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山便り (4)

鮎の養殖は失敗、アマゴは・・・

 バーベキューの食材を現地調達できないかと考えていた。山にはそれなりに山菜はあるが、バーベキュー用に適するものはない。沼津の従兄弟の家から椎茸のホダ木をもらってきて、山に伏せておいた。出るには出たが、何かの動物に食べられてしまった。今は家の近くに下ろしてある。次に考えたのは、鮎の塩焼きが食べることができたら最高だと思い、山で鮎を養殖しようと考えた。
 天竜川の解禁日は6月1日である。解禁日から型は小さいが良く釣れた。家では唐揚げにして食べた。知人にも持っていった。一週間目から、釣れた鮎を山の池に持っていくことにした。宮口にある鮎の養殖場で養殖用の餌を分けてもらった。小さい鮎と大きい鮎とでは餌が違うのだそうだ。とりあえず小さい鮎用の餌を分けてもらった。釣ってから山まで35分掛かる。生きて元気なまま運ばなければならない。少々大きめのふた付きのプラスチックケースと水槽に空気を送り込む電池式のエアポンプを買い、釣った鮎をこの中に入れて運ぶ計画である。鮎を沢山入れすぎても死んでしまうのではないかと思い、30匹くらい釣った頃に止め、急いで山まで運んだ。半分は死んだ。鮎が釣れた時、釣り針をはずす際、深く針が掛かったり、掛かった場所が悪くてはずれにくかった鮎は確実に死ぬ。翌日は掛かり戻しの無い針で釣った。釣り落としは出るが鮎を手で焼くことはない。この日は50匹くらい運んだが、15匹くらい死んだ。次の日は釣った鮎を運ぼうと堤を上がる時、水と鮎の入ったプラスチックケースの重さに負け、ケースをひっくり返してしまった。全滅である。この日はもう諦めるしかない。鮎は日の出頃から二時間くらいが釣れる。昼間糸を垂らしても余程良い状況でなければ釣れない。
翌日も運んだ。しかし養殖の方は問題が出てきた。鮎は飛び跳ねて池の外で死んでいるのだ。池の上に網をかけるしかない。梅雨で沢の水量が増えた時、吸水菅が流れて池の水が止まった。池に水はあったが鮎は全滅した。鮎は水の流れがないと死んでしまうのだと後で教わった。鮎の養殖にもう一度挑戦しようという気にはなれなかった。

鮎がだめなら次はアマゴだ。
 3月1日は待ちに待った渓流釣りの解禁日である。渓流釣りは私にとって今年初めての挑戦になる。初日アマゴ(サツキマスの河川残留型)2匹、二日目もやはりアマゴ2匹しか釣れなかった。
 渓流釣りはあまり好きにはなれないかもしれない。と言うのは、あまり釣れなかったこともあるが、川の上に張り出した木の枝に釣り糸を引っ掛けること数度、そしてアマゴの神経質さに根負けしそうになっているからである。人の気配だけで寄ってこない。流れに沿って自然に流れている餌は食べるが、釣り針の餌はそうはいかない。小さなオモリがついていれば、流れより遅くなるし、深さも加減すると不自然な動きになる。そういう不自然な餌は魚の鼻先に垂らしてもそっぽを向いてしまう。すねた子供よりたちが悪い。今日はもう終わりにしようと針からはずした餌を川に投げたら、その餌はパクリと食べられた。精神の鍛錬になるかも知れないので、気が向いたらまたやってみようという程度である。
 釣ったアマゴは四匹のうち一匹は針を深く飲んで死んでしまった。一匹は池の外で死んでいた。残った二匹は元気だ。ところが二、三日経って気付いたのだが、一匹は浅い岩陰に背びれを出してじっと静かにしている。大きいアマゴに追われて居場所がないのだ。罪なことをしていると後ろめたさを感じつつもそのままにしておいたら一ヵ月後ぐらいに浅瀬のアマゴは姿を消していた。多分、ハクビシンか何かに捕食されたのだろう。さらに一ヵ月後には最後の一匹もいなくなった。今、池にいるのはどこからともなく集まってきた沢蟹だけである。


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