちょっと早いけど大丈夫?」
「失敗してもいいから頑張って欲しい!」
「10年も仕事を頑張って来てるからうちに来ても大丈夫!」
「頑張ってうちの社員になってくれ!」

そのスタッフも是非頑張りたいとの回答だった。

あぁ気持ちがいい。
こんなにもスタッフとクライアントがマッチする事が今までにあっただろうか。
やはり10年接客をしてきただけあって受け答えも申し分なくやる気に満ち溢れているように感じた。

半ば誇らしい気持ちで職場見学を終え
いざ入職当日を迎えた。

8:30に企業へ送迎し清々しい気分で
人仕事終えたと思っていた同日9:30。

一通のメッセージが届いた。

スタッフ「仕事は素晴らしいと思いますが朝が早すぎて正直辞めたい気持ちでいっぱいです。このまま辞めると言って帰ろうかと思います。」

!?

何がなんだか分からずとりあえず状況の確認。
「朝が早いのは了承済みですよね?今さらどうしたんですか?…」

スタッフ「朝が早すぎて体がついて行きません。プライベートな時間が削られ本当に負担です。」

いやいや。
負担も何もお前今日が仕事1日目やん。と思ったがスタッフ本人はスーパー本気なのである。

私「分かりました。とりあえずもう少し、朝ゆっくり出来るルートを考えます。」

何とかマップアプリを駆使し朝6:00起きから
6:45に起きても間に合うルートを発見しメッセージでスタッフに報告。

反応を待っていると、企業担当者から連絡が
「こいつ大丈夫か?!ずっと訳の分からんこと言ってるぞ!?」

はい。
ここで、キ〇ガイが企業にバレました。

訳の分からん事とは何か確認すると。
スタッフ「ここでの仕事は頑張りたいが、朝の出勤が辛い。なので1週間早起きの練習をさせて欲しい」とのこと。

早起きの練習。
文字に起こすだけで恥ずかしくなる。

もちろん企業担当者は、「!?アホなん?」
とのリアクションだったが、その上長が現れた。

上長「本人が責任をもって早起きの練習をして来るのであれば問題は無い。」

そして、スタッフは入職から1日。早速1週間の早起きトレーニング期間をもらい早起きの特訓をすることになった。

その日から、1週間毎日朝6:00に営業担当者の私に朝「起きました」のメールが届き、トレーニングは順調につづいた。

そして!
いざ明日から早起きの成果を、見せる時!!

一通のメッセージが届いた。

スタッフ「正直。早起きを頑張って来ましたがこのままだと腫れ物になってしまう気がして…人間関係で悩みがあります。」

人間関係はまだ出来てないよという正論は置いておいて。

彼はもう行く気は無くなっていた。

企業担当者恐る恐る事を説明すると。
意外とあっさり

「こいつは、まあ続かんかったやろしええよ。」

そこで、そのスタッフのお仕事は稼働1日+1週間の早起きトレーニングを経て終了した。

月22万円ほどの収入を棒に振ったのである。


このような、ケースを引き起こしたスタッフに次の仕事を紹介するかは、営業の判断なのでここで封印。

さよなら

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