脱炭素のために必要な住宅の技術
あり方検討会が終わってひと段落、十分な議論の末、高い目標が設定されているかといえばそうでもない。全国一律の義務化は相当ハードルが高い。その最低限のレベルに期待すること自体が間違っているとも言える。では、民間で、私たちが進めるべきはどういう目標のものか、また、その実現化を難しくしているのは何か、何を目指して、住宅を作るべきか。まとめてみた。
私も今回の検討会を経て、色々考えを一新したので、その点も含めてのコラムである。
まず、2050年脱炭素をする前提において、住宅、建築ともにゼロカーボン、すなわちその分野だけで脱炭素することができる、また、それには現行の技術で十分である。だから、すぐにそれをしなくてはいけないという前提の共有がしたい。建物はロックイン効果があり、現在、建てられる住宅は2050年まで建ち続けるのである。
現在、建てられる2050年までの家のスペックは以下の通り。
断熱性能G2あるいはG3。
太陽光発電5kW。自動車のチャージ用にあと、1〜2kW。
自家用車はEV。V2Hでガソリン代はもういらない。
これで、家はネットゼロエネルギーハウスになる。
つまり、PVの減価償却が終われば、電気代はただ。車の充電もできる。
あり方検討会でも2030年に太陽光発電を60%に載せると言っているが、そんな先まで待つ必要なし。現在の買う電気よりも安くなっている現在、ぜひ載せる方がいい。
kWあたり20万円以下になっているので、5kWで100万円くらいだろうか。
普及のためには、金融機関との連動でローンの枠が広がることが望まれる。(そういう枠を作りたい金融機関の方、ぜひ相談されたい。)
国が定める断熱性能20%削減はどう転んでも評価できない。
高効率の設備であるエコキュートを入れ、照明をLEDに変えれば、すぐに20%削減になってしまう。これで何もしなくてもいいという話ではない。
第一、この家の性能では6地域であっても寒い。暖房を切って寝て起きたら、室温が8℃に下がってしまうレベル。未来に寒い家を作るなんて、作りたい人の気がしれない。
やはり、最低でもG2レベル以上としたい。なぜ、G2か。ま、わかりやすい指標だから、G2である。本当はこの辺を義務化したいが、国の方針はZEHレベルの躯体で良いと言っているのだから、始末が悪い。そのレベルでは、最近流行りの全館空調をすると、増エネルギーになってしまう。脱炭素ではなく増炭素である。全くお話にならない。G2レベルの家は、あり方検討会提言資料でもまとめたように、窓を樹脂サッシにガラスをLOW-Eペアにすれば、実現できるレベルである。その積み増しは70万円。G2レベルにしたら、一家にエアコンは2台ですむ。エアコンの減った分、窓に投資をすれば、数十万円の差である。これをやらない手はない。
寒い家に住みたい人以外は、窓をよくすることをおすすめする。都市部では、防火性能のある樹脂LOW-Eペアはサイズが制限されることが多いが、そういう時、大きい窓を取りつけたい場合、筆者はシャッターをつけて、その制限を逃れることが多い。いろんな工夫のしがいがある。
また、エアコンが2台になるとその空気を適宜循環させる必要がある。家の中での吹き抜けが必要になる。
こういった家をどういった人が建てられるのかとよく質問をもらう。工務店であれば、高断熱高気密の経験のあるところ。そんなのうちにもできますよと誰でもいうが、工事ごとに「気密検査
」をしているかがポイント。これをしていないといい加減なことが多い。この辺の情報は「新しい家づくりの教科書」を参考にされたい。