ボッシュが二人、ダルトンラヴォス

「そうか…つまりお前さんは未来から来たのか…」


ボッシュ
「そうじゃ! 実験は失敗して、大変な事になる。未来で見たラヴォスは世界を破滅させたんじゃ。」

ボッシュ
「そうはいうが、ここは天空都市じゃぞ。ラヴォスが世界を破壊するとしても、この高さまで届くとは思えんが…

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「お前さんも知っているじゃろうが。我らに選択肢ない。ダルトンとその背後にいる奴らの意には逆らえん。やるしかなかろうが。

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「タイムゲートに飲まれたとして、助かるんじゃろ? ならそんなに深刻には…」

ボッシュ
「兄さん達は死んだのだぞ!」

ボッシュ
「だったら、魔神機に剣刺したら直ぐに逃げれば良いじゃろうが。タイムゲートにまきこまれる前に。」


ボッシュ達はガッシュとハッシュの元へ行った。


ガッシュ、ハッシュ
「まさかワシが死ぬとは…」

ボッシュ
「兄さん達はどう思う?」

ガッシュ
「未来に行きタイムマシンの様な物を作る…」

ハッシュ
「記憶はないものの、時の案内人みたいな仕事…しかもオシャレな服とステッキか…」

ハッシュ、ガッシュ
「楽しそうじゃないか!」


ハッシュ「冗談じゃよ。だがな、実験を止める訳にもいかんのじゃよ。
 止めることができぬなら、やるしかない。要するに避難するとか、実験が失敗したときの対策をすればええんじゃろ?ボッシュ二人でならダルトンを説得する事はできんかの? タイムマシンで未来を見せるとかで。」

その瞬間、クロノ達とボッシュの身体が光輝いて透明になった。

ボッシュ
「身体が消えそうじゃ…」

ガッシュ
「何が起こっている?」

ハッシュは考え込む。
「恐らくこれは、時の流れに逆らって歴史を変えようとしているから…かもしれん。
 ボッシュがタイムゲートに飲み込まれたからこそ、今こうしてボッシュはここに存在している。もしゲートに飲み込まれない世界を作ったら未来からきたボッシュの存在は無かったことになる。」


『魔神機実験をしなければならない。』
そう決断したとき4人から光は消えた。


ハッシュ
「それが運命というなら、やらねばならんのかのう。


ガッシュ
「うむ。そのようだ。

ボッシュ
「…

ハッシュ
「未来から来たボッシュ。お前さんができることは出来るだけ民を安全な所に避難させる事じゃ。

ガッシュ
「もし大陸が海に落ちたら大津波が起こるだろう。海岸沿いの地の民を避難させねばならん。


ボッシュ
「ラヴォスが暴走するにしても、ワシは念の為に赤い剣を作るよ。
 そしてまたこの時代へと皆に会いにくるよ…

未来のボッシュ
「1つ方法がある。
 未来のサラ様とジール様を連れてきて、みんながゲートから消えた後、ワシらがラヴォスと戰う。
 サラ様がラヴォスの力を押さえ込みつつ、ジール様が魔法で応戦する。」

ハッシュ
「それだと死の危険が伴うのてはないか?」

ボッシュ
「分からぬ。もしかしたらまたタイムゲートに飲み込まれるかもしれん。
 でも、せっかく築いたこの国を諦めたくないのじゃ。」

ガッシュ
「実質ダルトン政権なのにか?

未来のボッシュ
「天空都市が有ろうが無かろうとダルトンみたいのは多くいる。どのみちこのみちじゃよ」


~ダルトンについて~

ダルトンは海底神殿以外にも人造魔族に関する陣頭指揮も取っていた。それ以外にも極秘裏に研究している事が多くはあり、配下が無数にいた。
その全容はジールですら把握できていなく、しかしいつでも王家を転覆させる力が有ることだけは判ってた。だが地球を一撃で破壊できる程の魔力を持っている事は誰も知らない。ダルトンは陸から上がったラヴォスに寄生されていた。そのラヴォスは原始時代より以前より地殻にいて力を蓄えていた。力を細かいレベルでコントロールでき、大きな魔力気配も隠せるバリアを身に纏える。知的レベルは寄生した人間に依存する性質があるが、ダルトンそのものものポテンシャルの高さから、ラヴォスの力が引き出されていた。

ラヴォス化ダルトンの目的は人間観察だった。人がどの様な動きをするのかを試していた。いつも人前でバカな演出をするのは自分の強さに酔いしれての余裕からくるものであり、ちょっとした遊びだった。原作では死に様が喜劇的になるのもそれが理由だった。死んだふりで驚かすのが楽しかった。

ダルトンラヴォスは、もう一体のラヴォスが目覚めたとき、、人間がどの様に立ち向かうのを観察したかった。

不老不死が実現するというハッタリにジールが騙されていくのも興味深い現象だった。
ジールは勝手な被害妄想をしていた。ラヴォスを目覚めさる事業をしていれば、その制御に必要になるサラの存在価値が上がり、ダルトンによる王家転覆計画が阻止されると思っていた。ジールが暴君としてジャキや従者に傍若無人に対応するのも、人質としての価値がない様にダルトンに魅せる為の演技だった。


ボッシュは中世に戻り、現状の王宮を報告した。

サラ
「ラヴォスと戰うって? ボッシュ本気で言ってるの? 

ジール
「正直、わらわも勝てる気がせんな…」

ボッシュ
「未来での映像を思い出してみてくだされ。
 ラヴォスは体から光を空に向かって攻撃を放つ…
 要するにラヴォスの上に居なければ安全なのではと。
 タイムゲートはラヴォス近くで発生するとして、ラヴォスから離れて遠くから魔法で攻撃するのです。
 もし危険と判断するなら、予めワープゾーンを足元近くにおいて、そこから逃げるのです。」

サラ
「なるほど。それなら…

ジール王
「まだ不安があるがな…

サラ
「魔族に助力をお願いしてみるのはどうでしょうか。戰うことが好きな魔族は多くいます。ソイソーやマヨネー、ビネガーも頼もしい戦力になるかもしれません。


☆「時の流れに反してはいけない」ハッシュの言葉

未来でラヴォスの脅威を知ってそれを前提として過去のラヴォスを倒すことはできない。。ラヴォスが過去で死んだならば、ラヴォスを知る原因となった未来がないからラヴォスの存在そのものを知らない状態になる。つまり過去でラヴォスを倒すこと事は成立しない。

この仮説はクロノの視点ではそうなるだろう。だがサラやジールの視点でみれば、未来のラヴォス災害を知らなくても、ラヴォスと戦うシナリオは成立する。ガッシュはラヴォスが荒廃させた未来に行こうが、ラヴォスの存在しない未来に行こうが、元の時代に帰る為にシルバードを開発しようとするだろうし、古代人へのメッセージを残すだろう。
細かい矛盾はあるけれど、大枠ではラヴォスと倒せるシナリオはサラやジールにある。わかりにくいけど。

基本的にはラヴォス破壊は、未来においては可能だが、過去ではできない。
にも関わらず、ボッシュ達は光に包まれないのはどういう意味か。
以外2のどれかしかない。


1,ボッシュ達はラヴォスを倒せない
2,ボッシュ達はラヴォスに殺される

ボッシュは【避難活動が一番確実である】気がした。
ラヴォスが未来でしか倒せないのなら、未来で倒せばいい。
1999年までに、人々を未来2300年向こう側に移住させる。そこを新たな住処として開拓すればいい。

1000人が収容出来るような巨大なシルバードを作り、人々を未来に連れて行く。
砂地になった未来を復興する。
天の民の多くが古代からいなくなれば歴史の繋がりは保てるので、クロノ達現代人も生まれてこれる。


この考えを聞いたジールは古代へと向かった。ラヴォスを倒すのではなく、ラヴォスから民を守るのを使命とした。


ジールは大陸の中央に特大の魔法陣を描き呪文を唱えた。
吹雪の寒い世界で、その空間だけが、温かくなる。そこに人が集まれる様にテレポートスポットを設置した。
皮肉な事にこの動力源の多くはラヴォスだった。ジール達はラヴォスが目覚めた後ではラヴォスがエネルギーを吸いとれない事を知らなかった。魔方陣についてもだ。古代人が利用している魔方陣は自然界からエネルギーを得ているがそのエネルギーの多くが地面にいるラヴォスだった。ラヴォスが目覚めた瞬間から、あらゆる防衛戦略が機能しなくなる。

ジールの得意な魔法はハレーション。
ハレーションを受けた者は体力1になり、瀕死の重症になる。
しかし動けなくなる訳ではない。戦闘できるスタミナはちゃんと残されている。しかしダメージを受ける恐怖は大きい。動けなくなったら倒れている間に誰に何をされるか判らなくて不安になる。この不安を解消するにはジールをどうにかするか、回復アイテムを常備しないといけなくなる。

ジールは国全体にハレーションを振りまき、弱った人々に、脅しのアナウンスをした。
「わらわのハレーションを受けたくないなら、、地上に逃げるしかないぞよ」

ラヴォスが暴走すると言っても信じない者や、天空だから安全だと思い込み、逃げない者がいる。そう考えたジールはハレーションを使った。

空飛びつつハレーション
 虹色の環が広がる。

「ラヴォスが暴走して天空都市がなくなる。ので、ハレーション!」

「ラヴォスが私のせいで目覚めてしまいますよ。ハレーション!」

「ダルトンが悪い! ハレーション!」


「皆の者よく聞け、わらわは、未来を見てきた。

未来はとてつもなく、ひどい世界になっている。

生きている人々は皆、困っている。

わらわは思った。恵まれてるそなたらなど、どうでもいい。

苦労知らずのお前たち等どうでもいい。

わらわは未来で王になる。

こんな時代、ダルトンにくれてやる。


わらわの苦労を知らぬ者は死んでしまえ」

ジールについて暴君なイメージしかない国民にとって、ジールは乱心している様にしか見えないだろう。
たからこそ、ハレーションの効果があった。

「おいそこ! 地の民をシェルター(温暖区域)から追い出したな! 後でハレーションを浴びせるから覚えとけよ!」

「地の民をいじめた奴は皆ハレーション地獄を味わわせてやる。」


ボッシュとサラはバリア用の魔法を準備していた。

「サラ様が地の民を守ろうとしている!
「ラヴォス神が世界を破滅させるのは本当なのかもしれない!」
「サラ様だけに任せる訳にはいかない!」
「オレも!「私も!

ラヴォス防衛に必要なエネルギーが貯まる。しかし、魔方陣を使ったエネルギー補てんはラヴォスが目覚めた瞬間に殆ど機能しなくなる。

〜海底神殿〜

ボッシュ
「兄さん達、また会いましょう!

ハッシュ
「じゃ、時の最果てでな!

ガッシュ
「ヌウとして!

程なくして海から光の柱が天を貫いた。

光の雨が大地に降り注ぐ。

雪の地面が溶けていく

地響きで立っていられない地の民。魔法使い達は力を加減しながら浮いていた。
砂煙で周りが何も見えなくなっても、ラヴォスの衝撃はシールドを通し、空気の振動として内部に伝わる。

耳を塞ぎ、蹲る人々。恐怖で怯える。

5分経過
景色は見る影もなく崩壊し、山々の輪郭が変わっていく。
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。

10分経過
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。
ジールもサラも汗を流した。
体から出るオーラの流れ長い髪が上になびく。
周りを見る余裕はなく、目を瞑り集中する二人。
山々は蜂の巣の様に穴だらけになっていく。


更に10分経過

大地はめくりあがり、ジール達のいる足場以外は谷の様になった。


高さ1000mの高台になる。原始時代の高さ8000mの高台もこの様にできたのかもしれない。

多くの山々は崩れ落ち、そこを住処にしている魔族も多くが死に絶えるだろう。
海は大地を侵食し、入り交じる。
魔法使い達は疲労を貯め、目が虚ろで視線が定まらない。
魔力は殆ど使い果たして、意識が朦朧としている。
ドーピングの魔法で意識を繋ぎ止める。
だが一人、二人と、次々に力尽きて倒れる。


地の民は無力だった。サラやジール、その他の魔法使いを心配することしかできなかった。

更に10分が経ち、バリアシールドがボロボロになる頃、魔法使いで立っている者は殆ど居なかった。サラもジールも同様に魔力が尽きて倒れた。

ラヴォスの攻撃は未だ収まる気配がない。
このままでは皆が死に絶える。

「お、お母様…このままでは…

「わ、わかって、おるわ…」

ラヴォスの攻撃は生命の7割を絶滅(陸上の生物は全滅)させるエネルギーがあった。

サラは思った。この時代に戻ってきたのは偶然ではなく必然なのだと。
ラヴォスゲートに飲み込まれた後、人々はラヴォスの攻撃で死んだ。
未来に王国の歴史を語り継げる者が誰一人居なくなるまで殺されてしまったのだと。

全てはラヴォスを覚醒させる実験から生まれた悲劇。自分達の責任は免れない。

人々は実験を強行した王宮を恨みながら死んでいき、その魂の無念を晴らす為に自分達をここへ導いたのではないかと。罪を悔いて反省するか、さもなくば責任を取ってラヴォスを倒せと。それが無理なら命を駆けて人々を守れと。
みんな死んだのだから、今度はお前が死ぬ番なのだと。

【お前達が私達を殺したのだから、今度は私達がお前達を殺す番だ】

サラ
(お母様…この惨状を招いた私達は途方もなく罪深い…)


ジールはサラが何を考えているかは分からなかった。しかし、きっと物事をわるい方向に考えて絶望しているのだと思っていた。

ジール
(わらわは思うぞ。わらわがラヴォスを呼び覚まさなかったら、ラヴォスはしっかり睡眠時間をとり、未来で目覚める時間が前倒しで早くなるだけじゃろうと。)

ジール
(余計な事は考えずとも、やれることはもう少ない。魔力はもう無いんじゃ。すっからかん。後は運を天に任せるのみぞ…)


ジールはサラを見て笑った。

サラ
(こんな時に笑うなんて、やっぱり私、お母様の心なんて分からないや…)

サラもジールに笑顔を向けた。


ラヴォスの光はバリアを貫き、人々を巻き込んだ。
サラとジールも巻き込みながら…

「まだ、まだ、終っとらんぞ!」
ボッシュは透明魔法を解除した。そばに隠しておいたシルバードを起動し、サラとジールを乗せた。

ダルトンはその光景を見ていた。

「やらり人間はこの程度か…」

そう呟いたダルトンにラヴォスの光が直撃した。

ダルトンは無傷だった。

ダルトンは何かの呪文を唱えた。

その瞬間、時が止まった。

ダルトンはサラとジールに歩み寄ると手をかざした。

タイムマシに乗りこんだサラとジールの体は光に包まれ消滅した。


気付くとサラは見慣れた場所にいた。ラヴォスの攻撃に備えてバリアを張る予定の安全地帯にいた。ジールも隣にいてハレーションによる避難誘導が終わったばかりの状態で、まもなくラヴォスが暴走を始める時。

腰が抜けた様にサラは倒れ、、ジールもまた同じ様になった。

サラとジールは同じ気持ちを察した。これから起きる未来を見て絶望していた。

ジール
「い、いまのはどういうことじゃ? わらわは未来を見てきたのか?」

サラ
「なぜかは分かりませんが、私達は過去にタイムリープした様です。」

未来での記憶を過去に引き継ぐ現象、タイムリープ。
魔学の歴史にもその様な現象の記録は残っていない。
夢が幻か、もしこれが未来視としたら、ラヴォスとは正面から戦えという暗示かもしれないと二人は察した。


〜ラヴォス戦、海底神殿〜

サラはペンダントの力を使い、ジールと共にラヴォスの眼前にテレポートした。
サラはラヴォスの頭に触れた。ラヴォスに意識を繋げ、ラヴォスが眠るように暗示をかけた。
ジールはラヴォスからの攻撃に備えてサラと自身にバリアを張った。ラヴォスの光の攻撃で神殿の天井に穴が空き、海水に押しつぶされる事に備えた特別仕様のバリアだった。

バリアを作り終えた瞬間、ジールはラヴォスに心を乗っとられていた。

ラヴォスには生物の意識に繋がり、操る力があった。その能力はある意味サラと似ていた。


だがラヴォスがジールに意識を繋いだとき、ラヴォスはジールの心を共有した。
ジールの国民を守りたいという純粋な感情、一度は守りきれず失った悲しみと絶望。
ラヴォスは敵であるジールの心を支配するつもりが、ジールの強い念に協調しそうだった。

ラヴォスの意識とジールの意識がせめぎ合っていた。

ラヴォスは世界に向けてブチかましたい。ジールはラヴォスから人々を守りたい。
互いにラヴォスエネルギーを奪いあう様相になる。

ラヴォスは天に向けて力を放つも、ジールはラヴォスエネルギーを使い神殿で攻撃を防ごうとする
物質変化の術を神殿にかけたジール。その術に意識を集中し、神殿を変形させ、ラヴォスを包み込もとうする。

ラヴォスは神殿に包まれる。光の攻撃で神殿の天井を破壊するも破壊した部分からすぐに神殿は再生していく。

ラヴォスエネルギーを用いた神殿はラヴォスの攻撃を鉄壁にガードする存在となった。

ジールはラヴォスを人のいない遠くに追いやりたい。

神殿はラヴォスを抱え込んで浮上し、空へと進む。

このまま空の果てに連れて行くつもりのジール。

だが、いずれ自身は寿命で死ぬ。ラヴォスの寿命は果てしなく長い。寿命があるのかさえ判らない。いずれラヴォスを支配できなくなって暴走を止められなくなる。それを解決するにはジール自身の意識を神殿内に閉じ込め、神殿と同化する事でラヴォスと意識を繋がり続けさせるしかない。
ラヴォスを支配できている今の内にラヴォスエネルギーを抜き取れるだけ抜き取る必要があった。

そのエネルギーでジール神殿はラヴォスが容易には抜け出せない程の硬い質へと変化した。ラヴォスを未来永劫、神殿内に封印できることを期待して、また、誰かがこの封印を解かない様に神殿への侵入者、外敵を排除できるように要塞になる形に変形させた。

サラはジールが神殿になるのを止められなかった。
サラがラヴォスと意識を繋ぐというのは、ラヴォスが意識を繋いでいるジールともまた繋がるということ。ジールの気持ちが判りすぎていた。

「お母様、有難う。」
サラはジールに感謝と別れ告げると、この状況を民に説明する為、国へ戻った。