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自分より大切な存在


お友達がいる。

高校生からの仲で、もう10年の付き合いになるね、とお互い驚きながら居酒屋でそう話した。
時間はズルなんてしてないし、ただ淡々と同じペースで流れているだけなのに、どうして10年という時の流れに驚いてるんだろう、と後から考えると不思議だなぁ。

そんなお友達は今年結婚して、新しい家族が増えたらしい。名前はつぶ。

つぶさんでも、つぶくんでもなく、「つぶ」とのこと。
「なんでつぶなの?つぶ貝に似てるの?」って聞いてみたけど、違うらしい。

「つぶ」の写真を見せてもらったけど、なんらかの爬虫類だった。
トカゲなの?ヤモリなの?と聞いてみたけど、彼女もどっちなのかわかっていなかった。
トカゲもどきとか言ってたけど、それがトカゲなのかそうじゃないのか、忘れてしまったらしい。
私のお友達はかなり忘れっぽい。



「つぶ」の性別はわかっていない。
「つぶ」という生き物の生態として、オスかメスかは小さいタマタマの有無で判断するらしい。だけど小さい頃はタマタマの存在感が薄いらしく、オスかメスかの判断は「つぶ」が大人にならないと難しいらしい。

ちなみに、「つぶ」は年齢も不詳。
ブリーダーさんによると繁殖した日はある程度わかるけど、それにしては「つぶ」は個体として小さすぎるらしい。
ブリーダーさんの主張:2歳
個体の大きさ:1歳
とのこと。

無理なく食べられるコオロギの量からの判定:1歳未満
で、この説が濃厚らしい。


本当に何もかも不詳な「つぶ」
分類不詳、性別不詳、年齢不詳。
氏名と住所くらいしか明らかじゃない。

たぶんね、分類なんて調べたら簡単に出てくるんだけどね。
トカゲもどきなんだから、今すぐsafariの検索欄にそれを打ち込めば、いくらでも情報なんてでてくる。

だけどお友達も私も、それをたぶん今後もしない。


私のお友達は、「つぶ」のことが愛おしくてたまらないらしい。
愛おしくて愛おしくて、もうどうにかなってしまいそうらしい。

「どうにかってなに?破裂でもするの?」

って聞いたらめちゃくちゃ笑ってくれたけど、本当に破裂でもするんじゃないかってくらい、「つぶ」のことを話すお友達は、優しくてパンパンに満ち足りた顔をしてた。


自分より大切な存在がいる人って、ほんと優しい顔をするよね。
元々魂からきれいなんじゃんってくらい優しくて大好きなお友達だったけど、
今後もっとこの優しさはパワーアップするんだろうな、と思った。

大切な存在を慈しむと、なんかもっと優しくなれるよね。

大切な存在であれば、情報の正しさなんかどうでもよくなるのかもしれない。
愛情ってすごいよね。



「つぶ」の話をしてる最中、なんの脈絡もなちけど
私とお友達になってくれて本当にありがとう
と心から思った。

いつか「つぶ」に会わせてね。
生のコオロギ捕まえていくからさ。


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