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現代風味のクロノトリガー




プロローグ

ビネガー
「魔王様ここは…

マヨネー
「なんなのこの一面雪景色は?

ソイソー
「我々はどうなったのでござるか? ラヴォスの召喚は一体…

魔王
「ラヴォスの召喚は失敗に終わった…

ソイソー
「なんと! やはり人間が魔王様の邪魔を!

魔王
「だが、私にとっては嬉しい誤算だ…

ソイソー
「? 

マヨネー
「ねえ? あの光なに?」

マヨネーは天まで届く光柱を指した。

魔王
「あれは…わたしの…故郷だ。 

マヨネー
「故郷? 魔王様は魔王城で生まれ育ったのでは…

ビネガー
「お前達は知らんだろうが魔王様は故郷は別の時代にあると言われておった。魔王様は詳しくは教えては下さらなかったが…


マヨネー
「別の時代? ビネガーちゃん、何訳分からない事言ってるの?

魔王は光の柱へ向かって進み出した。

マヨネー
「ちょっと待ってー、置いてかないで…


魔王
「私は、お前達に…嘘をついていた」

「ラヴォスは魔族に繁栄をもたらすものではない。ラヴォスは私にとって憎き敵だったのだ。
私はラヴォスに復讐をする為にラヴォスを召喚しようとしたのだ。

マヨネー
(あんまり良く分からないけど、魔王ちゃんが恨むくらいに強い存在なんでしょ? 魔族に必要ってことよね?)

ソイソー
「では魔王様はラヴォスを倒そうと思い、召喚を試みた…。しかし、それは失敗に終わり、故郷のある時代へとラヴォスに飛ばされた…
それを魔王様は嬉しい誤算だとおっしゃるには故郷に何かあるのでござるな。

ビネガー
(ラヴォスを召喚して人間を滅ぼすって話は嘘だったのか…。魔族はそれを悲願として魔王様に使えていたというのに!

魔王達は古代ジールの地を訪れた。

入国受付
「随分と派手なコスプレの人達ですね…、やや!魔力値が賢者クラス! これはこれはつゆ知らず、高名な方をお止めして申し訳ありません。どうぞ先に進んでくださって結構です。武器はこちらに提出ください。」

ビネガー
「魔王様、いい加減教えて下さい! 我らはラヴォスが魔族に繁栄もたらすと信じて魔王様に仕えていたのですぞ。なのに我らはラヴォスの生み出したゲートに飲み込まれ、見知らぬ土地へと飛ばされた。魔王様は我らを裏切ったのですぞ。」

ソイソー
「口が過ぎるぞビネガー! 魔王様にも何かお考えがあってのこと!」


魔王は足を止めて山頂の王宮を見上げた。


魔王 
「ビネガー! 私がこの国の王子だと言ったらどうする?」

ビネガー「?

魔王
「私はこの国の王子だった…」

魔王は古代ジール王国の話をした。
自身は元々この国の王子ジャキでラヴォスが暴走して中世時代に飛ばされてきたこと。
その原因を作り出した母親ジールを憎み、今からジールを倒して、王として君臨する計画を話した。

ビネガー
「魔王様は人間だったのですか…」

マヨネー
「えー。人間? ぜんぜん見えない」

ソイソー
「人間であろうとなかろうと、魔王様は魔王様でござる。」

魔王
「私がこの国の王となり、人間を支配する。そこにお前たちも楽園を作るといい。」

マヨネー
「それはいいけど魔王様、この国は日差しが強すぎます。なんとかなりませんか。」

魔王はマヨネーに日差し避けの魔法を使った。

ビネガー
「あ、マヨネーだけずるい! 魔王様わたしにも!」

ソイソー
「できれば拙者にも…

魔王達は空を飛び。王宮を目指した…

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■一話

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千年祭、子供の夏休み期間を含めて凡そ40日続くこの祭典は世界各国から人々が集まってくる。

初日、入場に寝坊したクロノは行列の波に埋もれていた。

各種ブースでは朝の生報道番組のカメラマンやインタビュアーがいて、フラッシュも炊かれていて非常に眩しい。

リーネの鐘。ガルティア建国を記念して作られて以来、1000年もの長い間、形を変えることなく佇む。その鐘は毎日、8時にベルを鳴らし、ガルティアの街に響きわたる。
いつもなら鐘の音が鳴り響く頃には目覚めるクロノだが今日は違う。
深夜3時、クロノはルッカに突然呼び出され、当日発表するスピーチの練習に付き合わされていた。。今日は殆ど寝ていないクロノはうっかり寝坊した。

開会式初日の目玉になるイベント、ルッカのブース。世紀のテレポート実験の成功を世間に知らしめる日でもある。クロノもその瞬間に立ち合いたいが遅行しそう。

走るクロノ。
汗が目に入るクロノ、焦っていたこともあり、
人とぶつかった。


クロノは剣道で鍛えてる。体は打たれ強いが相手は痛そうにしている。クロノはばつの悪そうな顔で謝ろうとかけよった。

彼女は下を見てキョロキョロとし、何かを必死で探していた。

「ありがと~、このペンダントめちゃくちゃ大事なもので無くしたら大変だったんだ〜」
「あ、そだ。私、名前マール」
「そう、クロノっていうの宜しくね?」
「私、一人でこの祭り来てて、迷路みたいで良くわかんないんだー! 良かったらさエスコートしてよ」
「さっき、ぶつかったお詫びもかねてさ、連れてってよ」
少し距離感のおかしなマールにぐいぐいと引っ張られる。クロノは引っ張られるのであった…


「へぇ、クロノってあの天才発明家ルッカの幼馴染なんだ〜。そういえば今日は世紀の大実験をするんだって? 私もたのしみ〜」
「あ、これ私も知ってる。 ルッカが子供の頃に作った宴会用盛り上げカラオケAIロボでしょ?」
「あ、何これおいしそう。買っていこー!」

マールが人に取り入るのが上手いのか、それともクロノが流されやすいタイプなのか、ルッカのブースに来る頃にはクロノは完全に遅刻していた。ルッカのスピーチはほぼ終わり、デモンストレーションが行われている最中だった。

「はい、じゃあ、次、人間でやりまーす」
テレポートの人体実験がスタートした。 
「やりたい人いますかー!」
ルッカの掛け声に勢よく答えのはマールだった。

「はい! そこの元気のいいお嬢さん。こちらの台にお願いします」

準備が整い、テレポート装置が稼働する。


実験では5m離れた台にテレポートするはずだった。
マールが首にかけていた金属に問題があったのか、装置が異状音を鳴らし始めた。

ルッカが制御装置の電源をオフにしても止まらない。

電気が通っていない筈の装置が動き続けた。
機器がショートしているのか、マールも感電しているのか動けず、台の上から降りるとことも逃げることができなかった。

会場がざわめく中、大きな閃光が走った。
瞬間、眼前の空間が裂け、黒い穴が現れた。
黒い穴に吸い込まれそうになるマール。
マールはその穴にあらがいながら吸い込まれ、そして消えた。
「クロノたすけて!」という言葉を残して

マールが消えた後、空間の裂け目は閉じた。

会場はざわついた。
「きっと演出の一つだ」「何かの冗談でしょ? マジックショーだよ」「実験は失敗して死んだんだよ。」
と人々は騒いだ。

クロノとルッカはただ事じゃないことが起きたと理解した。

実験ではありえない事だった。あらゆる金属を試して万が一にもそういった異常なトラブルが起こらない様に配慮していた。

ルッカの動揺は計り知れないもので、クロノも、このままでは祭典の継続すら危ういと思った。

人が死んだかもしれない。
その悲劇もさることながら、クロノはルッカの日々の苦労を観ていた。何年も苦労して完成させた装置、それが原因で人々が待ち望んだ千年際を台無しにし、人の命さえも奪ったかもしれない。
クロノがもしルッカの立場なら生きていけないだろう。自殺だってありうる。

クロノはその先を考えたくなかった。

死んだ気になれば人は何でもできるという。

「ちょっと! 何をするのクロノ!」

ルッカが気付いたときにはクロノは既に装置の電源を入れ起動スイッチを押していた。クロノの首には先ほどマールが落としたペンダントがかけられている。

「やめて! クロノ!」

装置は先程と同じく、電源を落としても動き続けている。

ルッカは電源コードを斧で切断し、完全に電流を遮断したが、それにも関わらず装置は起動し続けた。

クロノはマールと同じように空間の裂け目にすいこまれた…

空間裂け目

クロノの視界にトンネルが広がっていた。
テレポートの実験は通常一瞬で終わる筈のもので、トンネルの中を前進していく様なものでない。

クロノは10秒以上、トンネルを前進している。

実験では5mのテレポートは一瞬の出来事だった。仮に0.1秒で5m進むとするなら、クロノはもう10秒以上その穴の中を進んでいるから、500mは進んだ事になる。500m先に出口があるのか、もしあったとして岩の中だったら重なって爆発して死ぬだろう。あるいは500m上空に転送されたり500m地面の中だったら…

ルッカとの実験で危険があることは証明されていた。それを考えてゾッとするクロノ

余計な事を考えると不安になるだけ。もう引き返せない。

クロノは祈り続けた。

身体は動かせるもののどうにもならない。ただ流されるままだった。

トンネルの先に光が見え、抜けた時、
森が広がっていた。
山の中、木々が生い茂る中に放り出された。

ここはどこだろうかと考えるよりも先にクロノは安堵していた。
その場にへたり込んで笑った。

自分が助かったのだからマールも助かったろうし、ルッカの将来も助かった。

いっとき、生きる屍の様になっていたクロノにとっては生きかえる気分だった。
笑いが止まらないクロノ、浮足立つ。しかし、早くマールを探してルッカの元に帰られなければならない。流石に心配させすぎだろうから。

山を降りる途中、ガルティア城が眼下に見えた。クロノは直線距離にして1キロ程度ワープしたことになる。

マールとは5分と間を開けてないから、急いで降りれば合流できるかもしれない。クロノはいそいそと山を下った。

山を降りると千年際会場敷地の裏側に出る位置だろうから、この位置ならマールも道に迷う事もないだろう

しかし、見えない。千年際会場がない。
見渡すとリーネの鐘はある。ここにルッカや見物人が多くは居たはずなのに誰もいない。

夢でも見ているのか。自宅に帰ってみるも、家がない。家がないどころか、街自体おかしい。
大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。
まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。

クロノは落ちてる新聞を拾った。
日付、ガルティア歴600年。クロノは400年前にタイムスリップしていた。

新聞の広告にはガルティア国、戦争兵募集中と書いてある。
何かの間違いだ、夢に違いない、夢ならやってはいけないことをやってもいい。と半ばヤケクソ気味にガルティア城の門を叩いた。

「お、貴様志願兵か? にしてもヒョロい身体だな。そんなんじゃ面接の段階で落ちるぞ」

現代の王宮には、一般市民がやすやすと入れるものではないが、クロノは志願兵と思われ、すんなり入れた。

「まあ、頑張れや若いのー」
門番は朗らかに微笑んだ。

クロノは王宮に入るのは初めてだった。テレビで王や護衛を見かける事はあっても生で見るなんて初めてだった。

クロノはやはり夢でも見ていると思った。
人としてやってはいけないことができる。

そう思ったクロノは王室の寝室を荒らす事にした。
クロノは堂々と王宮の上階に上がった。

王族部屋の入り口、衛兵は偶然にもクロノと入れ違いにトイレに篭っていた。今日はたまたま下痢であった。

そうとは知らないクロノは寝室に突入した。

「だ、だれ?」


「た、助けに来てくれたの?」
ドレスや髪飾りで分からなかったが、
寝室にいたのはマールだった。

抱きつくマール。
クロノはまだマールだと気付いていない。

「実はわたし、ここに無理矢理連れてこられたの。リーネ王妃と勘違いされて…。でも私見ちゃったの、山で人がさらわれていくのを見たの。しかも犯人は…」

マールがその先をいいかけた瞬間、光に包まれた。
マールは光を振り払おうとするが、光は消えない。

マールは不安だった。千年際で闇の穴に引きずりこまれたのと反対の感情。
闇は怖かったけど、温かかった。クロノに声が届いてるような気がした。でもこの光は真逆で、クロノにもう、声が届かなくなるような冷たく寒い、存在が消される恐怖に支配された。

「こわい、こわいよ…」

マールは消滅した。

クロノは何が起きたのか理解できないでいた。

マールが世界から消滅したこと、夢の続きだと思い、ふらふらとベットに横たわっていた。

眠たくはないクロノだが夢の続きをどうするか考えた。

一階のシャンデリアのある大広間には王様が偉そうに座っていたから何か面白いイタズラをしてやろうと、駆け足になった。

一階の広間にはルッカがいた。

「良かった、無事だったのねクロノ」

「いい、よく聞いて、私達は400年前にタイムスリップしてきたの」

「クロノが消えたあと、あのペンダントが残されてて、鉱石の波長を調べてみたの。特殊な波長だったから、その波長を再現することができれば同じことが起こるかもって。」

「クロノとあの娘がゲートに飲み込まれるとき、ペンダントだけは飲み込まれなかった。もしペンダントはゲートをくぐれない仕組みになってて、もしゲートの向こう側からペンダントがないと帰れない仕組みになっているなら、誰かがペンダントと同じ性質のものを持っていかないとって、思ったの」

「一か八か、このまま人生生き恥晒すくらいなら飛び込んでやったわ。」

「でも、まさか過去にタイムトラベルしているなんてね(笑)
 世紀の大発見よ!おホホホ!

 休止に一生、転んではタダじゃ起きない私!
 流石のわたし、天才ルッカ様だわ!」


「で? あの娘はどうしたの?
まさか行方不明になりました。なんて言わないわよね?」

クロノはしどろもどろにならながら縦に頷いた。

「はぁ? 命がけで女の子を助けに来といて、、ひとりでベットでゴロゴロして、王様にイタズラしてやろうとしてただって?」


ルッカの怒声が場内に響き渡る。
会場にいる誰もがクロノ達を凝視した。

我を忘れて説教をしているルッカと
放心状態のクロノを門番は抱えて外に放りした。

「クロノの見聞きした事から推測すると、その消えた娘はマールディア王女ね。この時代、つまりマールディア王女の祖先リーネが誘拐されて何者かに殺された。だからマールディアが生まれてくる歴史そのものがなくなり、存在が消えた。」


「存在が消えたなら、どうして私達の記憶にマールがいるのかって?」

「うーん。もしかしたら時と共に記憶も消えるかもよ?」


「記憶がある内はまだ先祖のリーネは生きているかもしれないわ」

「どうする? 試しに、マールほっといて元の時代に帰る?」

「未来はマールがそもそもいない世界。誰もとがめたりしない。」

ルッカの言葉はあたかもクロノに正義感がないものとする様な前提で展開された。
クロノは意味もなくプライドが傷付いた。

「よし、助けるのね! わかったわ!」

「じゃあ、まずは聞き込みしましょう」

クロノ達は人さらいの様な怪しい人の目撃情報を聞いて回った。

得られた情報は

*リーネが誘拐されたのを誰も信じないこと。もし誘拐されたら王宮から兵士がわんさか飛び出してくるはず。

*南にある大橋は南の大陸とを繋ぐものであるが先の戦争で倒壊しているそう。断崖に囲まれていて船での誘拐は困難。

*お忍びでガルティアの大臣一人が妓楼に予約を入れているのに来てない。

*教会に誰もいないのにピアノの音が鳴り響くというのが本日何度もあった。


「教会怪しいわね…。」

クロノ達は教会に向かった。

教会ではシスター達が席に座り、祈りを捧げている最中だった。
噂の誰もいないのに鳴るピアノを見ると、赤色が少し付いている。
「まさか、血」
ルッカは思わず声に出しそうだった。
注意深く見ると微かに薄い赤色が、いくつかの鍵盤部分に見えている。

と、み、そ、鍵盤と
れ、ふぁ らの鍵盤が染まってる。

クロノはおもむろに鍵盤を弾いた。

一分程演奏し、赤い鍵盤を眺めていると、シスター達がこちらを見ているものの話しかけてこない。祈りの邪魔をしているというのに。
「ねえ? 食べちゃおうよ。」

「ねえ? 食べちゃおうよ」

「どっちが、好み?」
「私は赤色の髪の子が好み」

シスター達はおもむろに服を脱ぎ始め、下半身を露出させた。
しかし、スラリと伸びる足は一本しかなく、それはシスター4人ともがそうで…
足が一つなのは怪我をした等ではなく元々一つしかない。
下半身が蛇の女だった。


蛇女は足元から這いずりながら顔まで上がってきた。
鳥肌が飛び上がりそうになる。
息遣いが耳に掛かる。
思わずダッシュして逃げたクロノ達。

ルッカ
「明らかにおかしい。なにあれ?」
ルッカ
「コスプレ? にしてはリアル過ぎた。」
ルッカ
「でもあの鍵盤が血だとしたら
 絶対何か隠している。」


教会に戻ると入るのを躊躇っているとシスター達がこちらを見ていた。蛇女がシスター衣装に身をつつみ先程と同じ場所に座っている。

顔は人間の女だが口元と下半身が蛇の形をしてる。ペロッと舌を出してこちらを見つめている。

余りの異様さに、ここに誘拐されたリーネ王妃がいると確信を得た二人。
とはいえ、やはり化物は見間違いに違いない。クロノもルッカもテレポート装置の調整で連日睡眠不足が続いていた。幻覚に決まっていると思い込もうとした。
もしも今、幻覚に恐れをなして助けを呼びに行こうとしてリーネが殺されたらマールは救えない。

訳の分からない恐怖を堪えながら二人は教会の裏口がないか探した。


裏口は見つからなかったもののクロノは違和感に気付いた。
教会の外観の作りに比べて、中の広さに奥行きが足らなかった。
教会の中には奥に繋がる戸口はなく全て壁だった。

ルッカ
「教会の奥には隠し部屋があるということね?」

ルッカは外壁を叩き始めた。
壁が薄ければ反響が良くなる。そこをドリルを使ったりハンマーで叩き割ればいいと思っていた。

いざというときの為に工具箱を携帯していたルッカは慎重に聞き耳をたてる。
すると壁を叩き返す反応があった。

何度が叩くと、その都度叩き返す反応がある。

この場所なら削れる。そう判断した瞬間、壁からの叩き返す音が聞こえなくなった。

ルッカ
「まさかもう殺されてしまった?」
「あるいは縛られて動けなくなっている?」

部屋の様子が解らないルッカ。

ルッカ
(犯人なら目撃者が近くにいると思って犯行を辞めるかもしれない。いや、後が無くなったと思ってヤケクソになって犯行に至るかもしれない。)

正しい判断を選べないルッカ。
ルッカが悩んでいるとピアノの音が大きく響いた。


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■2話 化け物に狙われる

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クロノは化物が本物だと信じていた。
夢や現実だとかコスプレだとかどうでも良く、ただだリアルに化物にしか見えなくて怖くて、死ぬんじゃないかと震えながら、ない知恵を絞って考えた。

クロノは鍵盤を叩いた。
めちゃくちゃに叩いた。

ルッカは悟った。音に紛れて壁を破壊しろと。そう受け取った。

クロノの周りには妖怪蛇女が寄ってくる。
蛇女達はクロノにまとわりつく。

蛇女達はシスターの衣装を纏っている。
外からみれば色仕掛けされてる男子にしか見えないだろうが、クロノは死を恐怖していた。

「あと少し」
「あと少し」
「あと少しで…」

何があと少しなのか、クロノは次の言葉を聞いてぞっとした。

「あとすこしで食べていい」

ベビ女の涎でベトベトになりながら、恐怖を堪えて考える。
あと少しで食べていいを文字通り解釈すると、
あと少しでクロノは食べられてしまう。恐怖に支配され、それ以外の可能性が見えなくなるクロノ。

今すぐ逃げたしたいクロノ。でも逃げたらリーネが食べられて先祖のマールも消える。
殺される恐怖と人を見捨てる罪悪感を天秤にかける余裕すら無かった。剣道から武士道精神を学んでいたクロノだが、そんなことどうでも良いくらい頭の中は目の前の蛇の牙一色になる。

本能が逃げろと言っているが、ほんの少しだけ理性が働いた。

あと少しって何だ?

その疑問一点に余裕のない思考を注いだ。

蛇は何かを待っている? 
何を待つ?
時間のことか?

クロノは壁に掛かっている時計を見た。
レトロな時計、その針は間もなく3時を指そうとしていた。

3時ちょうどにクロノを食べていいルールなのか。
もしやオヤツの時間になるのか。
訳の分からない思考にはまり、思わず目を瞑ったクロノ。

「おいしそう」
蛇の吐息と目蓋を舐める仕草、ビビリ、思わず目が開く。

10センチはあるだろう目玉がしっかりとクロノの目を見据えていた。

4匹全てがクロノを食べたそうに見つめていた。

【4匹は時計は見ていない。】

蛇達は時間を気にしている訳でない。
だが何かを気にしているようだった。

蛇達の目は時計を見ないのに、何故か、壁の隅ばかりみていた。
大きな白い目玉がクロノと壁端を行ったり来たりする。
その光景を見た瞬間、クロノの脳に電流が走った。

壁の隅に奥へと続く隠し扉があるのではないか。
蛇達はそこから出てくる雇い主の合図で、シスターに成りすます仕事が終わり、本当に化け物としてクロノを食べても許される時が来る。

だとしてもどうする?
その隠し扉をとう開ける?
扉の前まで行ったら、その行動が怪しまれて自分は今にも食べられるのではないか。

そもそも、いつ蛇の主が出てくるか分からない。今この瞬間にも出てくるのではないか。
その瞬間というのは既にリーネは殺された後かもしれない。
なら今直ぐにも自身も食べられる可能性があるのではないか。
もし運良く扉を見つけてその先でリーネを見つけたとして、そこからどうやって帰ればいい? ルッカが壁を開けて道を開いてくれていなければ逃げ場なんかない。
この計画性の全てはルッカ頼みでしかない。

しかしルッカが壁を開け終わってもルッカにリーネが助けられるのか?
失敗してルッカが犯人に殺されてしまう可能性だってある。
もしかしたら、今この瞬間にも殺されているかもしれない。
今にこの場から逃げてもルッカの死体が外に転がっているだけなら?
ルッカが今既に痛い思いをしているとしたら?


クロノは蛇達を払い除け、壁の隅に突撃した。
扉がそこにあって、もし破れないなら直ぐに走って逃げよう。そう考えての判断だった。

しかし、壁に激突した瞬間の衝撃を感じなかった。クロノは、チカラが抜けるように転げた。

そこに壁は最初から無かった。壁柄をした幕が敷いているだけだった。

「コロス!
コロス!
 タベル コロス!

コロス!タベル!
コロス!
  コロス!
   タベル!
タベル!
  タベル!

蛇女達の様子が急変して襲ってきた。
バレたら直ぐに殺していい。そして食べていい。そう主(あるじ)から命令されているのだろうか。
とにかくクロノは走った。ここまで来てしまうと引き返す方が怖い。後ろを見るのが怖い。

奥へと走った。武器も何もない丸腰ではどうしょうもない事は分かっていたが、もう引き返せない。
パニックしながらルッカが壁を開けていてくれることを信じてクロノは猛ダッシュした。


奥の部屋にはリーネ王妃。まだ、壁に穴が空いてない。
リーネの傍らには口の大きな緑色をした、ぬめした化け物が凶器を持っていてクロノを見た。大きな剣をチラつかせて…

化け物はクロノに向けて剣を振りかぶった。
眼前に飛び散る血しぶき。

クロノは思った。

剣道習っていたのに何の意味もなかった。
ここに来る前に武器を探したり、準備する時間はあったかもしれない。

後悔したってもう遅い。
自分はもう死んだのだ。
諦めろ。
諦めるしかない。

ルッカを信じたのが浅はかだったけど
お父さん
お母さん
浅はかな息子でごめんなさい

勉強疎かにしてごめんなさい。
そして、ありがとう。

痛くなくて、ありがとう。

あれ? 痛くない? 


「おい、何してるガキンチョ」 

目の前の緑の化け物(カエル)が、喋っている。
クロノは頭の整理が追いつかない。


「切られたのは後ろの蛇たちですよ。」と優しい声が囁かれてる。
後ろを見ると
クロノの背中に折り重なる様に4体のヘビが倒れ込んでいた。
重くて抜け出られない。

「おまえ、世話が焼ける奴だな…」

「まあ、でもお前が鍵盤に夢中だったのと蛇達がお前に気を取られてるお陰でリーネ様を助けられたんだがな…。」

リーネ
「この者は、こんななりをしていますが立派な騎士。ガルティア1番の武人なのですよ。」 

カエル
「リーネ様、勿体無いお言葉です。」

クロノは未だ理解が追いつかず、立ち尽くしていた。

カエル
「おまえ! リーネ様の前で頭が高いぞ。私よりも頭を高くしやがって!」

カエルが頭の上に乗って、クロノを跪かせた。


カエル
「よし、では帰りましょう。リーネ様」

リーネの前を護衛する様にカエルが先導していった。

ふと足元をみたクロノ、蛇以外の亡骸が一体転がっていた。
色は茶色だが形はゴキブリ。全長3mくらいだろう。カエルに切断されたのだろうか、黒い粘液を床一面にぶちまけている。

やはりこれは夢か幻か、クロノが考え込んでいると。

タンスが動いた。

中からドンドンと叩く音がする。
クロノは怖くなってカエルを呼び戻そうとしたが、怖気付いたと馬鹿にされるのと、ルッカにカッコ悪く見られそうなので止めた。

「たすけて〜」 

か細い声がタンスの一番下から聞こえた。

隙間から白い毛の様なものが見えた。

「大臣です。私はこの国大臣です」

本当に?
思えば今日は目を疑うようことばかりだったクロノ。疑うことしかできなくなっていた。


「大臣です」


証拠は?

クロノはタンスから大臣を助けた後、その奥から日本刀を見つけた。

身を守るものが必要だと感じたクロノ。頂いて良いかと聞いた。

大臣
「別によかろうて。教会に武器を隠しとるなんて似つかわしくないからのう。それにこの教会は魔族が運営しとったんじゃ、盗むでも罰はあたるまいて。」


クロノは日本刀を手に入れた。


「クロノ!」

ルッカの存在をすっかり忘れていたクロノ。

「忘れてない? 私達の目的はマールを取り戻すことよ」

クロノは頷いた。

「マールが消えた場所に案内して頂戴。」


クロノは駆け足でガルティアに戻った。
マールが消えた場所はリーネ王妃の部屋。
王宮は王妃が行方不明だと気付いていて騒がしくなっていた。

クロノ達は王妃の部屋まで障害なく進んだが、部屋の前で衛兵に取り押さえられた。

「王室を荒らすとは言語道断!」

何から説明していいか、あたふたしていると室内が光に包まれた。

兵士が異常に気付いて、いそいで扉を開けると光の中からマールが現れた。

「リーネ様! 一体部屋で何が!?」  

放心状態の兵士は、はっとして我に返り、部屋に入ったクロノ達をつまみ出そうとする。


「無礼者、頭が高い! 二人は私が招待したのだぞ。部屋に通せ!」 

兵士
「は!」


「どうクロノ? 本物の王女みたいだったでしょ?」

マール
「間違われて閉じ込められたんだから、罰として、ちょっとくらいイタズラしてもいいよね。

 え? もう本物の王女だってバレてる?

 えー、残念…もうチョットくらい羽目をはずしたかったのに…」


ルッカ
(あんまり王女という程の貫禄さはないわね…)

マール
「あれ? そっちの人はルッカさん?」

ルッカ
「おや、私の事をご存知ですか? そうです。私が天才ルッカ…てこんな言ってる場合じゃないわ!」

「クロノ! 直ぐにゲートから帰らないと!」

「ゲートの開閉の理論はある程度分かったけど、もしかしたら今日明日、あるいは今直ぐにでも空間の揺らぎが消えるかもしれない。もし消えたら二度と帰れなくなるわよ!」


クロノ達は駆け足で向かった。

一階広間でリーネとマールが鉢合わせる。

リーネ、大臣、王、兵たちたちは驚いた。

大臣
「どういうことじゃ!? リーネ様が2人も!」

ルッカ
「ダメよ、よそ見してちゃ。いそいで二人とも!」

マールはドレスを脱ぎ捨てた。


三人は城を出て山道をひた走った。

〜山奥〜

マール「私達が現れたのこのへんだっけ?」

ルッカは周囲をうろつきながら空間の歪を探していた。

ルッカ
「あった! さあ、帰るわよ二人共!」

マール
「え? 帰るってどうやって?」

ルッカ
「じゃじゃーん! 
 これ名づけてゲートホルダー!
 テレポートシステムの小型版を作り特殊波長を埋め込んだの。微弱なエネルギー量でも波長を合わせれば空間の揺らぎが開いてタイムゲートに…」

マール
「ルッカ! 長話しているヒマがなーい!」

ルッカ
「よし、じゃあ二人とも私に捕まって!」
 (三人でゲートくぐれる保証ないけど)

〜現代 ガルティア歴1000年〜


マール
「やったー! 戻ってきたー!」

ルッカ
「流石天才な私!(良かったぁ! 三人ともゲートくぐれたよぉ〜」


マール
「てか、もう夜だね…
 あ、門限がやばいー! 大臣に怒られる!」

走り出すマール

「待ってマール!」

ルッカがクロノの耳元で囁いた。
「お姫様を最後までエスコートするのが勇者の役目でしょう? それにほら、マールの命を助けたって事なら金一封とか出して貰えるかもしれないわよ。」


ヒソヒソ声で玉の輿チャンスもあるかも。とルッカにそそのかされるクロノの前に、一人の老人が現れた。

「そこの青年よ、その手にぶら下げてるのはホンモノか?」

クロノはしまったと思った。中世から持ち帰った刀。現代で日本刀等を持ち歩いてたら銃刀法違反で捕まってしまう。

ルッカ「おじいさん、これはコスプレに使うおもちゃの刀よ。


「嘘を言ってはいかんぞ。ワシにはわかるぞ。」

ルッカ
「なぜ、そう言い切れるの?」


「ワシはこう見えてちょっと有名な鑑定士じゃ。ほら、時々、テレビにも出とるじゃろ、ふんわり鑑定団に。」

「ワシは趣味で刀も鋳造しておっての、本物か偽物かは見てわかる
 たとえばお主が持っている刀の鞘、重厚感ある光沢を放ちちつつ、東方文化独特の長輪島式の模様をしておる。」

「長輪島式は地方の無名の少大名が作らせたもので、コレクターにも人気もなく、偽物すら殆ど作られんかったもんじゃ。
マニアの中のマニアしか知らない一品をコスプレで使われる訳がないのう。」

ルッカ
「この刀は最近流行ったアニメ、極めつけの刃をモデルとしてるから、お爺さんが知らなくてもおかしくないわ。」


「ワシを爺さん呼ばわりするでない! ボッシュと呼びなさなさい。ワシも極めつけの刃は見ておるので、鞘もチェックしておるがの、輪島式ではなかったぞぃ。そもそもアニメやコスプレ業界は著作権にうるさいからの、実在の刀をモデルにするとは思わんがな。ほら、ちょっと貸してみなさい。見せてくれんと通報するぞ」

クロノは恐る恐る刀を渡した。

ボッシュ
「ほらみろ、やはり本物ではないか。」

ボッシュはまじまじと調べた。

「な! これはまさか本物の輪島式?
 いや、そんな訳は…本物であれば、こんな状態の良いまま現存する筈がない。
 お主らこれをどこで手に入れなさった?」

マール
「私達は過去にタイ…」

マールが言おうとしてルッカが口を塞いだ。タイムトラベルをした話なんて信じて貰えるとも思えない。嘘つきと思われて、ややこしくなって通報されるかもしれない。過去の存在を証明しようとするにしても無闇ゲートを行き来して危険が伴うかもしれないし、歴史が変わってしまうかもしれない。
 

ボッシュ
「過去がどうしたかの? 」

クロノ達がモジモジしていると。

ボッシュ
「お! そうか、そういうことか! ワシの様な刀マニアが長輪島を模して作ったのか!」

ボッシュは勝手に納得した。

ボッシュ
「ええのう。ワシもそれ欲しいのう。良かったらその刀作った者を紹介してくれんかのう」

ボッシュは名刺を取り出してクロノ達に渡した。

ボッシュ
「しかし、お前さんら、どうして刀を持ち歩いておるのじゃ? しかもコスプレと嘘をついてまで…千年祭なんかに本物の刀を持って歩いとることがバレたら警備の人に捕まるぞい

ルッカ
「…」

ボッシュ
「うん? お主の顔どこかで…

ボッシュ
「お主はもしかしてルッカ…殿か? 若くして自立型の宴会用カラオケロボを開発し、今日は朝から世紀のテレポート大実験をしていたあの大発明家のルッカ殿か? そういえば今朝、実験を途中でいなくなって…。」

「じゃあ、そこにいる二人があのとき消えた二人かの? 無事に返ってきたんじゃなぁ。良かったのう。」

ボッシュは「なるほど。」と呟いた後、ルッカにサインをねだった。

ボッシュ
「まあ、おおかたルッカ殿のお友達二人は運び屋のアルバイト、というところじゃろうか。これから刀をマニアな人にお届けするんじゃろうなぁ。その気持ち、わかるぞぃ。」

ボッシュは刀を返すと立ち去って行った。


ルッカ
「なんとかなったわね… クロノ、刀は一旦私が預かっておくわ。実験で持ってきた資財の中に忍ばせておいて、後で届けるから」

ルッカはそういうと、そそくさと実験装置の片付けを始めた。
二人に手で早く行くように合図していた。

マール
「じゃあ、途中までエスコートお願いできるかな?」

クロノは頷くと、千年祭の会場を出た。


交通の多い大通りを歩く二人。


マールはこの国ガルディアの王族、帰るのは当然、王宮になる。

普段は護衛が何人もいるのが当たり前で、大きなリムジンに乗るのがあたりまえであり、徒歩で見送るというのも不自然であった。せめてタクシーを呼ぼうかとマールに聞くも、「いいのこのままで」と言うだけだった。

沈黙が続いた二人。
中世では忙しくてマールが王族だと理解する余裕すらなかったクロノだが急に、何を話していいのか分からなくなった。

千年祭でマールに出合ったときは、ルッカの話、主にテレポート装置の話をしたくらいで、クロノ自身の話はしなかった。

通りの反対側にクロノの家がある。
自宅は千年祭のすぐ近くにあり、近所にルッカの家がある。
自宅が見えた頃、人だかりができていた。恐らくルッカの実験に関しての取材だろうか、ルッカの家を囲むようにして記者達がいた。

時間は午後7時、クロノの門限にはまだ間に合ってるから叱られはしないだろうが、マールはどうなのか。そもそも、護衛をつけないで王族が町中にいるとか異常事態ではないだろうか。

クロノは今日一日の出来事を家族や知人にどう説明しようか悩んでいた。タイムスリップしてマール王女を助けに行って魔族にも襲われたとか、話したところで誰も信じないだろう。

ルッカの事も気になった。
ルッカのテレポート実験の成功も人間では見せられなかったから、きっとイカサマやマジックショーだと世間に思われたかもしれない。

そもそも自身が消えた後、ルッカは混乱したあの会場をどうしたのか。
テレビカメラやマスコミが沢山会場にいた事に問題はないのかと疑問していた。

クロノがマールに話せる話題がルッカに偏る。
ルッカ、ルッカ、別に恋人でもなんでもないのに。

「クロノ、ルッカのこと好きなの?」

そう聞かれて、普通に「好き」と応えるクロノ。
恋愛的に好きなのかと聞かれて、クロノは頭をかしげた。
クロノの頭の中を今埋めているのは恋愛ではない。

クロノにとって今日一番のショックは中世で見た妖怪的な何かだった。カエルのような人、巨大ゴキブリ、シスターに成りすました蛇女、その事で頭が一杯だった。
思い出すとクロノは恐怖で真っ青になり、その場にうずくまった。

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――――――――――――――――――――――――――――

■3話 中世での考察

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マールがはじめて魔物を見たのはリーネと大臣が連れさられるところで、蛇女が大臣とリーネを縛り、大ゴキブリの背に乗ったところからだった。ゴキブリは木へと登ると林の真上から山を駆け抜けていった。

この時は遠目で目撃していて、誰が誘拐されたかまでは分からなかったマール。
また化物達を見た事が信じられなくて実際に誘拐が起こったことすらその時点では認識すらしていなかった。

訳の分からない物をみたことに困惑しつつ街に降り、現代と違う町並みに戸惑っていると、兵士達にリーネと間違われて、そのまま城に連れていかれた。
城門の外には従者が集まっていて、『王宮内ではドレス姿でいないといけない』と咎められ、服の上からドレスを無理矢理着せられた。

自身はリーネとは違う、人違いだと言っても、話を信じてもらえず、そのまま王宮に上がる様に指図された。

マールとって先祖のリーネは歴史上の絵の中の人物だった。実物の写真は見た事がなく、リーネの名前を聞いてもピンとこなかった。自身の先祖にあたるとは判りつつもリーネは称号の呼び名であり、代々受け継がれるものだった。
王妃の誰かと間違われているとは思いつつ、化物や歴史情緒ある街並みを見て、ファンタジーな世界に迷い込んだのだ。クロノと同じく夢か幻かと思い込み、誘われる様に王宮に入って行った。

王様には『今日も美しい』と褒められ、つい話を合わせて挨拶していると、従者に化粧直しの時間だと促され、そこまで付き合ってられなかったマールは『疲れた。寝室に行きたい』と駄々をこねた。

マールはガルディア城の内部構造には疎かった。現代の王宮は100年前に建てられた別棟があったし、今住んでいるのは敷地から200m離れた住みやすい別邸であった。現代ではガルディア城は文化遺産として残ってるだけで、特別な祭事くらいにしか使われない。

王妃の寝室が何処にあるか分からなかったマールは間違って馬小屋に行ったり兵士の寮に行って従者を困惑させた。

目的の5階、寝室に入ると、そこで新聞を見つけた。活版印刷特有の時代を感じさせる文字と記事を読んだマールは過去にタイムトラベルしたのではないかと気付いた。

記事には『南部魔王軍』という聞き慣れない言葉があり、魔族との戦争記事が書いてあった。
現代にそんな存在がいる事に覚えがなかったマール。ますます混乱するものの、最初に誘拐らしき現場に遭遇したのを思いだし、化物が魔族の事を示しているのだと理解した。

マールは以前から都市伝説やUFO話が大好きだった。心のどこかで世界の何処かにいる様な気がしていた。歴史上本当に居たとしたら、世界のリーダー達はその存在を知りつつも秘密を極秘にしている可能性もあるのではないか、現代のガルディアもそうなら良いのになと思っていた。

期待が確信に変わると同時に誘拐事件が本当にあったのだと確信した。

クロノが助けにきた頃、誘拐されたのが自分に見間違われている先祖のリーネかもしれないと気付いた瞬間、光に包まれてしまった。

なぜ光ったのか、なぜ自身は消えたのか、疑問だらけであるが、ルッカから『先祖が殺されそうな未来が出来たから』と言われ納得することに決めた。

マールは王宮に帰ったら、こっぴどく叱られるのを想定していた。とうやって言い訳をして謝罪をするべきか、そして落ち着いたら魔族の存在をそれとなく大臣やパパに聞いてみようと考えていた。

「ね? クロノは魔族の存在どう思う?」

クロノは相変わらず魔族の恐怖に怯えてしゃがみこんでいた。


マールは不思議だった。
なぜ、リーネは誘拐後、直ぐに殺されず、大臣も殺されなかったのだろうか。

クロノから聞いた話では、蛇はクロノを食べたがっていた。人間が食べたいだけならリーネも大臣も教会にわざわざ隠す必要がない。

蛇がぼやいでいた、「あと少しで食べていい」の意味は、リーネを殺す仕事が終わったら食べていい。の意味かと思ったけど、ただ殺すだけなら誘拐の必要はなくて、直ぐに殺しの仕事は終わって、クロノも食べられているはずだ。

殺すのをもたもたしていた理由があったはず。

タンスに入れられた大臣に何らかの交渉をしていたのかもしれない。

カエルも蛇も言葉を話していたから、ゴキブリも言葉を話せていたのだろう。リーネを人質にして、大臣に何らかの取り引きを持ちかけていた。その交渉が決裂して、リーネは殺される予定だったのかもしれない。蛇達のいう「あと少し」は交渉期限(タイムリミット)の様なものだったのかもしれない。

マールから推理話を聞いてクロノはゾッとした。
あの時、都合よくカエルが助けにこなければ、交渉期限切れで、外にいるルッカも食べられたのかもしれない。

そもそもいつカエル騎士はリーネが誘拐されたのを気付いたのか。

街で誘拐犯の聞き込みをしていた時、カエルは見かけなかった。
リーネが誘拐されたかもしれない。そう街で風潮していたから、その話を人づてに聞いて誘拐事件に気付いたのかもしれない。

カエルは蛇女を殺しはせずに真っ先にゴキブリの方へ向かった。『リーネかもしれない』という前提で助けに向かったのだろうか。リーネと自身の命を天秤にかけたら、リーネを優先するのが騎士としては当たり前かもしれないが、あっという間に蛇を倒せる力があるなら、先に自身を助ける事ができたのではないかとクロノは思った。


ルッカは時計をみていた。

(クロノがゲートに入たのが午前10時頃、私が向こうの世界に行ったのが午後2時で今の時間は7時。私が向こうに行っていた時間は大体5時間だから…)

「大体正確ね…」

ルッカは中世で過ごした時間の流れが現代の時間の流れと誤差がないかどうか計算していた。

(クロノが姫様を助けに行って、山を降りて街道を通り王宮に入り、姫様が消えるまで2時間として現代の時間だと正午頃。その後、クロノがベッドで少しゴロゴロし、私も到着するまで2時間掛かるとして、昼の2時頃に私は到着したはず。でも私は昼の2時にゲートに入った。二時間の誤差がある…)


「まさかクロノ、二時間もベットでゴロゴロしていたの?」

(誘拐の聞き込みからマールを助けて急いで現代に戻るまで3時間…私は少なくもと計5時間、あの時代に滞在した。昼の2時にゲートから入り帰った時間が7時だから過去と現代で誤差は特に無いみたいだけど…)


ルッカは機材を車に運びなが考えていた。

(そもそも何でリーネは誘拐なんてされる事になったのかしら? 王妃が護衛を引き連れているとしてその護衛達はどうなったの?
私は山を降りるまで誰にも出会わなかった。護衛達の遺体もありはしなかった。
なぜ大臣一人だけがタンスに閉じ込められていたのか…)

機材を車に運び終わり、運転席に乗り込んで一息ついたルッカはスマホを操作しはじめた。リーネ王妃の誘拐の記録を歴史ネットから調べた。

(なになに…ガルディア歴600年、リーネ王妃はその日、大臣と護衛7人と共に山道を散歩していてた。そこで盗賊に襲撃され護衛7人は交戦するもチカラ及ばず殺された。リーネと大臣は山道を途中まで降りて逃げていたが誘拐され、盗賊が予め占拠していいた教会に監禁された。大臣はリーネを人質に取られ、王宮の財産を横流しする様に脅しをかけられ…
…尚、教会の関係者であるシスター4人は盗賊が教会を占拠する際に殺害され…)

ルッカが目撃したベビ女やカエル男については何処にも記述は無かった。ただ王宮騎士グレンがリーネを救出したと書いてあった。

ルッカ自身、未だに化物が記憶に鮮明に残っていた。
大臣はそれを魔族と言っていたが、ルッカの常識では、それは都市伝説であり、非科学的であり、信じられなかった。

あの世界が過去であったとしても別の世界と繋がるパラレルワールドだったのかもしれない。
現にネットの歴史情報には魔族なんていうキーワードは一つも見つからない。
スピーチや機器の調整でここ数日まともに寝ていなかったルッカは幻覚を見たのではと自分を言いくるめた。


ルッカはクロノより一足先に家路についた。
家に記者を待たせていて、昼間の実験の事故について説明しなければならなかった。

クロノ達が次元の穴に吸い込まれたとき、ルッカはパニックを起こしつつも、ペンダントだけがその場に残される現象をヒントに、この事故は単なる事故でなく、発明のブレイクスルーのキッカケになるとふんだ。

不安よりも好奇心が勝り、ろくに記者への説明もないまま自宅の作業場に戻り実験をした。
自宅に訪れるマスコミには「消えた二人を回収する為の装置を作っている」「完成したら取材を受ける」とだけ言っていた。

装置自体は今あるものを小型化し、ペンダントの波長を出すパルス装置を取り付けるだけの単純なものであり、3時間程度の作業だった。

試作機のゲートホルダーは複数用意し、
それにドローンに取り付け、ゲート内の安全性を確認した。

ルッカはゲートに入る前に記者達にこう言った。

「いいですか、私がこのゲートホルダーを使うと私も先程の二人の様に消える筈です。消えた後、一回戻ってきますが、それでテレポート装置の原理、安全性は証明された事になるでしょう。恐らく二人は携帯電波の届かない遠くの地域まで飛ばされて、道に迷っていると思われます。」

「後のことは二人を連れて帰ってから説明する」
と記者達に言い残していたルッカ。
家に帰ったルッカにはまだそのマスコミ対応の仕事が残されていた。

「あ〜今日はもう死ぬほど疲れたから、また明日ね」
とも、言いたいところだったが過去にタイムトラベルしたこと、興奮して体が落ち着かない。。

とはいえ、タイムトラベルの再実験については危険が伴いそうで今の段階では言えなかった。
マスコミにはテレポートの再現実験は明日またやると説明して一旦帰って貰った。


マール
「クロノありがとう。ここまでで大丈夫。」

ガルティア城まではまだ遠い。
過去で危険な体験をしたクロノはマールを送り届けるまで安心できなかった。

マール
「え? 城までガードしてくれるの?
 ありがとう…。でも、それだとクロノが大変な思いをすると思う。」

クロノはマールの意味することが理解できなかった。

「えっと、これ言っちゃうと、王宮の悪口みたいになっちゃうから、余り言いたくないんだけど…」


「実はわたし、家出してきたの。

王宮のしきたりにウンザリしてて…だから私、祭りの最中に護衛を振り切って逃げたの。

家出する前に手紙を置いてきたけど今頃王宮は大きな騒ぎになっているはず…」

「でも、私、今日、いろいろなことがあった。

 流石にちょっとパパやママが恋しくなったの。

 だから家出計画を白紙に戻して、とりあえず帰ることにしたのだけど…

 多分、クロノが一緒にいるのが見つかると何かの疑惑とかかけて、監禁されかねない。

 まさかとは思うだろうけど、似たような事が昔あったの。

 何年か前にも私、護衛から逃げて街の子とたちと遊んでたの。私、今より子供だったから、それがいけないことなんて知らなくて…そのまま城まで友達を連れていったの。

 そしたら大騒ぎになって、友達とその家族が外国のスパイかなにかと勘違いされて、あれこれ尋問されて、監禁とはいわないまでも、何日も隔離みたいなことされたの。

 クロノは命の恩人だし、説明すれば判って貰えると思うけど、きっと王宮はクロノも家族も捕まえて何日も尋問すると思うの。

 命の恩人にそんなことさせる訳にはいかないし…

 だからね、私はここまででいいんだよ。

 エスコートしてくれでありがとう。クロノ。

 今日は本当に楽しかった。
 沢山の冒険もできたし、本当の友達ができたみたいで楽しかったよ。」

クロノは気の利いた言葉は探した。


「え? 私達は、もう本当の友達?」


マールの目が少し潤んだ気がした。

「え? 泣いてないよ。

 泣いてないってば!」


「じゃあね、ばいばい、クロノ!」

クロノはマールを見送らなかった。

「え? 堂々と友達だと紹介して欲しいって?

 昔のことは昔で今とはきっと違うから、きっと大丈夫だって?

 あははは! クロノってば前向きね。」

マールは少しだけ悩んで答えた。

「たしかに! ルールに素直に従ってちゃ、ルールはずっと変わらないものね。よし、ここは一発ギャフンと『彼氏連れてきた』とでも言っちゃおうか!」

 流石にそれは冗談なのだろうと思い、ホイホイとついていったクロノ。

城下の町並みが遠くなり、
ガルディア王宮が近づいてくる。
広大な城門に広大な庭が見えそうな頃、門番らしき兵士たちが駆け寄ってきた。
マールと兵士が何か話し、兵士達は無線で何かを喋った後、ヘリがやってきた。
ヘリが城門の外に降りた時、中から見覚えのある顔が出てきた。

白ヒゲの大臣。クロノが400年前の中世でタンスに押し込められていた大臣を助けたが、その顔によく似ていた。

白ひげ大臣はヘリから降りるとマールへとかけよった。

「王女様!一体どこへい行ってらっしゃのですか! 置き手紙をご覧になられた王様と王妃様も大変、心配されておられましたよ」

大臣はマールの横にいたクロノを見た。

「やや、この怪しい男は! 
 さては王女様を拐かしたテロリストか! ひっ捕らえろ!」

クロノ
「誘拐なんてそんなこと。僕はマール様を救ったヒーローですよ。褒められはすれど犯人扱いされる言われはありません!」

大臣
「本当でございますかな王女様?」

マール
「その通りよ。大切な客人なんだから、丁重におもてなししてちょうだい!」

大臣
「そうでしたか王女様。では早速、入証を発行するのでクロノ殿はここでしばしお待ちを…その間にマール様は心配為さっている王様と王妃様に早くお顔を…」


大臣
「うぬぬ、(こやつ、王女様に相当気に入られておるな。しかし、どこの馬の骨かもわからぬ男よ。邸宅に入って油断したところでいきなり王女様を人質に取って悪さをやらかすかもしれん)

仮に問題が無かったとしても、邸宅の内情(セキュリティ)を外に漏らすかもしれん。いや、もしかしたら既に王女様から色々聞き出しておるのかもしれん。

そもそも捕まえて尋問したところで何も吐かぬかもしれぬ。東国のスパイかどうかを見極めるにはこいつを放免した後も監視スパイしないといけないし、そうなると余計な財源が…)

(よし、殺してしまおう。
王女様を先に邸宅に上がらせ、王女様とこやつの距離が離れた隙に拘束する。
テロリストの罪で逮捕した後、裁判にかけよう。証拠は見つからないかもしれないから捏造して死刑有罪にして、特例法を駆使して3日くらいで死刑執行しよう。)


大臣
(魔族への食料財源にもちょうどいい。最近奴らの人口も増えておるからの。そろそろ誠意を見せておかないと、次は何を要求されるか分からん。万が一にも王女様に手を出させる訳にはいかないからのう。すまんが青年、ガルティアの為に死んでくれい。) 


現ガルディアは一部の大臣と王族以外の全ての従者が魔族で構成されている。

クロノやルッカ、マールを含めて現代人のほんどは知らない歴史。中世紀時代、悪魔族が存在した。
悪魔族と人間は互いに大きな戦争をし合う関係だった。魔族は東西南北、世界各地に存在していて特に西の魔族種のチカラは絶大で人間は敗北し、ガルディア及び各国は植民地となった。

ただの植民地ではない。

魔族の性質は人間を食料とすること。恐怖や絶望で支配していては人間は生まれなくなってしまい、人間を食料にしつづける事ができなくなる。

西側の魔族、特に姿を人間に化けることができた一部の魔族は権力者達と密約を交わした。
 
その密約は歴史から魔族の存在そのものを抹消すること。魔族そのものの存在を隠蔽し、人間が安心して子作りできる環境を作り、安定して人間を魔族に届ける仕組みを作ること。

この密約を効率良く実現する為に魔族は権力者達に成り済まし、その国の軍事力を利用した。

魔族を襲わせたのである。

魔族にも種族は多くあり、人間に化けられる西側魔族は、それ以外の魔族を仲間とみなしていなかった。

魔族は魔族同士で、互いに人間という食料資源を奪い合う敵でしかなく、邪魔な存在でしかなかった。

魔族界での西側魔族の裏切り、人間が結託すれば殆どの魔族を絶滅させることができる。それが人間側にとってもプラスでもあったこと。一部の魔族に屈する事にはなるが、結果として魔族の殆どを滅ぼす事ができる。

権力者達は正義と悪魔の心、自分達の保身と戦いながらも、結局、魔族と共存する道を選んだ。

ガルディアにとってもそれは同じだった。

魔族のチカラを得て魔族を滅ぼし、魔族と共存する関係を選んだ。

クロノを魔族のエサにしようと目論でいるこの大臣もそう。

彼の一族は大昔からガルディアに仕え、ガルディアの血筋を守ってきた。これまで魔族に抗うことも考えたが、その方法が見つからず、諦めて開き直ってきた。

大臣は歴史の真実を知っているが、マールやその両親は知らない。

真実を知らないことが幸せだとし、先祖代々王族達をだましてきた。

クロノはこれから死刑宣告され魔族の元に届ける手はずであるが、マールは突然の処刑を不審に思うだろう。
マールがクロノの死刑強行を拒否する場合は魔族の力でクロノに関する記憶を消される事になる。

クロノの親族も不審に思うかもしれないが、その場合は、彼らも魔族のエサにするしかないだろう。

人間を魔族に運ぶだけならクロノでなくてもいい。本来なら王族の知人は運ばない。

大臣にとってこれは政治的な問題だった。
王室が身を犠牲にする精神を見せることで、断固として悪魔族に敵意がない事を示す。大臣は定期的にそういった生け贄外交を取り締まっていた。

この様な魔族との契約を大臣は何世代に渡り守ってきた。理不尽な死刑制度と言えるものだが、人々の間では常態化していた。
処刑は国民にとってある意味で日常的であり、マスコミは一時的に騒ぐものの、一週間もすれば無かった様に振る舞う。クロノ達はそういう世界に生きていた。


★   

マールは家出の謝罪をして両親にハグをしてもっていた。

「実はそれで、ね。その男の子をここに連れてきちゃったんだけど、いいかな?」

ママ
「いいわよ。お母さん大歓迎! どんな男の子なの? やっぱりイケメン?」

パパ
「つぅ、こんな日が来るとはなぁ。もう家出なんてしないでおくれよ。パパもう生きた心地がせんかったよ。公務は減らせるところは減せる様にがんばるから。


マール
「いいのパパ。私、ちょっと甘えてたもの。勉強しないといけないこと沢山あるし


マールは庭に出てクロノを探していた。

クロノはどこにいるのだろうか? 広いから迷っているのだろうか?

マールは芝刈り機を整備しているウェッジに聞いた。

「え? クロノ? もしかして赤毛のツンツンの? そいつならさっき、警備に連行されていったよ? 」

クロノ一体何をやらかしたんだろう。まさか庭で漏らしたとかじゃないよね…

「それで警備室に? それとも門外に?

「門外に連れていかれたよ? 


マールは門に走って、門の外を眺めたが見えない。

門の守衛兵、ビエットに声をかけた。。

ビエット
「は! 10分殆前に私服警官が来て逮捕して行きましたが…」

ビエットは一部始終を話した。


マール
「え? クロノが邸宅内に爆弾らしきものを持ち込もうとした?」

ビエット
「は! 私が存じているのは、その者、王女様をたぶらかして邸宅内に侵入し、王様、王妃様を殺害しようとした疑いとのこと、詳しい事は大臣が知っていたと思われます。

マール
「爺やが? どうして爺やが!

ビエット
「は! 私が存じているのはその者、敷地内に入る前のこと。守衛の詰め所にて手荷物検査に引っかかり、大臣が自ら守衛に命じて捕縛、警察に連絡したと聞いております。」

「大臣はいまどこに!」

ビエット
「は! 大臣はいま重要参考人として出払っております。恐らく、調書作成の為、警察に向かわれたと思われます。」

マールには訳が分からなかった。
クロノが爆弾なんて持ち込む訳がないし、大臣も意味もなく逮捕するなんてしない。大臣は厳しいところはあるが、とても優しくしてくれる。まるで本当の祖父かの様に信頼もしていた。


マールは電話をかけた。
「どういうこと? クロノがそんなことする筈はない。だってクロノは今日私の命を助けた正義のヒーローだよ!」

大臣
「正義のヒーローとはまたご冗談を…」

マール
「冗談なんかじゃないよ、クロノは私と一緒に過去にタイムスリップして…」

大臣
「過去に? 王女様、どこかで頭を強く打たれたのですかな? 直ぐに医師を手配しますのでお待ちを…」

大臣は電話を切った。かけても繋がらない。
マールは警察に電話かけたが王族でも事件に関する情報は任意の手続きを踏んでくれと一点ばり。

マールは警察に向かうことができない。
王家では門から出ようとすると、必要書類を諸々書かさされて、それ以外の場所には行けない。滞在時間、行き先のルート、護衛を配置する為のセキュリティ戦略の兼ね合いで許可が降りるまで最低でも一週間の時間がかかる。


マールの従者のビックスに頼んで警察署に向かって貰った。
ビックスに頼んでも期待した結果はなかった。任意の手続きをしてもクロノに面会できるのは明日以降だという。
大臣は警察には来ていなかった。


夜9時、マールは落ち込んでした。



「どうしたのマール?

マール
「ママ! 爺やがオカシイの! クロノをテロリストだって言うの!」

「なんで爺やはそんなひどいこと言うの? まるで悪魔…」

マールは言いかけて気付いた。普段やさしい大臣がこんな酷いことを言うのはあり得ない。まるで魔族の様だと。マールは過去の世界で実際に見た。少しだけど魔族を見た。記事でも読んだし、クロノから詳しい話を聞いた。

マールはポケットから400年前の新聞を取り出した。

ママ
「あら、なあに?これ?」

マール
「過去にタイムスリップした話。あれは冗談とかじゃなくて、本当の話なの。」

ママ
「まあ、本当によく出来た新聞ね…。『将軍ビネガーの進行に向けて、ガルディアの防衛基盤はもっと強靭にする必要あり。』、怖いわね〜」

半信半疑にしか受け取られていない様子だった。
マールは眠たそうな母を引き止め、一日中、中世での出来事を語って聞かせた。


明け方


「なら大臣は人間に化けた魔族という事ではないの? 私達は大臣に騙されていたのよ。きっと!」

母は部屋から2つのボウガンを持ってきた。ハンティングスポーツ用のもので、生き物を殺す目的のものではないが、当たれば相当痛いものだ。ボウガン競技は母の趣味だった。


マール
「ちょとなんか怖い気がするけど…


ママ
「良いのよ。身を守るにはこれくらいしないと!」


テレビでは17歳の少年が(名前無表示)が王族邸宅に爆弾をしかけて逮捕されたと報道されていた。
裁判は明日始まり、早ければ当日中に判決を下し、翌日には執行される。報道は死刑求刑と無期懲役予想で割れていた。

「ママ!なにこれ!
 少年法はどうなったの!! なんでこんなにスピード裁判で罪が重いの!」

ママ
「え? 何を言っているのマール? 少年法って何の話?」

マール
「ママ、それ本気で言ってるの? 

ママは至って冷静な顔をしていた。

マール
(まさか私達が過去で何かをしてしまって、歴史が変わってしまった?)

マールはルッカに相談する為に電話をかけようとしたが、辞めた。
もし魔族が邸宅内の従者に成りすまして監視しているとしたら、電話やメールは盗聴されている可能性がある。
魔族に敵対意識を向けている事がバレたらどうなるか分からない。


マールは2つのボウガンを袋にいれると、

「お母さん、私外に行きたいのだけど…」

マールは真剣な話をするときママとは呼ばず、お母さんと呼ぶ。

「クロノさんを助けたいのね…」

王家では門から出ようとすると、必要書類を諸々書かさされて、それ以外の場所には行けない。滞在時間、行き先のルート、護衛を配置する為にSP戦略の兼ね合いで許可が降りるまで最低でも一週間の時間がかかる。
手続きを待てばクロノはその間に死刑にされる。門から強行突破するのでは魔族に反目していると捉えられ兼ねない。

マールの母には一つだけ秘策があった。
それはマールが梱包して大型郵便速達で配達することだった。

いそいそとマールを梱包し始めしたお母さん。

そして、お母さんパワーが発動し、伝票にサインを書いた。


ルッカ
「何かしらこれ? めちゃくちゃ大きい! 差出人は…ガルディア!? もしかして私がマールを救出したことが王室で話題にされて、その褒美のプレゼントが届いだということ? 何かしら? もしかして軍事レベルのスパコンからしら? 前にテレビで欲しいって公言してたし。うふふ。良いことはするものよね。オーホッホッ!!」

ルッカは大きなダンボールを開けた。
ダンボールを開けると今度は重厚そうな強度ある箱が出てきた。

「うはーあ! はぁはぁ、ワクワク
wkwk((o(´∀`)o))ワクワク」

「もう、焦らしちゃって…。王族って粋なことするわね〜」



-

――――――――――――――――――――――――――――

■4話 脱獄とカーチェイス

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ワゴン車の中でノートパソコンを操作されていて、傍らの機材は特種な電波を発信させていた。

警察所内のシステムにハッキングをしているルッカ。クロノを助ける為には止む終えない行動だった。

過去の裁判記録によるとクロノが助かる見込みはなかった。
この世界は道徳観、常識感覚がズレた人々しかいない。この世界は裁判員システムもない。

脱獄させる計画、この程度でも捕まればルッカ自身も死刑を求刑されるだろうが、クロノを助けるには命を賭けるしかなかった。

夜、ルッカの操作で警察署内部の電源が落とされた。

ルッカは日本刀背に特性エアガン(電気ピリピリ玉を発射して相手を気絶させる物)を手にマールはボウガンを2つを持ち、署内に侵入した。
二人は軍事用の赤外線ゴーグル(サバイバルゲーム用)を装着していて暗所を移動した。

警察内は突然の暗闇にパニックした。

ロビーには携帯の灯りを頼りに落ち着いてその場で待つ者や、状況を知るため署の外に出ようとする者、軽犯罪で捕まった者やその親族、様々いるが、ルッカ達は無視して、3階奥のクロノが留置されている入り口まで行く。 

多様な犯罪容疑者が集められる部屋に続く扉である。扉の外と内で必ず一人以上は警官が見張りに立ってる。
彼らは常に武器(ピストル)を携帯している。扉は内側からのパスコード入力による電子ロック解除でしか開けられず、このセキュリティを抜けるのは並のハッカーでは無理である。 

並のハッカーは無理でもルッカなら可能である。でも、それはある意味、ハッキングに関わった容疑者は直ぐに絞り込めるということ。脱獄に成功しようが途中で諦めて引き返そうが、警察署に突入した時点から技術屋ルッカは確実に最有力容疑者として候補に挙がる。

問題は扉のロックが解除された際、巨大なブザー音が発せられること。警察署では檻のある留置部屋へ容疑者を出入りさせる度に【容疑者が留置部屋から出ました】という合図をブザー音て知らせる。音が鳴る都度、署内の警察官は暴動に備え警戒態勢になる。

扉にいる警官2人をエアガンで気絶させる。 
扉を開けブザー音が響きわたる。

【ブザー音が鳴り響く】ということはこの暗闇の中で容疑者あるいは警察官の出入りがあったということ。停電の非常時、緊張している警察官が留置部屋にうかつに出入りするのはあり得ない。留置部屋、つまりは檻にて何かが起きたと直ぐに予想される。

ルッカには一分も余裕の時間はない。ブザー音と暗闇にパニックしているこの瞬間にクロノを早急に檻から出さなければいけない。

留置内で見回りをしている警官に走り寄り、刀で脅し、ピストルと鍵を要求した。
警察官は胸に差している無線機に異変を知らせようと手を伸ばしていた。

ルッカ
「いい? ひと言でも声を発したら殺す。」 

ルッカが脅している間にクロノを探すマール。

警官が要求に渋っているとルッカは首に押し付けた刀にヌルい水をかけた。
暗闇の中、生々しい血を流したと錯覚して、言いなりになる。

はずだった。

警官は暗闇の中で動き出し、刀に自ら向かっていった。流れる自身の首筋の血をペロリと舐めた。
長さにして30センチの舌。

人間に化けた魔族だった。

普通の人間の顔にしか見えないその魔族はルッカの背後に回った。マールは反応ができなかった。ボウガンの照準を合わせて放つも的外れの方向へ飛んだ。

警官は床にルッカを押し付けながら首を絞めている。
マールが再度矢を放つも、当たっても効き目がない。
マールは催涙スプレーを取り出しルッカの元へ走った。
ルッカに辿り着くも、ルッカは既に倒された。警官はマールの身体に飛び掛かると、マールと揉み合いになった。

マールも直ぐに首を絞められた。
首ごと持ち上げられ檻に押し付けれマールはバタツいた。
その瞬間、マールが催涙スプレーを噴射した。

その魔族は暗闇なのに動けた。目が良いから催涙スプレーは効果的面だったのかもしれない。
だが、最初からマール達の姿が見えていたとするなら、既に無線で助けを求めているかもしれない。見えていたなら脅迫できる殆に距離を詰められないはず。
魔族特有の身体的な特徴、視覚以外の五感、聴覚、味覚、触覚、嗅覚のどれかが特異に発達しているのか。

この魔族はそういった五感に秀でているのではない。人の10倍を超える力と肉体の傷を再生する力、回復させるスピードが1000倍あった。

いずれにせよ、暗闇の中でルッカを倒した。魔族が人間に化けた存在だとマールは確信した。

倒れたルッカから剣を取ると、思い切り斬りつけた。

人間の声ではない、低い唸り。
深く刺せばダメージはある。そう判断したマールは股間をぶっ刺した。もう一回ぶっ刺した。

警察官の苦悶した表情が人ではないカタチに変化した。斑点模様がいくつもありトカゲの様な顔立ちで目には縦筋がある。

その場で倒れてピクピクと悶絶する魔族

「今すぐ鍵とピストル、無線機を渡さないと、目玉をくり抜くよ。その次はどの内臓を取り出そうか。」

魔族はカギとピストル、無線機をマールに渡した。

クロノのいる檻を開けた。

クロノに暗視ゴーグルを被せると
クロノも目の前の惨劇を理解した。

二人でルッカを抱えて署内を進む。

今、普通に外に出た場合、怪しまれて包囲網が出来上がるだろう。

ルッカは昼間にも署内にハッキングしていた。当直ではない警察官の制服と帽子を三人分盗んでいた。
ルッカは気絶しているが、ちょうど怪我人を運ぶ姿であり、犯人とは思わないだろう。

刀はポスターに包み筒状にしてリュックに入れ、ボウガンや暗視ゴーグルもリュックにいれた。

外では停電等の緊急時、脱獄対策マニュアルに沿って施設の出入りの身分証のチェックがされている。
警察官6名が入り口にて懐中電動を持ち待機していた。


警察官
「な、中でなにがあったのですか!」

マール
「中で何者かに攻撃を受けました! 怪我人が他にもいます!」

警察官
「では救急車を呼びます! 彼女はとりあえず、この辺りに寝かせて…」

マール
「救急車を呼ぶより病院に連れていく方が早いです。」

警察官
「確かにそうですね。では車までお手伝いします」

クロノ達が外へでようとすると。

警察官B
「待ちなさい。身分証のチェックを忘れているぞ。こんな時だからうっかりするのも判るが…」

クロノ達はこれから顔と身分証をデータベースで照会される。
ルッカのハッキングでどうにかする事もできたが、クロノが顔を見せれば脱獄がバレてしまう。

そういう時はマールがルッカ特性エアガンを発射することになる。
至近距離から狙われ、6人の警察官はあっという間に倒れる予定だった。

警察官C
「ちょとまって! この娘全然息してないじゃない!」

クロノ達は急いでいて気付かなかったが、頸動脈を圧迫されて倒れたルッカは心臓が止まり脳に酸素が行かなくなっていた。直ぐに蘇生させないと死んでしまう。

警察官C
「何をしているのあなた達! 早くAEDを持ってきて! それから救急車も早く!」

警察官Cに促され、他の警察官はデータベース照会を後回しにして人命救助を続けた。
 

クロノはルッカを置き去りにして逃げられなかった。

マールはクロノの気持ちが痛い程分かった。けれど、このままここに居てはクロノは捕まり死刑になるだけ。ルッカがここまで頑張ってきたのも無駄になる。

「ルッカは大丈夫だから! きっと、大丈夫だから!」

マールはそう言って、心肺蘇生に関わっていないC警察官以外をエアガンで気絶させた。  

クロノの手を引いて車に乗り込み、発進させた。


程なくして警察官Cのおかげでルッカは息を吹き返した。
息を吹き返したとはいえ、意識が朦朧とし、直ぐには動ける状態ではなかった。

ルッカは細い声でクロノに逃げる様に促していた…


マールがクロノを連れて街中を逃亡する。この一連の流れは警察署の敷地や街中の防犯カメラに記録されている。ルッカの技術をもってしても、その全てに細工を施す事は無理であった。

ルッカによると、犯行がバレて追いかけれても構わない計画だった。いつまでも逃亡し続けるつもりはなく、千年祭会場のゲートから中世へ逃げる計画だった。とにかく時間稼ぎさえできれば良かった。

サイレン音が街に響き渡っていた。

クロノ達は千年祭会場からは、まだ遠くにいた。

都市部特有の渋滞に巻き込まれていた。

今後、どの道も警察に封鎖されて、その影響で更に渋滞して会場までいけないだろう。
 
ルッカの計算ミスだった。
逃げるならバイクの方が渋滞に巻き込まれない。またパトカーのサイレン灯を盗んで車に取り付けておけば、渋滞は避けられたはずだった。

2人はどうしていいか分からなかった。

このままでは、捕まるのは時間の問題。

神にも祈る様な気持ちで、空を見上げるとヘリが上空を旋回していた。

車は既にマークされていた。

「降りなさいそこの車!」

警告と共に旋回している。

程なくして渋滞をかき分ける様にパトカーがやってきた。
前後からサイレン音がゆっくり近づいてくる。

数分後、警察車両に挟まれ、2人の車は止まった。


「こちらは発泡許可を得ている。速やかに降りなければ強行制圧する!」


マール
「私の事を人質とって逃げよう!」

クロノには判断できなかった。人質をとること、ぞれで上手く行くのか、周りは包囲されている。どこからでも狙えるとすればマールを人質にした瞬間、射殺される可能性もある。


マール
「じゃあ、どうするの?」

止まれば確保してくださいと言っているようなの。

こういうとき、ルッカなら何をどう判断するだろうか…

ルッカならきっと道路の脇に入る様に自身に指示するだろう。そして車が道なき道を走りながら…

「どうせ殺すんでしょうが! 軽い罪でも証拠を捏造して殺すくせにー!」

とか言って半ばヤケクソに雑木林に進路を向けて…
でもヤケクソに見えていつも正しい答えを出しているはず。

クロノは思った。

ルッカならきっと、森奥の限界まで行ったら車を乗り捨てるだろう。その後は、森の中に隠れて潜み、隙をみてゲートのある千年祭会場へ向かおうとする。


凸凹な地面にワゴン車が浮かびあがる。

沢山のおいしげる木々、車のサイドミラーが幹に擦られながら、どんどん奥に進む

森の奥、車で行けるところまで行った。

しかし、警察犬の存在。

警察犬が森に放たれた。このままではクロノ達は追い詰められる。

車は既に行けるとこまで行き乗り捨てている。

2人は森の奥に逃げ、話し合った。

マール
「今度こそ私を人質に!」

クロノにその選択肢はなかった。
武器をマールに向けた瞬間、殺される気がした。
かといってこのまま捕まれば死刑にされる。

クロノは処刑される自分を想像して恐ろしくなり、尻もちをついた。日本刀を振り回したところで銃に敵うわけがない。エアガンの弾も一発しか残っていない。
かといって何もしなければ殺される。

クロノの視界がぼやけた。
涙で霞んだ目と思い擦るクロノ。
しかし、目を擦っても目の霞は取れない。

マール
「泣いちゃダメだよクロノ。まだ終わってない!」

クロノは首をぶんぶんと横に降った。

マール
「え? 泣いてない? 目の前の空間がぼやけてる?」


調べるとタイムゲートに良く似た空間の揺らぎが見えた。

マール
「これって、もしかして」

マール
「間違いない! これはゲート!」

マール
「考えてる時間ない!」

マールはゲートホルダーを取り出した。


クロノは別れの挨拶をした。ここまで助けてくれたお礼を言った。

マール
「え?」

マールは王女だからこの時代にいても大丈夫で、これ以上、付き合わせて危険な目に合わせられなかった。


マール
「嫌だよ。私も行く」


クロノは疑問だった。どうしてマールがそこまで自分を助けようとしてくれるのか。マールの命を助けた恩人かもしれないとしても、ゲートはどこに続いているか分からない。今度こそ本当に死なせてしまうかもしれない。


マール
「私が過去に行って歴史が変わっちゃたんなら、私にも責任ある」

クロノ自身その責任は自分にもある気がした。
ただ、マールはこの国の王族でクロノは取るに足らない平民。国にとってマールは自分なんかより必要されるべき存在だと思っていた。

マール
「そんなこと言わないで! 私は自分の事を特別な人間だなんて思ってない! 友達ひとり作れない、友達ひとり助けられない。そんなの、私は望んでない!」

クロノは困惑していた。マールの事情がどうあれ、マールをここに残す事は男としての責任で武士道精神に反する。

マール
「でもも、へったくれもない! 私はクロノと一緒にいる!」

断固としたマールの態度。クロノは了解しそうになるが、マールを守れる自信がなかった。エスコートは無理だった。

マール
「違うよクロノ!
 私がエスコートするの! 私が皆を助けるの!」

マール
「だって私はこの国の王女よ。
 国民一人助けられないで王女だなんて言えない。
 王女としてこの国の責任は私にある。ルッカやクロノを守るのが私の責任!」


クロノは反論できなくなっていた。マールにとっての王としての意地とプライド。論理的で何も言い返せない。かといって、自分の信念も曲げることもできなかった。


警察犬は直ぐそばまで来ていた。

クロノがマールに何か言葉伝えようとしたとき、マールがゲートホルダーのスイッチを起動した。
すかさずクロノを抱きしめたマール。
二人は時空の彼方に吸い込まれていった…

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■5話 未来はポンコツロボットだらけ

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ゲートから出た先で2人は鋼鉄に囲まれた部屋にいた。
部屋といっても光は入っておらず完全な暗闇だった。クロノは懐中電灯をリュックから出して照らした。

マール
「ここ、どこ?

光を壁に当てみるが、部屋は6畳程度の広さ。

マール
「きっとゲートの場所が違ったから、違う場所から出てきたのかな? それにしても…」


二人が今立っている床は薄汚れている。まるで何年も掃除をされずに、錆び付いているかのよう。また錆ともいえない独特の匂いがした。

健康に悪そうなガスの様な異臭に、三人は出口を探した。出口に通じるだろう扉は直ぐそばにあった。だが鍵穴らしきものはない、ドアノブさえない。
錆びて良く見えなかったが、中央に模様(ロゴ)らしきものが見える。
錆をこすると模様は光輝き、扉は空いた。
機械的な現代の自動ドアとも違い、重厚で分厚く、ピストルの弾なんてびくともしなさそうな自動ドアだった。

扉を開けるとそれに応じて自動で部屋の電気がついた。
現代でも見るような蛍光灯であり、時代的にはより現代に近いのかもしれない。
扉の外にはフロアが広がっていた。フロアの壁は硬い人口壁で覆われていて、地震ではとうていびくともしない設計だろう事が伺える。
しかし、床や天井や壁の錆はさっきの部屋よも遥かに酷いあり様で、湿気やカビも壁面にこびり付いている。
フロアの先にハシゴが上に伸びている。まるで潜水艦のハッチの様な重厚なバルブ。外に出るには苦労を伴いそうだ。
クロノは硬いゆっくりバルブを回した。


なんとか外に出られたクロノ。マールを引っ張りあげる。

2人は世界を見回した。目に飛び込むものはあたり一面コンクリートの残骸。
ビルや街の亡骸といえるような死んだ都市の地平線が見えた。

眼前に広がる文明の墓と、砂の大地の地平線がある。
鳥は1羽すら見えない。緑もまったくない。

ここがもし自分達の未来だとしたら、人類は滅んだということかもしれない。

2人は朽ち果てているが微かに見える道路跡を辿り進んた。

人間が生きているのか、作物が育つ様な環境ではない。それでも人が生きているか確かめずにはいられなかった。

1km程歩いた。
体力的な事を考えると、あまり進むの危険だと思った。この世界で食料等が手に入らない、生きていけないなら、元の時代に戻るしかない。
マールは食料を現代から届けるつもりの様で、クロノも他に選択肢がなく戻ることにする。

戻ろうとしたとき、声をかけられた。振り返ると目に飛び込んだのはロボットだった。

「ワタシとスピード勝負、シマショウ!」

ロボットはクロノにスピード勝負を持ちかけた。
ふと見ると、遠くの方から他にもロボットが駆け寄ってくる。
ロボット達は車を抱えてやってきた。

ロボット
「スピード勝負、あなたが勝ったら、車あげる」

マール
「負けたら?

ロボット
「スピード勝負、あなたが勝ったら車あげる

マール
「このロボット…壊れてるのかな?

レースをしたいロボット達。遊びたいのに可哀想。というマールの意向でクロノは勝負する事に。

マール
「クロノがんばれー!」

今にも壊れそうなボロ車。なぜ、ロボット達はこんな訳の分からない遊びをやるのだろう。クロノは疑問に思いながら発進させた。 

ロボットが乗ってる車はもっとボロ車だった。ハンデのつもりだろうか、クロノには訳わからないままだった。

微かに見える道路をただひた走るレース。そもそもどこがゴールか教えて貰ってない。

クロノは景色を見ていた。

本当になにもない世界だった。

核戦争が起きたとしても、こうはならないだろう。原爆が落ちた広島だって原爆ドームは残っている。

あるのは瓦礫しかない。建物らしきものは見当たらない。
山には木すら生えてない。なぜか比較的小さく見える気がする。

クロノはガス欠の予感がしてマールの元に戻った。

ロボット達も戻ってきた。
再勝負の申し込みを繰り返してきたが、、勝負を断っても、ついてくる。

クロノはマールを乗せ、ゲートのあった場所へ戻った。

元いた場所の地面をよく見ると、細かい瓦礫が点在していて、ここに元は広い施設があった様で、地下に繋がるハッチを幾つも見けた。

ハッチを開けて中を覗くと、白い物が山積みになっていた。
何かの資材かとハシゴを降りてみると、白骨化した遺体の山だった。

そこはある種の核シェルターの様なもので、人々が避難生活をしていた名残りだったのだろう。食料が尽きて人々は餓死したことが判る。

クロノは他にもハッチを開けてみたが、どれも同じで、この時代の人々の遺体が散乱していた。

この時代には人は生きていない。2人が諦めたとき、異音のするハッチを見つけた。

中はベルトコンベアーが流れるロボットの工場だった。

ハッチを降りるとコンピューターの端末があるが操作しても使い方が分からない。

と、突然、けたたましいサイレンがなり、侵入者を排除する為のロボットが襲ってきた。

ロボットはレーザービームを二人に向けて攻撃してきた。
当たれば火傷では済まされない。
クロノ達は急いでその場から離れ、ハッチを閉めた。


クロノがまた別のハッチを開けたが、そこは大丈夫だった。遺体もなく、襲ってくるロボットもいない。
奥に進むと、この世界にきた時と同じ様な文様の扉があった。しかし、今度は触れても開かない

二人は、今居るフロアに興味を持った。コンピューターがあり、死んでいるロボットが転がっている。
二人はそれをいじり回したが、コンピュータは電源が入らない。
ルッカが居てくれると助かるが、そのルッカは今は病院だろう。

マール
「私、一度戻ってみる。食料とか着替えとか持ってくるね。あとルッカの様子も見てくる。きっともう回復しているはずだから。」  


この時代に来てかれこれ5時間だが、警察の捜査はまだ続いているだろう。

 
マールは現代の森に出ると、コンビニに行き、カードで買い物をしようとして躊躇った。


(買い物の記録とか大臣や警察に行くかもしれない…)

マールは止むおえず万引きをした。

(めっちゃドキドキしたよ〜)

マールはルッカの状態を知ろうとした。

(警察に行っても捕まって王宮の敷地に監禁されるだろうし…、病院を問い合わせるにも、教えてくれる訳ない…)

マールはルッカの状態を知るすべがなかった。
(あ、あれ?? もしかして私、無能?)

ここからマールは、万引きしてクロノに貢ぐ生活の日々に突入した。


大臣
「なんじゃと! マール様が行方不明じゃと! しかもマール様がクロノを脱獄させ、魔族に怪我を負わせたじゃと!!」

大臣が報告を受けたのはクロノ達がゲートに飛んでしばらくしてからだった

魔族に怪我を負わせた代償は高くつく。その上マールがその原因を作ってしまったとなると、王宮が支払う代償は途方もない規模になる。

大臣の従者は脱獄に関わったであろうルッカを確保していて、尋問にかけたという。嘘の証言ばかりするので、心を支配して操る魔族、魅了一族の力を使い吐かせた。

大臣
「過去にタイムスリップするだと? そなた本気でその様な世迷言を言っておるのか? 」


従者は大臣に映像を見せた。
千年祭のゲートからクロノ達が次元の穴に吸い込まれる映像を見せた。

従者
「これは昨日の朝10時にマスコミが撮影した映像です。特殊な装置を使い時を越える様です」


大臣
「つまり、この世界にマール様はおらず行き先は400年前の世界におるのか…」


大臣は歴史を思い出していた。隠された歴史の存在。400年前に世界は魔族に支配される歴史を辿る。もし過去に行けるのであればそれを未然に防げるかもしれない。
だが、ゲートの存在は魔族側に既に知られている。おいそれと過去に行く事はできず、過去に行けても迂闊な行動はできない。。

従者
「どうなさいますか? 魔族側はこの件に関して審議中とのことで、またゲートの存在はないものとし、報道規制をかけるのみで、ゲートには見張りを立ててません。二人を探しに過去へ参る事も可能でごさいますが…」

大臣はこの国で監視されている。公務もあった。おいそれと移動でない。だからといってクロノを生け贄にするのを断念すれば魔族との軋轢が深まってしまう。

大臣は困っていた。人間を狩るのは人間がやる掟になっていた。真実を知る少数派の人間は大臣にとって融通の効く手足だった。

大臣
「とりあえず魔族への生け贄は代わりの者を用意する。過去にはそなたが一人で行って探してくれぬか?」


従者
「かしこまりました。」

大臣
「分かっておるじゃろうが、我らは監視されている。くれぐれもも反魔族的な行動をせぬよう、気を付けて行くのじゃぞ。」


従者
「ところでルッカはどうなされますか? 魔族への生け贄としてこのまま引き渡して宜しいでしょうか。」

大臣
「まて、ルッカは偉大な発明家じゃ。流石の魔族も彼女の命までは求めんじゃろ。問題はルッカに監視をつけるかどうかじゃ。ほおっておけばクロノ達の元へ…」

大臣は閃いた。
「まて、そなたは過去に行くのではなくルッカを監視しなさい。いずれ二人のところへ辿りつくじゃろうて」

従者
「かしこまりました。」


クロノの逃亡から2日目
ルッカは病院を退院し、家に帰っていた。脱獄に加担した罪は特例法として罰せられる事はなかった。

「さっすが、私! 天才発明家で良かったわ。オーホッホッ!」

ルッカは心を操られ、洗いざらい自白させられていたが、その記憶は無かった。
記憶を消す力のある魔族にて、尋問された事も覚えていなかった。

監視はされている可能性までは想定しているルッカだったが、タイムスリップした先でも監視される可能性があることに想像すらしていない。

クロノやマールに会うために中世時代へと向かった。

ルッカ
「どういう訳よ!あいついないじゃない!」

ルッカはクロノがガルディア城にいるものと思っていた。リーネを助けたご褒美に生活の面倒やらを観て貰っていると。


ルッカは自宅に帰り、何気なく新聞を見て驚いた。
クロノがマールを誘拐した事になっていた。  

「はあ? どういうこと?」 

「クロノは中世に行って、マールは家に戻ったんじゃなかったの?」


「あいつら、まさかのカケオチ? でもどこへ?」 

疑問していると玄関先のチャイムが鳴った。

ルッカの元に傷だらけの自家用車が戻ってきた。

「え? ナニコレ?」  

警察の説明によると森で乗り捨てられていたという。
車が放置された位置は千年祭からは遠く離れていた。

ルッカ
「あの二人、車を捨てて森の中に逃げたの? なんで?」

担当者
「警察の追跡から逃げ切れないと判断し、道を外れて森に入ったと思われます!

ルッカ
「あのう、良かったら、あの車、どこに捨てられていたか案内してくれないかしら。」

担当者
「勿論喜んで!(うはーあ!カリスマ発明家ルッカ様とまさかの道案内デート…この仕事、やってて良かったな〜)


〜森奥〜


担当者
「このあたりでございます!」

ルッカは辺りを見回した。
もし自分ならどう逃げるだろうか。考えながら歩いていた。

現代の監視カメラ社会、セキュリティ社会でクロノ達が逃げ続けるなんて現実的には不可能である。

「熊にでも食べられたか… あるいは神隠しにでもあったか…

流石に神隠しはないだろ。そう自分にツッコミをいれたとき、ルッカは気付いた。

「まさかこの森でゲートを見つけてそっちの方に入ったとか? それなら警察の追手を逃れられるのも説明がつく」


「だけど、この広い森の中でどうやって探す? 揺らぎの小さな時空の裂け目なんて、どうやって…」

ルッカはゲートを探知する機械が作れるかどうか構想を巡らせた。

理論上ゲートホルダーを起動しながら、ずっと森の中を歩けばいつかは辿り着く。
ドローンにそのの役割をプログラムさせればいい。

ルッカは自宅に帰り、既にあるドローンに手を加えた。

ドローンが自動で森を散策し、ゲートを発見するまでは2日かかったが、ルッカもクロノ達のいる時代へと飛んだ。



マール
「あ、ルッカ! ルッカだ!」

今日も万引きをしようとゲートに入ろうとしていたマール。目の前にルッカが現れて感激した。


ルッカ
「まさかマールがクロノとかけ落ちするとは思わなかったわ…


マール
「か、かけ落ちをとかじゃないって!

ルッカ
「ほんとに? そう言いつつ、まんざらでも無かったんじゃない?

マール
「からかわないでってば! クロノもなんか言ってよ!

クロノは万引き生活に王族を巻き込んでしまった事を後悔していた。


マール
「ところでルッカ、このコンピューターなんだけど…」

ルッカはコンピューターの裏にある電源ボタンを押した。通電していない様子

ルッカ
「このロボに聞いてみようかしら…」


ルッカは未来のコンピューター室に置いてあったロボの修理を始めた。

危険そうな武器を持っていないと判断したルッカは、ポケットから工具を取り出し、ロボを解体しはじめた。

ハンダゴテ等を器用に使い、適当な箇所を修理した。

「配線が断線してるだけなら、これで完成と…」

 

動きだしたロボはあいさつした。

「私はGKI008、セブンナイン社製、プロトコルタイプCです。」

「私に名前をつけてください」

 

とうやらメモリーがリセットされている様だ。

 

マール
「名前はロボがいい!」


クロノも考えたがマールのゴリ押しでロボに決まった。


「私の、名前はロボ、私は一体ここで何をしているのでしょうか?」

ルッカ
「記憶が少しはあるのね…、貴方はここで故障して眠っていたの。多分、汚れと錆から判断して何年も動けずにいたと思う。」 

「貴方達は誰ですか?貴方達がワタシを修理してくださったのですか?」

 

ルッカ
「ええそうよ。私の名前はルッカ、こっちがマールとクロノ」

 

ロボ
「ルッカ様、マール様、クロノ様、ヨロシクお願いします」

  

マール
「呼び捨てでいいってば

 

ロボ
「はい。マール、ルッカ、クロノ。」

 

 

ルッカ

「ロボ、いきなりだけど、私たち聞きたいこと沢山あるの。

 

ロボ
「なんでしょうか? 

ルッカ
「今は何年くらい?」

ロボは回答に困った。ロボ自身の記憶が消えていて曖昧だった。ロボはそばにあるコンピューターをいじくった。

ロボ
「施設への電力供給が一部ストップしているからだと思いますが、供給できればコンピュータが起動して質問に答えられると思いマス」

 
ロボは外へ出て、目を凝らした。
「あの場所で電力供給が可能になると思いマス」

ロボが指したのはクロノ達が寄ったロボット工場だった。

マール
「あそこにはロボットが攻撃をしてきて危ないよ?」 

 

ロボは思い出した様に言った。

「ロボット…私の仲間でしょう…か? あそこはたしかロボット生産工事…ワタシは、たぶん、あそこで作られた。あそこにはワタシの仲間がいる筈です。あそこで電力を供給して貰いましょう。」


ロボと共に工場へ向かったクロノ達

ロボは入って直ぐの端末にコードを入力した。

セキュリティが解除されクロノ達は侵入者ではなくなった。


工場はロボットの各パーツから完成までを全自動で作られている。ロボットの材料となる資材は古いロボを解体したり、機械のスクラップされたものをリサイクルしたりで循環している。

 
ロボは端末で電力供給の操作をした。

 

ロホ
「残念ですが私には電力供給する権限が与えられていない様です」

ルッカ
「他にないの? この世界の情報を調べる方法


ロボ

「工場内を探してみましょう。情報端末ならここにもあるかもしれません。

 ロボとクロノ達は奥へと進んだ。

製品化されて展示されているロボット達を見ていたロボは思い出した。

「そういえば施設内の地下に手動で電力供給を入れるとスイッチがあったあずです」

 

地下に降りると、

レバーが多様にあるフロアに到着した。

モニター越しにメーターや炉の燃料棒が水の中にあるのが見える。

ロボはテキパキとレバーを操作し、

「これで大丈夫な筈です」

と言った瞬間、サイレン、警報音がなり始めた。

 

ロボ

「あれ? 私、何か操作を間違ったかな!?」

 
警報は20秒後に地下1階以下のフロアを全て封鎖するというものだった。

「閉じ込められてしまうと、厄介です。急いで下さい」 

 

ロボはクロノの達を先導して走った。

3人の背後で重厚な封鎖シャッターが次々と降りる

そのペースに間に合わず、降りたシャッターにロボが挟まり、メリメリと音を立てる。

「皆さん、早く」


ロボはクロノ達が進んだのを確認すると、前転し、ゴロゴロと壁にぶつかった。

 

 

ロボ

「なんとかなりましたね。ちょっと危なかったですけど。

 

 

帰りの道で、ロボット達が襲ってきた。

 

マール

 「どういうこと?

 

ロボットはクロノ達ではなく、ロボを遅っている。

「裏切り者、人間の味方する裏切り者』

ロボ

「どういう意味デス?

 

ロボット達

「忘れたのか、俺たちは人間にはしたがわない。マザーシステムに従う。

 

ロボもクロノ達も気付いていないが、この荒廃した未来では人工知能マザーを管理する人間が長らくいなくなっていた。いつしかマザーは人間の存在価値を忘れ、ロボットの為に活動する存在に変化した。ロボットではなく人間に味方するロボットはもはやロボットではない。そんな認識の元でロボット達はロボをスクラップにしようとしていた。

ロボを壊してリサイクルするのが、このロボット達の役目だった。

 
ロボ

「な、なんでこんな事を

 私たちは仲間ではなかったのですか?

 私達は人間を豊かにする為の存在ではなかったのですか。」

 

ロボット達はそのコトバは理解できなかった。

 

 

ロボット達はロボの電源を落とそうとスイッチのある背中を狙おうとする。
「やめてください」  

ロボの声は虚しく、響く。

背中を壁につけたロボは正面からロボット達の攻撃を受けた。

ロボが動かなくなると、ロボット達はスクラップ用のゴミ箱にロボを投げいれた。

 

 

「ニンゲン、排除、する」

 

ロボット達はクロノに襲いかかった。

 

マール

「ルッカ! 一旦逃げよう!

 

ルッカは逃げなかった。

「クロノ! ロボットの弱点って何か分かる?」

 

クロノは首を横に降った

 

ルッカ

「足元よ。

 足元の重心が不安定だから足に攻撃を加えれば、簡単にコケる。」

 

クロノはルッカの言うとおり動いた。刀の柄を当てると、ルッカの言うとおりに簡単にこけた。

 
ルッカ
「このフロアのロボットは門番の様なセキュリティ専用ロボットではないみたい。全く武装されてないもの。恐らくロボットの運搬や廃棄担当専用の、いわば戦わないロボット。なぜ戦闘様のロボットがここに来ないのかは分からないけど、管理者がまだ未熟なのかも」

 

クロノがロボット達の注意をひきつけてる内に、マールとルッカがゴミ箱からロボを救出した。

外まで運ぼうとロボを引っ張るが、重くてなかなか前に進まない。

しかし、確実に少しずつ前に進んだ。

十分程、クロノはロボット達と格闘を続けた。

ルッカとマールはロボを運びながら気付いた。
入り口のハシゴを昇らせる力がない事を

ルッカ
「しまった! 私としたことがこれじゃロボは運んでも修理できない!」

マール
「ねえ、起き上がってよロボ! そうじゃないとあなた、ここでスクラップにされちゃうんだよ!」


ロボは起き上がった。


マール
「え? どうして? 

ルッカ
「もしかして最初から動けたの?」
  

ロボ
「はい、動かなくなれば、ロボット達は攻撃を辞めると思いました。

マール
「なぜ今になって起きたの?」

ロボ
「起きろと言われなかったからです」
 


ルッカ
「ロボ、貴方なぜ戦わなかったの?

 

ロボ
「私は兵器ではありません。戦う様にはプログラムされてません。」

 

ルッカ
「でも逃げることばできたでしょう?

 

ロボ
「仲間なので話しあいをしました。話しが通じないので途中で動かないふりをしました。そうすれば直ぐに攻撃も終わるかと思いました。」

 
マール
「次からはちゃんと戦いなよ。」

ロボ
「いえ、私には破壊活動はプログラムされてません。

 
ルッカ
「時と場合によりけりよ

 

ロボ
「時と場合? 

 

ルッカ
「貴方ね、あの分厚いシャッターにも耐えられるのよ。
 ロボのフレームは汚くて古いけど、品質が良い。なぜ、スクラップされずに保管されてたのか気になったけど。きっとレア度が高いから持ち主は捨てられなかったのよ。つまり、それなりのロボスペックが高い。もしかしたら戦闘様ロボにもなれるかもしれないのよ。」

 

ルッカ
「ちょっと試しましょうか。」

 
ルッカはクロノの元へ戻り、ロボットにちょっかいを出した。

「ほら、ロボ。このままだと私殺されてしまうわ。私が死んだら誰が修理してくれるの?」 


ロボは動かなかった。

「スイッチを切るわよ」

素直にスイッチを切られるロボ


 
マール
「ルッカ駄目だよ。先ずは友達にならないと。
友達がピンチなときは友達は助けるんだよ。ほらロボ、私達、友達だよ。

 

ロボ
「友達…インプットされました。」

マールもクロノの元へ行き、ロボットに号撃されそうになる。
ロボもマールを追ってスタスマと歩くと、腕を振り上げた。

ロボのパンチが炸裂した。整備ロボットはロボの一撃に次々にノックダウンしていく

整備ロボットが倒れると緊急警報がなり始めた。

ビーム攻撃をするセキュリティロボが集まってきた。 

ロボはビームに耐えながらセキュリティロボを駆逐していく。

見事にクロノ達を守り戦った。
ロボはもう戦わないロボではない。ある意味、破壊兵器の様な存在に成り果てていた。


ルッカ
「人が矛盾をはらむ様にロボットも矛盾をはらむ生き物なのね…」

〜コンピュータールーム〜


クロノ達はコンピュータを起動した。

ロボが操作し、データベースノアXYという画面が表示された。
 

「私はデータノアXY、データベースに情報をインプットする場合は画面のXをタッチし、。 データベースにから情報を引き出したい場合Yをタッチしてください…

ルッカ

「これは情報端末みたいね。今、歴何年かな?

 
ノア
「現在、西暦2300年です」

クロノの達は荒廃した世界の原因を聞いた。

データベースによると原因はラヴォスという生物によるものだった。ラヴォスは中世時代に南の魔族によって召喚され、1000年以上地中の中で眠っていたが、1999年7月1日に目覚め、大きな地震と共に地上に這い出ると
天に向かって光を放った。放たれた光は天から降り注ぎ、世界を砂と瓦礫の大地に変えた。光の熱で99%の人々が一瞬で消滅し、残りの1%も殆どが死に絶えた。

地下シェルターに避難してた凡そ10万人は
食料資源に限りがあった。
ラヴォスの熱を受けた大地では作物は育たなくなり、人口栽培にて生産移行するものの、、
ラヴォスが吐き出した煙『黒の刺客』により人々は絶滅した。

マール
「黒の刺客って何?


ノア
「黒の刺客とは、ラヴォスが吐き出した煙の中に含まれる病原ウイルスことで、それに感染した生物は発症後24時間以内に死亡します。感染者から感染者への感染力も高く、黒の刺客発生後、人類は絶滅しました。

マール
「魔族もそれで死んだの?

ノア
「魔族も絶滅しました。

ルッカ
「ちょっと待って、私達もそれに感染するじゃ…

ノア
「その危険性はありません。ウイルスの寿命は最長100年で2100年の段階では、不活性化しています。

ルッカ
「はぁ、びっくりさせないでよ…

マール
「そのラヴォスは今何処に行ったの? この世界で今でも暴れ回っているの?」


ノア 「ラヴォスは黒の刺客を吐き出した直後、地殻へと潜りました。ラヴォスは現在もまだ地殻の中にいると想定されます。」


 ルッカ
「ラヴォスって何なの? まるで生物破壊の神みたいじゃん。それを召喚した魔族もさぞ想定外だったでしょうね」

 

マール
「ノア、魔族って一体なんなの?」

ノア
「魔族とは人間と共に遥か昔から地上に生息していた生き物。中世期600年代まで人間文明と不毛な戦争を行った後、西側の魔族王フリューゲルスが北西大陸ギリイス首都を制圧すると人間との共存を始めました。」

マール

「魔族はどうして人間より優位になれたの?

 

ノア
「きっかけは西暦1000年の偶発的タイムゲートの発生でした。当時19歳の女性発明家が作り出したテレポート装置に障害が発生し、それが原因で現代文明が過去に混入、魔族が知恵をつける結果となり…」

 

ノアの説明は続いた。

「…当時、偶発的タイムゲートが発生し過去に行った者は三名と魔族種一体…」


ノアの説明によると千年祭でのテレポートの実験を人間以上に知能の高いコウモリ魔族種が見ていた。その魔族種はルッカがタイムゲートの検証実験中に入り込み、中世時代の魔族達に戦争や戦略的知恵を授けた。

影響を受けた魔族王フリューゲルスの主導で人間に擬態できる種族が人間世界を制圧した。

 

ルッカ

「そんな…じゃあ、私の実験が原因で…」

 

ルッカ

「私どうすればいいの? 責任なんて取れないよこれ。

 

マール

「過去に行って魔族や魔王と戦う…

 

ルッカ
「それを本気で言ってるの? 戦国時代に行くという意味だよ? 命が幾つあっても足りないわよ。 

 

マール
「確かに…実際問題無理だよね… 

ルッカ
「とりあえずクロノを中世にでも連れて行ってから考えましょうか。」

マール
「そうだね。クロノが安全に暮らせそうなところ、そこしか無いもんね…」


クロノは魔族がいる戦国時代が怖かった。いざという時の為、魔族の弱点になりそうな情報をノアに聞いた。


クロノ達は魔族の弱点を知った。

ー魔族の弱点ー

1、中世紀の魔族は総じて知能の低い者が多く、挑発等で冷静さを失うと行動に大きな隙が生じる。
2、人間に聞こえない特定の周波数帯の音が苦手な種族が多く、音波攻撃が有効。
3、多くの種は寒さに強い一方で熱に弱い。(化石調査から氷河期に人類文明が衰退している隙に縄張りを広げたとされる。)
4、忍耐力がない。酸欠や水により呼吸を奪えると効果的
5、魔族を弱らせる聖剣、グランドリオンを使う。(詳細不明


魔族について調べる内に魔族の強み、注意点も見つかった。

魔力を持ち、魔法が使える種族。超能力種族。数は多くないが、体内の魔力をエネルギーとしてチカラに還元する。その場合、身体能力が飛躍的に高まったり、熱や寒さを弱点としないどころか反対に熱や熱さをエネルギーにする者もいる。大きな傷を受けても再生するチカラがある者も。そういった者の多くは魔族社会の上位に属している。


クロノが脱走して5日目、そろそろ警察の包囲網も弱くなっているはず。三人はどうやって千年祭のゲートをくぐるか話合った。

マール
「そういえば、この部屋の扉が開なかったけど、通電した今なら開くのかな?」

マールがそっと触れると扉は開いた。
中には何もない。6畳程度の広さがあるだけ。

ルッカ
「これって、最初に開けた扉とまったく同じ文様をしているわね…何か特別な意味でもあるのかしら?」

ルッカ
「まさかここにも同じ様にゲートがある訳じゃないわよね?」


ルッカ
「え!? 本当なのこれ? 冗談じゃなくて本当にゲートがある!」

目を凝らして見なければ気付けない空間の揺らぎがそこにあった。

ルッカ
「扉の文様の意味はもしかしてタイムトラベラーに向けたメッセージ…」

マール
「メッセージ?

ルッカ
「ええ、タイムトラベラー同士だけが判る共通のシンボルとでも言えるかしら。」


ルッカはドローンでゲートの先の安全性を調査した。

「で、できない?」
ゲートは開いているものの、ドローンはゲートの中に吸い込まれなかった。

今までは問題なくできていた。ドローン自体に問題が有るのか? ルッカは頭を抱えた。

ロボ
「私の出番ですか?」 

ルッカ
「行ってくれるの?」

ルッカはゲートホルダーの説明をした。

 


 

ロボはゲートに吸いこまれた。


3分程経過し、ゲートが開きロボが戻ってきた。

ロボ

「不思議な場所でした。ゲート先にいくつものゲートがあって、いろいろな時代に繋がっていマス。」 


ルッカ
「え? それマジ!? 

マール
「なんかオモシロそう!」

ロボ
「間違いありません。中は広い部屋になっています。休憩可能なソファーや椅子があります」


ルッカ
「ノア、私達以外にもタイムトラベラーは存在するの?」

ノアにはタイムトラベラーに関する情報は何もインプットされていなかった。

ルッカ
「偶発的タイムゲートの存在は知ってるんだから、タイムマシンの研究くらいしてないの?」


ノアはタイムマシンに関する情報を吐き出したものの、タイムマシンが作れなかった不毛な研究資料しか吐き出さなかった。

ルッカ
「ちょっとどういう事? 私が生み出したゲートホルダーの情報くらいあるでしょ? 未来人もそれ作ってないと、ゲートには入れないのだから」

ノアにはゲートホルダー関するデータはインプットされていなかった。

ルッカ
「まさか、私の技術が未来に伝わらないってことかしら…

マール
「もしかして死ぬとか?」

ルッカ
「私のテレポッドの技術はどうなったの? ワープ構想のロジックは? 未来のエネルギー資源解決問題は?」

ルッカのテレポート技術は論文データとして残っていた。だが実用化されていなかった。
テレポートに見合うエネルギーの効率性が割に見合わず実用化に向かなかった。

ルッカ
「そんな馬鹿な! テレポートによる物質同士の重ね合わせの衝撃力でテレポートに使ったエネルギー以上のエネルギーが生み出せる筈でしょ! 私の無限エネルギー構想の論文はないの!?」

ノアはルッカの求める情報を吐き出さなかった。

ルッカ
「無能な未来人め。だったらこの時代にインプットしてやる!」

ルッカはまだ無限エネルギーの論文を書いていなかった。
クロノ達はしばらく、ルッカの仕事が終わるのを待った。


ルッカ
「よし! これで完璧! じゃあ、みんな! ゲートの中に入ろうか!」

クロノ達は不安と好奇心が入り交じりながらゲートの中へ飛び込んだ。

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――――――――――――――――――――――――――――

■6話 時の最果て

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ー時の最果てー

ゲートを抜けた先に部屋があった
部屋の中にはいくつかのゲートがあり、部屋の縁から見える外の景色は無限に続く黒の世界。

部屋には扉があり、その扉を空けると、もう一つ部屋がある。
部屋の真ん中に黒いスーツをまとった老人が鼻ちょうちん膨らませながらスヤスヤと寝ていた。

マール「もしもしー」

マール
「ここは一体なんですかー」

老人
「おや、こんなところに人がくるなんて珍しいのう。ここは時の最果て、まあ、ゆっくりしてけ。」

ルッカ
「え? それだけ? 時の最果ての説明は?」

老人は答えなく、また深い眠りについた。

マール
「どうするクロノ? 叩き起こす?」


時の果ての人
「そうじゃ。お主ら行く前にそこの扉に入ると良いよ。」 

そう言って、老人はまた眠り始めた

クロノ達は扉を開けた。

部屋の中央に小さな生き物がいた。

「お、久し振りのお客さんね。私の名前はスペッキオ。スペッキオの周囲を壁にそって3回まわると良い事が起きるよ。」 

スペッキオはそういうと、黙った。
話しかけも同じ言葉を繰り返した。

クロノ達はまわった。
一周するとスペッキオが小刻みに揺れ始め、二周目で強く揺れ、三周目ては目にも止まらぬ速さで揺れた。


「成功だよ。これで君たちは魔法が使える様になったよ。」 

クロノ達は言ってる意味がわからなかった。

「そこの大きなのは多分無理ね」
スペッキオはロボを指した。

「とりあえずスペッキオを指差してサンダーって叫んてみ。」

クロノ達はサンダーと叫んだ。
クロノの指先が光り、小さな稲妻がスペッキオに落ちた。

「君が使える魔法は天属性だね。今カミナリ出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がファイアーて叫んで僕に指差してね。」


ルッカの指先が光り、炎がスペッキオに直撃した。「君が使える魔法は火属性だね。今火出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がアイスて叫んで僕に指差してね。」

マールの指先が光り、スペッキオが氷ついた。「君が使える魔法は氷属性だね。今スペッキオを凍らせた君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、これで僕の講義はおわり。」 

クロノ達は更に戸惑った

「あと今のはスペッキオがチカラを貸したデモンストレーションみたいなものだから、実際に誰かに向けてやると今程上手くはいかないと思う。
でも練習するときっと上手くなるから。じゃあ、僕もおやすみ〜」

スペッキオは一方的に説明したら寝てしまった。

起こすと、魔法の練習がしたいかどうかを聞いてきた。

「デモンストレーション版がいいか、それともリアルがいい?」

クロノ達はリアルを求めた。

サンダー、ファイアー、アイスと叫んだが、何も出なかった。
もう一度叫んだ。しかし何も出ない。

「スペッキオが思うに、何も出ないときは自分の腕とか体に向けてやるといいよ。」

三人はそれぞれ、自分に向けて唱えた。
クロノは身体が少し痺れ、ルッカは身体が熱くなり、マールは身体の温度が低下した。

「スペッキオに向けてもう一度やってみて。あと身体の調子に意識を集中してやってみてね。疲れみたいなのを感じとれたら成功だよ」 

三人はスペッキオに向けて魔法は放った。スペッキオに変化はないが、少し疲れを感じた気がした。

「その感覚が大事だよ。疲れる感覚を覚えて、今度はどっしり疲れる感覚を想像しながら、魔法を唱えてみて。」

三人はスペッキオに向けて疲れるイメージで魔法を放った。スペッキオに電流が走り、軽く燃え、霜がついた。三人はどっしりとした疲れを得た。

「なんとなくわかった? 魔力と魔法の仕組み。訓練次第で色々な事ができるから、また遊びにきてね。あと無闇に人に向けて使ったらダメだよ」

三人は色々と言いたいことがあったが、頭の整理が追いつかなかった。

ールッカー

「ありえないわ。いや、ありえるかもしれないけど、やっぱりないわ!

ルッカは一人部屋に残りスペッキオに魔法をぶつけていた。

「科学以外は信じない!」
そうは言うもの、これまでの異常な体験からありえないことではないと、内心思い始めていた。


スペッキオ『やり過ぎると疲れるから注意ね』

 
ルッカ『どういう現象よ!これ!?』

スペッキオ『スペッキオにも良くわかんない。いつからできたのか、なぜできたのかも』

 

ルッカ『これって科学的にいったらどういう現象よ? 無いところから発生する炎なんて、100歩ずってありえるとしても炎の原材料は酸素よ。魔法ファイアが着火をコントロールしているとしても炎の制御に必要なのは酸素。酸素量をコントロールすることが重要でありその酸素は一体どこから? 酸素をワープさせたということ? それとも周囲にある空気から酸素だけを取り出して凝縮させているということ??』
 
ルッカはスペッキオに聞いたが、理解できていない様子だった。

スペッキオ『魔法には個性があって、その人が使える属性というのが決まってるんだ。ルッカは炎系の魔法が使えるから炎が得意なんだよ』


科学的にいえば炎の制御は酸素を制御することだ。厳密には得意なのが酸素制御ということになる。

ルッカは気になっていた。酸素をワープさせているのか、周囲の酸素を集めているのか、密閉空間を作って実験したい。もし酸素ではなく、水素のみ選んで集められるなら爆発させる魔法も作れることになる。

スペッキオ
「爆発の魔法が覚えたいの? だったら、フレアって叫んでみて。

叫んぶと、スペッキオの頭の上が光り、爆発した。スペッキオはその衝撃にビックリし、ルッカは衝撃で転げそうになる。

スペッキオ
「という訳で、使うときには注意しないといけないの。

ルッカ
「もっと火力のある技は使えないの?

スペッキオ
「練習すればできると思うよ。あとゴハン食べて寝て


ルッカには他にも疑問があった
デモンストレーションのとき、ファイアを使ったら、火は自身の目の前から生まれ出てスペッキオまで駆けていった。
途中に障害物があったらどうなるのか。

スペッキオ
「障害物をすり抜けていくよ。」

ルッカ
「障害物をすり抜ける? 避けるのではなく? すり抜けるの? つまり、火の絵がそこにありながら、火の性質なく、座標の元で火の性質になる。火が飛んでいく光景なんて意味はない、指定した座標点で初めから燃えれてれば無駄がないのに。なんでそんな事になってるの?」

スペッキオ
「スペッキオは難しすぎて意味わかんないけど、とにかく障害物には当たらないよ」

魔法を使って指が光る事も無駄なことであるが、それがある意味ってなんだろう。

「スペッキオに言われてもわかんない。困る」

ルッカ
「光を出さないで、、あるいは魔法を唱えないで出せる?」

スペッキオ
「それは多分、無理なんじゃないかな、やる意味もないと思うけど

ルッカ
「じゃあ、光を出す魔法や光を消す魔法は使える?」

スペッキオ
「ライトってのがあるけど、ルッカは属性違うから何も起こらんよ。光を消す暗闇の魔法もあるけど、使えないと思うけど」


「デモンストレーションならできる?」

スペッキオ「できるよ? やってみる?」


ルッカがライトを唱えると部屋が明るくなった。
気が少しだが断続的に抜け続ける感覚。

スペッキオ
「スペッキオがチカラを貸してるとはいっても魔法使ってる主がルッカだからね。しかたがない。」

だけど気を抜ける感覚がファイアの時と違い、頭から下に向かう感覚だった

ルッカはデモンストレーションを解除し、頭から下に気が抜ける感覚をイメージしてライトを唱えた。

微かに光が出た。

スペッキオ
「ど、どういうこと? ルッカは光属性とか使えない筈なのに。」

「成長して魔力が高くなると、色んな属性魔法が少しは使えるけれど、今のルッカの魔力量では何も起こらないのが普通なんだけど…」


検証してみると、体から気の抜ける方向、前後左右上下により、出せる魔法の種類が増えた。
たとえば
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に炎
後から前に氷
左から右に天属性
右から左に冥属性

これをクロノで検証すると
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に天
後から前に冥
左から右に氷
右から左に炎


ルッカ
「水の属性とかないの?


スペッキオ
「ウォーターってのがあるけど、

スペッキオにデモンストレーションを頼むと、
気の抜ける方向感覚が捉えられなかった。普通にファイアを使うのと感覚が違うのはわかるのが、どう違うのか、わからなかった。

ルッカ
「水を吸い取る魔法、つまり乾燥の魔法なんてあるかしら?」

スペッキオ
「ドライヤーのこと? 

検証するとドライヤーもウォーターと同じように感覚の掴み所がわからなかった。
しかしウォーターと同じ感覚とも思えない。


障害物をすり抜けるというエネルギー工学的にみて無駄な演出が魔法の仕組みにプログラムされていること。唱えて光って炎が飛んでいく仕組み。まるで「これから危険な事をしますよ。気を付けてください」というメッセージを飛ばしている様なものである。

魔法とはもしかすると、未来人が生み出した科学技術の様なものなのだろうか。使用上安全性を考慮して、このカタチになったのではと、この時ルッカは思った。

だとしても、納得できない事は山ほどある。

魔族が魔法を使えるという噂は未来のデータベースノアから引き出した情報。
未来人が魔法を生み出したのなら、未来人も魔法が使えるという情報がないとおかしい。だけど魔法を使える未来人なんて情報は無かった。

(安全性が考慮されて作られてる…)


ルッカはクロノを呼び出してサンダーとファイアーをデモンストレーションから同時に唱えた。
同時にそれそれの現象が起きた。

電気を効率良く対象に浴びせるは対象の周りが真空状態にならないといけない。しかし、真空状態は無酸素だから燃えたりしない。
火と電気を連携させて燃えるのであれば、ファイア魔法はそもそも酸素がないので燃えないはず。

【魔法の仕組みは化学的にも物理的にもその法則に即していない。】

アイス魔法の場合、その正体が冷気が発生しているのではなく、対象から温度を奪う性質なのであればファイアとアイスの同時発動は純粋に相殺し合う関係になるだろう。

アイスを先に浴びせて凍らせる。いわゆる凝固作用で対象の体積を下げておき、その後でファイアを浴びせて、解凍し、体積を増やす場合は、どうなるだろうか? 普通に考えれば凍ったものが普通に解凍されるだけだろうが、酸素を火種にしていないのだから熱運動がダイレクトに伝わる筈であり、たとえば空気なら熱膨張爆発するだろう。対象が生き物なら生き物そのものが膨張する。
恐らく電子レンジで凍った肉を急速解凍してドリップする様な現象を起こせる。それも激しいレベルで。

「なるへそね〜、意味わかんないけど今日、スペッキオ、たくさん勉強した。ルッカありがとう」


ルッカ
「ここには私達以外来たことないの?


スペッキオ
「来たような、来てないような、わかんない。

ルッカ
「あなた何時からここにいるの?

スペッキオ
「スペッキオはいつからここにいるんだろう? ずっといる気がするけど、いつからいるんだろうか?」


ルッカ
「じゃあ、あっちの部屋で寝てる爺さんは? いつからいるの?」

スペッキオ
「スペッキオと一緒にずっといるけど、最初からいた。」

ルッカ
「おじいさん何者なの? 何している人なの?

スペッキオ
「あの人は何もしない人、いつもここで寝てる人」

ルッカ
「この部屋はなに? 資財とか何処から運んで誰が作ったの?」

スペッキオ
「全部僕が作ったのね。そこのお爺さんにダメ出しされながら。センスの良い部屋を作ったつもり。資財は僕の中からだけど…

ルッカ
「魔法で作ったということ?(なるほど。魔法が酸素とかワープさせたり、あるいは無から生み出してるとすれば、この空間全部を魔法で作ることもあり得るか…)

ルッカ
「ゴハンとかどうしてるの? 私お腹減ったけど、もしかして、食べ物も魔法で生み出せるの?」

スペッキオ
「スペッキオは、お腹減らないから食べない。生み出す事はてきるよ。

ルッカ
「じゃあ、ハンバーガー出せる?

スペッキオ
「スペッキオそれわかんない。

ルッカ
「どんなものが出せるの?

スペッキオ
「スペッキオはチャーハンが好き

ルッカ
「じゃあ、それお願いできるかしら?

スペッキオがチャーハン!と唱えると器に盛られたチャーハンが出てきた。
スペッキオはそれを貪った。

ルッカ
「…」

スペッキオ
「ごめん、お腹空いてないけど、おいしそうだからつい食べちゃった。もう一つだすね。


クロノ達はスペッキオが生み出したチャーハンを食べた。

ルッカ
「もしかして、オイルとか車とか、兵器とか生み出せるのかしら

スペッキオ
「何でも生み出せる訳じゃないの。スペッキオが生み出せるの、単純なものだけ。

ルッカ
「チャーハンって料理としては作る過程とか複雑だと思うけど…


ルッカはチャーハンを調べた。見た目も味もチャーハンに違いないが、胃に貯まらない感じがした。

ルッカはチャーハンを食べながら、この時の最果てに来る前の事を思い出した。ドローンが入れなかったこの世界。でも手元にはドローンが実際にある。
ルッカはドローンを飛ばして部屋の外を調べてみた。

暗闇が続くだけで、他には何も見つからない。
部屋の外にあるゲートにドローンは入らない。
ルッカがドローンを手元に戻すと、
バッテリーの残量メーターが減ってない事に気付いた。


「どういうこと? もしかして、この世界では時の流れが止まっている?」

「だとしたら、この世界にいると老化しない事になるの? 
空腹が満たせないのも、私達の時が流れてないからなのかしら?」

ルッカはロボにボールペンとチャーハンを持たせ未来に一度帰って貰った。ロボはチャーハンを持たずに帰ってきた。

ロボ
「なぜかゲートをくぐった瞬間に、チャーハンが消失しました。ボールペンはゲートの向こう側に持っていけず足元に落ちました」

ルッカは時計を見た。ここに来て何時間も経過しているが、時計は止まり殆ど進んでいなかった。ロボには未来に行って帰るまでに秒数をカウントして貰ったが、ルッカが数えた秒数と一致していなかった。。ロボのカウントの方がルッカの30秒多い、ロボが未来に滞在した時間が30秒程で、ルッカがカウントしたのはトータル100秒数でロボのカウントは130秒数。

ルッカは1つの結論に至った。この時の果て世界は時が止まっていて、同時に物質的には存在していない。 


ルッカ
「恐らく、異空間に飛び混んだ私達の身体は異空間の中に今も漂い続けている。でも、意識では互いに繋がり認識し合っていて、手を繋いだり、ゴハンを食べたりできるけど、実際には手繋いだり、ゴハンを食べた事にならない。」

「たとえば私のメガネを外して、この世界に置き忘れてゲートから出たとしても、メガネは装着したままゲートから出るに違いないわ。」

時の最果てゲートに入った時の姿のまま出てくる

ルッカ
(この世界でドローンが飛ばせたりできるのは、私がドローンを飛ばせる事を認知しているからかもしれない。

スペッキオが物質的に物をこの世界に運べるなら、反対に外の世界に自身を持っていける筈で、でもスペッキオはずっとここにいた記憶しかない。恐らく外の世界に出られないということ。

部屋のインテリアや壁も全ては想念の様なもので、スペッキオですら実体のない幻なのかもしれない。
老人もずっとこの世界にいる存在、だとすれば実体は存在しないのかもしれない。


クロノ達は腹が空いていた。しかし現代ではクロノは指名手配されているだろう。安全な場所はどこにあるのか?


時の最果てに存在しているのは7つのゲート。
ロボに頼んでゲートの先を探査して貰い、安全性を確認して貰った。


ゲート1
千年祭会場、ルッカのテレポッドブース

ゲート2
現代の森、クロノが偶然にゲートを見つけた場所

ゲート3、ゲート4は、クロノ達が未来で最初に出てきた所と、時の最果てまで繋がっていたゲート

ゲート5は中世に。クロノ達が行った山中へ行ける


ルッカ
「こう見ると、全てのゲートが、一度は私達が通った場所に繋がっているようね…
この時果て世界が私達が辿った記憶から生み出しているという説明がつくけど…」


クロノ達には記憶のないゲートが1つあった。

恐竜時代へと繋がるゲート

ロボによるとゲートの先では恐竜や恐竜人がいたらしい

ルッカ
「恐竜時代に行く勇気は流石にないわね…」

クロノ達は中世に向かった。リーネを魔物から救った礼やらで、きっと食べ物に有りつける気がした。

-

――――――――――――――――――――――――――――

■7話 戦争

-

クロノ達が山を降りようとしたとき、爆音が轟いた。

マール
「え? 何か起こっているの?」


ルッカ
「これは、砲弾の音? もしかして戦争!?

マール
「演習…とかじゃないよね?

ルッカ
「だといいけど。

クロノ達が山を降りると、城下の街は戒厳令が出ていた。
人々は街を出歩かず、皆、家々にこもり、負傷した兵士達が療養所にいた。

街の一角にある施設には数十の死体が集められていて、遺族や神父が冥福を祈っていた。

中世、A.D.600年
魔王軍とガルディア王国軍の戦いは既に始まっていた。

「おい、そこのお前ら、戒厳令が出てるんだ外にでちゃあかん。」

見張りの兵士からクロノ達は戦況を聞かされた。

「今はまだ防戦しかできてないけど、このガルディアに伝説の勇者があらわれたんだ。その勇者さえ加勢してくれれば戦況はひっくり帰るぞ。」

この見張り兵士だけでなく、他の兵士も同じ事を口にした。

ルッカ
「伝説の勇者? なにその昔話設定」

マール
「でも街は噂で持ちきりだよ? 伝説の勇者が現れたんだって

ルッカ
「その伝説の勇者は何をしてくれたの?

マール
「伝説の聖剣、グランドリオンで1000の魔族あっという間に倒したとか

ルッカ
「それが本当なら、なんで勇者はガルディアを放置しているのかしら…
 
 真相を確かめるために、クロノ達はガルディア城へ行った。


リーネ「あら、貴方達、今までどこに要らしたの? 教会で私を助けて頂いて、ろくにお礼も申しあげられぬまま、いそいそと、どこかへ言ってしまわれ…」

リーネ「とはいえ、私も今は悠長な事を言ってられない身。魔王軍がそこまで迫ってきております。気を付けてください。
こんな時、伝説の勇者がいてくれたら…」

マール
「伝説の勇者ってどんな人なの?

リーネ
「私も詳しい事は存じ上げないのですが、素晴らしい勇者だと聞き及んでおります。

マール
「王様もなにかご存知なのですか?

王「わたしも詳しい事は分からないのだが、その勇者は南の大陸に進んだと聞いておる。
現在、魔王軍は大陸を結んだ橋の前で我が軍と交戦しているが、その橋を抜けたという話を聞いた。魔王軍をものともしないそのチカラはまことの勇者に違いない。」

クロノ達は半信半疑だった。
ガルディアは噂話におどらさて現実逃避をしている様に思えた。

戦況はガルディア本土へと続くゼナンの橋に魔族の侵入を許している。魔族の侵入を防ぐ為に破壊したが、魔族はその橋を骸骨で補強しているという。

将軍ビネガーは動物や人間の骨を集めて操り、壊れた橋にかけた。その橋の上を骸骨の兵士が進行しにガルディアの兵士達は血みどろの戦いをしていた。

正直、クロノ達では戦力になるとは思えない。

ルッカ
「大丈夫、私達には命知らずのロボがいる。」

クロノ達は橋へと向かい、ロボは敵のガイコツ兵を一撃で倒していく。
「なんだこの鉄の生き物は!」
「敵の妖術兵士か?」
苦戦している兵士たちを尻目に橋に群がる敵を蹴散らして進んでいく。
「いや、こいつは我々に味方してくれている」
「もしや、この鉄の生き物が伝説の勇者なのか!」
「いや、この鉄の生き物を後ろで操っているのが、本当の勇者様に違いない。」

ロボの後ろでロボを指図していたルッカ

「見知らぬ貴方たちの助太刀に感謝致します。しかし、橋の向こう側にいるのは将軍ビネガーです。奴の妖術はとても危険です。どうか気をつけて。」

ロボは強かった。10人力、100人力のチカラがあった。

とはいえ敵の数は橋を埋め尽くしている。ガイコツ兵士は、ゆうに1000を超え、ロボがフォローしきれない敵がガルディアの兵士に襲いかかる。

負傷する兵士を見ながらクロノ達は覚えた魔法で防戦するものの、付け焼き刃のチカラでは全く使い物にならなかった。

ピストルは弾数は限られていた。マールのボウガンの矢も限りがある。ここぞという時にしか使えない。

剣道を習ったクロノなら頼りになると思いきや、ガイコツ兵のスカスカの身体には細い刀では攻撃力不足だった。

しかし、まったく役に立たない事もなく、刀の鞘は効果があった。
マールは倒れた兵士を療養所に運ぶ手伝いをし、クロノは鞘をバッドの様に振り回し、援護した。

ビネガー「うぬ? 我が部隊が押されている? こうなったら、とっておきのガイコツ兵をだすよ〜ん」

ビネガーが呪文を唱えると、ロボに倒されて動けなくなっていたガイコツ兵が一斉に集まり、ひとつの巨体なガイコツになった。

巨体ガイコツの腕振りの長さは、いままでの100倍はある。兵士達は近づく事さえできなかった。

しかしガルディア兵も負けてない。後ろに兵を引かせると、大砲をぶち込んだ。

ビネガー
「うそーん!」

大きい分だけ的が狙いやすい。砲弾は簡単に命中した。

ビネガー
「うぬぬぬ、ならば、今度は小さなガイコツ兵だ。」

大砲でバラバラになった骨がビネガーの呪文とと共に集まる。
小さな骨の集合体が与えるダメージは少ないもの、兵士達の足元を絡め取ろうとする。
兵士達は苦戦を強いられた。

クロノはどうしていいか分からず、負傷して動けない兵士に群がるガイコツを追っ払うことしか、できなかった。
それでも助ける事はままならず、クロノ達の前で人が死んでいった。

戦力になるのはロボだけだった。

橋の上で互いに消耗戦が繰り広げられた。

数時間後、ビネガーは魔力を消耗し撤退した。

ガルディア軍の損害、死者300名、負傷者500名、ビネガー率いる骨の軍団はそもそも生きていたのかさえ定かではない。魔王軍は実質、損害は無いに等しかったのかもしれない。

クロノ達は明らかに準備不足だった。
未来のデータベースノアではガイコツやビネガーの様な情報は見つからなかった。というより、情報があったとしても多すぎて気付かなかっただろう。

魔族全般熱に弱いのを考慮するなら火での攻撃が正解なのだろうが、前もって準備しておく時間がなかった。

目の前の犠牲者を見たルッカは怒りで震えていた。
クロノ達に無言のままでガルディアの王宮に戻った。

ルッカは王に進言した。

「お願いがあります。私に魔王軍と戦う為の武器を作らせてください」

ルッカには迷いは無かった。魔王軍に勝つためのプランが出来上がっていて、実現する自信があった。

ビネガーが次の攻撃を仕掛けてくる前に完成させないといけない。ルッカは作業場に篭った。

クロノ達はこの時代で何ができるかわからなかった。
この時代の人々が、曖昧な勇者の噂に縋りつく気持ちが分かる様な気がした。

クロノ達はガルディア軍部の被害調査隊に入隊した。

伝説の勇者を探す事と魔王軍に制圧されたかもしれない近隣の街の被害具合を調べる任に志願した。
戦えなくても、何か力になりたい。いざとなったら走って逃げる。それくらいならできる気がした。

クロノ達はルッカをガルディアに残し、街の被害調査と、伝説の勇者を探す為、南へと旅立った。

南の大陸は砂漠地帯が広がる広大な地域。砂漠を東に抜けると魔王軍の本拠地とされる魔岩窟があり、砂漠を抜けた南にパレポリ街がある。魔王軍がパレポリの街を襲撃しているかどうかは確認してみないと分からない。もし伝説の勇者がパレポリを守っているのであれば無事であるだろう。クロノ達は南に旅立つ前、ガルディア軍部からそう説明を受けていた。

ガルディアから数日分の行き帰りの物資が支給されていたものの砂漠の熱さはキツイ。魔族が熱さに弱いのを考慮すると、南部の街が襲われている可能性は低い。

南部よりも危険なのが砂漠の中心に存在する街で、魔王軍の襲撃があるとしたら、まずそこが壊滅しているだろう。もしその街が壊滅しているのであれば、魔王軍が駐留している可能性がり、速やかにガルディアに報告しなければならない。

橋を抜けた先には、魔王軍の遺体がいくつもあった。遺体といってもガイコツ兵士の亡骸であるが、それが砂漠を見渡す限り続いていた。

クロノ達はガルディア兵の遺体とガイコツ達を避けながら砂漠の中を2日進んだ。
数え切れないガイコツの先を抜けて
半日程進んた先に、中部地方の街が見えた。

幸い街は魔王軍には襲撃されてはおらず、クロノ達は近くの一件の民家の戸を叩いた。

クロノはガルディア軍部被害調査隊の腕章を見せた。
住人によると、魔王軍の部隊がこの街に進行しているとの報はあったものの、魔族は一匹たりとも、この街には侵入しなかったそう。
ガルディアの剣士カエルにより街の防衛は守られたのだという。

マール
「カエルって、たしかリーネ様を助けた騎士だったよね?」

クロノはカエルを思い出していた。緑色のカエル人間。リーネだけでなく、蛇女との件では結果的にクロノとルッカの命も助けた恩人である。
カエルは魔族だったのだろうか。魔族の中にも人間側に味方する者がいるのだろうか。


住人からは伝説の勇者はパレポリが故郷だという情報を聞き、砂漠を抜けた先のパレポリを目指した。
数日かけてパレポリに到着し、聞き込みをしていると判明したのは、伝説の勇者の存在は、実は子供が勇者ごっこで名乗ったものであり、その噂に尾ひれがついてガルディア本土まで飛び火したという話だった。

また、その子供はデマカセを風潮した為、引っ込みがつかなくなり、今しがた勇者の証を示す為にデナドロ山に向かったらしい。

デナドロは魔族のテリトリーであり、子供が一人で行くのは危険過ぎるという。

クロノ達は子供を保護する為に
急ぎデナドロ山に向かった。

〜デナドロ山〜


子供は既に4魔族に囲まれていた。


「我らデナドロの四天王! 我らの聖域に踏みこむなら、我ら四天王を倒してからゆけい!」

カラスの様な顔立ちをした二足歩行の化物。
その手には剣を持っている。

危ない! と思いきや、子供を攻撃する気配はない。

自称四天王達は剣を構えど、子供が攻撃をしてくるのを待っている様子。

「我らは武士道精神を重んじる四天王よ! お主が強き者であれば、いざ、勝負!」

タータ
「僕は勇者になるんだ!負けないぞ、負けないぞ!」

精一杯、虚勢をはるタータであるが、体格差からして勝てるないのは判る。魔族だから知能が低いのか、そのあたりの配慮はないまま、真剣勝負を求めている。

タータは剣を構えたまま泣いてしまった。

「クロノいくよ!」
マールはボウガンに矢を込めて放った。
魔族には当たらずかすめた。

クロノ達からの距離ではデナドロ四天王の会話は聞こえなかった。
穏便に済ませれば見逃して貰える種類の魔族だったが、マールの不意打ちという武士道精神に反する攻撃で、クロノ達がデナドロ四天王に狙われることになる。

クロノ達には今ロボはいない。
ロボはガルディア本土を防衛する為に、おいてきた。

「不意打ちとは卑怯なり! 生かしては返さん!」

取り囲まれたクロノたち。

「どっちが矢を放った!」

答えないクロノ達にカラス人間達はジャンケンを始めた。
武士道的に一対一を望むカラス人間達は、誰が
戦うのかを決めた。

「よし、兄者、私の勝ちだ!」
四天王は4っ子のカラスで、誰が長男か次男かはクロノ達には判別できない。

「どちらが矢を放ったのか、答えないのであれば、どちらも殺すしかないぞ!」

マールが答えようとしたとき、クロノが遮った。武士道の空気を察したクロノ。

自分が名乗り出ることで、タイマンに持ち込み、その隙にタータを連れて逃げる作戦を提案した。
だが既にタータは逃げていた。

振り返ると、タータは山を降りていた。
ならクロノ達にも争う理由ない。

カラス魔族を無視して走って山を降りた。
しかし、相手はカラス魔族、空を飛び、あっという間にクロノとマールの前に立ち塞がった。

逃げるのを諦めたクロノは矢を放ったのは自分だと言った。

武士道精神を重んじる相手なら、ここで部外者扱いになるマールが殺されることはまずない。また剣道の経験があるクロノはカラス魔族特有の羽の重さによる下半身の踏ん張りの弱さと、カラス特有の手の形から剣の握りの甘さに気付いていた。

どういう訳かカラス魔族達は、人間の文化、それも日本独自の武士道精神に染まっている。誰かを見様見真似で演じているもので、剣術の基本も教わっている様には見えなかった。

クロノの予想通り、カラス達は弱かった。
子供が真剣でチャンバラをしている様なレベルで、部活で鍛えたクロノが負ける筈もなかった。

長男
「ま、まさか我ら四天王を倒すとは、お主、なかなかやるではないか。まるでソイソー様を見ている様だったぞ」

次男
「兄者、それは言い過ぎというもの、ソイソー様はこいつなんかよりもっと強い!」

マール
「ソイソーってダレ?」

次男
「女! お前ソイソー様を知らないのか!? ソイソー様は、魔王おかかえの三闘士、ビネガー将軍やマヨネー将軍に肩を並べる立派な将軍様なんだそ!」

マール
「へー」

長男
「こら! あまり人間と親しく話すな。そういうのが理由で我ら魔王軍の試験に落ちたのだそ」

マール
「え? 魔王軍って試験みたいなのあるの?

次男
「そうだぞ! 試験はとっても厳しいんだ!」

長男
「だから、馴れ馴れしく人間としゃべるな!」


カラス魔族の長男は次男を叱ると弟子たち三男と四男を連れて山奥へ帰った。

次男
「お前は強い、特別にこのデナドロ山の入山を許可する。次に戦うときは負けないからな!」

次男はそう言って空を飛んでいった。が戻ってきた。

「いい忘れたけど、山の頂上には精霊がいる。そいつだけには、関わるな。行かないとは思うが、行けばお前達、死ぬことになるぞ。」


次男はそう言い残して山奥に消えた。


マール
「魔族って、案外悪い奴らだけじゃないのかもね…」


クロノ達はパレポリの街へ戻った。
子供(タータ)が無事に帰れたのか、確認に戻った。
タータの自宅を尋ねると無事に帰っており、クロノ達は詳しい話を聞いた

タータは自分は本当の勇者ではなく、勇者バッジは酒場で酔いつぶれたカエルが落としていったのものをたまたま拾っただけで、そのために周りが勝手に勇者だとチヤホヤしてきて、後に引けなくなったのだという。

少年はバッジを自分の代わりにカエルに返してあげてと、クロノ達に渡した。

「カエル」とは、リーネを保護したカエルのこであるがカエルはパリポレの街では剣士だと知っている者は殆どいなかった。
街ではお化けカエルと呼ばれ、街はずれの森深くの穴の中で生活していた。

カエルとは何者なのか、魔族なのか、
未来のデータベースにはカエルの記録はなかった。

クロノ達はカエルを見つけると勇者バッチを渡した。


カエル
「…それは勇者バッジ」

勇者バッジとはなんぞやと聞いてみると

勇者バッジとは勇者から勇者へと渡されるバッジで、カエルは勇者サイラスから渡された。
カエルの元の名前をグレンといい、20年も前にバッチ渡されていたけれど、勇者バッジをつける勇気がなくて、これまでお守りの様に持っていたという。

勇者サイラスはグレンの親友で、共に魔王と戦った。しかし、サイラスは殺された。
サイラスから勇者バッチとグランドリオンを受け取って魔王と戦うも、グランドリオンは親友が殺されことへの憎しみに反応し、弱き剣へと姿を変えてしまい、魔王に折られてしまったという。

「そして元々人間だった私は魔王の呪いの術を受け、姿形をカエルに変えられてしまった…。」

カエルは喉を鳴らしながら、クロノ達に説明した。


「私は魔王とは戦えない」

マール
「どうして?


カエルは折れたグランドリオンを見せた。

クロノ達は未来のデータベースに聖剣グランドリオンの項目があったのを思い出した。詳細不明だったが、魔族に劇的な効果あるという。

マール
「グランドリオンを治せば戦えるのね?」

マールは剣の柄を見て驚いた。

「ねえ? クロノ、これ作者名のところにボッシュっ書いてない?」


ボッシュは趣味で刀を作っていて、テレビの何でもござれ鑑定団に出ているそこそこそ有名人。
クロノ達とは千年祭で出会い、銃刀法違反を見逃して貰った相手だった。

マール
「どういうこと? なんで現代にいるボッシュが中世のグランドリオンに関わっているの?

マール
「まさか私達みたいなタイムトラベラー?」

有り得ない事ではなかった。未来にはタイムトラベラーがいた痕跡、最果てではタイムトラベラーを支える様なシステムが作られていた。クロノ達以外にも時を超えられる者がいる筈である。


クロノ達はガルディアに戻った。魔王軍による町の被害具合と勇者バッチとグランドリオンを受け取った本当の勇者の正体を知らせに。


〜ガルディア工房〜

ルッカ
「ボッシュがタイムトラベラー?」

ルッカ
「今現代に戻るとしても、クロノは指名手配されいるはずだし、私は手が離せないし…

マール
「大丈夫、私一人でいくよ。ボッシュの居場所は名刺のとこに行けばいいだけだし」


マールはそう言って、かけていった。

ルッカ
「一応クロノもついて行きなさい。山道でマールを一人にしておけないし、、リーネと間違われて誘拐される可能性だってあるんだからね。あとクロノは時の最果てでマールを待つ間、スペッキオから何か有効そうな魔法の情報を聞き出すこと。あと魔法の練習も忘れないこと。」


マールはクロノを最果てに残すと現代に戻った。
現代ではクロノがマールを誘拐したテロリストだと騒がれていた。
クロノの両親は泣きながらテレビの取材に答えていた。

この時
マールは人生初めてバスと電車に乗った。

ボッシュは鉄の臭う工場の中にいた。
 
「こんにちは、  

ボッシュ
「だれかの?

マール
「私、少し前、千年祭で名刺貰った者なんですけど…

ボッシュ
「おお、そうか、あのときの娘さんか、2週間ぶりくらいかの? ツンツン頭の青年はうまく逃げ切れているようじゃの

マール
「ご存知なのですか?

ボッシュ
「お前さん、無理して敬語使わんでええぞ。一応、王族なんじゃろ?

マール
「え? 私のこと知ってるの?

ボッシュ
「誘拐事件のニュースは話題になっとるからの。メディアは誘拐説と単なるカケオチ説で賛否両論しとる」

マール
「誘拐とは思っていない人もいるんですか?

ボッシュ
「そりゃそうじゃ。お国の司法のおかしさは多くの人が疑念を持っておる。他人事だから、どうでもいいだけじゃの」

マール
「ボッシュさんは信じてくれるんてすか?

ボッシュ
「ワシは信じるぞ。お主らは誘拐なんぞしとらん。」

マールは嬉しくなった。クロノの無実を信じてくれる人がいてくれる事が。

マール
「実はボッシュさんには聞きたい事があるんです。」

マールは折れたグランドリオンを見せた

「これは確かにワシの剣…。でもこれを一体どこで…」


マール「変なこと聞くけどボッシュさん、もしかしてタイムトラベラー?」

ボッシュ
「…なぜ、その様な事を聞くんじゃ?」

マール
「実は私達はこの剣を中世の時代から持ってきたの」

マールはこれまでの経緯を説明した。

ボッシュ
「そうか…。やはり、あの空間の裂け目は時を繋ぐものじゃったか…
 なんとなくそんな予感したんじゃ。
 お主らに出会ったあの日、ワシはその事を聞くためにお前さん達の帰りをあそこで待ったんじゃが…     
 ワシは聞く事を躊躇った。  

マール
「どういう事なんです?

ボッシュ
「もしお主らがタイムトラベラーならワシは過去に戻ろうとする。でもその時代がどんな悲惨な事になっとるのか想像したら、その現実と向き合うのに恐怖したんじゃ…」


マール
「恐怖? ボッシュさんは中世時代から現代に来たタイムトラベラーなんですか?」

ボッシュ
「年代は詳しくは分からんが、多分、中世よりずっと昔だと思う。ジール王国という場所からここに飛ばされたんじゃ

マール
「飛ばされた?

ボッシュ
「お主らか言っておった未来を破壊したラヴォス。そのラヴォスに飛ばされてこの時代にきたんじゃ。

マール
「ラヴォス? ラヴォスは中世より前の時代にもいたの?」

ボッシュ
「ジールでは現代でいうところの魔法、いわゆる超能力を使える民が多くおった。国はその力を使い、ある時、地中深くに眠るラヴォスの存在性に気付いた。その強大なエネルギーに目をつけ、魔学的にエネルギーを抽出しようと試みたんじゃ。

 しかし制御できんかった。エネルギーを取り出そうとする人間を敵視したラヴォスは暴走しはじめた。ラヴォスの膨大なエネルギーは時空を歪ませ、タイムゲートを生み出した。ワシはそのゲートに飲み込まれ、気付いたら今の時代に来ておったが、ワシ以外の人々はどうなったのか…。

この時代でジールの民を懸命に探したが…

お主らが、時を超えられるのであればジールの人々を見つけたら教えてくれぬか。もし、ジールへ行ける様であればワシもその時代へ連れていっておくれ。」

マールは頷いたあと思い出した様に言った。

マール
「実は私達、時の最果てという場所で、魔法を使えるスペッキオという生き物に出会ったの。

ボッシュ
「スペッキオ? 見てみないと、わからぬが…」

マールはボッシュを連れ、千年祭のゲートから消えた。


マールは時の最果てにボッシュを連れていった。
ボッシュはゲートを抜けると何かを感じ扉の先へと走った。
時の番人の元へ走った。

ボッシュ
「お前さん、もしかして、ハッシュか?」

時の最果ての番人
「だれじゃお主は? 確かにワシの名はハッシュじゃが…

ボッシュ
「弟のボッシュじゃよ。ほら、忘れたのかこの顔を!

ハッシュ
「はて? ボッシュ? 聞き覚えがある様な、無いような…

ボッシュ
「ハッシュ! ジールで何かあったんじゃ! ラヴォスが暴走した後、国のはどうなったんじゃ?

ハッシュ
「ジール? ラヴォス? なんじゃそれは?

ボッシュ
「お主、まさか何も覚えとらんのか?」

ハッシュ
「ワシは時の番人のハッシュ、ここで時を彷徨う旅人を迎える者…

 他に用がないのなら、ワシは寝るぞ…」


ボッシュは記憶の無いハッシュに語りかけたあとクロノ達に言った。

ハッシュはジール王国を支えた時魔学の賢者であり、恐らくボッシュの様にラヴォスが生み出したタイムゲートに飲み込まれたのだろうと。

ボッシュは現代に飛ばされ運良く助かったものの、恐らくハッシュはそうではなかった。

ハッシュには出口がなかった。どこの時代へ行けず、時の狭間を永遠と彷徨った。

死を悟ったハッシュは、この時の狭間にせめて意識だけでも残そうと思った。
タイムゲートに飲み込まれた人々がハッシュの様に時の狭間で行方不明にならない様、案内役となる為、時の番人となった。

ボッシュはこの空間そのものからハッシュの魔力を感じるという。
この世界を作るために魔力を使い果たしてしまい、ハッシュとしての記憶を残す力までは無かったのかもしれない。ボッシュはそう推論を述べた。

マール「中世時代の魔王がラヴォスを召喚しようとしているらしいの。それって放っておいても大丈夫なの?」

ボッシュ
「恐らくだが、ラヴォスの召喚というのは、地中深くに眠るラヴォスを目覚めさせる行為の事だと思うが、現代が今無事である事を考慮するなら、ラヴォスは目覚める事はなく、失敗に終わるのやもしれん。


マール
「ラヴォスはどうやったら倒せるの?

ボッシュ
「ラヴォスは人知を超えた存在じゃ。倒そう等という事は考えん方が良かろう

マール
「1999年の破滅を受けれいるしかないの?」

ボッシュ
「それが人間の定めかもしれんのう。ラヴォスは遥か昔より、地中に存在していた生物。我らよりも地球に住む先輩かもしれん。ラヴォスにとって人間の方が後から来たよそ者なら、我らはラヴォスと共に共存していくしか無いのかもしれぬ…」

マール
「…」

ボッシュ
「ところでグランドリオンの件、修復したいのならワシが手を貸すぞい。元々ワシが作った剣じゃし、ハッシュに会わせてくれた礼もあるし。

じゃが、作るのに特殊な石が必要なんじゃ。ドリストーンといって現代ではもう手に入らないものなんじゃが、お前さん達なら、過去に行って取って来れるんじゃなかろうかの。」

マール
「うん、分かった。皆にもそう伝えるね。


マール
「ボッシュも魔法が使えたりするの?

ボッシュ
「ほうじのぉ。ワシは修復関係の魔法が得意じゃの。機械から人間まで傷付いたり錆ついたものなら何でも直せる

マール
「人間も!? まさかグランドリオンも魔法で直すの?

マール
「あそこまでポッキリ折れてしまうと流石に魔術だけでは無理だがのう。必要な鉱石と錬成が必要になるのう。人間の場合は肉体の欠損具合にもよるが現代医学よりかは上手に治せるぞ

マール
「頼もしいわね…私達、中世でガルディアに協力してるのだけど、ボッシュにも来てくれないかしら

ボッシュ
「それは構わんが剣の修復は良いのかの?

マール
「グランドリオンはそんなに凄いものなの?

ボッシュ
「正直ワシにもわからん。お前さん達が呼んどるそれは元々は聖剣などではないし違う姿をしとった。元々は赤色の短剣で魔族と戦う為ではなくラヴォスからエネルギーを吸い取る魔神機を壊す目的で作ったんじゃが、どういう訳か、魔神機を壊した際に今のグランドリオンの姿になったのじゃ。

恐らく魔神機から溢れ出したラヴォスエネルギーを浴びて剣の性質か変化したと思われるが、ワシはその後直ぐ、暴走したラヴォスにより現代に飛ばされてしまったからのう。

魔神機を破壊するつもりで作った剣が、後の世では魔族に効き目のある聖剣として語られているのは全くの想定外じゃ」

マール
「ふーん、魔族ってボッシュのいた時代からいたの?」

ボッシュ
「いいや、お前さん達のいうような魔族はおらんかったのう。ただ知的水準の低い魔力を持った動物はおった。ワシのいた時代は人間を含めて生物の多くが何かしらの魔力を持っとったから、きっとそれが進化したのが中世時代の魔族なのかもしれんな…」

ボッシュは考えるように語りだした。

「…その魔族に効く剣というからには何らかの性質があるのじゃろうか…」

「剣には魔神機の性質を消す為の術が付与してある。つまり魔神機はラヴォスエネルギーを吸い取る力があって、その吸い取る力を消す為の力が剣にはある。その力が魔族に効き目があるということは…

 魔族は恐らくラヴォスからエネルギーを吸い取って自身の力としておるのかもしれん。
その力を断ち切る事がグランドリオンにはできるのかもしれんな…」


ボッシュはグランドリオンが魔族に効く理由について話した後、マールとクロノの共に中世時代のガルディアに向かった。


マール
「ところで治すっていうのは、もしかして呪いなんかも治せるの? 実は魔王の呪いでカエル姿に変えられた人がいるのだけど、それを元に戻すことはできる?」

ボッシュ
「カエルの姿とはそれはまた興味深いの…
 見てみない分からぬが、たぶん、可能じゃよ。」

マール
「ほんと!?」

ボッシュ
「ただのう、何年もカエルだったのなら、人間に戻ったとしても人間としての体の使い方を忘れておる可能性が高い。リハビリが大変じゃろうと思う」

マール
「リハビリ…

ボッシュ
「まあ、リハビリもワシがサポートすればなんとかなるじゃろうて…」

〜ガルディア工房〜

ルッカ
「グランドドリオンを修復する為の材料、ドリストーンね…正直、聖剣の話は非科学的だから期待してなかったけど、ボッシュの話を聞くと、もしかしたら戦力になるかもしれないわね…

「こっちの仕事もあらかた終わったし、私も少し協力するわ」


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■8話 原始時代


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そう言ってルッカが見せたのは火炎放射器だった。

「戦場に大量の燃料を運ぶ手間はあるけど、その手間に見合うだけの効果はあると思うわ。」

マール
「ルッカすごーい!」

ルッカ
「そんな事ないわよ。作るのは案外簡単よ。でも一番大変だったのは燃料をどうやって確保するかだったわ。原油の採掘はした事なかったし、ましてや精製の知識なんてない。だから兵士の人たちに未来に行ってもらってキンを売りつけて、そのおカネで燃料を調達したの。

マール
「わー!ルッカって天才ー

ルッカ
「この2週間で軍部総出で火炎放射器を1000丁を作ったわ。用意した燃料は8ガロン。費用は5000万円というところ」


大臣
「魔王軍と戦いで疲弊して財政はそれが限界だったのです。


マール
(それだけあったら、未来の武器商人から購入した方が早そうに思うけど…)


ルッカ
「オーホホホ! 私って天才ー!!


マール
「でもガイコツに火って効くのかな?

ルッカ
「そう思って怪音波装置を作ったわ。これで聴覚を混乱させてその隙にぶちのめす!

マール
「ルッカ…ガイコツには耳が無いような…


ルッカ
「そうよ! 私も最初そう思って作るのやめようかと思ったのだけど、でも、ガイコツを操るのはビネガー将軍よ! ビネガーに怪音波と火が効くのなら勝ったも同然でしょ!」

マール
「ルッカ、やっぱり君は天才だよー!


クロノ達は相談の結果、ガルディアにボッシュを残し、火炎放射器を持って時の最果てから原始時代へと飛んだ。過去に行けばドリストーンが見つかると想定して。

ロボ
「私が先に行きます。私がゲートをくぐったら順番に来てください。」

マール
「どうして?」


ロボ
「実はゲートが崖際にあるんです。出た瞬間から落ちてしまいます。私が皆さんを受け止めます。

ルッカ
「帰りはちゃんと帰れるのかしら?

ロボ
「崖から飛び降りる様にゲートに入る事になりますが、帰るのに問題はありません。」


原始時代編


クロノ達は崖下へと着地した。
「シャー!」
クロノ達を凝視している生き物が威嚇するようにこちらを見ていた。


ロボ
「未来の化石データベースで恐竜人の項目に該当します。時代は原始、群れを成して狩りをしていたといわれます」

恐竜人は20人程いてクロノ達に今にも飛び掛かろうとしている。鋭い爪に鋭いキバ。
ヨダレを垂れ流している。

「早速火炎放射の出番よ!」

しかし、いきなりの事で燃料の準備がまだできててない。

クロノ達は武器を持ち戦った。

恐竜人「人」というだけあって、知能がそれなりに高い。
武器を持っているクロノ達には敵わないことを知ると逃げ出していった。

恐竜人達が去ると原始人の女がやってきた。

「うほ、うほうほうほほう。ほうお
(お、おまえ等なかなかやるじゃないか。気に入ったぞ)

「あう、あうらう、あうあうあうら、ほうほう
(しかも変わったニオイがする。恐竜人とも全然違うし、私ともちがう)

「はう、らうはあはうはうはあ、はうらあ
(お前たち面白そうなかっこ、皆にも紹介したいから村においでよ!)

「うっほわ!(盛大に歓迎するよ!)


ロボ
「なにやらついて来いって言ってますね。」


マール
「なんか面白そうだから、ついてってみよう。

クロノ達はエイラの後を追った。

エイラは族長の家を訪ねて、クロノ達を紹介した。
クロノ達はエイラが何を話しているか分からないが、笑顔だったので歓迎されているムードを感じた。

エイラはクロノ達を村に案内した。
広場にはヤグラがあり、キャンプファイヤーの様な祭りをしようとしていたのが、伺えた。
肉や魚、木の実やフルーツ等もが盛られて、酒のようなもの。
エイラはクロノ達を指し、木の台を指した。椅子に座れという、身振り手振りの合図だ。

クロノ達が座ると、音楽が始まった。ヤシの実等で作った太鼓や、歌、踊りで歓迎されてる。

エイラはクロノ達の周りを踊ったあと、大きな器を持ってきた。
クロノの前にひとつと、エイラの前にひとつ。
樹齢1000以上はあるかもしれない大きな木をくりぬいて作った器であり、この原始時代なら作るのは大変だろう器だった。

酒を貯めている入れ物はヤシの実を器だろう。それがいくつもクロノ達の前に列べられ、注がれ始めた。


エイラは飲め飲めと言わんばかりに指図する。

クロノは酒なんて飲んだことない。

一口飲むと甘いジュースの味がした。いろんなフルーツを発酵させて作ったのか、複雑な味がした。
美味しいから飲み干すと、また注がれた。
エイラを見るとクロノが飲んだ量に合わせて、飲んでいる。
エイラがクロノより1杯多く飲むと、クロノに飲み干せの指図をおくっている。

ルッカ
「勝負を挑まれてるわね。」

クロノは首を横に降った。

ルッカはエイラに絵を見せた。
「ところで私達、こういう石を探しているの? 知らない?」

エイラ
「なんだ? この赤い石のことか?」

エイラはテーブルを指した。
赤い石、ドリストーンはインテリアの様に飾られていた。

エイラ
「あかい石、珍しい石!

ルッカ
「私達、その石が欲しいの。どうやったら手に入る?


エイラ
「なんだ? もしかして、この赤い石が欲しいのか?

ルッカ
「そうそう!

エイラ
「ならエイラとの勝負に勝ったらやる!


赤い鉱石、ドリストーンをかけての酒の飲み勝負の空気、気付いたとき、クロノは酒飲み競争に巻き込まれていた。


夜が明けたとき、クロノは二日酔いで頭がグルグルしていた。エイラは元気そうだった。

「クロ!目覚めたか! 昨日の勝負は殆ど互角だったぞ。やっぱりエイラが見込んた男だ。エイラ、負けたつもりないけど、石はやる。強いオトコすき!」


ルッカも目覚めていたが、様子がおかしかった。

ルッカ
「ないの。私達の持ち物がないの!リュックごと無くなっているの! 火炎放射器までなくなってる。一応ゲートキーは皆に分散して持たせた分は大丈夫だろうけど、リュックの中にはピストルが入っている。知らないで使われたら大変よ

マール
「盗まれた?」

エイラ
「何かとられたのか? でも村人そんなことしない。」

エイラの元に村人が駆け寄る

「え? 夜中にキーノがクロノ達の寝床でうろうろしてた? 
 そんなばかな!

 エイラ、キーノ探してくる!」


クロノ達はエイラの後を追った。

ジャングルの中でエイラはキーノと会話していた。 

「キーノ、一体何かあった。」


キーノは恐竜人がクロノ達から盗みを働いているのを目撃した。後をつけて恐竜人のアジトを見つけようと思ったキーノだったが、いざそれをエイラに報告したらエイラはアジトに乗り込み危険を犯すと思い、教える事を躊躇っていた。

エイラはキーノを殴った。
「恐竜人、村に侵入した。とても危険。キーノ、危険知らせるべきだった。恐竜人のアジト案内しろ!」

キーノが答えに渋るとエイラは察した。

「キーノ、恐竜人、この奥なんだな!」
キーノが何も答えないのを見ると
エイラは一人で森の奥に入っていった。


クロノ達も後を追いかけた。


ルッカ
「いい、火炎放射器はないけど、私達は2週間かけて魔法の練習をした。まだ完璧じゃないけど、全く使えない訳ではないわ。火も雷も冷気も、相手を怯ませる程度はもうできるはず、勝てなくとも、いざとなったら逃げる隙くらいは作れるはずよ。」

ロボを先頭にクロノ達は前進した。


恐竜人は竪穴式の洞穴を住処としていた。

入り口に見張りの兵隊を配置している様だったが既に倒れている。エイラが一人で倒したのだろう。

穴の中には穴が沢山あり、クロノ達はエイラが倒した恐竜人達の後を追いかける様に進んでいく
恐竜人達が50体は倒れている。

マール 
「どうやって倒したんだろうね? まさか拳で?

ルッカ
「原始人ってもしかして、ロボくらいタフなのかしら

恐竜人達の奇声を奥から聞こえてくる。

ルッカ
「近わね、急ぎましょう」

クロノ達は恐竜人達の背後についた。
エイラを追いかける様に恐竜人が背を向けている状況。

その恐竜人達があっという間に倒れていく。エイラは格闘技の有段者の様にケリとパンチ、投げで華麗に舞う。

エイラは100体程の恐竜人を倒すと、更に次の部屋へと進んだ。
クロノ達も急いで追いかけた。

エイラが穴を降りるのに続き、クロノ達も降りようとすると、その先には、恐竜人ではなく、ティラノサウルスが待ち伏せていた。

エイラはティラノサウルスの存在に気付かずに穴に降りた。その部屋は逃げ道はなく、侵入者を罠にかける為の恐竜人独特の仕掛けだった。

エイラはティラノサウルスに明らかに苦戦していた。 

ルッカ
「皆、魔法で掩護するのよ。」

クロノはサンダーを唱えた。
ティラノサウルスに電流が走り、動きが一瞬止まる。続けてマールがアイスを唱え、ティラノサウルスに霜が降りた。
「エイラ!」
ルッカの声に反応し見上げたエイラ。
ティラノサウルスが怯んでいる隙に、エイラはティラサウルスの背に飛び乗ってジャンプした。クロノが腕と一緒に、刀の鞘を穴の下に伸ばした。クロノ達は鞘に捕まったエイラを引っぱり上げた。


エイラ
「クロたすかった。エイラ、死ぬかと思った。

ルッカ
「エイラ、一人で行っちゃだめ。盗まれたのは、エイラのせいじゃない。


エイラ
「エイラ、恐竜人が憎い。村人おそう、いや


ルッカ
「待って一人ではダメだってば 
 
ルッカはエイラの手をとり、共に進む様にと指図した。

クロノ達は慎重に先に進んだ。恐竜人がどこからともなく穴から湧いてくるが、チカラの差を感じているのか、襲ってこない。

クロノ達は穴を何度か降りて広まった部屋に出た。
石を削って作られた大きな椅子の前に、ひときわ目立つ服を着た恐竜人が立っていた。
そばにクロノ達から盗んだリュックがあり、ピストルを持っていた。

エイラ
「アザーラ、なぜ村を襲う!なぜ人間を襲う!


アザーラ
「お前達はこの大地に後から住み始めた。元々、このジャングルも含めお前達の住処も我々のものだ。余所者は排除されて当然だ」

エイラ
「アザーラ、私達にはこの大地で生きてはいけないのか。

アザーラ
「下等な猿は大地にはいらない。」


エイラ
「話し合うダメなのか? アザーラ、唯一、人間の言葉わかる。なぜ、そうしない

アザーラ
「人間の祖先は猿、我々の先祖は恐竜、世界の覇者は恐竜なのだ。ひ弱な猿がなぜ覇者である恐竜に服従しないのか。


エイラ
「…つまり、強い物なら従うという意味か

アザーラ
「大地のおきて、強い物が絶対!

エイラ
「なら今日こそ決着をつけよう」

アザーラは側にいたティラノサウルスの首輪を外して、奥の穴から逃げていった。

エイラ
「な、アザーラのやつ、卑怯…」

フロアにいる恐竜人数十人はパニックしていた。
この巣穴は構造上、出口はティラノサウルスの奥にしかない、恐竜人にとっても戦わずして、逃げきる事はできない。

「クロ! エイラが注意をひいてる間に逃げろ。」

エイラがティラノサウルスに飛びかかると、恐竜人達が、その隙に奥の穴へと向かった。
しかし、アザーラにより、穴は石で塞がれていた。恐竜人達も逃げ道を失った。


マール
「どういうこと?」

ルッカ
「恐竜人の王は、民を見捨てたということでしょうね…」

ティラノサウルスは興奮して暴れ回っている。長年鎖に縛られ、王に虐待されていたのか、身体中にも多くの傷がある。

マール
「ルッカ、あれもしかして、

ティラノサウルスの脇にルッカのリュックが落ちていた。中身は散乱している。火炎放射器も傍らにある。

火炎放射器が手元にあればなんとなるかもしれない。

「ロボ! 何とかしてあれとってこれない?」

ロボの足はそう早くない。ティラノサウルスのしっぽに、ふっ飛ばされてしまう。

エイラに火炎放射器を取って貰う様に伝えることはできない。エイラはティラノを惹きつけるので精一杯で、それどころじゃないし、言葉が伝わらない。


燃料をティラノサウルス直接かけてにかけて火をつけるか? そんな芸当は不可能だ。洞窟では煙の逃げ場がない。
考えている内に
ティラノサウルスのターゲットはエイラから恐竜人に移動した。
恐竜人に虐待された憎しみから、物凄い勢いで襲いかかった。

ロボがその隙に火炎放射器とリュックを取りルッカに渡した。
燃料を入れ、セットする。


「なんで!」
ティラノサウルスは火を怖がったものの、一時的だった。日頃、火を押し付けられる虐待をされていたティラノサウルスは火に興奮して、突進してきた。

恐竜人とクロノ達は逃げ惑う。 

「エイラ!」
キーノの叫びが上から聞こえた。

キーノが縄を降ろしている。それに捕まれば上から出られる。

しかし、縄に捕まるのは恐竜人で、それに飛びつく様に、ティラノサウルスが突っ込んでくる。
縄は引っ張られ落ちてしまう。

クロノは縄の先に刀鞘を括りつけ、キーノに投げた。
キーノはキャッチするものの、一人ではクロノ達の体重を支えきれない

恐竜人がキーノの身体を後ろから掴んで支えた。それを見た恐竜人達次々と後ろにから支えた。

ロボは火炎放射器を持って囮となって走った。
その隙に恐竜人達が次々に救助される。

ルッカはリュックから銃を取り出そうとしたがピストルも弾もなかった。あたりを見回してもない。アザーラが持っていった。怪音波装置も無くなっている。


エイラは歌った。
ティラノサウルスに歌が通用するなて誰しも思わなかったが、次第に歌に導かれる様にティラノサウルスは大人しくなった。

歌の文化が恐竜人には無かったのか、恐竜人も歌に意識を向けていた。

エイラは歌いながら、ティラノサウルスの背に乗って頭を撫でた。
傷跡をなぞるように撫でた。

足を崩してティラノサウルスは腹を地面につけた。
エイラは飛び降りると首の下を撫でた。
首輪が食い込んでいた跡を入念に撫で回した。

「クロ! エイラしばらくここにいてこいつの面倒を観ようと思う。キーノと一緒に先に村に帰ってててくれ」


クロノ達は、穴から脱出した。恐竜人達はクロノ達を威嚇することなく、無事に地上へと出られた。

マール
「人間と恐竜人、仲良くなれたらいいよね。

ルッカ
「そうね…、まさか恐竜を手懐けちゃうとは思わなかったけど、あれ見たら流石の恐竜人も人間に一目置くんじゃないかしろ

マール
「それにしても、あの洞穴にどうやって巨大な恐竜を入れたんだろ?

ルッカ
「きっと子供の頃とか卵の時点で連れて来られたのね。穴の中で外の光を一度も見ることなく、大人に成長したんだと思う…

マール
「エイラ、これから、どうするんだろ? ずっとあそこに恐竜と一緒にいるのかな?

ルッカ
「どうだろ、流石にそれはないと思うけど…

キーノ
「あの恐竜、そう長くない。多分もうすぐ…

クロノ達はこの時代の言葉が理解できない。キーノが何を言ったのか、クロノ達は想像することしかできなかった。

クロノ達はエイラの村イオカ村に戻った後、キーノにしばらくエイラは帰ってこないと言われた。
キーノいわく、エイラは恐竜と仲良くなる為に恐竜と同じ生活をする。同じ物をたべ、同じ所で寝起きし、一緒に狩りをする。
狩りができない恐竜は、エイラの生活に恐竜が合わせる事になる。

キーノ
「エイラは今頃、恐竜に酒を飲ませているだろう。流石に昨日の今日で飲み過ぎて、酔いつぶれるだろうから、今日はもう帰ってこないと思う。」

クロノ達はキーノの悲しそうな顔を見ていた。
マールはファイトのポーズをしたりして、身振り手振りでなくさめようとした。

ロボ
「言語パターンを収集できました。この時代の住人の言語を翻訳できるようになります。この時代での会話は全て録音されていますが、翻訳再生出来ます」


ルッカ
「まあ、ロボの意外な性能発見ね、」

ロボ
「こちらの言葉も現住人に合わせて翻訳して伝える事ができます。」

クロノ達は翻訳再生した。エイラは無事だろうということを確認し、キーノには帰る事を伝えた。

キーノ
「ところでお前達一体どこの村に住んでいるんだ?

マール「ずーと、遠いところかな…


キーノ「そうか…
 エイラお前達いると喜ぶから、また遊びにこい。


クロノ達はキーノに別れを告げると時の最果てに戻った。

ボッシュはドリストーンを受け取ると、早速、グランドリオンの修理に取り掛かった。
完成には1週間程掛かるそうで、それまでに
魔王軍が攻めて来ないのを祈った…

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――――――――――――――――――――――――――――

■9話 凍りつくビネガー

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クロノ達がガルディアに戻ると既に戦争が始まっていた。
クロノ達が原始時代へ行っている間に、魔王軍が攻めてきていた。
今回もビネガーはガイコツ兵士を投入して進行していたが、橋の手前で氷ツゲになっていた。

マール
「一体何か起きたの?」

ガルディア兵の報告によると、怪音波でビネガーに妨害をかけ、ガイコツ兵の操りを不能にし、その隙に火炎放射をしたところ、ビネガーは自らに氷ツゲになる魔法をかけカチカチに固まってしまったそう。
何もしてこず、かれこれ24時間以上カチコチになったままだった。
氷の密度も高く、重く、どかすこももできないで、困ってるとのこと。

ルッカ
「大砲は撃ってみたの?」

大砲を撃ち込んでも傷一つ入らないそうで、現在、兵士達が24時間交代で見張りをたてている状況らしい。

ルッカ
「きっと、この氷のバリアを解除できなくなったのね。解除したとたん、火炎放射器が火をふくもの。まあ、でもいつかは魔力がつきてバリアが解けるんじゃない? そうなったら丸焦げにしてやりましょう。」


ビネガー
(しまった。まさか、人間があんな魔具を持っていたなんて…
魔王様に使いは出してあるから報告は問題ないだろう。でも、魔王様のことだから、きっと助けの軍隊までは出さないだろうな…
先走って手柄欲しさに進軍するじゃあなかったなぁ…)

ビネガーの氷はそれから10日経ってもそこにあり続けた。

ガルディアは反撃の準備を整え、砂漠の東にある魔王城へと進行を始めた。

〜10日後〜


クロノ達は修復したグランドリオンをカエルに渡した。

「こ…、これはまさしくグランドリオン。もう二度修復できないと思っていた…」

「これなら勝てる! きっと魔王を打ち取れる!

「有難うボッシュ! そなたのお陰だ!」

ボッシュ
「気にするでない。それより、そなたのカエル姿…」

ボッシュはカエルの身体をあちこちさわった。

ボッシュ
「これはただカエルの姿にされた訳ではないのう。細胞レベルでカエルに変えられておる。こんな高等技術の魔法を使える魔族がおるとは…

カエル
「やはり元の姿には戻れないのか…

ボッシュ
「いや、戻す事は可能じゃよ。じゃが、お前さん。今、元の姿に戻るはもったいないぞ。

カエル
「どういうことだ?

ボッシュ
「お主はカエルとしての俊敏性を得ておる。人間をはるかに超えたスピードで動くことができるはずじゃ。お主も気付いておるだろうが…

カエル
「確かに、人一倍、スピードに自信はあったが…

ボッシュ
「じゃが人間の身でその身体に慣れるのは相当大変じゃったじゃろう。吐き気とか頭痛とか目眩とか…」

カエル
「ああ、カエルになった直後は半年くらいまともに動けなかった…

ボッシュ
「お主をカエル姿にしたのは今や魔族軍にとっては不利になっておる。魔王がなぜそのようなミスを犯したのが判らぬが、戦争を終えるまではその姿でいる方が得策じゃろうて。」

クロノ達は進行しているガルディア軍に合流した。

ガルディア軍は魔王城へと続く洞窟、魔岩窟の前で止まっていた。
魔岩窟の前にどこから持ってきたのか巨大な大岩が、入り口を閉ざしていた。
大砲を打ち付けてもびくともしない大岩である。

「グランドリオン! 私に力をみせてくれ!」
カエルがグランドリオンを振るうと大岩を一刀両断した。

ルッカ
「これなら氷漬けのビネガーも一刀両断できそうね。」

魔王城への道が開かれ、ガルディア軍が突入した。
瞬間、兵士達が自らを攻撃し始めた。仲間同士で斬り合いを始めた。

カエル
「人の心を操作する能力。将軍マヨネーの仕業だ。
 心を操るといっても完璧な能力ではない。
 一度に操れる数には限度があるし、術に抵抗し抗う事も可能である。」

マヨネー
「いや~ん、カエルちゃんったら、私のこと
ご存知なのね〜うふ〜ん」


カエル
「マヨネーはああみえて男だ。油断するなよ。)

クロノ達は既に操られていた。抵抗するので精一杯で動けなかった。

カエルはマヨネーの術のターゲットにならない様に早いスピードで動き回っている。


マヨネー
「どんなに早く動き回っても、近付かないと何もできやしないわ。ワタシはここから誰一人通さない。」

カエルは
「だが魔力が、続かないだろう。1000人もの兵士の心、つなぎ留めておくなど何時までもできないはず」

「残念ね〜カエルちゃん!」

カエルの動きが止まり、勢い良く倒れた。

カエルの心もマヨネーに取られた。


「呪印とか魔法陣って知らないの? あ、一応、そんななりでも人間だもんね…しかたないよね」

マヨネーは高らかに笑いながら講義を始めた。


「私達みたいな高位の魔族は、魔法陣や呪印を描いて、足りない魔力を補給するのよね。まあ難点なのが描いた図形から出たらその効力を失うことだけど。
だからカエルちゃんみたいに、いくら早く動きまわって私の狙いから逃れようとしても、私はそれを上回る魔力で狙いを補強して、捕まえちゃうの。
すごいでしょう、魔族って!
うふふふふw」  

マヨネーが喋り終わると奥から魔王軍の兵たちが現れた。

「さあ、今がチャンスよ! 全軍一気に人間を叩け!!」

その瞬間マヨネーが吹っ飛んだ。

ロボは機械。マヨネーの術を全く受付けなかった。
ロボパンチが決まり、マヨネーは魔法陣の外に出た。瞬間、操られていたガルディア軍が自由になった。
マヨネーは一体何が起きたか分からなかった。
「え? 何? 何か起こったの?」
「私魔法陣から出ちゃってる!?」
「これじゃあ、無理ーー!

マヨネーは乙女の叫び声をあげながら、城の奥へと逃げていった。
「まあ、いいわ。城内にも魔法陣は一杯書いてあるし、そこで迎え撃つとしましょー」


ガルディア軍は突入した。
クロノとカエル達その後に続いた。

城内は兵士と魔王軍で入り乱れていた。
怪音波と火炎放射器のおかけで人間と魔族の力差は埋まり、ガルディア側に有利に働いていた。
順調に城を制圧していたガルディア。
しかし、将軍ソイソーは兵士1000人をあっという間に戦闘不能な状態にした。
人間を遥かに超えたスピードで繰り出すパンチに兵士達は一撃でノックアウトした。

そのパンチをカエルが受けた。

ソイソー
「ほう、お主は魔族か? どうして人間側についている。

カエル
「私はこう見えて人間だ。

ソイソー
「ほう、では魔王様がカエルにしたというのはおぬしのことか。

カエル
「そのようだ。お陰で手に入れた力もある

カエルはグランドリオンをソイソーに向けた。

ソイソー
「聖剣グランドリオン…。面白い! 久々に剣を持つ気になれそうぞ」

ソイソーは腰から剣を抜くと
カエルとソイソーが目にも止まらない速さで動く

勝負はまたたく間に終わった。ソイソーが崩れ落ちた。

カエルは先に進んだ。

弱ってるがトドメがさされてないソイソー。まだ戦える様子で、クロノ達の前に立ち塞がった。

ルッカ
「どうする? 火炎放射で焼いとく?」  

ルッカがスイッチを入れるも、ソイソーはあっさり避けた。

ソイソーはクロノに一瞬で近寄り刀を見ると
「ほう、うぬも剣士か…ならば」

ソイソーのパンチがクロノに飛んだ。
クロノは刀で受け止めた。
カエルとの戦いでソイソーが消耗していたから受け止められた様なものだった。
素手と刀の勝負、有利なのは刀のはずだが、ソイソーの素手は圧倒的に上回っている。

ロボが攻撃するも当たらず、ルッカとマールが魔法を使うもダメージが入らない。

しかしマールはアイスを唱え続けた。
魔族は寒さに強いというが、体温を下げ続ければ、動きはある程度鈍る。
熱ではなく冷、ソイソーの体温奪う一点に集中して魔法を浴びせた。

ルッカ
「ロボは先に向かって!」

ソイソーの動きが鈍ったのを確認したルッカはロボを先に行かせた。
マヨネーがカエルの動きを奪う危険性を考慮してロボを先行させたのだ。

クロノ達は皆でアイスを唱え、ソイソーの動きを人間並みに鈍らせたところで、火炎放射を浴びせた。

ソイソーのタフネスは高かった。。火炎放射に抗いながら、剣を手に取ってクロノに攻撃を仕掛ける。

人間並みに動きを遅くできても体力的に差が有りすぎるなら、勝てそうにない。

素直にカエルに元に向かい掩護をして貰う方が安全だと感じたクロノ達はソイソーを置いて先へ進んだ。


カエルがまたマヨネーと対峙し、またもや操られている所に出くわしたロボは、もう一度、ロボパンチをマヨネーを食らわした。

魔法陣からマヨネーは放り出された。

「何? あの鉄の生き物は? もしかして操れないの? こんな経験、魔王様以外、はじめて♥」

マヨネーはロボを追いかけた。

「まって〜♥
 試させて〜
 なんで、逃げるの〜♪」

ロボはマヨネーから身の危険を感じてて逃げた。
二人は城内で鬼ごっこを始めた。

カエルは先へと進み魔王と対峙していた。


魔王
「ほう、あのときのカエルが、何をしにきた?」
 
カエル
「サイラスの仇をとりに、あのときのグランドリオンで!

魔王
「そうか、、そんなに死に急ぎたいならちょうどいい。ラヴォスへの生け贄になって貰おうではないか!」

 

瞬間、カエルは飛び交った。
突如魔王の前に背丈はあろう鎌が現れカエルの剣を弾いた。


魔王は右手に書物を持ち左手で印を結びながらラヴォスの召喚呪文を唱えていた。

魔王は、その場を動くこともなく、鎌がカエルの攻撃と戦っている。
 
鎌とカエル、実力は拮抗している用だったが、カエルの攻撃が押し始めた。

 

魔王
「グランドリオンか…敵から魔のチカラを削っていくといういうがが…しかし、その程度のものか…

 

カエルが強烈な一撃を加え、鎌が弾き飛ぶ。

魔王を守っていた盾でもあった鎌が手元を離れ、すかさず魔王を斬り込んだ。


魔王はカエルの斬撃をよけながら魔道書を読みつつ呪文を唱えている。

カエルの攻撃はカスれはすれど一向に一撃が当たらたない。

その隙に魔王の釜がまた盾として働き、魔王を守っていた。


数分戦っていると、クロノ、ルッカ、マールが合流した。 

 
ルッカ
「あれ…なんか、私達場違い?もしかして空気読めてない?

魔王
(人間が3人? しかも、なぜ王妃のリーネがここに?)


ルッカ
「これが魔王? ねえ、あんたラヴォスなんか召喚して何がしたいの? あんなもの世界をぶっ壊す厄災だよ。

 

魔王
「ほう、ラヴォスを知っているのか? 教えてくれ、ラヴォスの何を知っている?


ルッカ
「私達は未来から来た。今から何百年もの先の世界から。私達は歴史で知っている。貴方はラヴォスを目覚めさせる事に失敗する。

魔王
「未来だと? だとしたら面白い。その方法を教えて貰おうか。
 

魔王は書物を閉じ、準備が終わった事を告げた。

瞬間、地面に巨大な呪印が広がり、クロノ達の体の自由が奪われた。

 

自由の奪われ具合は地面程強く、上半身より下半身の方がより動かせなかった。

 

カエル

「身体が自由に動かんぞ…

 

ルッカ
「なにコレれチカラが出ない…」


クロノも同様で、跪く様なかっこうで、うずくまる。


ルッカ
「もう駄目…

ルッカは地面に這いつくばってしまった。

 

カエルは必死で踏ん張っているが、今にもくずれそう。

 

ルッカは喋ることもままならそうだったが、必死で伝えた。地面に巨大な魔方陣が描かれてること。これが私達のチカラを吸い取っている元凶だと。


魔王「今更気付いてももう遅い、おまえ達はラヴォスの生け贄となって貰う」

地面が吸い取ろうとする生命エネルギーにクロノ達は身体が殆ど動かせない。

魔王
「さあ、女、話してみろ。未来から来た話。時を超えるというなら、どうやってこの世界に来た。」

ルッカは動けずに這いつくばっている。
「い、い、いやよ…」

魔王
「そのままそうしていると死ぬぞ。話すならお前の命だけでも助けてやろう。」

ルッカは話さなかった。

魔王は空中を飛びながらルッカに近付き、語りかけた。

「言わないなら今すぐ殺すぞ」

カエルは必死で体を動かそうともがいた。
グランドリオンの力を過信していて油断しすぎていた。修行で強くなったとはいえ、魔王の魔術について無知だったこと。
戦場に不似合いな若者クロノ達を巻き込んでいることを後悔した。


魔王「近付くこともできないのなら、グランドリオンなんぞ、タダの飾りき過ぎんな」

カエル
「否、近付く事がてきぬのであれば、こうするまでよ。」
カエルはベロを伸ばして魔王の腕に絡みついた。

 

カエル
「お前もこっち側に来い。

 

引っ張られる魔王


魔王

「うがぁ

 

カエル

「これで条件は互角だなあ

魔王

「たわけたことを、たかが人間ふぜいが

 

カエル
「ふ、あいにくオレはもう人間じゃないんでな。

魔王
「…そうだったな。すっかり忘れてたぞ。はは、笑える…

 

カエル
「笑っていられるのも今のうちだぞ、オレはハナから死んでも構わん身だが貴様はどうだ?ラヴォスとやらに命を吸い付くされてもオレは貴様を離さんぞ

 
カエルのベロが魔王をぐるぐるまきにした。

 

魔王「甘くみているのは貴様の方だ。王たる私が

負ける道理など、ない。」

 

魔王はエネルギーを集中しはじめた。魔力をカエルの身体に至近距離でぶつけるつもりだ。


 

マール
「あねがい! やめてー!


魔王のエネルギーがカエルを貫こうとしたとき、宙に浮いたクロノの一撃が魔王の顔面に入った

誰もが動けない中にいた筈のクロノだったが、唯一呪印の影響を受けない機械であったロボに身体をぶん回して貰ったのだ。

魔王
「に、人間風情が…お前も含めて粉々にしてやる…

カエル
「ロボ、オレのグランドリオンを使え!」
 
ロボがグランドリオンを拾ったが手が大きすぎて上手に握れなかった。、クロノを持ち上げ、クロノにグランドリオンを持たせた。

クロノとロボが再度コンビネーションを取ろうとしたとき、空から剣が落ちてきてクロノを貫いた。

クロノの腹が串刺しにされ、床に這いつくばる


ソイソー
「魔王さま! 助太刀に参りました。

ソイソーはクロノを突き刺したまま離さない。

ロボがソイソーを突き放そうとすると、ロボの頭上から氷となったビネガーが降ってきた。

「かわたなはらかあま(ビネガーは氷漬けで声が聞こえない(訳=これで見動きとれぬまい!)
 

クロノを助ける為にルッカが火を操り、ソイソーを攻撃した。余ったチカラを全て注ぎ込んでいると、、ルッカの頭上からマヨネーが蹴りを浴びせ、倒れたルッカに覆いかぶさった。

マヨネー
「女との間ぐわいも悪くないわねー」

 
魔王「どうしておまえ達がここに」


ソイソー
「ラヴォス召喚のお手伝い。幸栄の極みでござる」

ビネガー

「はひふへほはひふね(氷漬けで聞こえない)
訳=一応、危なくなったら逃げるけどね」

マヨネー
「ラヴォスちゃん、どんなイケメンさんなのか気になっちゃって」

 
 
魔王
「ここに居たら、おまえ達の命もラヴォスにとられるかもわからんぞ!

 

ソイソー
「魔王様が命がけで成そうとする儀式、臣下が命をかけるのはあたり前でござる!」

 

ビネガー

「「はひふへほはひふね(氷漬けで聞こえない)訳=魔族繁栄こそ我らの本懐!(ホントはただ偉くなりたーい!)」

 

マヨネー
(実は魔王様がタイプなんだけどなぁ…)」


ルッカ
(だめ、全然身体が動かせない。私、しゃべることも、もうできない。これが人間と魔族の力差…)


マール
(まずい…クロノの体力がどんどん落ちてる。このままじゃあ…)


轟音と地響きの波動が下から上につき上げた、


魔族とクロノ達、皆、恐怖で鳥肌がたった。

ラヴォスが地のそこから蠢いている気配が伝わってくる。地震の揺れ幅が増大しながらクロノたちを襲う。

 

ロボ

「これはいけない!ラヴォスエネルギーが増大しています』

 

魔王

「ついに来たかラヴォス! これで私の悲願が…

 

ロボ

「観測データが数値の限界を振り切っています。こののままでは、私達どころか、世界そのものが破壊し尽くされ…

 
ロボ

「いや、このエネルギーはタイムゲート? ゲートが私達を飲み込もうとして…」

 

巨大なゲートは魔王城を丸ごと飲み込む大きさで広がる。魔王城の一階から上は全て飲み込まれた。

-

――――――――――――――――――――――――――――


■10話 原始時代 ラヴォス



ー原始時代ー

ラヴォスゲートに巻き込まれたクロノ達は原始時代のゲートに飛ばされて、崖下に転落した。
巻き込まれたガルディア軍の多くはハッシュの力で中世の山中のゲートに飛ばされた。


クロノ、ルッカ、マール、カエル、ロボが折り重なるように落ちた。

ルッカ
「ヤバイ! クロノが下敷きに!」

マール
「たいへん! 出血がひどい!

マールが止血を始めた。

ルッカ
「私、ボッシュを呼んでくる!」

ボッシュはガルディア軍の治療の為に魔王城の外で待機していた。

カエル
「待て、スピードなら俺の方が早い、オレが行く!」


エイラ
「おい、どうしたんだ皆? おわ! クロたいへんー!」


20分後…


「あ、クロ、目覚めた。」

クロノはあくびをした。

ルッカ
「大変だったんだからね。あんたが刺されてから。ラヴォスゲートで何故かエイラのいる時代に飛ばされるし、あんたの傷塞ぐのにマールは止血に必死で、カエルは中世に残したボッシュをおんぶして山中と砂漠を走ったり、マジあとちょっとであの世行きだったんだから!」


エイラ
「クロ、傷口から出血酷かった。でもこの爺さん、手をかざしたらビックリ! クロの傷口がみるみる塞がった。エイラ不思議、あんなの初めて見た。この爺さんエイラにくれ」

クロノは刺されてからの事をあまり覚えていなかった。皆の下敷きになったあたりからの記憶が無かった。

ボッシュ
「まあ、治ったから良かったとはいえ、あと一歩遅かったからあの世行きじゃったぞ。流石に死なれたらワシにも治せんからの。」


クロノは起き上がり、元気にガッツポーズを見せた。

安堵してるメンバーの前に村人が走って来る。

村人
「エイラ! 大変だ! 恐竜人が北の村に火をつけた!」

エイラ
「ほんとうか! 恐竜人もう許さない!

村人
「それからキーノが! それからアザーラが…」


村人からアザーラの話を聞き、エイラが深刻な顔をした。

マール
「私達がいない間に何があったの? 恐竜人達はおとなしくなったんじゃあ…


エイラ
「キーノ誘拐された。アザーラ、洞穴の恐竜人見捨てたあと、もう1つのアジトにキーノを連れ去った。キーノ返して欲しければエイラ一人で来いと。

ルッカ
「それ絶対に罠に決まってる

エイラ
「でもエイラ、キーノ助けたい。

ルッカ
「アザーラは卑怯な奴よ。エイラが一人で行ってもどうせ約束を守らない。アザーラがキーノに何かをする前に私達も協力してキーノを救出するから!

エイラは頷くと
クロノ達を案内した。

エイラは北の山へ登り、口笛を鳴らした。
沢山のプテラが降りてきてエイラはその一つに乗った。
「さあ、クロたちもはやく!」
クロノ達もそれぞれプテラに乗った。
プテラは上空に飛び立ち、溶岩地帯へ進むと上昇気流に乗り一気に昇った。

天空までそびえる巨大な崖を超えると頂上にアザーラの城が見える。

エイラ
「あの城、大昔に恐竜人が建てたといわれてる」

とても原始時代とは思えない、中世ヨーロッパ宮殿の様なものが標高3000mに建築されている。

ルッカ
「ロボ、酸素濃度はどうなってる?
 この標高では酸素が薄すぎて呼吸がシンドイはずだけど」

ロボ
「酸素濃度は平地の30%少ないです。」

ルッカ
「昔は重力が重いって言われてたからもっと酸素は薄くなるかと思ったけど、森林の多さが幸いしてるのかもね…それでも長居はできないレベルよ。

マール
「30%減って、そんなにきついの?

ルッカ
「体感的は空気が半分くらいになる感覚ね。普通の人は一時間も持たない。走ったりなんかすると、、あっという間に高山病で動けなくなるわ。

マール「アザーラってそんな場所でも、平気なの?、

ルッカ
「わからないわ。ただアザーラ自身の時間がなくて後がないのだとしたら…

マール
「とういう意味?

ルッカ
「元々あの城の酸素濃度は今よりもっと高かったのかもしれない。
たとえば地球の自転速度が今よりももっと早かったら重力が低くなって、その分、酸素が高地にまで届きやすい。この高さも十分快適な生活だったでしょうね。

マール「つまり、昔は住めたけど今はもう住めない場所になっている?

ルッカ
「恐竜人が天井の住処を失って地上に降りてきた。でも、地上は既に人間の住処になっていたから縄張り争いが起き始めた…。

マール
「アザーラは一体何がしたいの? 

ルッカ
「焦っているのかも。恐竜人の住める環境は今よりも上が望めないこと。人間には知恵で敵わず、いずれ人間達に淘汰、亡ぼされてしまうことを…

マール
「でもエイラは共存の道を探してるって、

ルッカ
「頭では理解できても信用できないのでしょうね…。現に恐竜人達の文明社会は一度滅んだ歴史があるみたい。あの城がまさにその象徴で、アザーラ自身があの城と自分を重ねてるのかもしれない。衰退する文明にアザーラ自身も向かっているから怖いのよ。

マール
「でも、それって単なる思い込みじゃあ…

ルッカ
「そうね。でも思い込みで人間は幾度となく戦争を起してきた。。人類史は思い込みで成り立っているのよ。それが恐竜人、アザーラにも当てはまるというだけのこと。

マール
「私達にはどうにもできないの?

ルッカ
「…とうにか、できたらいいわよね…


クロノ達が城に降りる頃にはエイラは先に走って行った。

ルッカ
「いい? 余裕をもって20分以内にここに帰ってくること。これは走ったりする事も考慮しての時間だからね。

マール
「時間オーバーしたら?

ルッカ
「その事は今は考えない。とにかく時間になったらプテラに乗って地上まで降りておくこと


城門を抜けて奥に向かうと骨で作られた檻を見つけた。中にはキーノが閉じ込められている。エイラは檻からキーノを出そうと身体を格子の隙間に入れようとしている。
檻には開閉レバーの様なものがあるが作動しない。
「下がっていろ」
カエルはグランドリオンを構えた。
檻を一刀両断した。

ルッカ
「さあ、用は済んだわ。帰るわよ。」

クロノ達が入り口まで戻ると城門は固く閉ざされ開かない。グランドリオンでも破壊できなかった。

ルッカ
「しまったわね。私達、閉じ込められたわね。

マール
「どうするの?

ルッカ
「…上に行きましょう

マール
「え? 出口から反対方向じゃあ?

ルッカ
「アザーラは用意周到に計画している。出られる通路がないから、この城に誘導したのよ。

マール
「アザーラは私達を閉じ込める事が目的だったの?

ルッカ
「恐らくここで全員が酸欠で死ぬまで待つもりね。

マール
「え? でもそれだとアザーラは?アザーラも死んじゃうんじゃ?

ルッカ
「卑怯者のアザーラよ、きっと自分だけ、とこかに出られる道を確保しているはず。私達はアザーラを捕まて、その出口を吐かせるしかない。」


上階へは4つの階段ががあった。クロノ達は4つの班に別れてアザーラを探しつつ上に向かった。


メンバーは構成は
Aエイラ、キーノ
Bマール、カエル
Cルッカ、クロノ
Dロボ

ルッカ
「いい? アザーラを見つけたら大声で叫んで仲間を呼ぶこと、絶対一人ではだめ。

カエル
「どうしてだ? とっ捕まえりゃいいだろう?

ルッカ
「アザーラにはピストルと弾6発を取られているの。アザーラが実験で2〜3発撃っていたとしても、残り3発はある。

カエル
「ピストルってそんなに危険な武器なのか?

ルッカ
「貴方ならスピードで上手く避けられるかもしれないけど、実物を見たことないわよね。

カエル
「一応、教えといてくれ。

ルッカ
「黒い、こんなカタチで筒状のもの。先端の穴からグランドリオンみたいなヤバイものが目にも止まらぬ速さで飛び出してくると思っていわ。

カエル
「つまり、先端が自分に向かない様にすれば避けられるということだな? グランドリオンならグランドリオンで防げるのか?

ルッカ
「そうね…一応は防げるけど、目では捉えらない程の小さいグランドリオンだと思った方がい。


ルッカ
「あとロボは大丈夫だからピストル持ってるアザーラに突撃してね。

カエル
「なぬ? この鉄の生き物はグランドリオンよりも強いのか?」

エイラ
「ところでこれなんだ?


エイラがレバーを引いたのは、恐竜人が作り出したエレベーターだった。
どういう原理で動いているのか判らないが、エイラはそれに乗り込み上へ向かっていった。


キーノはエイラを追いかける様にエレベーターの上に飛び乗る。二人はクロノ達を置き去りに上階へ向かった 
 
ルッカ
「予定変更! 私とクロノは別々に上階へ向かぃます。」

「それからやっぱり念の為に地下も調べるわ。
今エレベータを調べたら、どうやら地下が100階くらいあることが判明したわ。もしかすると地上までの直通エレベーターがあるのかもしれない。
カエルの足のスピードならなんとかなるわよね。」

ルッカはリュックから無線機を取り出した。

ルッカ
「一応、カエルには無線機を預けておくわ。これで離れていても会話できるから」

クロノ達は4つに別れて上階へ向かった。カエルは地下へと向かった。

キーノとエイラは最上階へ到達した。
エレベーターを降り、隣の塔へ続く渡り廊下を抜けていくとアザーラが拳銃を持ち、エイラ達を迎え入れた。


アザーラ
「ようやく来たか、猿共…。ここがお前達の最後の墓場になるのだ。

エイラ
「エイラ死なない! キーノとクロノ達と一緒に帰る!

アザーラ
「どのみち逃げ場なんてないのだよ。」

エイラ
「…? どのみち逃げ場がない?

アザーラ
「この城がなぜ今でも生きているか分かるか? この城は単なる石でできてない。物なんかじゃないんだ。我ら先祖が生み出した尊い生き物なんだよ。それが死んでしまうんだ。」


エイラが喋ろうとするとキーノが割って入った。

キーノ
「アザーラ、僕を誘拐しておいて殺さなかったのはなぜだ? 僕を殺したとしても、ここに皆を閉じ込める事はできたはずだ。何故なんだアザーラ」

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君はここで何をしている? 人間を疎ましく思うなら、どうして先祖の遺産である場所に人間なんかを連れてきた? ここは尊い場所ではなかったのか?

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君は何を隠しているんだ。人間にも恐竜人にも…

アザーラ
「…私は…

エイラ
「もういい、キーノ。こいつは大地のオキテによってここで死ぬんだ。エイラと戦って死ぬんだ。

アザーラ
「そうだな…私は死ぬ…だかな
 私は一人では死なん!

アザーラの背後にある塔から動く石像のティラノサウルスが現れた。その巨体はゆうに10mはある。
アザーラが手を動かすと
石像ティラノが身をかがめ、アザーラを乗せた。

アザーラが指示を出すと
石像ティラノは雄叫びをし、口から火を吐き、廊下を火の海に変えた。
クロノ達はその雄叫びを聞き、最上階へ向かった。

 

廊下は火の海で、クロノ達はエイラに近づけない。

ルッカはカエルに最上階に向かう様に指示をした。


火の海になりエイラは廊下を戻る事はできない。天井は見えないバリアで覆われていてプテラは助けに来れない。


キーノ
「どうしてこんな事をする! ここは大切な場所ではなかったのか?

アザーラ
「そうだ! 大切な場所だ! 大切な私の場所だ!だから壊すんだ!」


火を吹き続ける。
エイラはキーノを抱え、ジャンプし、ティラノの尻尾に乗り背まで登る。

アザーラはエイラ達に気にもせず、塔を破壊した。渡り廊下の壁も破壊し、
衝撃で屋根が崩れ落ちる。

エイラはアザーラの首根っこを掴んだ。
「アザーラ、キーノの言うおりだ! なぜこんな事をする! 殺したいのはエイラ達じゃないのか!」

アザーラ
「あぁ、殺したいさ。殺したかったさ。だけどもう意味かないんだ。終わるんだ。

エイラ
「わけがわからないぞ」

「もうすぐ…わかるさ」
アザーラはそう言って空を見つめていた。
放心状態でアザーラの目に浮かぶ赤色にエイラもキーノもまだ気づいてなかった。

ロボのセンサーがラヴォスを探知した。

ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。

クロノ達は、上空に小さな赤い光りを発見した。

ロボ
「予測約、直径1km、質量80万トン、時速1万キロ。ラヴォスがここへ落ちてきます。
このあたり、直径10kmが吹き飛ぶ計算です。」

ルッカ
「え!? どういうこと、? ラヴォスって隕石かなにかなの??

ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
ラヴォス衝突まで後40秒しかありません

エイラは口笛を吹いた。ラヴォスの危険を察知していたのか、プテラ達は既にエイラの上空を旋回していた。


プテラ達が着陸し、クロノ達は皆乗りこんだ。


エイラ
「アザーラ! お前もこい!」

キーノ
「エイラ! プテラの様子がおかしい。」

キーノ
「プテラ、危険の合図している。ただ事じゃない危険、迫っている。ここに居たら危ない!」

この場所に危険が迫っている。エイラにとっては尚更アザーラを見捨てる事ができなかった。

人間と会話ができる恐竜人はアザーラしかいない。アザーラが恐竜人を纏めなければ、人間はいつまでも無益な争いをしなければいけない。

アザーラはピストルを取り出し、エイラに向けた。

キーノ
「エイラもうダメ、時間がない!」

プテラは危険を察知し、エイラの指示を聞かずに飛び立った。
アザーラがエイラの視界から消えていく。

アザーラはピストルを天に向けて放った。

「いい、音だな…」
アザーラの声はどもっていた。
泣いていたのか、それとも声を出す気力がなかっただけか。

いずにせよ、アザーラはこの城と共に消滅した。
ラヴォスは地球深くにえぐり込む様に侵入し、巨大なクレーターを生み出した。

クロノ達はラヴォス衝突の衝撃波に煽られた。
プテラに振り落とされない様にしがみつくので精一杯で、何がなんだか訳が判らないままだった。

ラヴォスの衝突で地表の灰が上空に巻き上げられる。
クロノ達はその灰に巻かれながら、何も見えなくなる。


気付いたときには最初にプテラが飛び立っていた北の山頂にいた。

エイラ
「プテラ達ありがとう。皆、無事で良かった。

エイラはプテラに一体ずつ、頭を撫で回した後、
湖に連れて行き、体を洗っていた。


クロノ達はその光景を見ながら考えていた。

何気なく発したエイラの言葉

「エイラ、なんだかラヴォスが落ちてから急に寒くなった気がする」


アザーラは恐竜種が絶滅する未来を知っていたのかもしれない。未来には恐竜の影すらない世界が存在していて、敵対していた人類が繁栄を謳歌している。
その上で、恐竜人の辿った衰退する歴史を人間も辿ることをもしかしたら知っていたのかもしれない。
知っていて、でも言いたくても誰にも言えなかったのではないか。
近い将来に恐竜人が絶滅する。そんなネガティブ公約を王が語れる筈がない。敵対する人間に対しても恐竜人が絶滅するなんて話、無駄に喜ばせるたけになる。
それでもアザーラはエイラ達に何かを伝えたかった。それは自身の弱さや孤独、寂しさかもしれないし、あるいは弱い気持ちを伝えたくないという意地かもしれない。


「クロ達これからどうするんだ?

 ラヴォスやっつけに行くんだろう?

 だったらエイラも連れてけ!

 エイラは戦うの好き!」


エイラの気持ちは起承転結にクロノ達に伝わった。

エイラを先頭に再びプテラにまたがったクロノ達。ラヴォスが衝突した跡地クレーターに向かった。
倒せるかどうか全く判らない異次元の生物ラヴォス。
ラヴォスと最初の出会いの場所に何かヒントになるものがあるかもしれない。

高い位置からでも目視できる巨大な時空の揺らぎを発見した。

早速、ルッカのドローンでゲートの先を調べてみると、そこは一面、真っ白な吹雪の世界だった。


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別の物語「クロノと古代人トリガー」にてアザーラの真相が少しだけ垣間見える描写をしています。
ガッシュとアザーラの先祖が交流をしていた設定を加えました。

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■11話 古代ジール王国編

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吹雪の中を進む7人、
「エイラ寒いの苦手…
ぷるぷる震えるエイラ。寒いのが苦手というより、縄文的な薄着なものだから寒くて当然である。
「ファイア!」
「あー、ルッカ温かーい」
力をセーブした状態での魔法。ファイアの技が今までで一番役に立っているという嬉しさと虚しさを噛み締めながら、7人は歩いていた。

歩けども人は見つからず、見渡してもケモノ一匹いない。これが氷河期なら今は何年頃になるのだろうか。

ロボ
「紀元前1万年くらいです。」

マール
「そういえばボッシュが古代に訪れたら自分も連れてけと言ってたけど…」

ルッカ「今からは無理ね。ここからゲートまで戻るの大変だもの」 

ボッシュ
「こら! 影が薄いからって忘れるでない。」

マール
「えー、だって、キーノがさらわれたとき、来なかったじゃん。

ルッカ
「そうよねー、あんなに薄情だとは思わなかったわ。

ボッシュ
「だから、なん回もいったじゃろう。あれはクロノの回復に魔力を多く使ったからであって。」

マール
「嘘よ。魔方陣を使えば無い魔力を補填できるというじゃない。

ルッカ
「魔族が言ってたわよ。ラヴォスからエネルギーを抽出できるって。

ボッシュ
「あの時はどういう訳か魔方陣が機能せんかったんじゃ。まさかラヴォスがあの時点で存在しとらんとはワシも知らんかったし。

ルッカ
「ホントかな~。ラヴォスいなくても魔方陣使えばラヴォス以外の自然のエネルギーからもパワー貰えたりするんじゃないのー?

ボッシュ
(ギクッ)

マール
「今、ボッシュ、ギクッってならなかった?

ボッシュ
「そ、そんかことありません!(自然のエネルギー、とても手間かかるけどできる…できるけど、ワシ、戦場は嫌じゃ。)

カエル
「うぇっくしゅん!ゲロ」

マール
「カエル大丈夫? 冬眠しなくて大丈夫?」

カエルの鼻水がつららになっていた。

マール
「なんでファイアかけて貰ってないの?」

カエル
「ロボがかけられてないのに、負けるワケにはいかん!」 

カエルはロボをグランドリオンより強い者だと思い、ロボをライバル視していた。 


クロノ達の前方に天にまで伸びる光の柱が現れる。

何か判らないが、好奇心が擽られる一行は、光を目指した。

吹雪をかき分けて進んだ7人は、そこだけ吹雪が当たらない場所だと気付いた。

光の柱まで辿り着いても都市らしきものは見えなかった。

光の下には色彩豊かな絨毯が意味深に敷いてある。

マールがひょいと乗った瞬間、マールは光の柱に沿ってあっという間に上空へと消えていった。
クロノ達はマールに続いた。


7人は雲の上にいた。
魔法王国ジール、魔法工学を追求した都市

空に浮かぶ大地が、雲を挟んで、幾つか浮いている。雲を挟んで数キロ離れた先には、大都市の町並みが点在していて、山頂には権威の象徴の様に宮殿がそびえ立つ。

クロノ達は道なりに進むと、似た絨毯を見つけて飛び乗った。
どこに進むのかと思いきや雲の下の大地、吹雪の世界へと戻ってきた。

ガッカリした7人。

マール
「思わせぶり? なんなのー?」

吹雪中、再び歩かされる。

ボッシュ
「今のが別名、「ふるい落としの土地」じゃ。
天空都市への入り口は大陸の随所にあるんじゃが、本入り口を複数置いてしまうと、地上人と戦争したとき、敵が四方八方から流れ込むことになって、王国側の負担が大きくなるからのう。王国の権威がまだ弱かった頃は、必要なやり方じゃったんじゃ。」

「ここから北に進むと本入り口になるはずじゃ。」


大陸の各地にあるワープポイントは最終的この1つの大陸に導かれる様になっている。地上人が一度でも天空都市チラ見すれば、そこに住みたいと思うようになる。地上にいる全ての人が天空都市に移住できるシステムが作られた。

「じゃが、天空都市は全ての人間を受けいれる体制をあるときからやめた」

ルッカ
「それってやっぱり戦争?」

ボッシュ
「そうじゃ。人間は愚かで、どこまで幸福を追求しようとも満足せんかった。。天空でもいつの時代と同じ様に戦争が起こった。

マール
「それでどうなったの?」

ボッシュ
「色々あったが、ワシのいた頃は民族史上主義だったのう。魔力の劣る者から順に下の世界に追いやられていった。

マール
「えー、こんな寒い世界に放り出されるの?

ルッカ
「普通に死ぬでしょ。

ボッシュ
「そうじゃろ。だから現代でいうボランティア的な人が下の世界に降りて救済したんじゃ。
たぶん、王宮はそうなる事も見越してたんじゃないかのう。

ルッカ
「どういう意味?

ボッシュ
「魔力がないのは罪ではない事はわかっておった。それをあえて罪人かの様に扱う事で、本当の罪人達、いわゆる戦争をやる者に対して、もっと大きな罰を与えるられる正当性を作ったんじゃ。いわゆる拷問とかよのう。

それが犯罪への抑止力、そのまま戦争の抑止力として捉え、また王宮自らも慈悲もない様な怖くておどろおどろしい象徴に見られたいとして、民の反感を買った。」

マール
「なんで? なんでワザと怖がれるのを正当化しようとするの?」

ボッシュ
「王宮を民にとっての共通の敵とする事で、民同士の争いを防ぎたかったんじゃ。ほら、敵の敵は仲間というじゃろ。王宮が民にとっての共通の敵となる事での争い抑止を狙ったんじゃのう。」

ルッカ
「馬鹿よね。そんなことしても、争いは無くならない。

ボッシュ
「その通りじゃ。結局、民族史上主義である事には変わらない。魔力のない者を差別する文化が生まれ、差別する事が当たり前の中で育った人々は人格が崩れおった。特に一番酷いのが王宮じゃったかもしれん。民を差別することが当たり前の様に育ったジール王は徹底した権威史上主義に走った。

マール
「権威史上じゅぎ?

ボッシュ
「簡単にいえば暴君じゃな。権力に溺れてしまい、全ての人や物を自分の支配物の様に解釈しておった。家族であれ、息子であれ娘であれ…


王宮はとにかく殺伐としていた。皆が哀れでならんかった。

特にワシは王子様が哀れでなぁ。
王宮はそそうをするだけで命を落としかねない場所だったから、王子様に近づく者は誰もおらんかった。

幼いながら友達一人いない。いても形だけ。ワシはなんとかして、王子様に心の通う同年代の友達を作ってやりたかった。」

ルッカ
「ボッシュってやけに王宮に詳しいわね…

マール
「まるで王子様の教育係みたいな視点だね

ボッシュ
「あれ? 言わなかったっけ? ワシは王宮で王子様の教育(教科目、命の魔学)をやってましたけど。

ルッカ.マール
「「聞いてないわ」」


ボッシュ
「それでな。ワシは王宮に内緒で王子様を見すぼらしい姿に変えての、一緒に地の民にボランティアをしにいったのよ。
身分を隠してやれば、わんぱくな子供達は気を使うことなく友達になってくれるかなと。

実際、それでうまく行った。
ジャキ様は笑顔になり、友達ができた事を喜んでおった。」

ルッカ
「へー、良かったじゃないの

ボッシュ
「じゃが、ワシは馬鹿だった。年齢のせいもあるのう。頭がもうろくしとった。
ワシも王宮も知らない内に、ジャキ様は地に降りて子供達と遊んでおった。

ジャキ様はある日、何の悪びれもなく、王宮の衣を纏ったまま遊びに行き、王子だと名乗られた。

『王宮は悪いところ、そこに住む者は悪』地の民に住む子供達は親からその様に教えられとった。

ジャキ様は虐められ、ボロボロの衣服で戻られた。

母上のジール様はひどく怒りになり、ジャキ様を責めなすった。
【下界の者と遊ぶとは何事だ】【下賤な者に触れた下賤者】と

ジール様の一声でジャキ様に手を上げた者への
死刑が決まり、王子様の出入りを監視していなかった者達への死刑が決まった。

マール
「そんなことで…

ボッシュ
「勿論、それがおかしい事は多くの識者は理解しておる。だから死刑の手続きも実際はふりだけ。魔学で生み出したその人そっくりな人形を作り遺体偽装することで、ジール様の目を欺いたのじゃ。」 

ルッカ
「やるわね、識者の人達」

ボッシュ
「とはいえ、そういった王宮の仕組みの中で育ったジャキ様の心は、正常に成長する筈もなく、ジール様の様に心が捻れていきおった。

マール
「なんか可哀想…

ボッシュ
「それでもジャキ様には心の拠り所になる者が存在した。

ルッカ
「まさが自分って言う訳じゃないわよね…

ボッシュ
「自分って言えないのがツライのう…ワシはワシで頑張っておったんじゃがなぁ…

マール
「で、誰なの?

ボッシュ
「姉のサラ様じゃ。サラ様はジール様の夫であるクト様がまだ健在であった頃にお生まれになられた方で、クト様の精神を濃くお継がれになられた。

マール
「クトさま?

ボッシュ
「サラ様を語るにはクト様抜きでは語れません。クト様は私の魔学の教え子でもあり、地の民へのボランティア仲間でもありました。クト様は名家の血筋でありながら、民族史上主義にも染まらない…、要するに愛される人じゃった。そのカリスマ性がジール様の心を射止めたといえるが、少々浮気症なところがあり、それが原因で地に追いやられる事になり…

ルッカ
「ボッシュ、話がずれてる。

ボッシュ
「とにかく、弟のジャキ様と違い、姉のサラ様は、クト様という、とてもまともな人に愛された事で心が真っ直ぐに育てられました。サラ様はジャキ様を我が子の様に愛し、ジャキ様はサラ様を本当の母上の様に慕いました。」

マール
「なんかほっとする…

ルッカ
「ジャキはジール、本当の母親の事はどう思っていたのかしら?

ボッシュ
「言葉にはしませんが、おそらくは憎んでいたでしょう。もしかしたら、殺したいくらいに…

ルッカ
「流石にそれは言い過ぎなんじゃ…

ボッシュ
「ジール様は浮気したクト様にどことなく似ているサラ様を嫌っておったのかもしれんと、今は思うが、ジール様はサラ様を魔神機の制御をするアイテムの様に扱っていたのじゃ。

ルッカ
「魔神機? ラヴォスのエネルギーを抽出するという?

ボッシュ
「当時はラヴォスエネルギー需要が高まっておった時期で、都市はより多くのエネルギーを必要としておった。魔神機の出力を上げていってラヴォスが目覚めたらどんなリスクがあるか分からぬから、サラ様はラヴォスを目覚めさせない様に抑える役どころを担っておった。

ルッカ
「それってサラ様にしかできなかったの?

ボッシュ
「そうなんじゃ。ラヴォスをコントロールできる魔術師はサラ様だけじゃった。

マール
「なんでよ!

ボッシュ
「なんでと言われてもワシにもわからん。
 とにかく、サラ様は都市を支える為、ジール様の不老不死を叶える為に奴隷の様に扱われとった。魔力が枯れるまで働きずめで、そんなサラ様を見ておられたジャキ様は母上をどう見ておられたかは、こころ察するところで…

ルッカ
「たしかに、親であろうと殺したくなるわね。


7人は天空都市へのワープポイントに到着した。
「ここからが本当の入り口じゃ」

「恐らく入国審査で魔力が足りないと言われて拒否されるだろうが、ワシがいるから大丈夫だと思う)

ルッカ
「ねえ? もし、もう一人の自分と会ったらどうするの?

ボッシュ
「構わんじゃろう。魔学研究で時を操る論文も書いておったし、ワシが現われても、すんなり受け入れるじゃろうて

ルッカ
「そうじゃなくて、過去の貴方にラヴォスのタイムゲートに飛ばされない様にアドバイスなんかして、現代に貴方が存在しなかった事になったらどうするの? 貴方と出会う私達の運命も無かった事になって、今の私達の存在は…

ボッシュ
「お前さん、細かい事を気にするんだのう。もしワシがいなかったとして、どんな悪い方向に運命が変わるというんじゃ? ワシがハッシュを助けて時の最果てが存在しなくなったとして問題あるのか? 未来が大きく変化したとして、そなたの今の現代それほど守る価値があるものなのか?
この国を今救い、サラ様を救えれば、ラヴォスが1999年に目覚めないかもしれないのじゃぞ」


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――――――――――――――――――――――――――――

■12話 ロボには魔力で造られた痕跡あり

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6人とロボは入国審査を受けた。

担当者
「ロボさんは…魔具ですね。魔力が無いのは…カエルさんですね。残念ですがカエルさんは入国できません。」

ボッシュ
「ワシ、生命魔学の賢者、ボッシュじゃぞ? 王宮おかかえの魔学師にして王子様の教育係じゃぞ?」

担当者
「ボッシュ? ボッシュ?(そんな超有名がこんなところに…?)

ボッシュ
「ほら、ちょい老け気味のボッシュじゃ。

担当者
「そ、そん、な…

 失礼しました!

ボッシュの顔パスで入国審査を抜けたクロノ達

王宮に行くと、
ジャキもサラも健在だった。

ジャキ
「この中に近く死ぬ人がいるよ。

ルッカ
「何言ってんのこの子?

ボッシュ
「こら! 王宮での粗相は危険だと言うたばかりだろうが。

ルッカ
「え?」

ボッシュ
「この子が王子様のジャキ様じゃ。跪づいて礼くらいせんと死ぬぞ。


クロノ達は跪づいた。

ジャキ
「おいジイ、この者たち見ない顔だな。

ボッシュ
「はい、この者達は私の親戚の者達でごさいます。今日は王宮の従事に関して…

ジャキ
「この魔具(ロボ)はなんだ? やけに存在感のある形をしているな。

ボッシュ
「これはボッシュ特性のおしゃべり魔具にございます。

ジャキ
「なぬ? ことばを喋るのか? それは面白い。おい魔具よ。何か申してみよ。

ロボ
「こんにちは。私の名前はロボです。王子様、ヨロシクおねがいます。

ジャキ
「うーん。なんかいまいち。何か他にできないの?

ロボは踊った。エイラの踊りを覚えていてそれを真似した。

ジャキ
「うーん。微妙だな。他には?


ロボは歌った。エイラの歌を覚えていて真似をした。

ジャキ
「…

ロボはロケットパンチを繰り出した。壁に腕がめり込む。
従者達から悲鳴があがった。

ジャキ
「こりゃ最高だ! お前、家来にしてやる。こっちこい。」


ロボはルッカと顔を見合わせている、

ジャキ
「あとそこのミドリのやつ。ぷにぷにして気持ち良さそうだから、お前もこい。


ボッシュ
(すまんのう、二人共しばらくに付き合ってやってくれんか。)


ボッシュ
「ではジャキ様、私達はサラ様にご挨拶に参りますのでこれにて…

ーサラの部屋ー

サラ
「え? まさか貴方ボッシュ? 幽閉されていた筈では?」

サラの驚きに釣られてボッシュも驚いた。

ボッシュ
「そうか! この時のワシ、ジール様にラヴォスエネルギー利用の継続の危険性を進言したんじゃ!   

それが反抗的態度だと思われて、北の山に幽閉されとったわ。あの時はサラ様がこっそり助けて下さったのだが…」

ボッシュはクロノ達に言った。
自分が未来から来た事を証明するには北の山で幽閉されたボッシュを助けて2人でやればいい。


ルッカ
「それならもうジールに直接会ったら? 山に連れていかれて、もう一人の自分がいたら流石に気付くでしょう。

ボッシュ
「ちょっと怖いけど、それもいいかなぁ…


ボッシュはジールのいる王広間へと向かった。

ジール
「ボッシュ? そなた何故ここにおるのだ!


かくかくしかじか

ジール
「かくかくしかじかで未来から来ただと? しかもかくかくしかじかでラヴォス神が暴走して大変な事になるだと?」


かくかく

ジール
「そこまで言うなら、お前を幽閉した山へ行こうではないか。

ジール
「まさが、ボッシュ、お前の言う事が本当だったとは…

未来には私は存在せず、未来にはジール王国も存在しない。信じるしかないのか、
不老不死も手に入らぬのか…

ボッシュ
「一つだけ手はあります。時の最果てという場所です。そこはハッシュの意識が生み出した思念世界でハッシュは時の流れが止まり、不老不死を得ています。ジール様も肉体を切り離して意識体となれば不死を得る事ができるでしょう。

ジール
「意味がよくわからんな。肉体を捨てたら魔力はどうなる? 失うのではないのか? 

ボッシュ
「百聞は一見にしかずです、時の最果てに行ってみましょう


ジール
「なるほど。思念の中で生きるということか…
 たしかに、不可能ではなさそうだ。

ボッシュ
「では…

ジール
「ああ、ラヴォスエネルギーの使用削減を考慮しよう。そしてボッシュ、お前には思念魔学の研究の陣頭指揮をとって貰う。


ダルトン
「どういうことですか、陛下!

ジール
「私の意に背くのか?

ダルトン
「いえ、海底神殿に相応の予算を当てたもので、その回収にはなんとしても他の事業を拡大して採算の調整をしなければと…

ジール
「要するにラヴォスエネルギーが必要ということか?

ダルトン
「恐れながら…

ジール
「だがラヴォスは駄目だ。事業拡大ではなく、国家の支出を削ろうではないか

ダルトン
「それでは我々は地上に住む事なります。ジール様、地上はお嫌いなのでは?

ジール
「そうだな。確かに地上は嫌いだ。同じ景色ばかりだからな。だか未来は凄い、原始時代も中世もある。我らに相応しい棲家はここ以外に沢山ある。

ダルトン
「そ…そうですか…

ジール
「分かったなダルトン。海底神殿も天空都市も取り止めだ! 我々の一先ずの目標は地におりること。時の最果てを作戦の本拠地、臨時対策室とすること。」


もしボッシュがこの時代に来ずにラヴォスエネルギーを使っていたら、ラヴォスは人間を敵視し、光の攻撃で天空都市を破壊し、都市が海に落ち、その衝撃で大津波が起こり、多くの命を失ったたろう。
しかしボッシュの力ででこの悲劇は回避された。
めでたし…


ルッカ
「ねえ? 私達が元の時代に戻ったらどうなってるんだろう?

ロボ
「きっと未来が大きく変わっていて皆存在してないと思います

マール
「じゃあ、なんで私達消えないの? 中世で私の先祖リーネ様が死にそうになったとき、私世界から消えたよ

ルッカ
「あれ? ボッシュがいない? もしかしてボッシュだけ消えた?

マール
「そうよ! 古代の人達は最果ての様な世界、想念の世界を作たんだよ。その世界で生きてるから地上にはいないだよ。

ロボ
「古代はどのみち滅ぶ運命にあった。その為、古代以降が地球に与える生態系への影響は限定的だったということですね。


 ルッカ
「でも、腑に落ちない。
 想念の世界なんてありなの?

マール
「あっていいんじゃない? ラヴォスなんていう無茶な生き物がいるんだし。

ロボ
「1999年に相変わらず未来は破滅します。

ルッカ
「そうよ、未来はどうするの?

マール
「私達もジール様に頼んで想念体になるとか?

ロボ
「現代の皆さんが想念体になって肉体の子孫を作らなければ、未来でラヴォスが暴れても問題ありません。

ルッカ
「可能なのかな? 私達魔力あんまりないけど。

マール
「わかんない。そもそも私達魔法使えなかったし、魔力増やせる可能性はまだあるんじゃない?

ロボ
「魔法について、私達はほとんど何も知りません。

ルッカ
「そうね。また何も言い切れないわよね。

マール
「もっと前向き考えよう!」

ロボ
「では、シール王国に骨を埋めましょうか

めでたしめでたし〜
と、ボッシュはこんな感じで全てが上手くいくと思い込んでいた。


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――――――――――――――――――――――――――――

■13話 消えそうな賢者

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という話の流れになるのがボッシュの思惑だった。しかし実際そうはならなかった。ボッシュとクロノ達がジャキに会ったあと、サラに会いに奥の廊下へと向かった瞬間、ボッシュが光に包まれた。


マール
「こ、これって…

ボッシュ
「な、何か起こっておるのじゃ…。この冷たくて暗い感じは…」

クロノ達は見覚えがあった。中世時代にマールの祖先リーネが死にそうになった際、子孫であるマールが世界から消えた。

ルッカ
「…もしかするとボッシュがラヴォスゲートに飲み込まれない未来をこれから作ってしまうからじゃ…」

マール
「どういうこと?

ルッカ
「歴史を弄る結果、ボッシュは私達とは出会わない歴史になってしまって、そしてそうなる私達もここに存在してい…

ルッカが考察していると、ルッカやクロノ達の身体も光に包まれ、消え始めた。

ルッカ
「いけない! 何か手を打たないと私達、消えてしまう!」

ルッカは消えかけたボッシュの手を取り王宮の外へと走った。それに続くようにクロノ達も走った。

王宮の外へ出るとクロノ達を包んでいた光は消え、殆ど消えていたボッシュも浮かび上がってきた。

「な、なんじゃったんじゃ今のは??」

ボッシュが一息つくと、ルッカは歴史を変えた際に起こりうる矛盾点を説明した。

ルッカ
「ボッシュ、残念だけど未来を変える事はできないわ」

ボッシュ
「そんな…。我ながら良いアイデアじゃったのに。

ルッカ
「恐らく、この都はラヴォスによって消滅する運命から逃れられないのかもしれない。歴史のどこにも古代文明の痕跡が無かったから、きっと未来の様に滅亡してしまう。

ボッシュ
「お主らが見てきた未来の事か…
 
ルッカは考えこんだ。

ルッカ
「この空中浮遊の大陸がもしラヴォスによって落ちるのだとしたら…」

大壊滅する。浮かぶ大地だけではない。海に落ちれば海面の水位は一気に上昇する。それだけでなく衝撃から、大津波が発生して海岸沿いに住む人々はそれに巻き込まれてしまうだろう。

ボッシュ
「そんな…古代に住む人々を助ける事ができぬのか…」

マール
「諦めちゃ駄目だよ! ラヴォスが暴走しても大丈夫な様に人々を避難誘導すればいいんだよ。」


ルッカ
「そうよね…。この時代の人が生き残った分、歴史を大きく変えてしまう恐れはあるけど、その方法なら可能性があるかもしれない。
私達が誰かを助けようとして、私達がさっきみたいに消えそうになれば、やめればいいのだから。

マール
「それって、助けられる人がいても見捨てるってこと?

ルッカ
「しょうが無いじゃない。私達が存在しない事になったら、どのみち誰も助けられないのだから。」


エイラ
「エイラ、難しくて良く分からない。けど何となくわかる。みんな助けよう、みんな助けよう


ルッカ
「ここで、こうしてても仕方ないわね。ボッシュ、いつラヴォスは暴走をし始めるの?

ボッシュ
「ワシが嘆きの山に幽閉されてサラ様に助け出されたのが10月の30日じゃから…。ラヴォス暴走まではあと10日じゃな。」

ルッカ
「あまり時間がないわね…ここと海岸沿いの地上には人口ってどのくらいいるの?

ボッシュ
「現代みたいな統計はとっておらんから何ともいえんが、海岸には20万人はおるのう。天空都市では2000万人のくらいかのう…

ルッカ
「私達では到底フォローできるレベルじゃないわね…

マール
「中世のガルディア軍に協力をお願いできないかな

ルッカ
「そうね…彼らならタイムゲートの存在はもう知ってるから、説明もしやすい。

マール
「ガルディア軍て全部で5000人くらいいたよね?


ルッカ
「南の魔王軍は弱体化しているとはいえ、東西北との魔族戦に備えるだろうから、せいぜい動かせるガルディアは1000くらいじゃないかしら。

マール
「1000人で2020万人の避難誘導…

ルッカ
「一人あたり20200人の避難誘導になるわ。一人あたり一日2020人を誘導…

マール
「絶対無理とは言えないけど、難しそうだね…。そもそも住民が素直に話を聞いてくれるかとうか

ボッシュ
「それならワシの力でなんとななるかもしれん。ワシはこの時代では現代よりも遥かに有名人じゃからのう。

マール
「でもどうやって? ボッシュは幽閉されている事になっているのでしょう? ボッシュが表に出たら、そっくりさんだと思われておしまいじゃない?」

エイラ
「エイラ、良くわかないけどラヴォス、暴走したらやっつけるのはダメなんか? 暴走するの最初から分かっているのなら、待ち伏せて打てばいい。」

ルッカ
「どうなのボッシュ? ラヴォスは倒せないって前にも言ってたけど、

ボッシュ
「あの時はラヴォスから恐ろしい殆のエネルギー量にビビッたままタイムゲートに飲まれたから、きっと倒せないと思ったんじゃが、もしたら…


ボッシュは戦争で使われた魔導兵器の存在を語った。
魔力を溜め込み、発射する装置で、あまりに強力で戦争では一度も実践される事が無かったという。現代でいうところの核兵器の様なものであるが、攻撃範囲を固定でき、周囲に破壊の影響を与えない効果があるとのこと。
それがラヴォスに効果があるかもしれないという。

ボッシュ
「魔導兵器は破壊する対象物を囲む様に設置して起動する。多ければ多いほど威力は強力になる。たとえば7つ魔導兵器を使うなら、ラヴォスの周りを取り囲んで7人で同時にスイッチを押す必要がある。ちなみに同時にというのは安全装置みたいなもんじゃの。」


ルッカ
「つまり、私達には選択肢としてもう一つの、『闘う』があるのね。この時代のボッシュがラヴォスのタイムゲートに飲まれたあと、その魔導兵器をラヴォスの周囲に設置して起動する。」

マール
「なんか、怖い…。兵器を設置する前に私達もタイムゲートに飲まれる恐れがあるんじゃ…

ルッカ
「そうね…
ただ、もしかしたら、私たちは無事なんじゃないかしら。」

魔王城がラヴォスのゲートに取り込まれたとき、ガルディア軍はハッシュの配慮で中世に行きついた。

ルッカ
「時の迷い人を保護する為に時の賢者ハッシュによって、ガルディアの人々はそこへ誘導されたんじゃないかしら。だから私達もきっと、時の最果てに行く可能性がある。」

ボッシュ
「ちょっとまて、じゃあ、今の時代に存在しているハッシュはどうなる? 時の最果てはもうあるのだから、そこに行くというのか?」

ルッカ
「そこのところは分からないわ。ハッシュはもう一つの時の果てを生み出すのかもしれなし、時の最果てにもう一人のハッシュが現れるのかもしれない。」

ルッカには思うところがあった。

「時の最果ては、迷い人の行くべき時代に配慮しているのかもしれない。」

「最果てにあるゲートもそうだし、魔王城がゲートに飲まこれたときもそうだけど、私達は原始時代に行くように仕向けられた。

私達が現代に生きる者として、現代へと飛ばされててもおかしくなかったのに…


「つまりね、ラヴォスゲートで飛ばされても、貴方も私達も本来この時代に生きる者ではないから、
『別の時代に生きている存在』として正しくあるべき時代へと導いてくれるのではないかしら。行き先が時の最果てか、別の時代へかは分からないけど、きっと安全性が担保されているのではないかしら」
 

ボッシュ
「…そうか…記憶なきハッシュにはその様に陰ながら人々を導く役割があったのか…」


クロノ達の進路は決まった。
ラヴォス暴走のタイムリミットが迫るまでは、ボッシュ、ガルディア軍を主軸にして避難誘導をする。ラヴォス暴走の直前、ボッシュと共に海底神殿の底、ラヴォスが眠る間へ行き、魔導兵器を起動する。


クロノ達が王宮の外で話合っているその頃、魔王はビネガー達と共に王の間でダルトンと戦っていた。
魔王達はラヴォスのタイムゲートに飲み込まれ、古代へと来ていた。


相当なダメージを受けているダルトン

「き、貴様らは一体…

ビネガー
「この国は我々の王、魔王様が支配する事となった。」

マヨネー
「やっぱり人間って脆いや。魔法が使えても心操ちゃえば簡単なんだもの。

ソイソー
「我が主に仕えられる事を誇りに思うがいい。

魔王は王座の前にいる母、ジールに語りかけた。ジールはマヨネーに動き封じられている。
王の間にいる全ての従者はマヨネーに心を一瞬奪われた隙にソイソーの攻撃で気絶させられていた。


「お久しぶりです。母上様…」

ジール
(母上? お前、何を言っているのだ?)

「私の顔をお忘れですか? 私ですよ。ジャキですよ。

ジール
「な、何を言っている…ジャキは私の息子…


「そうです! 貴方の息子です。
 私は貴方のせいで失った。姉上も私自身の心も!」


魔王はこの時代で姉サラと再会し、近くない未来にラヴォスが暴走してタイムゲートが発生し、ジャキと生き別れになる事を告げようとした。けれど光に包まれ、存在が消えそうな事態となった。

目前にいる最愛の姉に近ずこうとすると自身が消える。ボッシュの様に時の矛盾点に妨害された魔王は、ラヴォスが暴走する運命が変えられないのなら、せめて自身の手でラヴォスを暴走させようと思い、ジールをその手にかけようとした。

しかし、上手くはいかなかった。ジールを殺そうとした瞬間、魔王達は光に包まれ消えはじめた。

魔王
「クソっ!」

マヨネー
「なによ、また私達薄くなっちゃった。

ソイソー
「…

ビネガー
(魔王様の話と全然違う。魔王様がこの国の王となって、領土をくれるというからついた来たのに!)


魔王がジール殺害を諦め、王の間を出ると、次第に元と姿へと戻った。

後を追うようにビネガー達がついていく、彼らもまた同じように消えかけた身体が元に戻った。

魔王は王宮の窓から飛び立ち去っていく。続くようにビネガー達も去っていった。


ジール
「い、今のは何だったのじゃ…幽霊か、幻か…


ダルトン
「…違います。あれは紛れもなく実体があった。きっと、どこかの組織が開発した魔同兵器の類かもしれません。

ジール
「し、しかし、あの様なこと、王宮の魔学技術部では一度も聞いた事がない。ほんとうにあれは、兵器なのか?? それにあの者、自身をジャキと名乗ったのだぞ…

ダルトン
「ジャキ様?(まさかジャキ様が謀反を? そんな馬鹿な。まだ彼は子供だぞ…) 


ダルトンは魔法で部下に信号を送った。
王族を警護監視している隊員と連絡をとった。

ダルトン
「ジャキ様の様子どうだ? 何か異変はないか?」

警護 
「特に異常ありません。ジャキ様が喋るペットや魔具と遊んでいる以外は特に。あ、しかし、ただそのペットと魔具、一度光って消える様な現象がありましたが…。ジャキ様が遊びで魔法を使われたと思って気にも止めませんでしたが、ジャキ様もそのペットも魔法を使った様子はなく…」

ダルトンは以前からジャキの秘められた才能を捜していた。サラの様なラヴォスを制御する様な特異な力があるのでは思い、護衛にチェックさせていた。もしあれば、政権を自身に有利に動かせる材料になるかもしれないと思っていた。もしジャキがジールに謀反を起こす意図があって先程の様な現象を起こしたなら、それを利用したいと考えていた。


ダルトン
「ペットと魔具が消えかけただと? その時間は?

警護
「……てすが…

ダルトン
「さっきの現象とほぼ同時刻か…

ダルトン
「喋る魔具とペットは今どうしてる?

警護
「喋る魔具は王宮の外に。今はペットだけです。

ダルトンは警護への通信を切ると、別の場所に信号を送った。

「ジャキ様の部屋にいるペットを見張れ。そのペットの行動を記録し、私に報告しろ。これは極秘事項だ。決してペットとそれに関連する者達には気付かれるなよ。」


カエル
「ふう、王子様の気まぐれにまいるぜ。こんなにももぐられたのはいつ以来だっけ、げろろ」

カエルがジャキから開放され、クロノ達の元に戻った。途中、背筋がぴりっとしたが気にしなかった。

カエル
「あの王子様やばいぞ。オレにロボパンチを避ける遊びさせるんだからな。内蔵が飛び出たらオレの負けとか、んなこと言われても内蔵飛び出たら死んじまうぞ俺。」

ルッカ
「大丈夫よ。その時はきっとボッシュが治してくれるから。

ボッシュ
「いや、流石に内蔵飛び立ったら、ワシでも自信ないわ。


ルッカ
「ところで、カエル、貴方が王子の相手をしている間に当面の方針が決まったわ。私達は…

この時、カエルはダルトンに頭の中を覗かれた。小型の思考監視魔具をつけられていた。
この魔具は言語の違いを超えて思考そのものを読み取れる。


ダルトン
「まさか未来人がこの世界に来ていたとは…しかも歴史を変えようとする者が光に包まれて消えるような事が…だとすればジャキ様がジール様の命を狙おうと未来からやって来た事も、ある意味で納得できるが…」

ダルトン
「しかし、この天空都市が崩壊するだと…
そんな事になったら王の権威なんぞ、塵の様に吹き飛ぶぞ。私も今の官職を失うかもしれん。
海底神殿の建設にどれだけ税金を注ぎ込んだと思っている。奴らには死んでもラヴォスのコントロールに成功して貰わないとな…
でなければ今まで積み上げたコネクションが…」


ダルトンはこれまで国務を裏で牛耳ってきた。
王族や官職達をいつでも殺して成り代われる程の力をダルトンが属する組織は持っていた。
そのダルトン派の関係者がどれほど王宮内に潜むかジールやボッシュも知らない。
ただ、ジールは薄々と知っていた。

王宮ではいつ王族に謀反が起こってもおかしくなかった。
ラヴォスから大量の魔力を抽出する行為、魔神機によるラヴォスの利用は、そんな王宮の危機の中で生まれた。計画に大きな夢を抱いたダルトンとその勢力は計画を続行し続ける間だけは謀反を起こさない。ラヴォスのコントロールに必要なサラは国の要であり殺せない。サラを思い通りに動かすにもその血族は人質にする事はできても殺す事はできない。

ジールが計画のリスクを知りながら強行実行しているのは、王宮を守るためだった。

ジールが些細な事で失敗する者への大きな罰を与えるのも理由があった。ボッシュ達が裏で死刑を無かった事にしているのもスパイを使って知っていたし、些細なミスをした従者を王宮から追い出すのも、王宮がクーデーターで血に染まった場合に備えてだった。
王宮の従者を極力減らしたかったジールは暴君と成り果てるしかなかった。

魔力の無い者を地に追いやる政策も、元々、王権の意向に反目する派閥の提案だった。
ダルトンが王宮にいない頃から王宮内部には魔力で格付する差別主義者が多くいた。
ジールが生まれる前から差別体制が作られ
ジールの夫クトはその様な差別体制の中でジールと婚約し王宮に入った。
とはいえ、王族になるというのは死と隣り合わせである為、ジールは最初から浮気等の理由をつけて追い出すつもりだった。

魔法学的にいえば妊娠はセックスをしなくても作れた。危険と隣り合わせの王宮に命を生み出す事に大きな抵抗があったジールだったが、もし子供を作らなかったら、このまま跡継ぎは差別体制主義者に移行してしまい、ボッシュの様に裏で民を救済している者達もいずれ殺されてしまう。そうなれば本当の意味での魔力無き民への弾圧が始まってしまう。

ジールがジャキに冷たく当たり散らしたのも
愛してない姿を見せ、人質として交渉には使えないのだとダルトン派に思い知らせる為だった。

暴君ジール、誰もに気付かれることないが、誰よりも国の未来を考えていた。
ダルトンは誰よりもの保身を考えていた。

ダルトン
「暴君ジールは魔神機で民を危険に陥れる。しかし、それはある意味、私にとっては好都合か…」

ラヴォスが暴走して都市が消滅したとしても、それまでに人々を救出した実績を残せばダルトン自身の権威は保たれる。

ジール王は暴君として王宮からも民からも人望がない。ダルトンが海底神殿の陣頭指揮をとっているとはいえ、国民から見れば暴君ジールの命令に従わされている様にしか見えない。国民は救出実績を作ったダルトンを肯定的に見るはず。

〜念波〜

この時代、自身のメッセージを念にして飛ばせる距離は通常1m以内であるが、増幅装置を使えば不特定多数の誰かにも届けられる。
また念の質、つまりはボッシュの念の識別コードを載せて飛ばせる事もできる。
不特定多数とはいえ、念波を飛ばせる範囲は調節できる。


ボッシュは避難誘導に必要な念を込め、それを念波として使える魔具を沢山用意し、避難誘導に使った。

クロノ達、ガルディア軍もその魔具使った。。

ルッカ
「なんだ…。私、無線機必要かと思って沢山用意したけど不要じゃないの」


ボッシュ
「そんな事ないぞ、魔具は盗聴される心配あるが現代の無線機は大丈夫じゃて。ワシらがラヴォスに攻撃する計画を知られる様なことになれば、ワシらは邪魔されかねんからのう。」

ルッカ
「じゃあ、この魔具を使って直接連絡を取り合うのは危険ね。会話するのは無線機で。ということね。」


マヨネー
「なにこれ? 頭になにか入ってくる。」

ソイソー
「…

ビネガー
「魔神機の実験が失敗して都市が崩れるかもしれない? どういう意味ですか魔王様?


魔王は空を飛んで建物を駆け上がって、下を見た。
地上に避難していく人間達を見つめた。


魔王は地上に降りて、人々が向かう先へと自身も向かった。
雪が降る中、大陸の中央に集まる人々。
魔学的につくられた魔法シェルターに人々が避難している。雪を凌げ、温度も快適に調節された空間に、地の民と天の民が仕切りを作る様に2つに分けてそこにいた。
地の民への差別心を持つ天の民
天の民への恐怖心を持つ地の民
2つがクッキリ区別されるように別けられている。

しかし、天の民の中には少数であるものの、地の民に「心配ないよ」と声をかけたり、天地関係なく、子供同士が遊んでいたりする。
大人達はそれをみて怒ったりするものの、わんぱくな子供達は聞く耳を持たず、しかり疲れするパターンもあった。
羨ましそうに眺める子供、親の言い付けを絶対に守ろうと子供、地の民を虐める子に、それを止める天の民、多様な光景が入り乱れた。

 

「ボッシュ! ボッシュ!」
10日目、嘆きの山に幽閉されたボッシュがサラに救助された。氷漬けにされていたボッシュが解凍されるとゲホゲホと嘔吐した。

サラは魔法でそれを癒やした。

サラ
「大変です。まもなく海底神殿でラヴォスが覚めてしまいます。一緒に止めに来てください!」

ボッシ
「やはり、強行されますか…ですがサラ様が行かなければ丸く収まるのではないでしょうか。

サラ
「今の母上はまるで別人格が取り憑いているかの様です。私の魔力で動きを封じることもできません。

ボッシュ
「まさか!ラヴォス神がジール様を操っておるのか!

サラ
「私がいなくても母上はラヴォスを目覚めさせます。もう私の力だけでは止められません。私と共に一緒に来て下さい。

サラはボッシュを抱えると山を飛び立った。


サラ
「ところでボッシュ、あなたの偽物が街にいるという噂が…、これはどういう…」

クロノ達の避難誘導の噂が王宮のサラに届いていた。


ボッシュ
「なに? ワシが民を下界に避難誘導しとるだと?」 

サラ
「貴方が呼びかけたものではないのですか?」

ボッシュ
「ワシは知らん!
 知らんが…


ボッシュ
「今はそれどころではない!
 誰か知らんが避難誘導をしてくれるというのなら願ったりじゃ。、ワシの偽物は取りあえず、ほおっておきましょう。」


〜海底神殿〜

海底神殿はラヴォスのいる地層へと掘り進める為に建設された。建設業者は普段、最寄りの施設からワープして神殿にて掘削作業にあたる。現在はラヴォス深層まで掘り進んでいて作業者はいない


ジール
「さあ、ラヴォス神よ! わらわに永遠の命をもたらせー!」

ジールが呪文を唱え終えると魔神機が起動した。 
魔神機がラヴォスからエネルギーを吸い込み、ラヴォスが唸りを上げる。


ボッシュ
「遅れてすまん!」

ガッシュ
「ボッシュ、お前、あの山から抜け出たのか!

ボッシュ
「ああ、いまどうなっておるのじゃ?

ガッシュ
「無謀にもサラ様無しで魔神機を起動しおった。あれではラヴォス神が目覚めるのは時間の問題だ。

ハッシュ
「ジール様はバリアをはられていて、近づけん。もはやジール様を止める事は我らにもできん…」

サラがラヴォスの背に乗り魔力を込めた。
ラヴォスが目覚めない様に魔力を注ぎ込む。  

ボッシュはこの時の為に作っておいた赤い剣を取り出して魔神機に刺した。魔神機を破壊できる剣だが、刺してもそれ以上は動かなかった。ジールが魔法をかけ、剣がそれ以上動かせない様にしていた。

三賢者達はジールの魔力に対抗して剣に力を注いだ。

ラヴォスの地響きと唸り声と共に、赤い剣が形を変えた。後の世に聖剣として語り継がれるグランドオンの姿になる。

ボッシュ
「この後じゃ、この後、ワシがタイムゲートに飲まれるんじゃ」
 
魔神機は止まらず、サラ様よるラヴォス制御も力足らず、時空が歪んだ。


ハッシュ
「ま、まさかこれはタイムゲート? いかん! ボッシュ、今すぐ、そこから逃げろ!」

空間が避け、ボッシュはゲートに飲み込まれた。

ハッシュ
「ガッシュ! サラ様! もうだめじゃ!ここから逃げて下さい!」

言った瞬間、2つのゲートが同時にでき、ハッシュとガッシュも飲み込まれた。

ボッシュ
「ガッシュまで…」

せめてガッシュは助けたかったボッシュ。
悔しい思いを振りきり、クロノ達に魔導兵器の使用合図を出した。


マール
「まって! まだサラさんがラヴォスに!」

合図を取りやめたボッシュ

そこにジャキが走ってきた。

「姉様!、危険です!ここから直ぐに逃げて下さい!


「なぜ、なぜ、貴方がここに…
サラは弟に叫んだ。
「ダメよ! 来ては!」

サラの叫びも虚しく、ジャキはラヴォスゲートに飲み込まれた。
サラの悲痛な叫びが発せられた瞬間、ラヴォスが目覚めた。
サラの集中力がジャキが消えたことで途切れた。その瞬間だった。

そのとき、ラヴォスは突然、鎮まった。
身体にエネルギーを貯め始めた。
クロノ達はそれを理解せずとも悟った。この後、ラヴォスから光の柱が飛び出して天を貫き、大地を砂の大地に変える。未来で起こった同様のことが起きる。
天空都市が落ちる、またその前に海底神殿に穴が空いて水没する。
クロノの達も死ぬ未来を悟った。
今すぐにでも魔導兵器を使用しないといけない。

諦めかけたとき、魔王が上から降りてサラを抱き、ラヴォスからから離れていった。


ルッカ
「な、なぜ、ここに魔王がいるの? 

ボッシュ
「とにかく、今がチャンスじゃ!」


クロノ達は魔導兵器を起動した。
7つの魔具から光が発射され、ラヴォスを包みこみ、ラヴォスから悲鳴がほとばしる。

ラヴォスはガムシャラに抵抗しているようで、その作用か大きな地場が発生した。

7人はその地場に吸い寄せられる様に、魔導兵器の中に吸い寄せられる。


「いかん! まさかこんなことが…

ボッシュは魔法を使い、クロノ達と自分をラヴォスの地場から離した。

魔導兵器も地場に取られ、ラヴォスの内側にめり込んでいく。

魔導兵器はラヴォスに押し潰され壊れた。


7人はラヴォスの正面に立っていた。

ラヴォス正面の目玉にエネルギーが溜まっていくいく。

ロボが光の光線を受けて消滅した。


次にボッシュが光を受けて消滅した。

エイラは消滅する二人をみて腰が抜けた。逃げようと後ろを向いた瞬間、ラヴォスからレーザーが放たれ消滅した。

ラヴォスの目玉は標準をクロノに合わせている

逃げようとしても目玉が追いかけてくる。

クロノが逃げている隙にラヴォスの視界から逃れたカエル、マール、ルッカ

ラヴォスはレーザーをクロノに発射した。
避けるクロノ
何度も発射するラヴォス

真横に走り視界から抜けようとしても、ラヴォスは一キロメートルはある巨体を動かしてクロノの正面に立とうとする。

ルッカ
「クロノ! ジールよ! ジールがラヴォスを操ってる!」

クロノはジールに向かって走った。

ジールの前に立つとラヴォスは攻撃を辞めた。

だがジールが念力でクロノを高く持ち上げ始めた。、ラヴォスの標準がクロノ合い、光が発射される。瞬間、カエルがジャンプしてクロノを抱えて救出した。

カエルはクロノを抱えてフロアを出るとクロノをワープ台においた。 
カエルはマールとルッカもすかさず助けて、ワープ台に乗った。

ターゲットを見失ったラヴォスの目は動かなくなり、しばらく鎮まった後、
光を全身に集め始めた。
光の柱が身体の表皮から飛び出し、海底神殿の天上を貫き、世界を包みこんだ。
光は成層圏まで到達するとゆっくりと落下し、加速していき、天空都市を貫いた。いくつもの光が拡散し、落下していき、都市が割れ、大陸こど海へと落ちてく。
地上に降り注ぐ光は、人々が避難をしているシェルターまで降り注ぐも、魔術師達がバリアを張って耐え忍んでいる。

地面を覆う雪は光の熱でとけ、地表が顕になる。

海底神殿の天上には穴があき、海水が流入してくる。
ラヴォスも海水に飲まれ、水没していくが、ジールの思念とラヴォスのエネルギーが共鳴、呼応し、海底神殿はジールと融合をし始めた。


海底神殿は生き物の様に変異し、ラヴォスを下から包み込むように浮上をし始めた。
神殿の底には無数の穴が空き、海水を排出しながら浮上する。
ジール神殿は海面を上に抜けると、上空へと浮上していく。

クロノ達は破壊され落下していく天空都市と
ラヴォスと共に浮上するジール神殿を見ていた。

突如、クロノ達の体が光輝き消滅しはじめた。

何が起きてるのか分からなかった。
何が原因で消えようとするのか、その原因が判らないと防げない。

消えようとしているのはクロノ達だけではなかった。この国の人々も消えようとしている。
皆がパニックに陥いりながら消滅した。


次の瞬間、見覚えのある光景がそこにあった。

ジールが念力でクロノを高く持ち上げ始めた。、ラヴォスの標準がクロノに合い、光が発射される。瞬間、カエルがジャンプしてクロノを抱えて救出した。

カエルはクロノを抱えてフロアを出るとクロノをワープ台においた。
カエルはマールとルッカもすかさず助けてワープ台に追いた。

ターゲットを見失ったラヴォスの目は動かなくなり、しばらく鎮まった後、
光を全身に集め始めた。

このままでは光の柱が世界に降り注ぐ。その事を知っていたカエルは動いた。
カエルは咄嗟にグランドリオンでラヴォスの目を攻撃した。
攻め込み、ラヴォスの照準に合わない角度から聖剣を突き立てる。
ビームは飛ぶもののカエルは寸前で当たらない。
ラヴォスの目玉をくり抜きかけたとき、ラヴォスから光のエネルギーが消えた。


ラヴォスの目玉の奥まで剣を侵入させ、えぐりだした。

ラヴォスは倒され、反応がない。

カエルはラヴォスがある程度空洞になっている事に気付いて奥に入った。

その先でもうひとつの生き物を見つけた。
ラヴォスの外殻から血管が伸びてそれに繋がる上半身だけの何かがいる。

カエルは咄嗟に攻撃を加えるも上半身の何かからエネルギー派を受けて近づけない。
剣を振りまくるが、衝撃波で近づけない


そこに魔王が現れて、上半身の何かを魔法で巨氷漬けにすると火で燃やし、爆発を起こし、落雷を落とした。

魔王の攻撃で怯んだその隙にソイソーが現れ連続斬りを浴びせ、上半身の何かがのけゾッた瞬間、カエルのグランドリオンによる攻撃が入る。

上半身の何かは倒れた。ラヴォス外殻と繋がる血管と上半身がちぎれ、管の穴から泡が吹くと、上半身から脱皮するように、更に何かが現れた。

まるで宇宙服を纏ったかの様な人型が現われると、人型はラヴォス外殻を突き破り、天空と登り宇宙へと消え去った。

人型は何処へ行ったのか、ラヴォス外殻の残骸のみがラヴォスの亡骸として地球に残った…

ラヴォスを倒して未来を平和にしてしまうと、クロノ達は荒廃した未来の世界には行かないシナリオになり、時の最果てにも行かないシナリオになり、これまでの全ての冒険、行動もなかった事になるだろう。
ラヴォスが消失したその瞬間から、この時代でのカエルの活躍も魔王の活躍も無かった事になる筈である。

だがクロノ達は消えなかった。

消えない原因があるとすればクロノ達が今倒したラヴォスは未来を滅ぼしたラヴォスではなかったということ。
古代のラヴォスとは異なるもう一体のラヴォスが地殻に存在していることになる。

クロノ達の役目はまだ終わっていない…


-

ジールがラヴォスに操れているなら、なぜ魔神機を守ろうとしたのか、ラヴォスを封印するかの様に神殿と同化して抱えたのか、この答えを矛盾なく成立させるには、もう一体のラヴォスがジールを操り、ラヴォスに圧力を掛けていた等の理由が必要になる。

たとえばラヴォスはラヴォス同士で互いにエネルギーを奪い合う関係にあり、互いに敵同士だったとする。
知恵の働いたもう一体のラヴォスが地球の裏側からジールを操ったりしたのかもしれない。

そのラヴォスの目的はラヴォスの死か、あるいはエネルギーを使い果たして眠りについて貰う事を希望していた。という設定にしてみた。


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■クロノトリガー

-

〜タイムリープ〜

クロノ達はタイムリープに巻き込まれることで結果的にラヴォスを撃退することができた。ロボ、エイラ、ボッシュの犠牲を出したが…

天空都市はラヴォスというエネルギー動力源を失い、落下していくものと思われたがもう一体のラヴォスの存在で天空都市は落下する事なく維持された。


ジールは国民に対して土下座をした。
危険だと承知していながら、計画を強行したこと。
ジャキの人生に多大な迷惑を与えた事を謝罪した。

暴君ではないジールの姿が国民にどう見えるかは様々であるが、ジールは王冠をダルトンに差し出した。
だがダルトンは拒んだ。

ダルトンは言った。
『ラヴォス神を敬い、コントロールできるのはジール様とその一族しかありえません』

『今後はラヴォス神をもっと敬い。我々は謙虚にならないといけません』

ダルトンによる演説で国民は納得し、都市へと戻っていった。

ダルトンは最初から二体目のラヴォスの存在に気付いていたから冷静だった。

〜時の最果て〜

ルッカ
「みんな覚えてる? 光に包まれた私達がタイムリープしたこと。」

マール
「覚えてるよ。私達みんなあれで過去に戻ったもの。ジール国の人々も光ってたし。

ルッカ
「ただ過去に戻った訳じゃなかった。戻る前の記憶もあったし、未来の記憶もあった。

マール
「私達、ジールのみんなも、あの時一度死んだよね…
 ラヴォスの光を防ぎきれず、みんな、死んだ。山もなくなるくらいに壊されて、バリアの外は10mの崖ができたみたいになって、全てが無くなって、みんな、みんな、殺された。


ルッカ
「あの時の悲劇をジールの人々が覚えていたからこそ、その後、ジール王国はひとつに纏まってくれた.。歴史の変化にも気を配ってくれて私達が生まれない世界にならない様に配慮してくれた。

マール
「全てはあの光のお陰なんだよね…

ルッカ
「だけど光がなぜエイラ達が死ぬ前の時間に戻してくれなかったのか…

マール
「ロボやボッシュ、エイラには私達、もう会えないのかな…

ルッカ
「私は会えると思う。あの光に時を戻す力があるなら、私達も時を戻せるかもしれない。エイラ達を助けられるかもしれない。その方法があるとすれば、やっぱりあの光しかないと思うの…


ルッカ 
「私達、未来に行ってみない?」

ルッカ
「古代ジールが破滅しなかった分、未来は大きく変わったはず、もう一体のラヴォスはジールの人々が抑え込んでたり、倒してくれているかもしれないし、私達の現代も魔族に支配されてないかもしれない。もしかしたら、光の正体も解明されているかもしれない。光の謎が解ければエイラ達を助ける事ができるかもしれない…

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