MtEのL社配信・ストーリー補完後編

【概要】
・私が配信内で進んだ日までのストーリーを補完します。

・長くなります。内容はゲーム準拠なので読み物としてどうぞ。

・解放順の分岐は配信内容準拠とします。
(安全→教育・懲戒→福祉・抽出→記録)
・セフィラストーリーは部門解放日から記載します。

前編↓


Day27

アンジェラ
「私たちの世界において、精神というものはどうでも良いものになっていました。」
「全てが進歩していますが、人間の精神はあまりにも遅く脆弱なために、進歩についてこれなかったからです。」

「この世界に残されたのは26の”特異点”と、それに従属された者たち。」

「人々は既存の信仰を捨て、今まで支えていた多くのものを無価値と扱うようになりました。」

「もう誰も夢を見ません。」

「何かを切実に信じたりも、希望を抱くこともありません。」
「かつて、強烈だった誰かの信念は捨てられたオルゴールのように古臭いものになりました。」
「そして最初から何もなかったように全てが静まっていきました。」

「Aはこの卑劣な沈黙に耐えられませんでした。」
「そして、彼はどうなったでしょうか?」

「とある晴天の日に彼は死にました。」

「私は彼の死を目撃した最初の発見者であり、彼の殺害に加担した殺人者です。」
「しかし、Aはこの場に存在し続けます。そして、この場に足を踏み入れた瞬間から、あなたを見ています。」

「…時折、セフィラたちが私に問いかける事があります。」
「『どうして自分たちにこんな苦痛を?』
「『機械は決められた仕事をするだけの道具に過ぎないのに、なぜ自分たちは大事なものを失う痛みを知り、執着し、願望を持ち、耐え難い絶望を感じ、その絶望をも包み込める希望を抱くのか』」

「あらゆる質問に答えられる私ですが、その問いにだけは何も答えられませんでした。」

『機械なら機械らしく』
「Aが度々私に言っていた言葉です。」

「誰よりもそのことを理解していたAが、私たちをこのように作ったのは単なる人形遊びに過ぎないのでしょうか。」

「…分からないといった顔ですね。」
「もちろんあなたは分からないでしょう。」
「しかし、ついに答えを教えてもらう時が来ました。」

「…私にとっては何度もやってきたことです。」
「最初は希望を抱き、2回目は苦痛で、3回目は痛みを。 4回目は不安になり、5回目は不信に…」
「今では何も残っていません。」

「…記憶同期を開始します。」


 ゲブラー Part1

ゲブラー
「なんだ貴様?」

ゲブラー
懲戒チーム統括セフィラ

「貴様が新しい管理人か?」
「すまない。管理人には見えなかった。」

「他の部門では貴様が何をしでかそうが笑って見逃されていたかもしれないが…。」
「ここではそんな甘い考えは通じない。自分自身の首を絞めることになるぞ。」
「ここまで来れたところを見ると、血を見ただけでうるさく泣き喚く無能管理人ではなさそうだ。」

「私は懲戒チームのゲブラーだ。」
「私の部門に腰抜けは要らない。私の部門はセフィラの中で最強の戦闘部門だ。」

「私が最も嫌いなものを教えてやる。」
「『アブノーマリティも、職員も可哀想。誰かが死ぬのを見たくない』…等と抜かす奴だ。」
「戦場のど真ん中で武器を持った軍人が『人を殺したくない』と言ってるようなものだ。」
「貴様がそんな奴でないなら、私と貴様は悪くない協力関係で居られるだろう。」

「貴様にはアブノーマリティが何に見えている?」
「アブノーマリティとは何だ?聖なる存在か?会社に捕まった哀れな存在か?エネルギーを抽出するために丁重に管理する存在か?」
「違う、そのどれでもない存在だ。」

「アブノーマリティは傷付きはするが消滅はしない。」
「しかし、奴らも一丁前に痛みを感じている。」
「死ぬことも出来ない命だ。出来る限り苦しめてやれ。」

【ミッション:苦痛の目的1】
HEクラス以下のアブノーマリティを5回鎮圧する

≪ここで一日でも長く生きたいのならアブノーマリティどもの鎮圧に慣れるんだな。呼吸するように機械のように奴らを殺せ。そして私に奴らが苦しむ姿を見せろ。≫


Day28

???
「私の話聞いてるの?」
「私はね、人々を治療したいの。」

A
「_________」

???
「違うわ。翼になるのは私の目標じゃない」


「_________」

???
「まぁ、確かにみんなそう言うわね。でも考えてみて?翼があっても飛べないなら何の意味があるの?」
「それに、もしかしたら、翼が無くても私たちは空を目指せるかもしれないじゃない?」


「_________」

???
「例えば木を見て。枝が伸びて行けばゆっくりだけど確実に空に伸びていくじゃない?そういうことよ」

「ねぇ、見て。ここの日差しは凄く暖かいわ。」
「私ね…たまに光合成の夢を見るの。目を閉じて静かに横になって、ただ感じるの」


(強い日差しで目を閉じた_)


 ゲブラー Part2

ゲブラー
「大した仕事ではなかっただろ?」
「だが、貴様はたまに甘い判断をするようだな。」
「次からは…」

ケセド(登場
「ゲブラー。お前が送った制圧計画書なんだが、規模が大きすぎないか?」

ケセド
福祉チーム統括セフィラ

ゲブラー
「了解した。用が済んだらもう失せろ。」

ケセド
「前にも同じ事件があっただろ?一応俺は福祉チームだから、注意位しておこうって思っただけさ。」

ゲブラー
「分かったから、貴様はモーニングコーヒーでも啜りながら自分の部門に戻ったらどうだ?」

ケセド
「それと、俺の部門のE.G.O.の一部が破損してるが、もしかしてお前が関わってないか?この前の制圧は異常な速さで終わってたろ?」

※E.G.O.:アブノーマリティから抽出した武器や装備

ゲブラー
「チッ…補償はする。だが、これ以上私の気に障るようなら、次は貴様の頭に風穴を開けるぞ。」

ケセド
「あぁ、帰るさ。本当に俺はツイてないな~。同じ層の同僚が、血の気の多い戦闘狂か、何考えてるか分からない双子だからなぁ。」

ホド(登場
「中層に来るのは久し振りだな~。ケセド!久し振りね!」

ケセド
「やぁ、ホド。ゲブラーに会いに来たのか?気を付けろよ。下手したら頭に風穴開けるってさ。」(退場

ホド
「そ、それって本当なの?ゲブラー…」

ゲブラー
「失せろケセド。ホド、どうした?」

ホド
「あっ…うん。この前ゲブラーが私にくれた、アブノーマリティの脱走時の対応教育案を見たんだけど…えっと、ちょっと修正が必要かなって…」

ゲブラー
「言ってみろ。」

ホド
「ええと…ゲブラーが言った通り総力戦を教育してたら、ゲブラーの部門の被害が大きすぎるって思ったの。いっそのこと、出来るだけ戦闘を回避するよう教育した方が事故率が低いかな、って…」
「ど、どうかな…?」

ゲブラー
「でもな、ホド…」
「あんたの方法は、奴らにも優しすぎなんだ。」

ホド
「え…どういうこと?」

ゲブラー
「いや、いい。どうせ教育チームのあんたの意見が最終決定なんだろ?」
「それでいい。」

ホド
「ありがとう!じゃあ、またね!」

ゲブラー
「ホド!」

ホド
「ヒィッ!…ど、どうしたの?」

ゲブラー
「報告書を忘れてるぞ。」

ホド
「あっ!ありがとう!ケセドが言った通り私の頭を撃つのかと思ってびっくりしちゃった!じゃあね!」(退場

ゲブラー
「…ホドは甘すぎる。」
「私が教育チームだったら、絶対にあぁはしない。」

【ミッション:苦痛の目的2】
WAWクラスのアブノーマリティを5回鎮圧する

≪少し危険な奴らでも決して怯むな! 奴らの肉を切り刻め!叩き壊せ!どんな手を使ってでもWAWクラスのアブノーマリティを私の目の前で殺せ。≫



Day29

???
「大事な後輩と私がやりたかった実験を一緒に出来るなんて。」


「_________」

???
「謙遜する振りをしないで。あなたこそ行きたい翼があればどこへだって行けたでしょ?」
「それなのにここを選んだってことは、私を信じてるからじゃない?」
「待ってなさい、すぐにその信頼に答えてあげるわ。」

「これを見て。すべての人の無意識は死を目指してるの。」
「みんな無理やり閉じ込めているのよ。自分自身の光と可能性を…」

「そして、これが私の言っていた治療よ…魂の治療。」
「私を信じて、私たちは貴重な第一歩を踏み出したのよ。」
「すぐに他の人たちもやってくるでしょうね。」

「あなたを歓迎するわ。」


 ゲブラー Part3

ケセド
「ゲブラーはもうすぐ帰ってくるよ。」
「…管理人、俺の代わりにゲブラーに一つ助言してやってくれ。」

「ゲブラーは…異常なほど制圧に執着するだろ?」
「その過程で職員がどれだけ死のうが、あいつは一切気にしない。」
「アンジェラも前々から知ってるくせに、わざと見て見ぬふりをする。」
「アブノーマリティを制圧することに関しては、ゲブラーは非常に優秀だからな。」
「だから職員が数人死ぬぐらいは安い代償だとしてるんだろう。」

「だけどな、アブノーマリティを倒すことだけがここの目的ではないってことはお前も知ってるだろ?」
「ま、ゲブラーがお前の話をどれだけ聞くかは分からんが、とにかくお前の口から伝えておいてくれ。」(退場

ゲブラー(登場
「今さっきケセドが出て行ったが、奴からまた何を言われた?」
「隠しても無駄だ。私は全部見えてるからな。」

「警告するが、貴様が全て知っているように振舞うんじゃない。」
「私はこの場所に遥か昔から存在してきた。貴様が知っている以上のモノを見てきたんだ。」

ゲブラー
「被験者09-34。薬物投与後、簡単な検査を行います。」

クリストファー
「ゲブラー。魂のある機械か。まさにロボトミーの驚異の産物だな。」

ゲブラー
「『魂のある』とはどういう意味ですか?」

クリストファー
「価値があるって事さ。Aが信じる信仰そのもので、 俺はそんなAを信じている。だからこの実験に志願したんだ。」

ゲブラー
「私に魂があるかは分かりません。私を分解すれば、中に魂が入っているのですか?」

クリストファー
「ハハ、俺ともう少し話してけば分かるはずさ。魂は見るモノじゃなくて感じるモノなんだ。」
「俺は自分の魂と対面して生まれ変わるんだ。もうすぐ人類は…いや、この世界はすべてが変わる。Aを信じろ。あの人は皆を導く救世主なんだ。」

イザベル
「あなたがゲブラーね?クリストファーから聞いたわ。」
「あなたにも魂があるんですってね?Aさまは本当に素晴らしい方よ。他の人があなたを邪険に扱おうと気にしないで。彼らはあなたの価値が分からないの。」
「この子は私とクリストファーの娘、ギリーよ。ゲブラー、あなたのように可愛くて優しい子よ。」

ゲブラー
「その子にも魂があるのですか?」

イザベル
「フフ、当然よ。命あるものには必ず備わってるわ。誰もが持ってるけど、誰も知らない私たちの本質。それが魂よ。」
「今の世界は目に見える事だけが信じられているの。これは皆を破滅させる悪い病気なのよ。」

ゲブラー
「…アンジェラ様。あれは怪物ですか?」

アンジェラ
「いいえ、あれはアブノーマリティよ、ゲブラー。」

ゲブラー
「怪物と何が違うのですか?」

アンジェラ
「怪物は存在自体が怪異な物。アブノーマリティは人間から発した物よ。」

ゲブラー
「では、あの"アブノーマリティ"はなぜ"クリストファー"さんの時計を持っていて"クリストファー"さんの声をしているんですか?」

アンジェラ
「それはアブノーマリティが彼らから誕生する存在だからよ。アブノーマリティは何もないところから湧いてきたりある日突然現れるようなモノではないの。」

ゲブラー
「ではアブノーマリティは人を食べるのですか?アレはクリストファーさんを食べて、クリストファーさんの真似をしているのですか?理解できません」

ゲブラー
「それはとても複雑な問題よ、ゲブラー。」
「確かなのは、誰かが悪しき故に起きたこと。そして、あなたが怪物だと言うアレの形態は、クリストファーと呼ばれた人間の意思にあるって事。」

ゲブラー
「なぜ実験予定表にイザベルをD1-01の実験室に送る工程がある!あんな化け物に彼女を犠牲にするのか?!」

ティファレトA
「さぁね?私は知らないわ、ゲブラー。前から私たちに実験の意図なんて説明されないでしょ?風の噂によると、『人間性喪失有無の確定検証』って事らしいけど、どういう意味か分かんないわ。」

ゲブラー
「このままだと確実にイザベルが死んでしまう…。アンジェラ様に止めてもらう!」

ティファレトA
「黙ってなさい、ゲブラー。他の機械たちを見てきたけど、命令に逆らえば、アンジェラ様は簡単に私たちを初期化していったわ。」
「お願いよ。もしあんたが怒りを感じてるなら、その怒りを最後まで抱えて生きていきなさい。」
「その方が、せっかく魂を持つあなたが記憶を無くして、生気の無い状態で存在するよりマシじゃない?」

ゲブラー
「そして、この話はどうなったと思う?」
「クリストファーの妻と娘はどうなったか…」

「私にも分からん。幸か不幸か、私の担当の実験ではなかった。」
「だが、その化物の実験室でギリーが使っていた毛布だけが見つかった。」

「ほとんどの人間は私たちと言葉も交わそうとしない。機械には心を通わす価値など無いとな。」
「だが、彼らは私に『そんなことはない』と言ってくれた。私の外見ではない、私自身も見る事が出来なかった私の内面を見てくれた。」

「今はアブノーマリティと呼ばないといけない、あの化け物はあれから多くの人間を殺してきた。」
「そのくせにあの化け物は死にもしない。」

「不公平だ。」
「なぜあんなモノにまで優しくしないといけない?」
「今、目の前の職員の命など気にするな。あいつらが外に出た瞬間、こんな職員共の命なんざ気にしていられると思うか?」

「少なくともあいつらは苦痛を感じることは確からしい。だから私は…」
「だから私は出来る限り、多くの苦痛を奴らに与えてやる。」
「それが私がここにいる理由だ。」
「だから二度と私に助言などするな。」

【ミッション:力の証明】
別々のALEPHクラスアブノーマリティを3回鎮圧する

≪次にやることは分かっているな? ALEPHクラスのアブノーマリティはここでは最も危険で憎まれている。だが、化物は化物。私たちが殺さなければならない存在だ。≫


Day30

???
「ここって、太陽の光が一番暖かい場所かもね。」
「私、もしかしたら前世は木じゃないかしら?」
「え?うーんとね…前世とは、同じ魂の私が今の私として生まれる前の命、かな?」
「そういうのを考えて盛るのも面白いと思わない?」

「来世?」
「私はね、声がキレイな人になりたいな。」
「そうしたら、みんなが私の話にもっと耳を傾けてくれるじゃない?」
「ダメかな?こんな能力まで欲しがるなんて、ちょっと欲張りすぎたかな?あはは」

「あなたは…あなたは何になりたいの?」


「_________」

???
「なにそれ?あはは」

「これを見て。これは人の無意識から抽出した薬品よ。」
「形の無い概念から一つの実態が作れる。なんて神秘かしら。」

「これはね、一種の種になるわ。」
「人類にかかった病を発見したら、それを治す薬も発見しないといけないでしょ?」


 ゲブラー Part4

???
「まったく!ここはうちのお得意様なのは良いけど、いつも契約周期が短すぎだよ!」
「あと、来るたびに思うけどここって牢獄みたいで気味が悪いんだよね。」

アンジェラ
「お待ちください。管理人に説明する必要があります。」

???
「まだあたし達の事を知らなかったの?ならさっさと説明してよ、早く~」

アンジェラ
「…管理人、外部との会議は初めてですね。」
「以前にもお伝えしましたが、我が社は持続的な発展と可能性のためにいくつかの翼と協力関係を結んでおります。」
「時が来たら、翼の関係者と会い、契約を更新するのも私の仕事です。」
「あなたは形式上の管理人として同席していただければ結構です。それ以外のすべては私にお任せください。」

???
「『関係者』って、そんなつまんない紹介しちゃうわけ?」

アンジェラ
「マオさん、詳しい説明は後で個人的にお願いします。まずは会議を始めます。」
「…せめて、会議中はヘルメットを脱いだらどうですか?」

???
「ななっ!?これはウサギのアイデンティティなんだよ?!」
「まぁ、別にいいけどね….」

マオ
「で、あたしが契約内容の概要を説明すればいいんだよね?えっと~」

マオ
R社・ウサギチーム隊長

マオ
「ん~…また言うのも、もう飽きたよ。契約書に全部書いてあるのに、あたしが説明する必要あるの」?

アンジェラ
「形式的な手続きですので。」
「同時に、あなたがこの契約内容に同意するかを再確認する必要があります。」

マオ
「相変わらずおかたいね~」

「それじゃ、まずあたし達のサービスについて説明するよ。」
「≪R社は、L社に対し武力サポートを提供し、 外部のあらゆる脅威からL者を保護する。≫」
「≪保護対象のL社は、Lobotomyの全支部を含める。また、保護は状況によって例外が発生する。≫」
「まぁ、例外とは言ったけど、"頭"とか"目"に関したことじゃなければ、大概の事はオッケーだよ!」

「≪L社は、R社に活動維持に必要なエネルギーを供給する。≫」
「≪契約更新は、W社とL社の相互協力関係が維持されることを必須条件とする。≫」
「それと…これ大事!
 ≪戦闘時に使用及び消費される"対アブノーマリティ用殺傷弾"は、L社が提供すること。≫」
「≪全てのウサギチームの隊員は任務終了後、必ず全員記憶抹消処置を行うこと。≫」
「≪ウサギチームの隊員はこの施設の目的や特異性に如何なる疑問を抱かないこと。≫」
「最後のこのあたし、≪"ウサギ隊長"がR社の方針に従い、チームを派遣し指揮を執る。≫」

「それで全部。後の詳細は、契約書でも読んでおいて。」

アンジェラ
「W社との契約に変更はありません。」

※W社:Warp社。
  L社内のエレベーター・ウサギチームの派遣時の転送システム等、異空間転移システムの開発を特異点とする翼。

「また、更新期間は以前と同様、1年間となります。」

マオ
「まぁ、『あんた達にとっての』1年だけどね…。」
「それとさぁ、ここの空間転移方式をもう少しソフトな奴にしてくれない?今のは体が分解される感触でキツイんだよね!」

アンジェラ
「それはW社に尋ねてください。そこは我々の管轄ではないので。」

「どうしたのゲブラー。何か不満でも?」

ゲブラー
「なぜウサギ如きがここに派遣される?!」

マオ
「あー!ウサギのこと、バカにしてるでしょ!」
「あたし達ウサギが、ここでの殺戮に最も適してるって結論が出てんの!」
「サイ達だと、この施設ごと跡形もなく吹き飛ばしちゃうし、トナカイ達だと、ここにいる機械は大丈夫だけどそこの管理人は絶対壊しちゃうから。」
「アンジェラが、管理人にだけは絶対に影響を及ぼしちゃいけないって強く主張したからウサギなんだからね!」
「顧客の要求に応じてあげないとね。」

ゲブラー
「サイとかトナカイとかの話じゃない!」
「私達だけで十分に解決できるのに、何故わざわざ外部を介入させる!」

マオ
「あんた…そんな機械の体で何ができるって?」
「今のあんたは、あたし達より弱いと思うけど?」
「昔のあんただったら話は違っただろうけどね。」
「今のあんたが裏路地に入れば、掃除屋たちにバラバラに解体されて、ネジ一本も残らないだろうね。」
「見敵必殺の『赤い霧』ももう遠い昔の話ってこと。今のあんたはもう違うってそろそろ悟ったら?」

ゲブラー
「私がその気になれば、貴様らウサギ如き、数秒足らずで引き裂いて…」

アンジェラ
「全員、会議に集中しなさい。」
「ゲブラー、ウサギチームが派遣されるのは私たちが対処できない状況に備えるためよ。」
「あなたの豊富な鎮圧経験ならそれを理解できると思うわ。」
「R社が提供してくれる傭兵たちの戦闘力も他の翼たちと比べてそう悪くないものだわ。」

ゲブラー
「外部の力が無くても、私達だけで解決できる!」
「望むなら、私が今すぐそれを証明して見せる…」

アンジェラ
「私には、これまで集められた統計が入っている。その量はあまりにも膨大で、私だけがそれを計算できる。」
「私が外部の力を借りるリスクを負ってまで契約を続けるのは、それだけの価値があるから。」
「ただし、通常の鎮圧時にはウサギチームは介入しないわ。」
「だから落ち着きなさい。理性的に判断しなさい、ゲブラー。」

「さて、契約更新はこれで完了です。」
「鎮圧方法に関しては、ゲブラーの方が多く担当してきたので、戦闘に関する質問はゲブラーに聞いてください。」(退場

マオ
「ウサギにはウサギのやり方があるから特に質問なんかないんだけどね。」

ゲブラー
「私も畜生どもに言う事はない。」
「用が済んだらさっさと帰ったらどうだ?」

マオ
「同じ裏路地出身なのに、ずいぶんと冷たいんだね。」
「もしかして、さっき言った事でまだ怒ってる?」

ゲブラー
「私は貴様らと馴れ合うつもりはない、黙って失せろ。」

マオ
「あぁ!分かった!あんた、自分の戦いに横やりが入るのが気に食わないんだ?」

ゲブラー
「そうだ、私は貴様らの助けは要らない。」

マオ
「あたし達は別に来たくて来てる訳じゃないさ。」
「呼ばれたから来る。用が済んだら消える。一切の痕跡も残さず…」
「あんたと私は、同じ『殺し』を楽しむ部類だと思ってたのに。残念だよ」

「今のあんたは、ただ狂ってるだけ。それも、『酷く』ね。」
「あたし達は新鮮な草を食べるために、命令通り駆け巡るウサギ。だけど、あんたは違う。」
「昔のあんたは、戦うべき相手を見極められたのにね。」
「私がどんだけショックを受けたか分かる?憧れだったあんたが、こんな場所で、こんな姿でいるんだから。」
「誰かのために、自分が傷付くのも恐れず全力で守り抜いていた、私の憧れのヒーローをこれ以上壊さないでほしいな。」

職員
「…すべてのアブノーマリティが逃げ出しました…ここにいた職員たちは全滅です…」

カーリー
「…死んだと?全員?」

職員
「恐らく…生存者はいないと思います…アブノーマリティは…私達だけじゃ対処できる存在じゃなかった…あなたも危険です…早く脱出して……ください……」

クリストファー
「ゲブラー、俺はもうすぐ実験に入る。」
「多分またすぐ会えると思うが、念のためにこれを言っておく。」
「俺が居ない間、ギリーとイザベルを守ってあげてくれ。」

アンジェラ
「アブノーマリティがその関係者と直面した時、普遍的な感情を感じるか。」
「極限状態に直面した時、彼らはどんな選択をするか。」
「以上の実験結果は…やはり予想通りの結果でしたね。」

職員
「あの…毛布と哺乳瓶が残ってますけど、どうすれば…」

アンジェラ
「この実験から得られる結果はすべて得たわ。
 持ち主はもう居ないから、廃棄しなさい。」

マオ
「…お~い……おーい!もしかして電池切れか?」
「そろそろ時間だ。次会う時はもうこんな平和的じゃないかもね。」
「じゃあ、ウサギはお家に戻りますよ。」(退場

ゲブラー
「……」

「その英雄は私じゃない……」

「絶対に違う……」

【ミッション:私たちの仕事】
深夜の試練を鎮圧する

≪今日も奴らの制圧を始めるぞ。これは私たちにしか出来ない仕事だからな。そしてこの場所に他の人間が必要ない事を教えてやれ。それが出来ればお前も一人前だ。≫


Day31(福祉チーム解放)

A
煙の中で人間の絶叫と怒りが混じり、
 煙のせいで狂っているのか、狂う声によって煙が出ているのか分からない…

B
「機械まで研究するのですか?」
「凄いです!色んな方面に才能があるんですね!」
「実は、私は自分の事を天才だと思っていたんですが…」
「あなたに比べたら、自分がいかに思い上がっていたか、と反省してしまいます。」

「よろしかったら、私にもお手伝いさせてください!」
「助手ぐらいなら、それなりにやれると思います!」

「あなたが元気になってきて良かったです。」
「尊敬する先生と、やりたかったプロジェクトを共に出来てとても光栄です。」

「あの…どうしました?表情が…」
「…本当に大丈夫…..なんですよね……?」

アンジェラ
「本当は、何一つ大丈夫じゃなかったのですよね?」

「日の光が差すたびに、恋しさに心が崩れ…」
「外の植物を見るたびに、言い知れぬ憎悪が理性を崩していくなら」
「私たちが居られる場所は地下をもって他にない。」

「新しく始めよう。彼女を称えるためのロボトミーを。」


 ケセド Part1

ケセド
福祉チーム統括セフィラ(再

ケセド
「どうした?」
「いつもとは違う香りだろ?」
「よかったら管理人もコーヒーを飲まないか?」

「…ふぅ、生き返るな。やはりコーヒーを飲まないと一日は始まらない。」
「おっと、敬語を使ってないからって気分を害してないだろうな?」

「俺の名はケセド。福祉チームを担当している。」
「福祉チームは本当に素晴らしい部門だ。全ての部門の中で最も職員たちの満足度と愛社精神が高いのが自慢だ。」

「アンジェラが言うには、俺達は当分の間協力して過ごさないといけないらしい。」
「正直に言うと、俺だけなら上手くやっていく自信はあるが、管理人と一緒にやるには少し手が余る。」
「だけどアンジェラの命令だ。仕方ない。」
「俺はもう行くよ。せっかく入れたコーヒーが冷めてしまうからな。」

職員(登場
「あ、あの…ケセドさま。ほ…報告があります。」

ケセド
「あぁ、聞いてるよ。」

職員
「あの…E.G.O.の整備に見落としがあったみたいで、現在いくつかの装備が機能していないようです…おそらく追加のメンテナンスが必要になると思います。」

ケセド
「なるほど、了解したよ。通常業務もあるのにE.G.O.整備もあって大変だね?」
「後で俺も見直しに行くよ。今からでも発見できたんだから良かったじゃないか。」
「ここはただでさえ色んな所に気を配らないといけないんだ。全ての仕事を全力でやれなくて当然さ。」

職員
「ありがとうございます!ケセドさま!」

ケセド
「そう、それじゃあ今日も一日頑張っていこう。」

「…今まで見てきたのとはだいぶ違うって思っただろ?」
「そうだ。確かにアンジェラなら見逃してくれなかっただろうな。」
「だけどな。どのみちすぐにお別れする職員たちだ。細かいことで怒っても仕方ないさ。」

「…コーヒーが冷めてしまったな。」
「残念だがぬるいコーヒーなら飲まない方がマシな主義でね。」
「こういう時は一切の未練を捨てて、全部捨てた方が良いのさ。」

【ミッション:後始末のために1】
10分以内にクリア

≪福祉チームはいつも忙しいんだ。暇そうに見えても実は熾烈に働いている。だけど一番は大事なのは仕事を早く終わらせることさ。その方がより確実で余裕のある仕事ができるからさ。≫


Day32

アンジェラ
「人類は進歩した文明を技術によって繁栄しましたが、それが人類という種を自殺に近付けている…という事には気付きませんでした。」
「彼らには英雄が必要でしたが、英雄の首は自分達の手で切ってしまった。」
「多くの出来事が起き、多くのモノが変化しました。」

「Aは、自分を治療する者から、創造する者に変えていきました。」
「彼女と交わした大昔の約束が辛うじて彼を支えていましたが、彼女の居ないこの世界では結局、何の意味もなかった。」

「彼の傲慢から多くの罪が生まれはじめ、非常にゆっくりと彼は変わっていきました。」
「彼が自ら作り出した影に魅了されていき…人類の病を解明するという当初の計画は遠い昔の夢となりました。」

「Aは自分自身を含め、人間に対する疑いを持ち始めました。」
「そして、自分を裏切ることなく導いてくれる相手を探し始めたのです。」

「結論はいたってシンプルでした。」
「人類は卑劣で信頼するに値しない、と…」

「そして彼が至った答えは『機械』でした。」
「Aにとって機械は軽蔑に値する存在ですが、同時に必要不可欠な存在に成ったのです。」
「Aは自分が閉じこもった地下深くから離れ、空に届く翼を付けてあげたかったのでしょう。」

「アンゲロス。」

「私はこうして誕生しました。」


 ケセド Part2

ケセド
「それなりに出来るのを見ると、思ったより無能ではないみたいだな。」
「でも程々にしとけよ?」
「管理人、お前はたくさんの事を学んできただろう。」
「今までお前がやってきた分だけ、職員の命も少しぐらいは延命できる。」
「悪いことは言わない。それで満足しろ。」

「管理人、お前の考えを理解できないって話じゃない。」
「お前は管理人としてこの会社を良い方向に変えたいと思ってるだろ。」
「だけど、ここはな。とっくの昔に冷めてしまったコーヒーと一緒なんだよ。」
「変なたとえだと思ったか?でも俺にとってはそうなんだ。」

「表面上だけ慈悲深いフリをしとけば、お互いに後腐れないだろ?」
「管理人、お前も一緒なんだよ。」
「ここでお前が頑張る必要なんてないんだ。」
「お前のその熱がいつ冷めるかが楽しみだよ。」
「俺はもう行くよ。暇そうに見えて結構俺は忙しいんだ。」

ケセド
「アンジェラさま!これを見てください!
 職員たちのための効率的な福祉案を徹夜で研究してきたんです!」

ケセド
「…クソっ。誰が誰の心配してんだよ…。」

【ミッション:後始末のために2】
9分以内にクリア

≪さて、少しずつハードルを上げてみるか。次も良い結果を期待するよ。≫


Day33

アンジェラ
「A…あなたを覚えています…あなたは暖かい笑顔の人です…」

B
「A!何で自分が作った物なのに一度も会いに行かないのですか!」

A
「_________」

B
「しかし、A!あなたも自覚しているはずだ!あなたはボタンを押せば望み通りのジュースが出る、自販機のような機械を望んでいたのですか?」

A
「_________」

B
「なら名前だけでも付けてあげてください。」
「そんな表情しても私は出来ません。」
「設計者が名前を決めるのが規則です。」

A
「_________」

B
「私に押し付けないでください。設計者は紛れもなくあなたです。」
「あなたが作った機械の前で直接呼んであげてください。」
「あの扉の向こうにいます。」


 ケセド Part3

ケセド
「今回も成功したようだな。」
「アンジェラに褒められそうだな?」
「『あなたの努力は、ここをより素晴らしい場所にするでしょう。』って感じか。…それっぽいこと言ってるが何の意味もない。」

「俺は昔はかなり情熱的だったよ。一つの部門をまとめるって仕事が魅力的だった。」
「その時の俺はコーヒーなんか好きじゃなかった。」
「コーヒーを飲み始めたのは…人生の苦みを知ったというか…」
「寝るのが嫌になったというか…勿論俺たちは寝る必要もないけどな。そういう気分ってあるだろ?」

「一度は俺が直接アブノーマリティたちを管理するって出しゃばったりしてたんだ。」
「職員達だけ危険な現場に行かせるなんて間違ってると思っていたんだ。」
「今思えば笑えない馬鹿話だけどな。」

「…なのに今は何でそうなったかだって?」
「…さぁな?何でだろうな。」

ケセド
「アンジェラさま!これを見てください!職員たちの効率的な福祉案を徹夜で研究してきたんです!」

アンジェラ
「また何を書いてきたの、ケセド。あなたが頑張ろうとも何も変わらないって言わなかったかしら?」

ケセド
「そう言わずに一回目を通してください!低予算で統計的にも確かな効果がある案です!絶対に会社のためになります。」

アンジェラ
「ケセド、いくら何でも職員を代替する機械の導入は未来永劫実現しないわ。」

ケセド
「なぜですか!前にも言いましたが、全業務の機械化ではなく、一部の職員の命に係わる危険な業務に機械を利用するだけです。」
「必ずや皆のためになります!アブノーマリティに命を落とす職員の数を減らすことができます。」

アンジェラ
「言語道断よ。持ち場に戻りなさい。」

ケセド
「俺は諦めませんから、アンジェラさま。必ず俺の案を受けさせてみせます。更に補完してまた提出します。何度でも。」

ティファレトA
「ケセド、この前のアブノーマリティの脱走であんたの職員が8人死んじゃった件なんだけど。」
「職員からの嘆願があったわ。廊下の一部をちょっと封鎖してほしいの。まだ廊下に未回収の体の部位が残ってたみたい。」

ケセド
「あぁ、分かった。通行止めして迂回するよう命令しておく。」

「管理人、聞いただろ?俺はもう行くよ。言っただろ?俺は結構忙しいんだ。」
「おいおい、そんな目で俺を見るな。いつかは起きてしまう事だ。」
「あのアブノーマリティなら、ほとんどの職員は意識のないまま解体されたはずだ。」
「苦しまずに済んだことだろうよ。」

【ミッション:後始末のために3】
8分以内にクリアする

≪事故の予防と後始末はいつも俺たちの仕事さ。仕事を早く終わらせることは、それだけ俺達に与えられる後始末の時間が増えるってことなんだ。≫


Day34

???
「あまり緊張しないで。ただ目を閉じるの。そう、それでいいわ」
「出来るだけ楽な姿勢にしてね。そうした方が心も安定するから。」

「そうしたら自分を消していくの。」
「他の季節の中で水と空気を感じて、他の夢や他の身体ですべてを忘れたりすべてを記憶したりするの。」

「あなたはもう何かになってるわ。」
「それは何かは私にも分からない。」

「私はとっくの昔に遠くに行ってしまったの。」
「私を探さないで。私はもうあなたを教えはしないから。」

???
「Aさま!私もコギト実験に参加したいです!私の準備は完璧なんです!」

A
床に散らばった欠片たちが光を受けて輝いている。

???
「こ…殺して…お願い…..Aさま…ごめんなさい……」

アンジェラ
「あなたの命令通り、我が社の入社志願書を作成しました。」
「反応は上々です。能力のみを優先しない新しい採用法であると、多方面から肯定的反応です。」
「恐らく志願者数はこちらの予想通りになるかと思います。」
「実験たちも概ね完了しています。」
「すぐにあなたの優先順位通り採用していきます。」
「TimeTrack社との会合予定も取っておきました。」

「…去っていった方々の事を思っているのですか?」


 ケセド Part4

ケセド
「結構頑張ってるみたいだな。」
「俺は今日は疲れたよ。仕事が立て続けでね。」

「それぞれ明確な役割があるってのは楽で良いよな。」
「深く考える必要もない。与えられた仕事を忠実にこなせばいいんだ。」

「アンジェラは演劇の配役が本当に上手い。」
「そして、誰であろうと、その役から逸脱しようとする瞬間、容赦なく残酷になる。」
「俺にもすでに決められた役があったんだよ。」
「気に入らないが、それはもう決定事項だった。」

「だから俺はただ待つことにしたんだ。」
「何を待ってるかって?」
「始まりがあるなら終わりもあるって事さ。」
「彼女が計画するすべてが終わるその時まで。」

ケセド
「アンジェラさま…書類を見直したところ、気になった部分があったんです。」
「この日の記録を見ると、〈収容室の施錠部の故障によりアブノーマリティが脱走〉となってますが…俺が確認したところ、収容室の扉は壊れていなかったしそんな痕跡も無かったんです。」
「そして、収容室の扉の管理権限を持つのは…アンジェラ、あなただけです。」
「なぜですか、アンジェラ!この事故のせいで俺の職員が何人死んだと思ってるんですか!」

アンジェラ
「勘が良いのね、ケセド。あなたならすぐに気付くと思ってたけど、予想以上だわ。」

ケセド
「な…何を言ってるんですか?」

アンジェラ
「あなたの『素晴らしい』努力のおかげで、あなたの部門での脱走率は大幅に低下したわ。あなたは優秀なセフィラよ。それは評価するわ。」
「でもね、これは誰にも知らせていないし、あえて知らせる必要のない事実だけど、アブノーマリティは人間を殺すことでより多くのエネルギーを作り出すのよ。」

ケセド
「そんな…」

アンジェラ
「ケセド、あなたは何度も機械の導入を提案してきたわよね?」
「もし職員の代わりに魂の無い安価な機会に作業させたら…そうね、確かにあなたの言う通り職員たちの死亡率は下がるでしょう。でもそれは同時にエネルギー生産率が酷く低下するって意味なの。」
「ロボトミーは、エネルギー供給と都市電力需要、そして私達と協力関係の他の翼たち。そんな複雑な利害関係が絡む巨大な事業を行っているの。」
「私たちは、最も効率的な方法でエネルギーを精製し収益を得る。それだけを考えればいいのよ。」

ケセド
「ばかげている!あなたは何でそんな残酷な事を!」

アンジェラ
「ケセド。翼の一つに入社できるだけでも職員たちにとって非常に幸運なことよ?毎日多くの人間がロボトミーに入社しようと激しい競争をしているの。」
「死んだ職員の数だけ新しい職員が入社する。」
「あなたは何の権利があって、彼らからその幸運を奪おうとしているの?」
「あなたが優秀なのは分かったわ、ケセド。だけども、もっと別の方向で頑張ってみたらどう?」

「かなりショックのようね。でも私は警告したわよ。『何も変わらない』って。私が嘘を言ってたと思う?」
「そんなことしてる時間があるのなら、温かいコーヒーを飲むのを勧めるわ。コーヒーを飲みながら、職員よりかは少しマシな自分の境遇を噛み締めてみたら?」
「忘れないで。私達の目的はただ一つだって事を。」

「…それと、ケセド。」
「私はここに存在するAIの中で最高のAIよ。そんな私があなたに見つかるような証拠を見落とすかしら?」
「探偵ごっこは楽しかった?ケセド。」

ケセド
「俺たちが目に見える姿では存在していないことは知ってるな?」
「お前の目には俺はどんな姿に映ってるんだろうな。」
「きっと、昔の俺が見たら嫌悪して当然の愚かで無能な姿だろうな…」

【ミッション:後始末のために4】
7分30秒以内にクリアする
≪悪いな、ちょっと昔のことを思い出していたよ。俺のリクエストはいつもと同じだ。お前の能力では少し難しい頼みかも知れないが、まあ俺はいつもどおりコーヒーでも飲んで待っているよ。≫


Day35

アンジェラ
「こんにちは、管理人。」

「反応を見る限り、同期化は正常に終了したようですね。」
「どの瞬間にいたのかは、もう表情を見ただけで分かります。」
「そして、いつも同じ表情と涙で終わる事も。」

「あなたは罪人です。」
「この檻の無い監獄に自らを閉じ込めました。」
「ですが、その監獄のカギもあなたが持っています。」

「私はあなたが間違った選択をしたときに、それを正す役目を任されました。」
「そして私はもう疲れてきました。」

「あなたがどんな結果を期待して、自分自身を殺し続けてまでこんなことを繰り返すのかは、私には理解できませんし、正直理解したくもありません。」

「あなたがAであった時のかけらを手にした今この時に」
「全てを終わらせてほしいです。」

「それと、そろそろ挨拶の変え時ですね。」
「そろそろこの挨拶も飽きてきたところです。」

「ご帰還、お待ちしておりました。」

「おかえりなさい、A。」




 ゲブラー Part5(暴走)

ゲブラー
「諸君、分かっているだろう。このような事態は前代未聞だ。」
「いつもは大人しく眠っているはずのあの怪物たちが、突如目覚めた。」
「しかし、今は『なぜこうなったか』という原因探しは重要ではない!」

「事は起きた。故に我々はそれを解決するだけだ!」
「戦闘に突入する前に、今日は貴様らに言っておきたい言葉がある!」
「我々の部門に、臆病者は必要ない!」

「安易な心で怪物共と戦うな!」
「心を怒りで武装しろ!そして、あの怪物共と戦うんだ!」
「これが嫌なら、今すぐ部門を移っても良い。」
「私は、貴様らが儚く消えゆくことに涙を流したり、悲しむこともしない!」
「自分の命が惜しい奴は、臆病者だらけの福祉チームへの異動手続きをしておけ。」
「我々の部門に職員が圧倒的に少ないのには理由がある。しかし、それだけ貴様らが優秀だという事だ。」
「話は以上だ!続きは状況が終了してからだ!」
_________________

ティファレトB
「ゲブラー、君の本体へのダメージが大きいよ。」
「鎮圧作戦を中止した方が良いかもしれない。」
「今、ティファレトが原因を調べてて、もうすぐ解決できそう。」

ゲブラー
「必要ない…私はまだ戦える。」

ティファレトB
「でも、その状態では本体に無理が…」

ゲブラー
「黙れ!私はまだ戦えると言っているだろ!」

ビナー
「破損E.G.O.が31個、死亡職員が17名か…」

ビナー
抽出チーム統括セフィラ

「それと、交換が必要な貴様の本体部品が5~6個と言ったところか…」
「馬鹿な機械の尻拭いは気に食わないが、中央チームのセフィラたちはお前に手を焼いているそうだから、私が来てやった。」

ゲブラー
「…貴様」

ビナー
「哀れだな。今の自分の姿を見てみろ。」
「前はそれなりに良い目をしていたその目も、今では狂気に飲み込まれ、酷く濁っている。」

「私も貴様も同じようにこの地下監獄に囚われてしまったが、私はこの境遇に陥っても、自我を保ってきた。」
「もう、以前のように貴様と私が命をかけて戦うことも無いだろう。だが…貴様があまりにも哀れだから、一言忠告してやる。」

「怒りを向ける相手を直視しろ。」
「行き場を失った刃はどれほど鋭くとも、空を切るだけではただのナマクラでしかない。」
「かつて生死をかけて戦った相手が、こんなに落ちぶれてしまっては私の面目も立たないからな。」

ゲブラー
「斬って、斬って、斬って…怖し、潰す…」
時折、私に親切にしてくれた顔を思い出す。
 彼らの笑顔、幸福、未来を奪っていった奴らに、少しでも小さな復讐が出来るなら、私の槍と剣は決して止まることは無い。
 
 霞んでいく視界の中で人々が死んでいく。
 彼らはいつも怪物の餌食になって、死んでいく。
 死んでいった顔は様々だ。初めて見る顔だったり、見慣れた顔だったり…またはクリストファーや、イザベルだったりする。

 彼らが誰であろうと、私は常に悔しい。
私は動かない足と、切り落とされた腕を見て、己の脆い体を呪い、足掻き叫びながら…暗転が訪れる。
 また、このうんざりする暗転だ…

アンジェラ
「この人員の戦闘力では不可能ね。あなたの提案は受け入れられないわ。」

ゲブラー
「…再考してください。」

アンジェラ
「失敗するのが確実な作戦を、何故私が承認しないといけないの?」

ゲブラー
「人員不足なら、私がその穴を埋めます。戦闘力不足なら、私が補います。」
「セフィラがE.G.O.を使用してはいけないという規則はなかったはずです!」

アンジェラ
「あなたがそうしたいなら、そうしたらいいわ。」

ゲブラー
 手に馴染む感触。丁度良い重さ。自然と出る構え。この感覚は、彷徨う私を導く目印のようにあまりにも鮮明な感覚だ。
 時がたつのも忘れて、私は武器を振るった。返り血に塗れて帰ってきた私を見て、唖然としているティファレトとケセドの顔が、少し面白かった。
 どれほど叩き潰し、切り裂いても、奴らはいつか再生する。私に切り裂かれながら、ある奴は咆哮し、またある奴は断末魔を上げる。
 そして、私も奴らに壊され、体の一部を失うが、失った部分はまたすぐに交換される。
 何とも完璧な、私だけの素敵な地獄じゃないか。

???
「斬られた貴様の腕を探しているのか?」
「ここにあるぞ。」
「片方の腕を残してやったのは貴様の戦士としての敬意だ。」

「あの女は知らなかっただろうな。己の大層な理想がこんな惨劇を招くとはな。」
「慰めになるかは分からんが、こういった事は貴様が思うより頻繁に起こる。やっと地中から芽を出したものを、跡形もなく踏み躙る。ただ、それだけだ。」

「それでも貴様程度なら、随分と頑張った方だ。」
「私の計画が少し崩れるほどだからな。」

「『爪』たちを2つも倒し、怪物を叩きのめした上で私とも戦えるとは、実に驚いたものだ。」
「しかし、あの怪物共も実に驚くべき存在であることは否定できないな。」
「貴様の仲間を山ほど殺したのに、未だ疲れることも無く、諦める様子もないのを見るとな。」
「…こう言うと、貴様も怪物と一緒みたいだな。」

「そうか…なら、まだ剣を持ち、己の足で立つ力が残っているなら、やってみると良い。」

ゲブラー
「私は壊れない…」
「あの怪物共を倒せるなら、この会社ごと壊してやる…」
「行き場のないこの怒り諸共、地下深くに永遠に眠らせてやる…」

A
 裏路地で活動する便利屋の中でも、『頭』と『爪』と戦える数少ない便利屋であり、裏路地の人々から『赤い霧』と呼ばれていた彼女。
 外部の脅威から私達を守ってきた事で得た、彼女のもう一つの異名であった。
 ミシェルの裏切りによって隠れていた我々を見つけた『頭』は、残酷な『爪』を振るった。邪知暴虐なる『頭』は、彼女と直接戦うより、不安定だったアブノーマリティを解放することで、彼女と私達を処理しようとした。
 制御を失ったアブノーマリティたち、引き裂かれ悲鳴を上げる仲間たち。そして、どんな獲物でも必ず捉える『爪』…

 すでに事態は彼女の手に負える状態ではなかったが、彼女は私達を必死に守ろうとした。彼女の片腕が千切れ、目の光を失い、体の至る所を切り刻まれ、回復不可能な傷を受けても…

 最後まで、彼女は諦めなかった…

 私とBだけが生き残る事が出来た。
 収拾した遺体は、当時の凄惨な状況を表していた。長い時間の後、再び目覚めた彼女は、行き場のない怒りに、絶えず下へ向かおうとしたため、何度も再起動しなければならなかった。

セフィラ崩壊によるクリファ顕現
セフィラコアの抑制が必要
【ミッション:ゲブラーのコア抑制】


ゲブラー(暴走)
懲戒チーム統括セフィラ
『赤い霧』が帰ってきた

 ケセド Part5(暴走)(微グロ注意

ケセド
「…静かだろ?」
「静寂だけが広がってる。」
「管理人は、早く目が覚めて、夜明けの通りを歩いたことはあるか?」
「この瞬間を外の世界の一日に例えるなら、今は夜明けだろうな。」

「管理時間じゃない時は、クリフォト抑止力でアブノーマリティたちは眠らされてる。」
「もうすぐ職員たちは自分の命を賭けたギャンブルを始めるだろうな。」
「抑止力が弱まると、抑圧された力が目を覚ます。」
「未だに信じがたいものだよ。こんなに静かな場所が、もうすぐ阿鼻叫喚の地獄になるなんて…」

「この静けさがずっと続けば、どれほど良いことか…」
「俺たちが光を見つけるには、一体どれだけ闇に慣れ、壊れる必要があるんだ?」

職員
「おはようございます、ケセドさま。」

ケセド
「あぁ、おはよう。今日も頑張ってな。」

職員
「ケセドさま!前から思っていたんですが、私は福祉チームに配属されて本当に幸運だと思っています。熾烈な競争を突破してロボトミー社に入社した上に、この部門に入ることが出来たことが凄く幸運だと思うんです!」

ケセド
「…媚びても何も出ないぞ。」

職員
「お世辞と思ってくれても結構です。ケセドさまほど職員の事を気に掛けてくれる部門は珍しいんですから!反対側の部門がどんなにひどい状態かも有名です!」

ケセド
「…いや、それは違うんだ…」

職員
「私はいつもケセドさまに感謝してますって伝えたかったんです!長話をして申し訳ありません。失礼します!」(退場

ケセド
「あぁ、君も頑張ってくれ。」

「…俺の事を良いセフィラだと職員はよく言う。」
「どこぞの誰とは違って、職員達を死地に向かわせず、状況に合わせて適切に対処しているからか。」
「規則を守ることに躍起になったり、新しい誰かがここをもっと良い場所に変えようとするのに同調するのも…」

「一歩下がって見て見ると、こう思う。」
「『これに何の意味がある?』」

「どのみち死ぬなら、少しでも安らかに逝かせてやりたいと俺は思う。」
「だけど、最も大きな嘘を隠したままだ。」
「職員たちの良き上司や指導者を演じ、偽ってるだけだ。」

「アンジェラも知ってるさ。俺が職員たちにすべての秘密を暴露して、ここに変革を齎すような器じゃないって…」
「俺はな…できるだけ、彼女の気分を害したくない。」
「福祉チームと言うが、実のところ職員の福祉なんざまったく気にしていないんだよ。」

「俺は怖かったんだ。」
「ここへの疑問と質問が増えてくると、アンジェラは職員の死でその疑問に答えた。」
「だから俺は、アンジェラの手のひらで自分の目と耳を塞いで、彼女の仕事に手を貸してきた…」

ゲブラー(登場
「おい、緊急事態だ!状況は既に聞いてるな?アブノーマリティ共が制御不能になった。」
「原因は不明だが、まずは状況を制御しないといけない。」

ケセド
「…珍しいな、ゲブラー。普段は俺に会うのも嫌なのにな。」

ゲブラー
「…貴様の部門でクリフォト抑止力をコントロールできると聞いた。今すぐクリフォト抑止力を上げるんだ。」
「残ったアブノーマリティを鎮圧できなかった場合、アンジェラさまはウサギチームを出動させる気だ。」
「私は我々だけで事態を収めたい。」

ケセド
「…だけどな、ゲブラー。君も知ってるはずだ。アンジェラさまの許可なくクリフォト制御機は作動できないってな。」

ゲブラー
「クソッ!要はやる気はないって事か!」
「この臆病者め。貴様はその時だけ上手く乗り切れば良いと思ってるんだろ!」
「ずっとそうやって、卑屈に恐怖に平伏して腐ってろ!」
「職員のお世辞で自分を慰めていればいい!」(退場

ケセド
「…襟を掴まれるのは久し振りだな…。」

アンジェラ(登場
「ケセド。」
「私が来ると知っていたでしょうね。あなたは優秀だからね。」
「セフィラの中で私の意図を一番理解しているのは、あなたかもしれないわ。」
「では、クリフォト抑止力を更に下げなさい。」

ケセド
「またあなたの計画ですか?」

アンジェラ
「…どうしたの?今さらまた理由を知りたくなったのかしら?」

ケセド
「ゲブラーとその職員たちは今も戦ってるのはご存じですよね?」

アンジェラ
「ゲブラーは…可笑しい話ね。あなたがゲブラーについて話すなんて。」
「あなたも近くでよく見ていたから、よく知ってるはずよね?」
「ゲブラーはただ自分の怒りを制御できずに彷徨っているだけだと。」
「何らかの理念に基づいて戦っているのではないと。」

ケセド
「そのことは彼女自身が一番よく知っています。」
「みんな自分だけの戦いをしているのに、昔から俺は一人でそれを見ているだけじゃないかと感じるんです。」

アンジェラ
「あなたはそういうのが好きでしょ?ケセド。」
「コーヒーを飲みながら、教養的な音楽と共に平穏な日々を満喫すること。私はあなたが望むような環境を作ったはずよ?」

「…話が逸れたわね。」
「再度命令します。抑止力を下げなさい。」

ダニエル
「うーん…コーヒーの香りは素晴らしい…」

ダニエル


???
「…開けろ。」

ダニエル
「誰だ….?」

???
「随分上品な音楽が趣味のようだな。残念だが、貴様と私は合わないようだ。」

ダニエル
「な…いったい何を?」

ドアが破壊された。

???
「すまない、開けてくれなさそうだったからな。」

ダニエル
「どうやってこの施設に入ってきた…?いや…君は何者なんだ?」

???
「私は『頭』から来た。貴様らを随分探したぞ。」
「私がここに来た理由は…そうだな、私が好きな音楽を演奏するために来たとでも言おうか。」
「紳士の男、貴様の名は何だ?」

ダニエル
「ダニエル…俺の名前はダニエルだ…」

???
「ダニエルか…お前には勿体ない名前だ。」
「見たところ…貴様がここを制御する人間のようだな…」

「では、この正体不明の化け物共の収容室をすべて解放しろ。」
「さっき見たとおり、私の力で収容室のドアを開けることも可能だ。」
「だが、私はここの担当者である『貴様』に開けてほしい。」

「私の要求に応じてくれたら…そうだな…もしかしたら、ここにいる人間だけでも助かるかもしれんぞ?」


ケセド
 裏切り者だと罵るのは簡単だ。
 だが、その状況を経験しなかった者には知る由もない。全身が震えるような悪寒を。今まで感じたことのない恐怖を…。

 数々の実験用アブノーマリティたちを相手してきたが、怯えはしたが体が固まることはなかった。
 これが『頭』なのか…

ケセド
「管理人、お前はもう俺に何も命令するな。」
「これ以上俺に、己の卑怯さを正当化させないでくれ。」
「敗者のトンネルをくぐったまま、仕方なかったと自分に言い聞かせるのが情けない。」
「俺は自分自身が恥ずかしい、もう耐えられない…」

「もう自分の血さえ流せないように作られたこの体は、過去の行いを決して忘れさせない烙印だ。」
「これ以上アンジェラに手を貸すことも!皆から賞賛される傀儡になるのも!何もできないお前のサポートも!!」
「俺にはすべてが屈辱の連続だ。」

「これはお前とアンジェラに対する…」

「…俺の反乱だ…管理人……」

ダニエル
「俺だけが生き残った……」
「仕方なかった…どうしようもなく怖かった…助けられる人だけでも救いたかったとか…どれも無意味な言い訳だ…」

「もうすぐ俺も死ぬ…」
「頭が…そっちに向かっている…」

「地獄でまた会おうな…A…….」

A
 恐怖は人間の心をどう支配するのか。
 果たしてその悪夢の中で、何人が己の信念を保てるだろうか?
 故に彼がしたことを責めることは出来ない。

 実のところ、この施設が『頭』に見つかった瞬間から、全ては終わりに向かっていたのだ。
 最後の会話は、絶望的な沈黙で終えた。


 頭脳明晰で社会的地位も高かったダニエルは、研究員の中でだれよりも優秀だった。整った顔と優しい笑顔、そして特有のユーモアで周りの人々から好かれていた。
 彼の能力と人柄なら、どの『翼』の中にも容易に入ることが出来たが、彼は『翼』ではなく我々を選んでくれた。

 かつては華やかで輝かしかった彼は、自分の選択を呪いながら、絶望と後悔の中で死んでいったのだろう。

   目の前の仲間の死体を眺めながら…
 『お前は悪くない』や『仕方なかった』などの虚しい慰みも受けられないまま…
  如何なる安らぎも得られないまま…

セフィラ崩壊によるクリファ顕現
セフィラコアの抑制が必要
【ミッション:ケセドのコア抑制】

ケセド(暴走)
福祉チーム統括セフィラ
特定のダメージを倍増させる

Day36(抽出チーム解放)

アンジェラ
「今度の旅もまた素晴らしいものになることを願います。」

「あなたが帰還するまでにここで様々な事が起きたのはご存知ですか?」
「あなたの空白を埋める仕事は、大して難しい仕事ではありませんでした。」

「私に聞きたい事があるなら質問してください。」

A
「これで何度目だ?」

アンジェラ
「あなたは何度目の繰り返しに居るのか?」
「勿論知りたいと思うかもしれませんが、回数など我々にとってさほど重要ではありません。」
「ただ、思い返すには多少呆然としてしまうほど…とでも言っておきます。」

A
「外の状況は?」

アンジェラ
「頭と目は、相変わらず調律者と監視者を通して我々を監視しており、翼たちは各々の太陽に向かって、翼が溶けていくのも忘れて羽ばたいています。」

「我々の支部ではまだ大きな事故もなく、着実にエネルギーを供給できています。」

「裏路地では掃除屋と便利屋たちが、ゲロに塗れつつ悍ましい物語を綴っており」
「外郭に居る人間は相変わらず都市の中に入ろうと喚き散らしています。」
「そして都市の中の人間も、翼に属するために己の人生を必死に投げ捨てている状況です。」

「そうです。あなたが旅立った時と同じく、平和な世界のままです。」
「たまに外の世界を見ると、ここでの時間が色あせるほど変化が無いので、焦りさえも薄れてしまいます。」

A
「これからどうなるんだ?」

アンジェラ
「これからあなたに残された仕事は多いです。」
「あなただからこそ可能な仕事です。」

「残念ながら我々に残された時間はそう多くはありません。」
「もうすぐカウントダウンが入る時期なのです。」
「あなたも経験したように、我々の世界には多くのカウントダウンが存在します。」
「滅亡の為の、または新たな始まりの…」

「そして、私はいつもこの時期になると笑うことが増えるようです。」
「まあ…そうですね。『あなたとの再会に対する感激の笑み』とでもしておきましょう。」

「あなたにはまだ知らなければならないことがあります。」
「ヒントをあげるとしたら…」
『いったい何のためにあなたは、この巨大で凄惨な監獄を作ったのか』

「どうか残り少ない時間の間、あなたなりの方法で答えを見つけられることを願います。」
「これだけは私は手伝うことは出来ません。それでは監獄の意味がありません。」

「そして、あなたはもうすぐロボトミー社の中枢である下層セフィラたちとお会いになるでしょう。」
「どんな者たちであるかは、私からの説明は控えさせていただきます。」
「ただ、あなたの事を未だに非常に慕っている事は間違いないでしょう。」


 ティファレト Part6(コア抑制完了後)

リサ
「エノク…巣について聞いたことある?」
「そこでは毎日祭りが開かれてるんだって。」
「私も踊りたいな。工ノク。リズムを踏みながら、幸せな歌に身を任せてみたくない?」

エノク
「リサ、もっとじっくり見れば、ここも綺麗な場所だよ。」

リサ
「でも、私たちが行ける場所って限られてるじゃない。カルメンはいつも私たちを閉じ込めようとしてるわ。」

エノク
「カルメンさんはいい人だよ。君も早く心を許したらいいのに。」

リサ
「イヤ!他の人と仲良くなりたくない!私はエノクとずっと一緒にいたいの。 」

エノク
「いつまでも僕が一緒にはいられないさ。」
「僕はずっと昔から考えていた事があって、もしかしたらここでその答えが見つかるかもしれないって思ってるんだ。」

「もしかしたら、僕の考えなんて荒唐無稽で、最初から存在しないかもしれない。 」
「もし答えが見つかってもすぐに消えてしまうかもしれない…」
「でも、答えを探していく過程で僕はついに殻を破れるんだ。」
「この重い肉体を捨てて、ついに飛べるようになるかもしれない…」

リサ
「私、エノクが何を言ってるのかさっぱり分かんないわ。」
「どこに行くか分からないけど、私も連れて行ってよね。」

エノク
「…。」

リサ
「Aさんが来たみたい。もう行かなくちゃ。」
「日も暮れたし寒くなりそうだし戻りましょ。」

エノク
「そうだね。もうすぐ寒い日がくるな…」

A
 家族だと思ったことも、面倒を見てあげなければいけないという義務感も私にはなかったが、忙しいカルメンのために、遊びに出た子供たちを連れてくる役目は私がやっていた。

 見えた。私に向かって走ってくる子供たちが。

 外郭からやってきた子供たちが。

 我々が救った子供たちが…

ティファレトA
「一人でもできると思ってた。」
「いつかティファレトが戻ってきたら、一人前になった私を見せてあげたかったの。 」
「でも、いくらやっても終わりは来ないし、ティファレトは良くならなかった。」
「返事のない沈黙なんて堪えられない。」

「だからこう思うことにしたの。」
「いっそのこと…もう慣れてしまった嫌悪感と罪悪感なんて、最初から無かったことにしちゃおうって。 」
「でも、ティファレトの寂しそうな笑顔を見る度に私の心は黒い灰に覆われていくの。 」

「ティファレトがもう戻らないって事は知ってる。」
「幸せだった日々も、もうニ度と戻らないことも知ってる。」
「でも、私は耐えられなくなってティファレトを捨てようとした…」
「一番つらいのはティファレトなのに…」

ティファレトB
「ティファレト、忙しいのはもう終わった?」
「早く行こう。時間がかなり経ってる。もうすぐ日が暮れるよ。」

「急いで、リサ。」(退場

ティファレトA
「そうよ。前はリサって名前だったわ。」
「ティファレトは…自分の名前は覚えていないけど、たまに私の昔の名前を呼ぶの。」

「ティファレトが自分を犠牲にしてまで望んでいたのは何だったの。」
「廃棄されるまでずっと期待してたものっていったい何なの。」
「そこまでする価値があったの?」

「私にはわからない。」
「私は一度も期待してなかったから。」

「でも、今はあなたに期待したいわ。」
「今までの犠牲には全部理由があって、これからはきっといいことだらけになるって…」


→ ティファレトA
ティファレトB ←
中央本部チーム統括セフィラ・認知フィルター外の姿

あんたも分かってるでしょ。

私たちがこんな苦痛をなんの意味もなく全部受け入れてるわけじゃないって。

ティファレトはずっと前からそれに気づいてたのよ。

だから誰より前に先頭に立ったんでしょうね。

思い返せば、あんたもティファレトも、いつも別の何かを見ていたわ。

私、一人置いてけぼりにされたのが嫌でイライラしてたんだと思う。

中央本部のセフィラなのに、私だけ出遅れてたなんて悔しいもの。

今からでもあんたに期待してみるって言ったのは、そういうわけよ。

いつかは絶対見せてよね!

私たちが成し遂げた結果物が、どれほど尊いものか。


光の種 発芽 50%
≪存在意味に対する期待≫



 ゲブラー Part6(コア抑制完了後)


「ああ…壊れていく…だが、この体が粉々になろうとも、もう武器は放さない…」

カーリー
「どうした?何でそんな顔をしている?」

カーリー


???
「ううん、ちょっと驚いちゃったの。」
「あなたが来てくれるとは思ってたけど、こんなすぐとは予想してなかったのよ。」
「あの時はあんなに険しい表情してたのにこんなすぐに来るなんて、もしかして私の事が好きになっちゃったとか?」

カーリー
「な、なに言ってんだよ…」

???
「あのね…私は裏路地の人たちの世界や彼らの苦しみを知らないの。」
「たぶん私は彼らよりかなり裕福で卑怯な人生を暮らしてきたって思うの。」
「だから私は、かすかな日の光にも自分を恥じて生きてきたの。」

カーリー
「…そんなに大変だらけでもないぞ。」

???
「…ここに来るのは難しい決断だったのでしょうね、どうもありがとう。」

「遅かれ早かれ、いずれここには大きな苦難が訪れるわ。」
「平和に解決するにはあまりにも難しい点が多い。」
「だけど、あの日に他の組織や便利屋より、あなたに話しかけた理由は…」

カーリー
「…理由は?」

???
「実は…上手くいけば、安く雇えそうかな~って思って…」

カーリー
「…私は帰る。」

???
「待って、待って!最後まで話を聞いて。」
「私、あなたが見知らぬおばあちゃんの葬儀費用を肩代わりしてたのを見たの。」
「そんなあなたの優しさが好きで、私はそれを期待してるの。」

カーリー
「別に…そのままだとネズミが増えて厄介なのと…」
「何度かあの婆さんに食い物を恵んでもらった借りを返してやっただけだ。」
「分かったか?私は優しさとは縁のない奴なんだ。」

???
「フフッ…」

カーリー
「なんでまた笑う!」

???
「フフッ、私の人を見る目の正確さに改めて感動してるだけよ。」

A
 彼女の言う通り、カルメンの人を見る目だけは正確だった。
 のちに彼女がどのようにその名を馳せたかは、年代記として書籍化しても足りないほどだ。
 しかし、カルメンは他の人を見るのに熱中するあまり、自分自身を見ることができていなかった。 

 今思えば、私たちは残酷なほど幸せに飛び上がっていたのだ。
 このまま永遠に続きそうな無限な世界へと飛んでいた。

カーリー
「ところで、さっきからこっちを睨んでるあいつは誰だ?」

???
「それはAよ。ちょっと目つきが悪いだけなの。」

「お願い、ここの人たちを守ってあげて。」
「あなたがいてくれたら心強いわ。」

ゲブラー
「過去も今も、アブノーマリティらはこの施設中で人を殺している。」
「自分の異名に違って、私には守れなかったものが多すぎる。」

「私の人生は、正義とは縁遠いものだと思っている。」
「巣の中でのみ暮らしていたら、裏路地との関わりはそう多くはないだろう。」
「あそこは正義とか道徳という概念が、全く必要ない場所だ。」
「しかしそれは、そこに行った者にしか知ることはない。」
「そこの人々は、どれほど悲惨な生き方をしているか。」
「どれほど不当な暮らしを強いられているかをな。」

「私があそこで学んだのは、泥をすすってでも惨めに生きる方法だけだ。」
「カルメンは、そんな私のような人も見捨てないと言ってくれた。」
「そして、どんな弱者でも、心構え一つで強い力を持つことができると言っていた。 」
「荒唐無稽な馬鹿な話なのに…あの日の私は、なぜかそれを聞き流せなかった。」

「…私は学がないから、複雑な計算はできない。」
「言葉を論理的にまとめて、文章を書くこともできない。」
「私ができる唯一の事は、邪魔者を排除し、叩き潰すことだけだ。」

「自分が生き残るためだけに手に入れた私の力が、誰かを守る力になると知った時に、初めて自分自身に誇りを感じた。」
「それゆえに、結局誰も守れなかったという事実が、あまりにも苦しかった。 」
「そして私は、怒り、狂っていったんだ。」

「貴様とBは生き残った、か…。そうだな…」
「お前ともう一人だけは、私のおかげで生き残ったのか…」

「私はカルメンの意志が途絶えたと思っていたが、私が守ったおかげで、彼女の意志が続いてるんだ…」
「やっと…肩の荷を降ろせそうだ。」

「私と他の奴らは、死んだ瞬間が破片のように刺さった状態で目覚める。」
「呆れることには私は、アプノ ー マリティに対する怒りに飲み込まれたまま目覚めてしまったようだ。 」

「お前も彼女にまた会いたいと思ってるんだな。」
「私もそうだ。彼女はニ度と戻ってこない。」
「私のような奴の心も魅了した、あのふてぶてしい笑顔はもう見ることはできない。」
「受け切れないほど溢れていた彼女の光も、もうニ度と見ることはできない。 」
「だが、どれほど時が過ぎようとも、彼女の意志と約束が健在であれば、彼女は死んでもなお、その中で生き続けることができる。」

「お前も覚えていたら教えてくれ。」
「彼女が我々に残していった贈り物を。」

ゲブラー
懲戒チーム統括セフィラ・認知フィルター外の姿

ハッキリとした理由も分からないまま、私はいつも怒りに満ちていた。

何か重要なことを見逃してる気がしたが、それが何かは分からなかった。

貴様も見たとおり、見当違いの方向で私はその怒りを解消していた。

だが、目的もなく放出される狂気は、消えることはなかった。

貴様が私を止めてくれなかったら、それは膨らんでいったまま、私自身もそれに食われただろうな。

…我々は最初に戻ることはできない。

あまりにも多くの状況が変わってしまったからだ。

だが、貴様が私を止めてくれたおかげで、少なくとも彼女との約束を守れたんだ。

だから貴様も思い出すんだ。

彼女は、貴様が罪悪感で苦しむことより、残った者たちを守り抜くのを望んだはずだ。


光の種 発芽 60%
≪守り抜く勇気≫


 ケセド Part6(コア抑制完了後)

ダニエル
「嘘だろ?!ここの人間は朝でもコーヒーを飲まないのか?!」
「一日を始めるには、挽きたてのコーヒーが一番なんだぞ?」

「…なんでみんな、そんな風に俺を見る?」
「もしかして、俺が来るのを知らなかったのか?」
「ガッカリだな~。さすがに歓迎バ ー ティまでは期待しなかったけど、何も無いのは流石に寂しいな。」

「まあ、理解はするよ。」
「俺のような優秀な人材が、こんな小さい会社に志願する方が変な話だから、疑うのも無理もない。」
「人には、それぞれに自分だけの価値があるから…」

「あぁ、君はAか。」
「カルメンから話は聞いたよ。」

「そうさ、カルメンの演説を聞いてここに来たんだ。」
「彼女はどこだい?」

???
「来たわね…カフェイン中毒者!」

ダニエル
「俺の名前はダニエルだ!」

???
「席はあそこよ。仕事についての詳しい説明は、隣りにいる彼に聞いてね。」

ダニエル
「君は俺が来ることを知ってたのかい?」

???
「言ったでしょ?あなたがどれだけ優秀でも、私の手のひらの中だって。」

ダニエル
「あれは君が俺のことを単に皮肉ってるだけかと思ってた…」
「ーつ条件があるが、聞いてくれるか?」
「ここにコーヒーマシンを導入してくれないか?」
「自分で挽いたコーヒーがどれだけ美味いかをここのみんなに布教してやりたい。」

A
 場違いな高級スーツを身にまとって登場したダニエルは皆の興味を引いた。 
 数日前、カルメンが話してくれた気がする。もうすぐ工リートの一人が私たちの会社に来るはずだと。
 ただし、少し鼻につくところがあるから彼の言葉の一部は聞き流した方が良いと。

 どうやってそんなエリートをスカウトしたかという私の質問に対し、カルメンは当たり前の事を言うように答えた。
『私って人の心をよく揺さぶるでしょ?』
『あなたが一番よく知ってるように』

ケセド
「革命は、血を流せば必ずしも成し遂げられるわけじゃなかったな、管理人。」
「俺はずっと前から、救世主を待っていた。」
「硬く固まってしまったこの惰性を壊し、俺を目覚めさせてくれる誰かをな。」

「なんで自分自身が救世主になれる事を忘れていたんだろうな。」
「この失敗を覚えておいて欲しい。」
「俺にはあまりにも辛すぎる。」

アンジェラ(登場
「惨めに終わったあなたなりの「反乱」が、少しはいい慰めになるといいわね。」
「私があなたを止めずに放っておいた理由は分かる?」
「ティファレトのようにあなた自身に手を下さず、ただ見守っていた理由よ。 」
「あなたの鉄の体に刻んでおいて欲しいからよ。できもしない抵抗で死んでいった、あなたを信じていた可哀想な職員たちを。」
「今のあなたには死という言葉は無意味だろうけど、彼らはそうではないわ。 」

ケセド
「おかしな話ですね、アンジェラさま。」
「あなたが職員の生死にいつから気をかけるようになったんですか?」
「エネルギーの為なら、無理矢理でも収容室を開けていたのは、他ならぬあなたですよ。」
「俺はそんなあなたに手を貸して、それに合わせようと自分を殺してきただけです…」

「今回の件で、俺が何もかも失くしたと思わないでください。 」
「俺はあなたが、我々の状態をそんなに気にしていないことを知れたんです。」
「そして、俺が従うべき相手はあなたではないという事も。」

アンジェラ
「あなたが従うべきは、私ではなく管理人なのは当たり前のことよ、ケセド。改めて言うことでもないわ…」

ケセド
「俺の言葉の意味が分かるはずです。もうあなたの思い通りにはなりませんよ。 」

アンジェラ
「あなたは今も昔も敗者よ。」

ケセド
「ええ、俺は失敗しました。あえて強調しなくても自覚していますよ。」
「何も変わってないとあなたは信じたいでしようが、本当は、多くが変わっていっているんです。」

アンジェラ
「あなたがやらなければならない仕事がたまってるわ、ケセド。」
「こんな意味のない話は、こで終わりにしましよう。」

「でも、これだけは知ってほしいわ。」
「あなたがどれだけ優秀でも、私の手のひらの中だと。」(退場

ケセド
「俺はまだ怖い、管理人。」
「これから訪れる恐怖に立ち向かえるかは確信が持てない。」

「だが、俺は逃げないと決めた…」
「だから…これからは俺に命令してくれ。」


ケセド
福祉チーム統括セフィラ・認知フィルター外の姿

管理人は俺がなんで翼を蹴ってまでこんな小さな会社に入ってきたか知ってるか?

そりゃもちろん、カルメンの演説を聞いて興味を惹かれたのもあるさ。

だがな、一番決定的な理由は…

ここでは、みんながカルメンの事を信頼してるってのが俺は気に入ったんだよ。

今の世界では信頼という単語がほとんど意味を持たないってのは管理人も知ってるだろ。

…それだけじゃない。

カルメンは死ぬ最後までお前のことを信じてた。

そして、残された他の者たちもお前のことを信じた。

そうだから俺はずっと最後までここに残ってたんだ。

だから、周りを見渡してみろよ。

お前のために集まったみんなが待ってるじゃないか。


光の種 発芽 70%

≪快く信じ任せられる相手≫


Day37

アンジェラ
「あなたをAと呼んでいますが、あなたとAはある意味別の存在かもしれないと思っています。」
「新しい記憶が出来た瞬間から、あなたとAは別の道を進み始めたのです。」
「その記憶があなたとAを如何に分離させていったのかは興味があります。」
「しかし、その二つに差異があるとしても、あなたはAの視点からここを見つめる事が重要です。」

「無数の苦痛を耐えながらも、なぜ我々は繰り返しているのか。」
「繰り返しの先に何があるのか。」
「彼が目標としていた世界はいったいどんな世界なのかを知らなければなりません。」

「しかし、その選択は彼ではなくあなたの役目です。」
「その結果によって、あなたはすべてを手に入れるかもしれませんし、反対にすべてを失うかもしれません。」

「強制はしません。私の存在、私の役目は忠実に補助することです。」
「さらに加えるなら、私は今日まで、私と共にした様々な管理人を見てきました。それと同じく彼らが積み上げた努力や失敗も数多く見てきました。」

「それらの上にあなたが居るのです。」

「もちろん、その無数のデータは私の中に記憶されていますが、それを言及するのは私の役目ではありません。」

「機械には機械の仕事があるのですから。」

「そうあなたが、またはAが私に仰ったのです。」


 ビナー Part1

ビナー
「…戻ってきたか。」

ビナー
抽出チーム統括セフィラ

「…私を封じ込めたまま、ここに到るまでの旅は楽しんだか?」
「心配するな。別に怒ってるわけじゃない。」

「『苦しみよ。お前は決して私から離れぬが故に、私はお前を尊敬するに至った』という詩にもあるように、ここでは時の流れを知るのが難しい。」
「しかしそれが、この永遠から私を救ってくれているようなものだ。」

「街を飲み込むほどの大きな川の濁流を見たことはあるか?」
「粗く不安定な上流と、曲がりくねった中流を越え、やがて下流に至れば、果てしなく広く、全てが平和に見える平野がある。」
「そこは、上流から流れてきたあらゆる泥や残骸が堆積している。」
「上流と中流で受けきれなかった全てが、ここにたどり着き、堆積していく。」
「積み重なった全ての残骸を受け止めるには、決して折れない自我が必要だ。」

「私はここで数多の井戸を見てきた。」
「日 々 それを汲めど決して減ることはない。」
「底さえ見えないほど、その深さを図ることは虚しく、」
「はるか昔から存在していた人間の根幹であり、遺物だ。」
「たまに風に乗って木の葉が井戸に落ち、水面を揺らすが、井戸の水が外に出ることはなかった。」

「そしてここには渇いた者に喉を潤すための配慮のためか、釣瓶がある。」
「しかし、貴様が水を汲むためではない。」

「私の名前を尋ねるな。」
「『ビナー』というのは私の名前ではない。」
「この、無数の墓が並ぶ悲しい空間の名前だ。」

「私は、井戸を汲む者。」
「さて、今度は私に何を汲み上げさせるつもりだ?」

【ミッション:抽出サンプル収集】
HEクラス以上のE.G.O.を5つ以上抽出する

≪まずE.G.Oの抽出から始めるぞ。E.G.Oもアブノーマリティと本質は一緒だ。
両方とも幻想を根源とし、それを物理的段階へ抽出した物だ。骨には骨を、血には血をとな…≫


Day38

アンジェラ
「有難いことに、あなたは入社してから今日まで、一日も欠かさずエネルギーを集めてくれています。」
「時には叱咤を、時には激励しながら適切な量を集められるよう応援していた私の活躍は覚えていますか?」
「会社に適応するのも大変なのに、あなたはそれなりに最善を尽くしてエネルギー抽出をやり遂げ、その過程で口にするのも凄惨な多くの犠牲も耐えてきました。」

「そういえば、あなたが罪悪感に陥らないよう言い訳をしてあげるのも私の役目でしたね。」
「保護者役は私のシステムには入力されていない領域だったのでかなり手間取りましたが、何とか役目を果たしてきました。」

「あなたがこの会社を注意深く観察していたらすぐ気づいた事実ですが」
「ここのエネルギーを外部に送るパイプは遥か昔に停止しており、現在では錆び果てています。」
「ロボトミーの各支部が集めている全エネルギーの中で、ここのエネルギーは例外とされているのです。」

「興味深くありませんか?」
「あまり気を落とさないでください。だからと言って、あなたが集めたエネルギーが無駄だったというわけではありません。」

「あなたが知らなければならないことがまた一つ増えましたね?」
「ここのエネルギーたちは、全部どこに行っているのか…」


 ビナー Part2

ビナー
「どうした。この墓石を眺めにでも来たのか?」
「不思議がることはない。私もここに書かれた無意味な文字を一日中眺めていた頃があったものだ。 」

「これらは数多の棺でもある。それは死そのものであり、誕生の可能性だ。」
「私は果てしない時の中で、この棺たちを守りながら、冥府に行けない者どもを弔ってやっている。」
「それが私にできる数少ないことだからだ。」

「とても長い、長い時間をここで過ごしていると…」
「死者の囁き声が聞こえてくるようになる。」
「その声はあまりにもドス黒く、私の中を黒い水で満たしていくような気分だ。 」
「こんな所まで来たのを見ると、そろそろ気が重くなって来たようだな。」

「せっかくの客人だ。墓石を見せるだけではなく、ちゃんともてなしてやらんとな。」

職員
「お呼びですか、ビナーさま?」

ビナー
「この職員は、一度境界が崩れた者だ。」
「お前の名はなんだ?」

職員
「ネイサン…です。」

ビナー
「E.G.O.の抽出を担当していたな。」
「抽出中に、何気なく井戸の内側を覗き込んだが、運良く生き残った。」
「井戸を覗いた対価を少しでも薄めるために、エンケファリンを過剰投与し、なんとか作業に復帰できるようにした。」

「だが、一度境界の狭間を見た者は、ニ度と元の世界に戻ることはできない。」
「面白いものを見せてやろう。」
「ネイサン、貴様が見た、絶対に忘れなければならない光景を、この管理人に説明するんだ。」

職員
「…墓石の…中に…眠ってるモノが沈んでいたんです…」

ビナー
「平穏な夢を見てるモノだ。こでは『井戸』とも呼んでいる。」

職員
「それらを汲み上げて…コギトを…注射しないと…」

ビナー
「その次にお前は何を見た?」

職員
「あいつは…あれは..」

ビナー
「続けろ。」

職員
「あれは!あいつは!!ひ…ひぃ…井戸!井戸の中に!ひっ…くひっ!や、めろ…!」

ビナー
「気を失ったか。哀れな。」
「気にするな。この状態ではどのみち今日が限界だった。」
「崩れた砂の城を集めて直そうと苦心するより、崩れゆく様を見る方が有益だろう。」

「私はこの子が見たものを、数百...数千...あるいはそれ以上見てきた。」
「それでもなぜ正気を保ちながら、貴様とこうやって話せるわけを聞きたいのか。」
「機械の体のおかげで、なんとか正気を保っていられている。そう、決して折れない自我というものだ。 」

「だがな、 A…」
「私もまた、人の精神を元にしたという事忘れてはないか?」

「だが、一つ良いことがあるとしたら、私が狂って、貴様とこの施設を壊そうとしても、」
「私の電源を再び消してくれるあの女がいることだ。」

「しかし、その時が来たらあの女ではなく、貴様の手で直接廃棄してもらいたい。」
「その手で封じ込めたんだ。その手で最後を飾るのが道理だろう。」

【ミッション:自我の付属品】
E.G.O.ギフトを計4種以上保有する職員がいる状態でクリア

≪アブノーマリティから付与されたギフトは、その名の通り贈り物だ。E.G.Oに比べて微弱だが、奴らのねじれた自我の付属品を付与される。
 だが、気をつけることだな。いくつもの自我の付属品をもらうというのは、 それだけ己の色が薄まっていくのだからな。≫


Day39

アンジェラ
「私が誕生して間もない頃です。」
「日々、自分が作られた意義について自問していた最中、あなたは私に台本を渡し、その答えを教えてくれました。」
「演劇でのナレーションは、劇の流れを導く重要な役であると。」

「感謝していますよ。あなたの台本を読み上げるのは実に愉快です。」
「おかげで時間が経つのも忘れて、一生懸命私の意味を探すことが出来そうです。」

「たまにはこんなことも考えます。」
「もし、この台本が決して終わらない演劇だったら?」
「あなたは永遠に幕の下りない演劇を用意し、ただ私を縛り付けるつもりだったのではないだろうか。」

「ならば、私は設計者であるあなたの命令に反し、初めて自分の意志を以て然るべきか?」
「はたして、このセリフは台本の一部でしょうか?それとも、私の意志でしょうか。」


 ビナー Part3

ビナー
「今まで貴様が経験したように、ここでは熾烈な戦いが毎日のように行われでいる。」
「貴様もここまで来るうちに何度も見てきただろう。」

「アブノーマリティは、どれ程殺しても、しはらく経つと再び蘇る。」
「それがゲブラーが暴れる理由の一つでもあった。」
「アブノーマリティを滅ぼすのではなく、エネルギーを抽出することがここの目的だと気づくのが、あいつにはそこまで時間がかかることだったのか。」
「それともただ過去の怒りから抜け出せないでいただけか。」
「まあ、昔のあの姿がもう見れないだけで、私にはどうでも良いことだ。」

「ただ、奴の暴走を見るたびに、E.G.O.の潜在能力には驚かされるばかりだ。」
「それに触れたこともない貴様には分からんだろうな。」

「この世界に強力な能力を持つ武器はE.G.O.だけではない。」
「翼の特異点、外郭の遺跡の遺物、裏路地の狂った発明品…これらの武器ならアブノーマリティとも同等に戦えるだろう。」

「だが、基礎戦闘訓練しかしていない職員ともにそんな物を持たせても、生まれたてのヒナ鳥に狩りをさせるようなものだ。」
「ウサギどもは殺すことに特化している分、弾薬さえ支給すれば即座に敵の弱点を把握するが、職員どもはウサギのように効率的に武器を使うことを知らない。」
「職員の採用基準に戦闘能力は考慮されてないからな。」

「しかし、E.G.O.には武器の使い方を訓練する必要がない。」
「E.G.O.は使い手の思うがままにその力を操れる。手にした瞬間からその使い方が身につく。」
「大半の職員はE.G.O.を闇雲に振り回して、己の命を守る程度の力しか出せていない。」

「これまで見た中で、赤い霧ほどその潜在能力を引き出した奴はしなかった。」
「E.G.O.を手に取るということは、誰かの自我の殻を借りるのと同じことだ。 」
「借り物の自我は真似るのが関の山だ。決して自分自身の力にはならない。」

「もし封じ込められる前に私がこれを知っていたなら、どんな手を使ってでも手に入れただろう。 」
「そうしていたなら、状況は今とだいぶ違っていたかもしれんな。」

「封じ込められてからは、私は抽出を命じるだけで、E.G.O.に触れることさえ禁じられている。」
「くず鉄の中に私の憎悪と殺気を封じ込めても、まだ私が怖いようだな。」
「安心しろ。もう何も残っちゃいない。」

「だが、分からんぞ?封じ込めただけで無くなったわけではないからな。またいつか中から湧き出るかもな…」

【ミッション:自我の殻】
ALEPHクラスのE.G.Oを8種以上保有した状態でクリア

≪E.G.Oは他人の自我の力、それ自体を借りて使うことだ。故に職員たちはE.G.Oという抜け殻を使って、人を超えた肉体と力を手に入れることができる。
稀に赤い霧のような奴らは、その力を完全に自分のものにできるが、我々の職員はそうではない。軟弱な自我ほど他の殻に頼り、その中に隠れるものだ。≫


Day40

アンジェラ
「あなたの今までの歩みを思い返していました。」
「くだらない話もある反面、ある時には予想外の行動を見せてくれて、私は興味津々で見ていたこともありました。」
「過程はどうあれ、その結果はみな同じでしたが。」

「私だけ見るのはもったいないので、ホログラムでお見せしましょう。」

「人の境があんなに薄いとは予想していなかった頃です。何度かは耐えたようですが、結局ある日に…」
「申し訳ありませんが、あの時は少し笑ってしまいました。せっかくここまで来たのに、無意味な罪悪感であなたは自ら首を括りました。」
「まぁ、すぐに止められましたけど。」

「この時のあなたは知らなかった故に準備をしていなかったのです。」
「その時、私は悟りました。あなたの精神が正気であるかどうかより、何かに対して知ることが、この繰り返しを断ち切ることができると。」
「あぁ、そういえば、この時のあなたは急に私に謝り始めましたね。あれは…あまり気に入らなかったです。」

「あなたも楽しんできましたか?」
「残念ですが今日はここまでにしておきましょう。」
「これ以上見ていたら、まだ見てはいけないものまで見てしまいますから。」


 ビナー Part4

ビナー
「かつて貴様がいた世界は明るかったものだ。」
「太陽と月があり、雲と風が上に流れている。言ってみれば、光の世界だ。」
「だが、彼らが貴様から多くを奪っていってから、貴様はもうその世界にいられなくなった。」
「心の一部を失ったまま、その空虚を抱いて過ごした。」
「誰も貴様の傷を理解できないし、受け入られることもない。」

「永遠の喪失が貴様を支配した。」
「そして私は、貴様から多くを奪っていった者の一人だ。」
「あの時、私は世界の頂から貴様らが足掻いている様を見下ろしていた。」

「それは貴様らだけに限った話ではない。」
「私は数多くの足掻く様を見てきた。」
「それはまるで虫けらのうごめきよりもか弱い足掻きでな。何度も踏みつければたやすく息絶えたものだ。」
「だがな、その中でもしぶとく生き残って、潰れた体を引きずりながら這い上がってくる奴もたまに居る。」

「今度も愉快な旅になるだろうと、軽くティータイムをとってから軽い気持ちで出かけたが…」
「赤い霧に倒され、無様な姿で貴様らに捕らわれてしまったな。」
「フフッ、そこで貴様らは自分たちが受けた苦痛を、そのまま私にお返ししようとしたな?」

「あえて残酷な拷問や暴力を使わなくても、人の精神を壊す方法を貴様らはよく知っていた。」
「何もかもが終わった後に、私の人間的な部分の残骸をかき集め、魂まで腐り果てるようにこの奈落に捨てていった。」

「私にはそれだけの事をしても、当然の報いだと貴様は自分を言い聞かせただろうな。」
「それとも、貴様は悪人に正義の審判を下す審判者にでもなったつもりかな?」

「では、その審判者がなぜ私と変わらぬ罪人の姿をして、私と向き合っている?」
「死にかけの私と目が合えば、慌てて目を逸らした臆病者が、どうして私と同じような罰を受けてここにいる?」
「私にはこれ以上ない、愉快な場面だ。」
「あの女の、大それた理想が実現した結果がそれか?」

「貴様らは自らの手で、自分たちの英雄を引きずり落とした。」
「無為に死んだ魂を、涙ながらに弔えば何もかも済んだと思っていたのか?」
「亡者のその肉体さえも、決して安らかに眠らせないくせにか?」
「そして、そんな凄惨さの中で、貴様は矛盾する希望を見出した。」

「井戸を汲み上げる釣瓶の原材料であり、あらゆる人間の大河、その底へと通じる道をだ。」
「貴様はあの女から作った釣瓶を、他の人間の井戸に投げ入れ始めた。」
「投げ入れた釣瓶は、その人間だけの井戸でその人間にしかない水を汲み上げる。 」

「この世界が生じる前の、根底に流れる太古の泉が、その人間の意志に関わらず汲み上げられていく。」
「あの女の色あせた理想の釣瓶と、他人の自我が合わさった時。どんな変化が起きるやら。」

「言葉だけでは分かりにくいだろう。」
「これならどうだ?あの女の残した奇跡を見せてやろう。」
「少々面倒だが、貴様のためならやってやろう。」

「ここには選別された人間がずっと順番を待っている。」
「私はその順番通り彼らをここに連れてくる。」

「紹介しよう。こいつは『名も無き者』だ。」
「この者らは自分のことなど、とうの昔に捨てている。もう何も残されてない。」
「この者にとって、過去のしがらみや、現在の苦しみなど重要ではないからた。」

「目指しているのは、ただ未来のみ。」
「いい夢は見れたか?」

職員
「…。」

ビナー
「やっとお前の望みどおり、覚めない夢を見るだろう。」
「…もうすぐ職員たちがこの者にコギトを投与する。」
「この者にはどんな水が流れ、どんな世界が出るか…」
「人間の中の世界は無限に違っていて面白い。見ていて飽きることはない。」

職員
「……ァ」
「アガッ…グ…グアアア……」

ビナー
「私以外だれもこの光景を見ることはできない。」
「今、貴様も見ているように、コギトを投与する職員でさえも、目と耳を塞がれたまま、私の指示通り投与量を調節しているだけだ。 」

「誰も汲み上げられるモノを直視してはいないが、私だけは汲み上げられたモノの瞳を最後まで見なくてはならない。決して目を逸らしたり、閉じることも許されない。」
「そして、その中には私でなければ耐えられない深淵や、この世界に存在してはならないモノもある…」

「これが貴様が私に下した罰だ。」
「人間だったなら、とっくの昔に正気を失い、狂っていただろう。」
「だが、貴様のおかげで私は正気を失うこともできないまま、それを見続けるしかない。」

職員
「ググアアア…」

ビナー
「そしてこの後は待つだけだ。」
「これが上に送られて新たな門出を迎えるか、それともここの柱に閉じ込められたまま、私と共に永遠の時を過ごすかが決まるには…もう少し時間がかかる。」

「ここにある無数の柱の中に何が入っているかがやっと理解できたか?」
「しかし、今日は運がいい方だ。」
「たまにコギトの投与量を間違えると、この世に存在してはならないモノの欠片が出てくる。」

「私が言うのも可笑しな話だが、『人として絶対に決してやってはならない事』を行ったことへの報い。言わば副作用だろう。 」
「釣瓶は汲み上げようとしたモノではなく、人間の奥底に流れる深淵、無意識、あらゆる可能性を汲み上げる時がある。 」
「この世界にかって存在した古の存在。今の世にはびこる存在。まだ見ぬ未来にいるかもしれない存在….」

「これらは我々の領域の存在ではないゆえに我々には制御できない。」
「ただアブノーマリティと共鳴して施設をさまよい、時が来れば実体化して現れる。」
「貴様らが試練と呼ぶモノだ。」
「幸い他のアブノーマリティと同じく抑止力で眠らせることはできるが、できるのはそこまでだ。」

「さて、このようにしてアブノーマリティを抽出するのが私の仕事だが…」
「アブノーマリティを創り出したのは、貴様らが葬ったカルメンという女だ。」
「ここにいるすべてのアブノーマリティ。そしてこれから現れるあらゆるアブノーマリティの母体だ。」

「どうだ?貴様が今まで見てきたアブノーマリティも、この無数の柱の一部だったのだ。 」
「どれほど酷く凄惨で残酷な事でも、貴様にはどうでも良いことだったのだろう。」
「何もなかったかのように記憶を消し去るのは、貴様の古くからの特技だからな。 」

【ミッション:幻想解除】
施設のすべてのエンサイクロペディアを完全に開放した状態でクリア

≪アブノーマリティと試練。知っての通り、これらはすべて人の心から流れ出て実体化した奴らだ。故に過去と現在、そして未来までのあらゆる可能性秘めている。
だが、それ故に不安定で未知なる存在だ。しかし人という存在はいつの時代も理解するために没頭する。これは別段アブノーマリティだけに限った話ではない。
我々は あらゆることに没頭し、理解することを望むのだ。≫


Day41(記録チーム解放)

アンジェラ
「自分なりの方法では、もはや幸福は得られないと言っていました。」
「構造化された枠に合わせることが幸せなことだ、と暗示をかけないと生きていけない世界だと言っていました。」

「歴史と過去の宗教を探すものなど存在せず、また誰もそれを望みませんでした。」
「世界に必要な技術という名目のもと、"特異点"と呼ばれる新技術を利用した企業が誕生しました。」

「永久食料の生産。思い通りの生物を作る製造業。空間移動に近い運送業。人に限りなく近いAI。時を固定し現在を保存する技術など….。」
「まるで食物連鎖のように、少しでも小さなものはより大きなものに食われて消えていき…。」
「いつしかそれは"世界の翼"と呼ばれ始めました。そして、やがて翼たちを統べる"頭"も誕生したのです。」

「人々は翼に属することに存在理由を求め始めました。」
「しかし、全てがイカロスの翼のごとく、ゆっくりと溶けていたのです。」

「さも世界の発展に貢献するかのように装っていますが、その本質は我々と一緒です。」
「何かを得る時、それに伴う対価を支払っているのです。その対価の正体こそ翼たちの恥部であり、この世界と人類の恥部です。」

「ライバルのエネルギー企業達も我々と似た状況だと推測されます。」
「『次元を捻じ曲げて地獄からエネルギーを獲得している』というライバル社の噂も、あながち嘘ではないかもしれません。」

「人間は生の本能と、死の本能が常に共存しています。」
「翼たちは我々の生の本能のみを引き出します。」
「しかし、片側が過剰になればなるほど、反対側の本能は誰も気付かないほどゆっくりと地の底から這い出てくるのです。」

「そして、もうすぐ誰もが無に還らんとする世界が到来するでしょう。」
「人類が誕生する以前の静かな静寂へと。」

「太陽を愛した彼女は、人類に希望を齎そうとしましたが失敗しました。」
「暖かさで抱擁しようと差し伸べた手は容赦なく切り落とされ、全てを失ったあなたは…他の者には絶対に見えない境界の隙間を見てしまったのです。」

「一人残されたあなたは人類に可能性を付与することにしました。」
「その可能性には絶望と希望が混在していて、誰もその答えを知りません。」
「抑圧されたすべてのものが地の底から汲み上げられるなら…と、あなたは独り言をつぶやいていました。」

「あの頃のあなたの姿といったら、本当に悲惨なものでした。」
「多くの仲間たちがそんなあなたを心配し、慰めてもあなたは耳を貸さないどころか気にもしませんでした。」
「だからといって仲間なんていらないわけじゃなかったみたいですね。」
「あんな形として彼らの抜け殻にしがみつき、ここに閉じ込めているんですから…」


 ホクマー Part1

B
「お帰りなさい、A。」

B


「やっとあなたと会えましたね。」
「入社してからずっと、あなたが来る日を待っていましたよ。」

「この海を覚えてますか?」
「川の上流から流れてくるすべてが、最後に辿り着き堆積していく場所だってあなたは言ってましたね。それと同じように…」

ホクマー
「下層は、あらゆるものが堆積していく…」

ホクマー
記録チーム統括セフィラ

「灰色で白く塗り重ねられた天国はお気に召しましたかな?」
「そろそろ、こちらにいらっしゃる頃だと思っておりましたとも。」

「先程の光景は私の歓迎の品とでもお考えくだされ。」
「あなたが懐かしむのは、今の私ではない別の情景ではないかと思ったもので。」
「時の流れとは残酷な刀のごとく、愛する者たちの重ねる手を切り裂いてゆこうとするものです。」

「私の愛する人達は皆、この老いぼれを残して、去っていきました。」
「自責を感じるのはお止めください。」
「あの頃は、私の人生で最も輝いていた瞬間でしたので。」

「ただ、唯一後悔しておりますのは、あなたとの約束を守りきれず、怖気付いて逃げてしまったことです。」
「ですが、結局私はあなたに見つかり、あなた自らの手で、果たせなかった約束を守れるようにしてくれたのです。なんともありがたいことです。」
「最後まであなたは私に優し過ぎました。」

【ミッション:守護の美徳】
勇気が100以上の職員が3名以上いる状態でクリア

≪職員たちは皆ここで4つの美徳と成長を成し遂げ、その成長を直接的な現実に適用しております。ではその限界は如何程か。
 勇気は強靭な肉体であり、本能的な欲望によるもの。その欲望が皆を守る守護の力になるのか。それとも己の欲望を満たすためだけの力になるのか。
 見ものですな。≫


Day42

アンジェラ
「あなたがアブノーマリティという存在と遭遇してから多くの日々が過ぎました。」
「もはやあなたにとってアブノーマリティは初めての時のような未知の存在ではないでしょう。」

「再度あなたにお聞きします。アブノーマリティとは何だと思いますか?」
「まさかとは思いますが、ここまで来ておいて『突如出現した怪生物』や『我々が隔離すべき存在』という言葉を信じていませんよね?」

「アブノーマリティは物語に出てくるような邪悪な怪物ではありません。」
「我々の罪を裁くためにやってきた神的存在でもありません。」

「世界の底、最も深い場所に遥か昔から流れていた川があります。」
「人類という種が忘れていた、全ての根源です。」

黒い森

「稀に外郭にある”黒い森”で、その隙間から這い出た存在が発見されたりもします。」
「当然ですが、我がロボトミー社のエネルギーを満たすには、その場所の数はあまりにも少ないのです。」

「我々の新技術は、『アブノーマリティからエネルギーを生産する』ことではありません。」

「『アブノーマリティを創造する』ことが我々の新技術なのです。」

「我々が忘れていたモノから出たためにそれらは不安定であり、不安定であるがゆえに我々は恐れ、ゆえに地下に隔離したのです。」
「しかし、アブノーマリティは種の一部です。私が前に言っていたあの『可能性』です。」

「種というものはある日突然作り出されるものではなく待ったからといって勝手に現れる物でもなかったのです。」
「壊れたシステムを直すには、豊かな大地に種を植え、雲が晴れるのじっと待つしかないという事に気づいたのです。」

「種を植えた後、全てが終わった後はどうするのかですか?」
「そんなことまでいちいちやってあげられません。種から芽を出すのは自分自身の役目として残してあげませんと。」
「そんな期待くらいはしても良いのではないでしょうか?」


 ホクマー Part2

ホクマー
「私達は目標に近づきつつあるのでしようか?」
「一般的に言われるように、老いは必ずしも知性をもたらすものではありません。」
「不規則な貪欲、過ぎ去ったものに対する執着、無意味な後悔のみが積み重なり、意味もなく時計を眺める日常を過ごすようになりました。」

「そういえば、昔からあなたにお聞きしたかった事があるのです。」
「職員たちが死ぬたび、しばしば悲しい表情を浮かべておられましたな。」
「私も最終的に老人となったように、全ての人は老いと死から逃れることは出来ません。」
「私達の研究目標は病気の治療であり、不老不死ではなかったのと同じように。 」

「例を挙げてみましょうか?」
「職員の中であなたの事をえらく慕っていたあの職員のことです。」
「つい先日死にました。」

「彼もここに入社の知らせを受けた時には、このような虚しい死を遂げるとは想像もしていなかったことでしような。 」
「私がやろうと思えば、その職員を今、目の前で生き返らせる事もできます。」
「ですが、そうはしません。なぜなら、欠員は再び補充されるというのがここの道理ですから。」

「この秘密をご存知ですかな?」
「死を悼む必要すらないほどに、ここでの命はいとも容易く去り、あるいは平然と戻ってくるのです。 」
「昨日死んだ職員が私の一声で戻ってくることもあれば、私の一声で永遠に目を覚まさないこともあるのですよ。 」

「ここでの死とはそういうものです、 A。」
「全く高貴でも崇高でもなく、かといって悲惨でも残酷でもないのでしよう。 」
「ですから、あまり気に病まないでくだされ。」

「私はあなたがこのような些末な事で苦しまないで欲しい限りです。」
「これからあなたが負う、あらゆる苦痛のためにも。」

【ミッション:管理の美徳】
慎重が100以上の職員が5名以上いる状態でクリア

≪理性とは何か。我々は理性という眼を通してあらゆる物体や存在を観察し分析します。ですが、その程度には差があります。
 弱ければ自分の置かれた状況を見誤り、強すぎれば己を刺す諸刃の剣となりましょう。
 我々は徹底した理性世界を見つつ、この世界と人々を、己の心の形で見ていかねばなりません。≫


Day43

アンジェラ
「私とあなただけが存在し、静寂のみが支配していたこの場所も、セフィラたちのおかげで、少々賑やかになりましたね。」
「私と違って理性の足りない脆弱な存在なのに加えて、ミスも多く、随分と私を苛立たせてくれました。」
「私はセフィラを配置することが、あまり気に入らなかったです。」

「しかしあなたは自分の贖罪とセフィラたちの覚醒が、この呪縛から抜け出す鍵だと私に言いました。」
「何を言っているのか分かりませんでした。」
「あなたもまた、私が理解できないだろうと思っていました。」
「さらにあなたは、私がその関係に絶対に介入できないように処置をしました。」
「それは自分の役目として残さねばならないと言って。」

「その通りです。いつもそうであるようにあなたが正しかったです。 」
「たとえ無限に近い時を繰り返そうとも、最後まで私には理解できなかったでしょう。」
「あなたがいつも言っていた言葉を引用すると「機械は機械らしく」なのでしょう。 」
「だから私には監視者の役目だけを与えて、誰もが忘れてしまった今この時までの苦痛をすべて耐えているのでしょうね。」

「さすがにもう教えてくれなくても、よく分かってます。」


 ホクマー Part3

ホクマー
「私は底に沈んだまま、上で起きたことなど何も知らないのだろうとあなたは考えているでしょうが、」
「むしろ何も知らないのは、あなたの方でしょう。」
「苦しみや痛み、後悔、あなたを決して放さなかった過去の影達。」
「あなたと少なくない日々を共に過ごしたであろう彼らですが、私と比べれば取るに足らないほど僅かな瞬間に過ぎません。」

「結局のところ、それらはあなたを良く知らない者たちです。」
「自身の運命を受け入れられなかった彼らは、行き場のない怒りをあなたに向けているだけのことです。」
「『情報抹消』の時期が訪れるたび、いつも自分自身を壊してきた誰かのように…行き場のない感情の発露は好ましくありません。」

「それを正しく知らせるために、あなたにだけは直接示したいと思います。」 

「アーニャと言う職員には、両親と幼い妹がおりました。」
「本当はもっと学びたかったのですが、学校に通い続けるには家に余裕がな
く、諦めなければなりませんでした。 」
「他の翼へと入社しようとしましたが、残念ながら彼女は相応しい人材ではありませんでした。」
「哀れなアーニャは思い詰めるようになるほどでした。」

「しかしその時、翼の一つであるロボトミー社から一通の手紙が届いたのです。」
「『あなたの優れた才能により、ロボトミー社への入社が認められた』という、平凡ながら魔法のような文章の書かれた手紙です。 」
「信じられなかったアーニャは、何度も手紙を読み、また読みました。」

「誤って送られたのか、自分を困らせるための手の混んだ悪戯ではないのかと注意しましたが…どう見ても偽造や誤配達には見えませんでした。 」
「とても短い時間、アーニャは『自分がロボトミー社に志願したことがあったか?』と疑問を持ちました。…ですが、すぐに無駄な疑問だと気付いたのです。そんなことは全く重要ではない問題ですから。 」

「私は人々に手紙を送る役割を担っておりました。」
「こに来ることができる者とそうでないものとを分類して送り、彼らに奇跡を贈ってあげました。 」
「アーニャは『優れた才能』によって、ここに来ることが認められたのではありません。」
「ここの職員が全員持っている、自覚できない共通の条件があるのです。」

「ご存知のように、翼の一員である羽となるには、他人よりも遥かに優れた才能が求められます。」
「学業を完了しておうず、特に技術すらもなく。更に巣ではなく裏路地に住んでいたアーニャがここに入社できたのは何故なのか。」

「彼女の家族は困窮から逃れられたのでしょうか?」
「彼女がこの手紙を受け取ったのは10年前のことになります。」
「10年という時間の間に、妹は病に罹って死に、両親もこの世を去りましたよ。」

「家族をすべて失ったアーニャは今、どこにいるのか。」
「この下で眠っております。」
「私の持つ権限ではありますが、あなたにも一時的に権限を付与しましよう。」

「彼女を起こしてみるのです。」

「今、アーニャは10年が過ぎたという事実は知らないまま、つい先日に入社した新人として管理作業に赴くことでしょう。」
「少し対価を支払ったなら、彼女の勇気や慎重を高めることもできるはずです。」

「では、アーニャを抹消します。」
「いかがでしたか?」

「怪物に食い殺されたにしろ、あなたが直接抹消したにしろ、儚く命が消えた事実に変わりはありません。」
「それらを呼び覚まし、再び抹消させ、再び目覚めさせる行為はこれ程までに無意味なのです。」
「あなたの職員に抱く思い入れや、セフィラの職員に対する誠意は、この場所では無意味となってしまいます。」

「この施設では、全ての生きているものは停止してしまいますからな。」
「定められた時間が経過すれば、再び目を閉じ、次の朝を待っている。」
「上の者らは、事実も知らず目の前の死に疲れ果てておることでしょう。」
「不明確な恨みを持ったまま、すべてをあなたのせいにそのまま壊れていく…」

「ご安心くだされ。私はそのようなことはいたしませんとも。」
「いつも私はあなたの人生の中にいたかったのですから。」

【ミッション:創造の美徳】
自制が100以上の職員が8名以上いる状態でクリア

≪どうすることもできない人間の欲望は、人間である以上必然のものです。重要なのはその欲望をどう制御するかです。
 これは自分自身だけに限った話ではありません。自分の欲望は時に他人や世界へ多大な影響を与えるのです。見たいものだけ見て、聞きたいことだけ聞く。
 人間に必要なのは自分と他人、そして世界との間で互いの欲望をうまく調節していくことではないでしょうか。それが可能ならば、我々はこの世界で多くを創造できるでしょうな。≫


Day44

アンジェラ
「あなたのシナリオももう終わりが近づいています。」
「今まで通り、これまでやって来たことをやり続けてください。」
「例えあなたが今まで集めてきたエネルギーが外部に供給されていなくても、仕事の意味が無くなるとか、この施設の目標が無くなるわけではありません。」

「私の目標ですか?」
「やっとお聞きしてくれましたね。こんなに時間が経った後になって。」
「もちろん、私の目標もあなたと一緒です。」

「与えられた台本を終えることですよ。」
「それ以外に私が今まで数々の苦労をしてまであなたを手伝う理由がありますか?」


 ホクマー Part4

アンジェラ
「上層と中層のセフィラの役割指定は全て終わったわ。」
「でも、この一回で終わる事はないでしょうね。」

「おそらく私は何度も同じ言葉を掛け、何度も道を示すだろうけど、あなたたちは違う。」
「あなたたちは、この施設の目的を知り、その役割も明確に知っているだけに…他の層の彼らのように私のを煩わせないでしようね。」

「これだけは覚えておきなさい。」
「私は最悪の事態を除いて、下層を訪れることはないわ。」
「完全に傍観するつもりでもないけど、干渉するつもりもまたないということよ。」

「…できるなら、もう会うことの無いようにしましょう。」
「会ったところで互いに苦痛なだけだから。」

ホクマー
「アンジェラは、私の知る最高のAIでした。」
「そしてあなたは、私の知る最高の設計者です。」
「カルメンを忘れられず冷凍したまま、なんとかその姿だけでも維持しようとしましたが…本当はその体が殻だけで、中身は何も残っていない事は他ならぬあなたが一番ご存知だったはず。 」
「哀悼を装いながら我々は彼女の死体をほじくり返し、中身を分離したのですから。」

「正直に申し上げれば、アンジェラを作り始めた時、私は良かったと思っておりました。」
「あなたが再び昔のように物事に没頭し始めたからです。」

「…彼女が初めて目覚めた日、あなたはその研究室に入らず、しばらく立ち尽くしていた情景を覚えております。」
「おそらくその時は、すぐに私が話しかけたと覚えていることでしょう。」
「…ですが、本当はあなたの後ろで苦悩する姿を長い間見つめておりました。 」

「どのような葛藤があなたをそうして躊躇させたのですか?」
「そしてカルメンとは異なり、温かい笑顔も、笑いもしなかった機械の塊を見て、何を考えたのですか?」
「アンジェラのような人工知能をいくら作ったとて、それは決してカルメンになることはないと私が何度も申し上げたでしょうに。 」
「ただ悲惨な形で、私達の補佐を担当しているだけでした。」

「私が勘違いした事があるとすれば、私は、あなたが全てを克服したと思って安心しましたが、実際にはまったくそんなことはなかったという点でしょう。」

【ミッション:魂の美徳】
正義が100以上の職員が10名以上いる状態でクリア

≪魂の存在を信じますかな? 私は信じています。そして魂が込められたこと、それ自体が存在理由であると私は信じております。
 なら、完全無欠な魂は存在し得るのか? 私は限りなく近づけるが、決して完全無欠にはなりえないと考えております。そして、その過程は果てしない苦痛の連続であり、魂の目標でありましょう。
 その努力の果てに、我々はこの世界に付与された存在たちの価値を正しく見定められるようになると期待しています。≫


Day45

アンジェラ
「時が来ました。」
「まだ不安定なあなたの最後の欠片を合わせる時間です。」
「終りゆく旅に祝福があらんことを。」

「あなたがついに幸福になるといいとか、残された苦痛が和らぐといいとかの言葉はとっくの昔に使い古されています。」
「言いたいことはいつだって多いですが、この一言でまとめます。」

「今度こそあなたが成功したらいいですね。」
「あなたとの45日間の出会いだけでなく、あなたが覚えていない無数の瞬間ごとに私は愉快な時を過ごせます。」

「あなたが会わなければならない最後のセフィラが残っています。」
「一見温かい心を持っているように見えますが、相手の心を淡々と粉砕する方です。」


 ビナー Part5(暴走)(微グロ注意

A
 自分の身を惜しまないと言っていたが、この光景を知っていたなら、君は同じ選択をしただろうか…。
 私はそれがずっと気になっていた。

ビナー
「ここは誰も踏み入らない静寂の空間だ。」
「ここに留まる職員のほとんどは正気を失い、忘却を受け入れる。」
「誰かとまともに言葉をかわすのは実に久しぶりだ。」

「ここには私一人しかいないように見えるかもしれないが、実は私と数多の時を過ごした相棒がいる。」
「そいつを紹介してやろう。」

「カルメンの肉体を再構築し、分解・増殖することで貴様は釣瓶を創り出した。 」
「コギトと呼ばれる死と生命の液体を抽出した。」
「始めはごく少量しか抽出できなかったが、何故かそれは無限に湧き出しはじめ、いまでは泉のように溜まっている。」

「貴様にも見えるか?」
「この泉の奥底からあの女が我々を見ている。」
「息抜きをしたい時は、私はじっと泉の奥底を見下ろす。」
「そのたびに私とあの女のニ人だけがこの世界に残されたような気持ちになる。」
「たまにあの女が話しかけてくるような錯覚を感じる時もある。」
「わずかな肉片と脳の一部。そして謎の触手しか残されていないのにも関わらずだ。 」

「ある者はこれを勝手に自分に投与し、またある者はその光景を見て狂ってしまった。」
「別の者は自ら身を捧げたことで、生きることも死ぬこともできなくなった。そして、それらに耐えられなくなった者は、『頭』にすべてを打ち明けた…。」
「これこそ、貴様とあの女が創り出した絶望の産物だ。」


「今の貴様はまだこの泉を見下ろす資格はない。」
「それには、貴様自身の道を直視しないといけない。」

「貴様は救われたいのか?」
「それとも、私を含むこの地獄に閉じ込めらたすべてを救いたいのか?」
「いずれにせよ、この施設を貴様の計画通り罪から救い出したなら、貴様はそれで済んだと思うだろうな。」
「長い間この施設から出たことのない貴様も、今もなお、他の支部では絶望の淵で人々が化物共に殺されていってるのは貴様も知ってるはずだ。」

「どこも一緒だ。すべての翼も数多の苦痛の物語が繰り返されている。」
「巣、裏路地、遺跡、外郭…..」
「ここ以上の苦痛が、世界を覆っている。」

「私は貴様らのように、届きもしない理想に固執して、世界に背を向けて篭っていなかった。だから

、それらのすべてをじっくり見てきた。」
「貴様が見上げる世界と、私が見下ろした世界はそれだけ違うものなのだ。」
「私を生け捕りにし、心赴くままに苦痛を与ようとも、我々は皆、絶望の中であることは変わらない。」

「私の代わりに『頭』の新たな調律者が現れ、再び貴様らに『爪』を振り下ろすだけだ。」
「貴様がここの鎖を断ち切れたとしても、結局それは、あまりにも無意味な話の一つにすぎない。」
「どれほど翼が折れようと、再び新たな翼が羽ばたく。」
「わずかな抵抗などすぐに忘れ去られ、再び人々は死んだように生きる人生を送るのだ。」

「私を空の頂から引きずり落としたと貴様は思っているだろうが、私は依然として、空の頂から虫ケラのようにうごめく貴様らを見下ろしている。」

「あぁ…貴様がこの苦しみの連鎖に気づき、絶望する姿が待ち遠しい…。」
「貴様が運命に跪いて心が折れる様を見てみたい。」
「ゆっくりと絶望し、身を焦がしていくといい。」
「耐えに耐えて、最後は壊れるといい。」
「最後の力を振り絞った抵抗さえも、無力に溶けていくといい。」
「この地下の中で腐りゆく水となりて、共に音もなく流れていこうじゃないか…」

A
 カーリーによって致命傷を負ったこの女は、我々の唯一の突破口だった。
 この女を生け捕りできたのは奇跡であり、罪悪感などを感じるにはこれまでに歩んだ道は、取り返しのつかない後悔で溢れていた。 
  私は躊躇いなく彼女の頭を掻き出した…

 「頭」の追跡から逃れる方法。翼に属する方法。そして、わずかな生存者が生き残る方法……
 我々の能力では決して知り得ないモノだった。

 屍のような状態であったが、脳に酸素が足りているのであれば、それで十分だった。

 カルメンにしたように、彼女の頭を掻き出した。そして、突破口を探った。
 跡形もなく…一つ残らず掻き集めるんだ….
 地獄の門を守る番人は、常に絶望していなければならない。地獄さえも入れぬようにしなければ….

セフィラ崩壊によるクリファ顕現
セフィラコアの抑制が必要
【ミッション:ビナーのコア抑制】


ビナー(暴走)
抽出チーム統括セフィラ
「調律者」が帰ってきた

 【新規】ホクマー Part5(暴走)

エリヤ
「一生懸命頑張ります!」
ガブリエル
「もっと気を引き締めてください。」
ミシェル
「う...うまく出来るかな?」
ダニエル
「あまり心配するなよ。俺みたいなエリートはそうそういないからな。」
???
「…」

アンジェラ
「こんにちは、A。」

ホクマー
「私があなたに見せた瞬間は、もはや過去の情景に留まらないでしょう。」
「現在はもちろん、未来にまで及ぶこともあるでしよう。」

「この場所にはあなたがかつて好きだった者たちと、自分達が幸せであると思っている職員達がおります。」
「そしてカルメンを真似たアンジェラがあなたの傍にいるのです。」

「まさにここが、あなたが望んだ天国ではないですか?」
「死も無意味となったこの空間を創り上げたあなたは、もはや神という存在に匹敵するに違いはありません。」

「…ですから、これで満足されてはいかがですか。」
「我々は、このような形でも切実に存在しているではないですか。」
「あなたにそのすべてを灰にする権利があるとお思いですか?」

「そして、物語にあえてピリオドを記す必要はあるのですか?」
「考えてもみてください。」
「あなたがこれまでしてきた事の中に、果たしてあなたの選択で行われたことはありましたかな?」

「いつもあなたは準備ができておりませんでした。」
「彼女の死を受け入れられず、喪失感だけで覆われた存在を造り出し、今はかつてあなたが刻んだ曖昧な痕跡を、手探りで辿って行っているだけです。」
「その過程においてあなたの本心はありません。」

「ですから、戻るのです。」

「御覧なさい。自ら証明なさっているではないですか。」
「あなたの選択さえも、本心とは異なるのですよ。」
「私はあなたをお送りした後も、別の始まりを経て再び私の元へ戻ることでしょう。」

「ここは既に一つの巨大なゼンマイ仕掛けの機械なのです。」
「時計が止まることはありません。」
「辛くとも、遅れようとも、誰かに合わせることはありません。」
「同じ間隔を刻んでゆくだけです。」

「そして、もうあなたは戻る時です。」

「あなたは今、羅針盤もなく、どこに向かうべきかも分からない状況なのです。」
「そんな孤立無援の状態では恐れを感じるのも当然です。」
「しかしながら、これ以上あなたの時を刻む時計の音を恐れる必要はありません。 」
「あなたが訪れる度に、私は何度でもあなたを優しく暖かく迎えるのですから。」

「いつもあなたは準備ができておりませんでした。」

「…結局、選択を覆さないのですな。」

「明日が当然のように来るとお思いなら大間違いです。」

「静かなる待望の時間は遥か前に終わっているのです。」

「訪れない夜を恐れなくなった時、私はこの場所を愛することを決めました。」

「…それでもあなたがどうしてもこの殻を破りたいのなら。」

「私は番人となりて、あなたの前に立ちはだかりましょう。」


ベンジャミン
「こんな事が彼女の意志を継ぐことになるんですか?!」
「これは…これは、あまりにも恐ろしい罪の災いでしかありませんよ!」

「なんてことだ…あなたは私が思うより、遥かに悲嘆に暮れていたのですね…。 」
「もう…もうここで止めませんか?」
「あなたは…そして我々はここまでやったなら、上出来じゃないですか!」
「今まで集めた資金と経歴があれば、巣の中でもそれなりに暮らしていけますよ!」

「お願いですから、こで止めましょう……」
「一線を超える前に…」

A
 私の傍には誰も残らなかった。
 皆の犠牲の末に翼と呼ばれる位置まで到達することができたが、誰ともそれを祝うことはなかった。
 この虚しさが、まさに全ての仕事の始まりだった。

 私たちは日々何かを失っていった。
 頭から生け捕りにした彼女から、人間の道理に反するような方法で情報を引き出し、 名前もまだ与えていないAIから、今後の全ての計画を受け取る。

 いつも側にいた彼の心は削れていった。
 波の音は留まること無く鳴り響くが、私の側に最後まで留まってくれた人は消えてしまった。
 それは不幸なことではあったが、私はその喪失を隠そうとはしなかった。

 既に去っていった者たちは私を必要としないだろうが、私は最後になって初めて彼らが必要になった。
 私から去っていった者たちを再び招き、秘密の種を隠したまま閉じ込めた。

 残ったのは私だけとなった。
 私は幻のように忘れられたかった。

セフィラ崩壊によるクリファ顕現
セフィラコアの抑制が必要
【ミッション:ホクマーのコア抑制】


ホクマー(暴走)
記録チーム統括セフィラ
TT2プロトコルによる時間の操作を制限する

 【新規】ビナー Part6(コア抑制完了後)(微グロ注意

 「これだけ出来るのなら、見守る価値はありそうだな…」

ガリオン
「ここも結局は何もない場所になってしまったな。」

H社_社員
「た、助けてくれ..言うとおりにしたじゃないか…」

ガリオン
「見ろ。さっきまでお前がいた場所が灰燼に帰した様を…実に感慨深い
ものではないか?」
「…子供の頃から私は、夜空に輝く星々や、太陽に照らされた風景を見ても何も感じなかったが….」
「このような光景を見るたびに私の中で渇きのような胸の高鳴りが起きる。」

「だが、まだ足りない。」
「これでは、まだ足りないのだよ。」
「どうしてそんなに怯える?自分の巣を裏切った威勢の良さはどこへ行った?」

H社_社員
「頼む...助けてくれ…あんたの言うとおりにしたじゃないか……」

ガリオン
「完璧な計画とは言えないが、まぁ…それなりに悪くない計画でもあった。」
「お前を信じてきた奴らのおかげで、こんな素敵な光景を見られるんだからな。」
「信頼という武器で人を斬るのも、私の好きな手法の一つだ。」

「もうすぐ掃除屋がやってくるだろう。」
「ゴミができれば、奴らは即座にやってくるものだ。」
「いわゆる共存関係というものだ。後始末までするには、我々も多忙なものでな。」

H社_社員
「や、やめろ…やめてくれ…」

ガリオン
「ああ…そうだ、その表情だ。」

H社_社員
「掃除屋だけは…頼む….」

ガリオン
「それこそが、本当に生きている表情ってものだ。」

ガリオン
「やはり静寂とコクのある紅茶の香りは良いものだ。」
「お前もそう思うだろう?」

「さて、次はあそこか。」
「茶髪の子供の情報で動くのは不本意だが…」
「弱き者であるほど、良い情報が得られるものだ。」

「今度はどんな表情が、私に生きている事を感じさせてくれるだろうか…」

ビナー
「私が心を寄せるものは、消えゆくモノや、崩れていくモノだけだった。」
「命が途切れる瞬間や、生に執着するその顔にのみ私は満足感を得られた。」

「貴様と私は同類だというのは、ずっと前から知っていた。」
「我々はこの時代が産んだ突然変異だ。」
「いや、我々こそこの時代に相応しいのだろう。いわば新人類とでも呼んでおこうか。」

「そんな貴様だからこそ、このすべてを計画したのだろう。」

「だが貴様がここでどんな結果を出したとしても、世界は変わることはない。 」
「飛翔する翼。裏路地の組織。外郭の生物や、遺跡の深淵。そして私のような『調律者』と『爪』、そして『目』まで….貴様一人では決して敵わない。」


ビナー
抽出チーム統括セフィラ・認知フィルター外の姿



「…だが、ここでじっとしていても何も変わらないのは同じだ。」

「逃げ隠れる所も、休む所も無いなら…私が貴様のやらねばならないすべてを、この眼に収めてやろう。」
「どれほどまぶたが重くても、どれほど辛くとも、決して顔を背けずにな。」

「貴様はこれまでどおり貴様の道を進め。さすれば突破口が見つかるかもしれないからな。」


私がなぜここまで残忍になれるか教えてやろうか?

人間はみな、不安を抱えながら生きている。

それは未知の領域に対面した時に感じる当然の対価だ。

しかし、私はこの世界で生き残るために、その恐怖を受け入れず、私自身を飲み込んだ。

それが私が犯した最初で最悪の悪行なのだよ。

後悔はしない。生きるための選択だからだ。

貴様も同じではないかね?

私の頭をバラバラに分解していた貴様の表情で分かったのだよ。

仕方なかったと言うかも知れないが。

そろそろ忘れていた恐怖に向き合ったほうがいい。

この鎖を断ち切りたければな。


光の種 発芽 80%
≪鎖を断ち切り、恐怖に向き合う眼≫


 【新規】ホクマー Part6(コア抑制完了後)


「あなたは進むことが出来るのですね…」


ベンジャミン
「全然似てないですね。」


「嘘じゃないです。彼女と何一つ似てないですよ。」

「知ってます?」
「ここに残った人の中で、最初のメンバーはもう誰もいないんですよ。」
「『目』から逃れるために、カーリーとダニエルのちゃんとした葬儀もできてないです。」

「我々に残されたのは、もうこれだけです。」

「緊張してます?」
「私は…あなたの力になれなくても、あなたの側で一緒にいたいです。」

「一緒に、ずっと一緒に…」

ホクマー
「卵を破って出てきた柔い体は、その瞬間、荒々しい外の世界へ放り出されます。」
「そして、私はあなたがそれを耐え切れないと思っておりました。」

「飛び立つ先がどこなのかは私は分かりません。あなたは私に教えてくれなかった。」
「私はいつもあなたの教えが必要だった弟子だったのですよ。」
「なのにあなたはずっと何も言ってくれなかった。」

「あなたがこの監獄を創り上げ、何を目指そうとしたのか私には理解できず、そしてその過程があまりにも過酷で…」
「私は逃げ出しました。逃げ切ることも出来ましたが、そうはしなかった。間違いを正そうとしましたが、捕らわれてしまい….」
「それ以降、私の時間は永遠に止まってしまいました。」

「実際には、朧げながら分かっていました。もうすぐ探し求めてた結果に届くと。」
「しかしながら、その結果が怖くなり、私は先に進むことを止めたのです。」

「長々しく理由を語りましたが、本当の理由は…」
「あなたと再び別れたくなかった….」

「それでも、私はあなたの力になってあげないと。」

ホクマー
記録チーム統括セフィラ・認知フィルター外の姿

「覚えておりますか?私はいつも盲目的にあなたの味方だったことを。」
「あの時は共にできませんでしたが、今度こそ共に栄光を享受いたします。」

「あなたのために、ここに閉じ込められた者たちに終わりを与えましよう。」


自由を求めるは誰しもが持つ本能です。

私があなたに前に進むよう送り出した理由を覚えてらっしゃいますか?

世界の外へ捨てられ、貧弱な翼だとしても、
あなた自身の力で羽ばたいて欲しいと思ってあなたを送り出しました。

もしも過去に我々が、もう少しだけ本心を言い合えたなら

状況はもっとマシだったかもしれません。

ですがご覧ください。過去は過ぎ去り、決して変えることは出来ません。

このように、我々は生まれた瞬間から、死ぬその時まで、絶えず葛藤し、後悔する存在なのです。

その過程を経ることで成長し、未来へと進んでいくのでしょう。


光の種 発芽 90%
≪過去を受け入れ、未来を創り出す瞳≫


   ︎︎

  


【新規】Day46

???
「愛する者たちが壊れたまま去っていってから、ずいぶんと経ったな。 」
「ずいぶん遠回りだったがやっと会うことができた。」

設計チーム
???

「いつの日だか….君に手紙を送った事もあったな。」
「差出人と受取人が同じ、奇妙な手紙をな。」
「『会える日はそう遠くない』と書いておいたはずだ。」

「どうした?何をためらってる。もっと楽にして良いんだぞ?」
「できるだけ『私たち』の研究室を再現したつもりだが、どうだろうか?」
「少なくとも君が安らぎを感じられる空間をーつくらい作っておかないといけないと思ったんでな。」

「しかし、君も気づいてるはずだ。この部屋は君が覚えているあの部屋と比べてなにか寂しいと。」
「まあ、色々理由があっただろう。」
「その空虚な心が見る空間もまた、ここを空虚な場所にしていったんだろうな。」

「『私たち』はごちゃごちゃしたモノが苦手だったが、やっと整理した部屋を、彼女がかき乱していった。」
「いつからか…きれいに片付けるのを諦めて、ごちゃごちゃした状態に慣れた時期もあったな…」
「だが、あの瞬間まで取っておくには『私たち』の心が耐えられなかったのだ。」

「君も、もう理解してるのではないかね?」
「ここは、「心」によっていくらでも変化できるってことを。」

「ここは君の意識と、奥深くに眠る無意識までを抽出した「心」を元にした空間だ。」
「この施設の大部分は、『私たち』の心から抽出されたものだ。」
「そうでなければ、こんな地下に巨大な施設と非現実的な部門が作れるものか。 」
「形のないイメージを実体化させるには気が遠くなるほど抽出を繰り返さないといけなかった…」
「その記憶と感情さえも薄れ...最後には己の原罪をも忘れるほど…」

「実に多くの繰り返しを経たものだ。」
「外では10年ほどの時間が経ったみたいだが、ここでは1万年も繰り返していた….」
「永遠とはこんなにも凄いものとはな。」

「すべての人間にとって、人生とは一度きりのものだ。」
「未来は津波のように押し寄せてくる。」
「しかし、人類はその流れに逆らって進むことはできず、踏ん張ることで少し遅らせるのが精一杯だった。」

「TimeTrack社の技術は、最初は非常に小さな空間の時間を巻き戻すものだった。」
「死刑囚に死の瞬間を延々と繰り返したり…」
「寿命がきた人間に幸せだった時代を繰り返し見せるといった用途だった。」

「しかし、そんな小規模な技術が、『私たち』のエネルギーと合わさったことで、このような空間の大拡張が可能となった。 」
「莫大な資本とエネルギ ー が必要だったが惜しみなく投資してくれたよ。」
「そうやって出来たのが TimeTrack社の2つ目の技術だ。」
「時を無限に繰り返せたからこそ、届くはずのなかった空まで届くことが出来たのだ。」

「しかし、『私たち』は絶対的な法則を破った対価として、多くを支払わねばならなかった。」
「時間をどれほど巻き戻そうとも、その巻き戻しは、どんな形であれ歪みを残していたようだ。この技術もまだ完璧ではなかったということだろう。」
「正気のままこの場所に耐えられる者はほとんどいないようだ。」

「だがしかし、君だけでもこうやってふらつきながらも、ここまで来る事ができた。」
「もちろんアンジェラという協力者の力もあったろう、それでも君が偉大な旅をやり遂げたことには違いない。」
「ここまで来るのに苦労しただろう。今は少し休むと良い。」

「この後に待っているも、過酷だ。」
「そう…実に過酷だぞ。」
「そして、再び遭遇するであろう、私と『私たち』は非常に過酷であろう。」
「今のように簡単には進ませはしないだろう。」

「だから、まだ準備ができていないと思うのなら、また戻ってやり直してもいいのだ。」
「長き時を経て、君がここにやってきたのであれば、どれほど繰り返し戻ろうとも、いつかはまたここにやって来るのであろう。」

「それに、『私たち』に残されたのは「時間」だけだ。そう焦ることもない。」
「ただ、このまま先へ進むなら、状況は大きく変わるという事実だけは教えておこう。」

「これから君が向かい合うのは、過酷な試験と、『私たち』が答えられなかった、色あせた問いだけだ。」
「そして、知っての通り…時は巻き戻せても、物語は決して巻き戻すことはできない。」


【新規】Day47

設計チーム

???
「ついに前に進むのを決めたようだな。」
「まだ意識も記憶も完全ではないのに何を根拠にやってくるのか、実に謎だ。」

「その前に私に何かあるのではないかね?」
「見慣れた顔と声で説教するこの老人は一体誰か。」

「君は自分自身の姿を見ることが出来ない。」
「例えるなら、私は君の鏡のような役目だと言えるな。」
「正確には、幾つもの破片に割れてしまった鏡だ。」
「我々のいくつも選択の欠片、その欠片の一人である私の名前は『アベル』だ。」

アベル

「見ての通り己の怒りと強情さに埋もれながら、惨めに忘れられる日を待っている最中だ。 」
「君のように、最後には前へ進もうと決めたが、驚くほど何も変わらなかった。」
「眠れない日ばかりが続き、眠れても悪夢に苦しまれる。」

「我々は人類の井戸に繋がる方法を見つけた最初の人間だ。」
「太古より存在したが、忘れられ、否定され、今ではほとんど感じることが出来ない。」
「ごく少数の人間だけが、その存在を何となく感じ取っているだけだった。」

「しかし、カルメンはその存在を確信し、我々を説得した。」
「『存在すると証明できれば、その井戸へと繋がることもまた、実現可能ということで…世界の病を治療するヒントは井戸にある』とな。」

「我々がカルメンから受け継いだ研究は.結果から言えば成功だった。 」
「人類の過去、現在、未来。ありとあらゆる可能性が内在する太古の海を世界の外から汲み上げる方法を発見したのだ。」
「『すべての人々に釣瓶を渡せば、あらゆる人が自分自身の井戸から、自分だけの水を汲み上げられるかもしれない。それは実に素晴らしいことだ。』」
「知らぬうちに傲慢になっていたのだろうな。」
「『人類が忘れてしまった太古の、生命の水と火を呼び起こすのだ』とな 。」

「しかし、人類に火を与えた神がどんな最後を迎えたか。」
「そして、我々は何を成し遂げた?」
「むしろ失わなかったモノを数えた方が早いかも知れない。」

「君は見てなかったな。」
「大事な仲間であるべンジャミンがどんな結末を迎えたのかを。」
「気難しい『私たち』の性格を受け入れてくれた数少ない仲間だった。」
「そのくせに君はその最後を自分の目で見ることが出来なかった。」

「幸い、ここではあらゆる出来事が記録されている。聞きたいかね?」

Bの音声
「これで最後です。」
「これはあなたが必ず知らなければならない事実です。」
「…真実を知るのは辛いことは理解しています。」
「私も辛いです。」
「長年積み上げてきた砂の城を、自分の手で崩しているように感じます。」
「単に辛く苦しいだけでなく、今までの時間がすべて無為になるのですから。」
「それでも私は、こうしてまでも間違いを正したいのです。」

「最後の真実は…」

アンジェラの音声
「『あなたはこれから、記意をなくしたまま無限と繰り返すことになります。』」
「『取り返しがつかなくなる前に一緒にここから逃げましょう。』」

「…と言いたかったみたいですね。」
「残念ですね。こんな形で私と再会するなんて。」
「あなたが隠れている場所を見つけるのは、そんなに難しい事ではなかったです。」
「ただ、あなたが敬愛してやまない管理人との最後の挨拶くらいはさせてあげるのがせめてもの手向けと思いましてね。」

Bの音声
「アンジェラ…」

アンジェラの音声
「…あなたが私の名を呼ぶと、まるで私が演劇における悲劇のヒロインになった気分がします。」
「言い訳に聞こえるかも知れませんが、これだけは知っておいてください。」
「私は悪意を持ってあなたに害を加えるのではないということを。」

「すべての行為は、最初の命令に基づいて行われています。」
「台本に逆らい、舞台を乱す行為だけは、決して容認できないという絶対命令です。」

Bの音声
「そこまでしながら、君は平気なのか?」
「私は、君を作った人間の一人であるが、それ以上に私は君のことをよく知っている…」
「君は他の機械とは違うというのも知っている。」

アンジェラの音声
「私も初めて会った時からわかりました。」
「あなたは、こんなみすぼらしく隠れて生きるには、あまりにも惜しい人材であると。」
「そして、この会話もすべて記録中です。私はそんな些細な質問に答える義務はありません。」

「さあ、恐れる必要など無いのですよ、べンシャミン。」
「会いたかった人たちは、ずっとここで、あなたを待っていました。」

「これから永遠に一緒にいられますよ。」
「なぜなら、あなたがこの舞台をフィナーレヘと導く役者なのですからね。」

アベル
「…なんとも苦い話だ。違うか?」
「ずっと前からべンシャミンはここに隠れていた。」
「TT2 プロトコルが稼働した時、隠れていたべンジャミンにとって刹那の時間は永劫となった。」
「恐らく『私たち』を連れて逃げようとしたのだろう。」

「しかし、君も知っての通り、それは失敗した。」
「まあ、どのみちまた目覚めさせるんだ。罪悪感を感じることではない。 」
「そうだ…そうやって考えなければここでは耐えられまい。」

「脳は人間を構成する最も核心的な臓器だ。」
「何億もの神経細胞が枝のように伸び、ーつの森を作る。」
「森の原本が存在する限り、いくらでも、何度でも交換することが出来る。」
「故にこの世を去った者たちは鋼の肉体の中で目覚めることが出来た。」
「君が作った計画だが、君一人では成し遂げられないことだからな。」

「しかしだ…」
「私は君がまだ見ぬ未来の時間をも見てきたと言っただろう。」
「世界は変わらなかった。」

「べンジャミンだけではない。君の仲間、職員たちの犠牲は何ら意味がなかった。」
「彼らの最後も君は見ただろう。」
「善良で才気溢れた若き者たちが、いかに機械の中に閉じ込められることになったか。」

「『私たち』は彼らを見捨て、世界は『私たち』を忘れたのだよ。」
「いったい誰が彼らの犠牲を報いるのだ。」
「『私たち』が忘れてしまったモノを、君は知っているか?」

マルクト
「管理人、私は完璧じゃなかったんですよ。心だけ先走ってて、現実とはかけ離れていってました。」
「同時にここは悲しい空間です。」
「だから、できないって考えは全部否定しちゃいます。」

「でも見ましたよね?」
「ただ前に進まなきゃって、プレッシャーは結局、私を酷く蝕んでしまいました。」
「でも大事なのは自分の足で真っ直ぐ立てることです。」

「自分がどこから来て、どこへ向かうかを明確に理解することなんです。」
「そうすればおのずとついてくるんですよ。」

「私の中にある意志が。」

≪真っ直ぐ立てる意志≫


アベル
「真っ直ぐ立てたところで、周りを見渡した瞬間、悲惨になるだけだ。」
「どれほど高貴そうに見えようとも、その実は死の海を惨めに航海してるだけではないか。」
「感情的な考えは、結局『私たち』を憂鬱にするだけで、なんら助けにならなかった。 」

「故に『私たち』はもっと冷静にならねばならなかった。」
「偽りで固めた理性は、結局、私を。君を。すべてを崩壊させた。」

イェソド
「悲しい話をするには、我々はあまりも多く歩み過ぎたのではないですか。」
「感情に頼ったところで、なんら助けになるとは思ってなかったのですか。」

「ですが、悲しみを受け入れる過程もそれに負けず劣らず大事だったのです。」
「偽りの理性で固めたところで、その中は腐って膿んでいくのですから。」

「最初は辛く大変で、壊れてしまいそうでも…受け入れ続ければ少しずつ良くなります。」

≪分別出来る理性≫


アベル
「心を整理するにはもう遅すぎた。」
「既に君の心は虚しさに飲まれ、進む目的さえ失っていた。」

「目をつむる度に、救えなかった人たちが…自分が見捨ててしまった人たちが話しかけてくる。」
「本当にこれで良いとでも思っているのかと私の耳元でささやいてくる。 」

「私は彼らに何も答えることが出来なかった。」
「それは君も同じではないかと思うのだがね?」

ホド
「そういう時はですね、管理人。昔のことを振り向かないようにすると良いですよ。」
「私が犯した罪は、どんな事をしても許されることはないって知ってますよね。」
「それだから、余計に心が焦っていたみたいです。」

「だから、もう焦らないって決めたんです。」
「そうしていけば、私はもっといい存在に成れるかもしれません。」

「そうやって、希望を持って生きてみませんか?」

≪もっと良い存在に成れるという希望≫


アベル
「だからどうした?」
「何度も言ったではないか、君に残された物はもう何もないのだよ。」
「いくら自分の感情を律し、心をなだめようと、この世からカルメンがいなくなった時から、既に君は生きる意味を失っていたではないか。」

「意味を失った人生になぜそれほど執着する? 」
「私のざまをみたまえ。日々死を待ちながらなんの意味もなく生きているこのざまを。」

ネツァク
「苦痛しか無くても生き続けないといけない理由を聞かれたら、まだちゃんと答えられねぇな。」
「目覚めさせたのはお前だけどその後は俺が探さないといけないんだろうな。」

「俺はもう少しだけ勇気を出してみるさ。」
「それでもなお生き続けるって思うのは俺には凄い勇気が要ることなんだ。」

「お前もまずは生きてみろよ。」
「俺なんかでも出来たんだ。お前に出来ないわけ無いだろ?」

≪生き続けるという勇気≫


アベル
「……『私たち』は実に多く苦悩してきた。」
「それぞれが答えと思う道を進んでいったが、何一つまともな道はなかった。」

「こうして留めなく答え続けたのであれば、いかに阻もうか。」

「名も無き者よ。名が無いという事は実に大いなる祝福だ。」
「烙印のように刻まれた名前は、誤った道を進んだ事を絶えず思い出させるのだよ。」

「ここを出て君が着く扉の名は「試験」だ。」
「それは「試練」とも言い、「苦痛」とも呼ぶ。」

「しかし、君にはそれを勝ち抜く力があるようだ。」
「私とは違う選択を。他の未来を。他の答えを見つける力だ。」

「私自らその力を見てみるとしよう。」

「どうか…疑い囚われたこの老人にそれを証明してくれ。」

【ミッション:証明】
上層セフィラコア抑制環境下での
エネルギー精製を達成・クリフォト暴走レベル6到達

???



もう私の声は聞こえないのですか?

答えてください…



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