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私の人生を彩る作品の話(中学編)

幼心に惹かれたことは、大人になっても好きな路線として繋がっていると思う。

私は、ある本に感銘を受けて育った。
自分のことのように初めて体験した感情が、鮮明に蘇る。
そんな、自分を司る原点になった児童書がある。

出逢いの刻

当事─中学2年生の私は、仲良くなりたての友達と
「学校の図書室の本を制覇してみようぜ」
というノリで、室内を一周するように巡ることになった。

隣り合う本棚を分担し、気になる本を読む。
その中でおすすめを選び、交代で借りよう。

何冊か完走し、読書に慣れてきた頃。

突然、ページを捲る手が止まらなくなる本があった。
知らぬ間に世界観に惹きこまれ、登場人物と心を通わせる感覚を久しぶりに思い起こされたような…

その頃、同じように顔付きを変えた友達がいた。
そんなに楽しそうな表情を読書で見たのは初めてで。

それぞれが興奮しながら本を見せ合った結果─
同じ小説家の別作品だった。

驚愕と絶句

"児童書"といえば、"学生が読む図書"
簡単な意味の言葉で表現された、わかりやすい内容
というイメージは、2作品目によって覆される。

クライマックスの大どんでん返しは、衝撃的だった。
第1巻を読んだ感想は、「人生最大の絶望を味わったおかげで、どんな困難にも立ち向かえる力を感じた」である。

「あああああ」という台詞の裏側に、
・まるで映像を見ているかのように変化する表情
・主人公が発する声の起伏
・なすすべもなく打ちのめされる情景 があり

まさに次元を超えて主人公とリンクしたような…
言葉に表せない複雑な感情を経験したのは、生まれて初めてのことだった。

底なしの沼

本を1冊読み終えた満足感と、あんなに取り乱した感情が落ち着いていく余韻とで、しばらく放心状態になった。

登場人物のことや出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
気付いたら、一心不乱で世界観にのめり込んでいた。
頭の中でキャラが自由に動き回る感覚が止まらない。

頭を抱えて溜め息をついたかと思えば、
妄想を膨らませて上の空。

百面相を繰り返す、とても愉快なひととき。
こんなに心を揺れ動かされたことなんてあっただろか。
まるで命を吹き返したように、日々が色づき始めた。

創作の原点

作品の感想を、友達と語り合うようになった。
「〇〇のシーン、こういうところが、ああだよね!」
「やばい」を使わず、語彙のある力説ができていた時代。

2人で手紙の交換をしていた派生で、
A4の紙を8ページに折った冊子で、ミニ漫画を作った。

もともと絵を描くことが好きな私にとって、キャラの魅力を物語で表現するのは初めてで。
ネタがコメディ寄りになったのは、友達が剽軽な性格で、一緒に腹を抱えて笑いながら意見交換をしたのが楽しかったから、かもしれない。

身近な存在

その親友とは、作品と結び付く思い出がたくさんある。

ある時は、なりきりごっこ。
イトヨーに向かう道中、1列に歩きながら
「しほっち…」「徹平さん…」
「しほっち…」「徹平さん…」
情熱的になったり戯けてみたり
キャラの名前で互いを呼び合うという謎の会話。
親友との関係性は、この2人がしっくりきていた。

ある時は、学校行事。
クラスの出来事をまとめる壁新聞で、
作中の言葉を参考にして記事の見出しを作った。
確か、文字数を指折り数えた記憶があるので、
「サブタイトルが5文字の法則」に気付いてたかもしれない。

ある時は、情報収集。
市民にパソコンを貸しているところがあり、定期的に新刊情報を調べに通った。
印刷の枚数が限られていたので、親友がメモに書き写した公式サイトの文章を、何度も読み返した。

9年前の話

それぞれの世代に、懐かしい!!と、ときめく作品がある。
知らなかった自分の気持ちを教えてくれたルーツ。
一つの物語に触れた経験にも、それを受け取った人の数だけエピソードがあると思う。

今回は、大好きな作品に巡り合ったきっかけと、
大好きな人と気持ちを共有したという些細な話について。
自分にとっては色褪せないとても幸せな思い出。

それをnoteというカタチで発信する原動力になったのも、
投稿を読んでくださったあなたに伝えられたことも

作品を通して、ただの一読者でも多くの人と繋がることができて感謝しています。
このキセキを秘めたままでいるより、できることをしたいから…

たくさんの出逢いの話は、また別の機会にでも綴ろう。
ー続く。

おまけ小話

よく、学校の休み時間に作品を読んでいた。
普通に教室で号泣するわ、笑い出すわで「変な人」の自覚はある。

その日、訳があって双子がキスをしたタイミングでチャイムが鳴った。
よりによって次の時間は全校集会。
整列の間に平然さを装うにも、隠しきれないデレと動揺w

校長先生の話にニヤつきたい訳ではないのに、表情が緩んでどうにもならなかった。

それ以来、読書を気持ちはやめに切り上げて、気持ちを整える時間をつくるようになった。

おしまい。

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