見出し画像

学校の断熱改修

白馬高校断熱改修プロジェクト

白馬の雪が気候変動によって、なくなってしまうという危機感から活動を続けるPOW※1の2019年1月に行われたアクション、「おだやかな革命」の映画会とパネルディスカッションに話は遡る。
そこで、断熱改修のプロジェクトをジャーナリスト高橋真樹が紹介した、学校の断熱改修を知った高校生が私の長野市でのレクチャーに自転車でやってきて、「教室が寒いからなんとか断熱改修をしたい」と呼びかけられて、このプロジェクトは始まった。

※1 
https://protectourwinters.jp/%e3%81%8a%e3%81%a0%e3%82%84%e3%81%8b%e3%81%aa%e9%9d%a9%e5%91%bd%e3%80%8f%e4%b8%8a%e6%98%a0%ef%bc%86%e3%83%88%e3%83%bc%e3%82%af%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88/

過去に2回、学校の断熱改修には、過去2回かかわっったことがある。
1回目は津山市の小学校での断熱改修のワークショップ。2回目は仙台市の小学校の断熱改修の実証実験のプロジェクトである。

平成30年に文部省の衛生基準が改定され、教室の温度は17℃〜28℃が望ましいとされた。その年、愛知県の小学校で不幸にも熱中症になり、命を落とすという事件が起こる。それを受けて、当時の政府は迅速に、全ての小学校、中学校にエアコンをつけるということを決定、それに対する補助を準備した。これを受けて、全国の学校でエアコンの普及が進む。しかし、学校はそれまで、温熱のことはあまり考えられなかったため、適切な断熱がされていない。エネルギー的には非常に効率の悪いところに、大きな容量のエアコンを設置しなければならない。これによって、学校の電気の需要はかなり大きくなり、変圧器(キュービクル)をつけなければならない状況になった。

津山の事例は、都市経営スクールの受講生でファシリティマネジメントを担当していた市職員と地元の建築士会が協力して、ワークショップを企画してくれた。エネルギーの無駄を抑え、快適な部屋を作ることをなんとか実践したかったのである。
3階建ての校舎の3階の教室は天井の断熱がなく、夏暑く、冬寒い。その天井にグラスウールを200mm、シングルガラスのアルミサッシの窓には、地元の建具店の協力でアクリルを2重に貼った木製の内窓を作り、腰壁部分に断熱材(グラスウール100mm)を入れて、シナベニヤで仕上げるというもの。職員や建築士会の協力もあり、1日でワークショップを終えた。断熱の効果は抜群で、断熱改修している部屋としていない部屋のエネルギーは半分になる日もある。また、部屋の中の温度ムラや外部の音が静かになるなどの効果が確かめられた。

仙台の事例は同じく営繕課にいた都市経営スクールの受講生が、財政課にシミュレーションを設定して、今後の指針すべく、3(後に4部屋)部屋の断熱性能の違う部屋を比較し、そのデータを詳細にとるものである。比較対象となる何もしない部屋と、津山と同様の断熱を施し、かつ改築前提で内窓を入れたもの。新築と同じようにペアガラス樹脂窓を入れたもの、ヨーロッパ並みにそれらをさらに強化したものの3室の比較をしている。それらは導入されたエアコンの電気量と各部屋の温度がどのように連動しているか仔細にデータをとり始めている。

さて、今回の白馬高校の断熱ワークショップはこれらの2つの進化系でもある。

1)学校を高校生が自分たちでリノベをする。
2)長野県は気候緊急宣言をしており、建物の低炭素化を県を上げてバックアップしている。
3)教育委員会の理解があり、高断熱化に理解があった。
4)地域のまとまりがあり、地元の高校生を応援する気運がある。
  (具体的な先ほどのPOWだったり、SDGs LABOが応援している。)
5)学校自体が国際観光課という実験的な校風があり、新しいことに積極的。
実に、今回のプロジェクトは県からの助成(私たち講師に関して)も受けているが、材料費などは高校生主導でクラウドファンディングで集められ、地元の工務店が技術的なバックアップをしている。

もっとも積極的な高校生がいなければ、実現はしなかっただろうが、ワークショップをする好条件が揃っている。主宰をしてくれた3人組は、単純に「教室が寒い」からだと屈託なく語るが、単純にそれだけにはとどまらない巻き込む力を遺憾なく発揮してくれた。

HakubaSDGslab_白馬高校
1日目
http://hakuba-sdgs-lab.org/200919_hhs-insulation_01...
2日目
http://hakuba-sdgs-lab.org/200919_hhs-insulation_02
3日目
http://hakuba-sdgs-lab.org/200919_hhs-insulation_03

さて、これらのプロジェクトは高断熱な空間の体験が少ない私たちにとって、快適性や意義を理解するのに大いに役立つ。また、高断熱を自分ごととして考えることができる。これが一般的になれば、高断熱高気密を導入するときの新築時のコストアップの理解も進むのではないかと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?