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保育士養成施設の授業・実習に関する厚労省事務連絡についての矢藤先生の解説

1 COVID-19の影響でできなくなった授業・実習をどうする?

 私の勤務先も,4月6日からの予定だった授業開始を20日に延ばし,今般さらに延ばすことが検討されている。授業の回数も決められた回数こなすことはほぼ絶望的な状況だ。さらに実習生の受け入れをできないと言ってくる実習先も出始めている。どこまで対面授業以外の方法で学習を保障するか,実習先に行けなくなった学生にどのような埋め合わせの経験を与えるか,といったことで,頭を悩ませている。おそらく他の同業者も同じような思いだろう。
 全国保育士養成協議会(保育士を養成している学校の業界団体)の常務理事である矢藤誠慈郎先生が、2020年3月2日に厚生労働省から出た保育士養成施設向けの事務連絡について,Facebookのノートで解説をしてくださっている。
 この厚労省の事務連絡は,COVID-19の影響で授業や実習に影響が出た場合について,授業や実習の時間ややり方はある程度柔軟にしていいけれど,学ぶべき中身を減らしていいわけじゃないから,そこんとこよろしく,という風に言ってきている。
 今回の厚労省の連絡は抽象的で大枠しか示していないので,自由度があるといえないこともない。ただ,保育士に限らず資格や免許の養成課程は,監督官庁から「ちゃんとやってるかー」と調査が入ることがある。過去の調査で痛い目にあったことのある同業者であれば,自由といっても調査に来る役人の裁量の範囲を忖度しないわけにはいかない,という思いを抱くことは想像に難くない。

2 私なりの理解

 矢藤先生の解説を読んで,私なりに理解したことを,少し書いてみよう。
 授業や実習がCOVID-19の影響で予定通りできない,という状況は,すでに起こりつつある。そういう場合,例えば授業の回数や足りない実習の日数や時間数を別の方法で埋め合わせる,ということを,ある程度柔軟にやってよい,というのが厚労省の連絡の趣旨だ。
 だが,保育士の授業や実習は「この授業でこの内容をやる」「この実習でこれを学ぶ」ということが厚労省から明示されている。だから,もし対面授業で回数が足りない分をオンラインの授業や課題で補うことにするなら,「この授業でやることになっているこの部分をこんな風にやってちゃんと学生に学習させています」「シラバスのこの部分を,こんな形で課題として取り組んで学習できるようにしました」と言えるようにしておく,ということだ。
 行けなくなった実習も,「実習で身につけなければならないこれ(実習実施基準に書いてある)を,教室でこんな材料でこういうことをする形で学べるようにしました」と言える形を作って補うということだ。

3 実習のジレンマ

 保育所にしろ幼稚園にしろ福祉施設にしろ,ウイルス騒ぎのさなかに実習先に学生を送り込むことは,実習先にとってはリスク要因になる。実習先の子どもや利用者をないがしろにしてでも実習を行う,などということは,倫理的にはやってはいけないことだろうと思う。だが一方で,こんな状況でも実習ができるならなんとか実習に出してやりたい,という養成校教員としての思いもある。
 実習先の事情や意向に沿った判断をするしかないし,そうなれば実習に行けない学生も出てこざるを得ないだろう。そのために何をしたらよいか,今のところ具体的には考えられないでいるが,いつまでもそうも言っていられない。いろいろな人と相談して知恵を出し会わなければ。

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