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世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

「一緒に暮らさね?」
「いいよ!!!!!」
LINEの返信がすぐに来て笑った。もっとしっかり考えなくていいの?と思ったけど、らしいなって。

とってもワクワクした気持ちと、ほんの少しの不安。そりゃあきっと、ケンカすることもあるだろうから。でもケンカしてもいいやって思えた人だから、LINEを送ったんだ。

「スクリーンで映画観れるようにしよう」ふたり好みに部屋を改造する。
「シャンプーどれにする?」共有で使うものを買い揃える。
「このコート着ていいよ」クローゼットの中はごちゃまぜ。
「ビール買って帰ろう」累計で何本くらい買ったんだろう。

髪を切ったこと、新しい服を買ったこと、些細な変化に気づいてくれる。
「いつも洗濯と掃除ありがとう」ってランチとかコーヒーとかクレープとかご馳走してくれる。こんなに誰かに大事にされた経験がなかったから、どんな顔すればいいかわからなかった。一緒に暮らしはじめて3キロ太った。

カラオケで俺が歌ったあと、「それ歌いたかったやつ」って同じ曲入れて歌い始めたの、らしくて笑いが止まんなかったよ。ボーリングも卓球もスーファミも、たくさんの勝負をした。たぶん俺の勝ち越しだよね?

旅行、めちゃくちゃ楽しかった。何枚の写真を撮ったんだろう。スマホの容量がパンパンになった。ソフトクリーム買ってくれてありがとう。

ご実家に遊びに行ってお母さんに挨拶するの、ちょっと緊張した。チャーミングなお母さんだね。卒アルを見せてもらって、どのページでもすぐに見つけられる自分が気持ち悪かった。

朝の9時から磯丸水産で酒を飲んだこと、銭湯に8時間いたこと、楽しかったことを振り返るとキリがないんだけど、ふたりで「さみぃさみぃ」言いながらタバコを吸う時間が好きだった。びっくりするくらい内容の薄い話を、ゲラゲラ笑いながら毎日。あ、あとね、「今日のおもしろかったこと」を話す寝る前の時間も好きだったの。



せっかくだから嫌だったことも書こうと思ったんだけど、マジでね、なかった。思い出せないんじゃなくて、なかったんだ。

結局ケンカは一度もしなかった。

それはきっと、たくさん迷惑もわがままも許してくれてたからだろうな。仕事の相談をしてくれたとき、偉そうなことばっか言ってごめんね。ひとつでも役に立ってるといいんだけど。俺のが歳上なのに甘えてばかりでごめん。あと、酔っ払って夜中に風呂場の棚を壊してごめん!!!!

みんなで飲んでるとき「どこが好きなの?」って聞かれて、真剣に考えてちゃんと言葉を選んでくれたの、嬉しかった。「そんなのノリでさらっと適当に言えばいいんだよ!」なんて笑ってたけど、実は嬉しかったんだ。
そういう下手に真面目なとこ、ちゃんと優しいとこ、尊敬するし、好き。悪口を言わないとこも。

最後の夜、先に寝てくれて、ホッとした。
あのまま思い出話を続けていたら、泣いてしまいそうだったから。
「今までありがとう」ってお互いに渡したプレゼント、同じの買ってて笑っちゃったじゃん。

荷物をまとめなきゃいけないのに、ちっともできなくて、気づいたらこんな文章を書いているよ。

「このまま一緒に暮らせないかな」っていろいろ考えたんだけど、お金とか仕事とか、なかなかね。ムズいっすね、人生。

やっぱさ、塩分摂りすぎだと思う。あとコタツじゃなくてベッドで寝なね。お酒も夜ふかしも、ほどほどに。しっかり野菜も食べて。洗濯物ためないように。いつも使ってる柔軟剤の詰替、SEIYUで買えるよ。ドラッグストアではあんまり売ってないから気をつけて。

たくさん笑わせてくれたこと、大事にしてくれたこと、迷惑もわがままも許してくれたこと、家賃を多めに払ってくれたこと、落ち込んでるとき何も言わずにいてくれたこと、知らないことを教えてくれたこと、眠いのに映画を観るの付き合ってくれたこと、秘密を共有したこと、いつも「ありがとう」って言ってくれたこと、本当に本当に、ありがとうね。

ふたりで暮らした笑い転げるくらいのどうしようもなく美しい日常、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」

恋愛の同棲話じゃなくて、男ともだちとのルームシェアを仕事の都合で解消した話



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