早稲田大学人間科学部eスクール「細胞組織学」レポート1
こちらのレポートは、早稲田大学人間科学部eスクール2年生在学中の2006年秋に受講した「細胞組織学」という授業の課題で書いたものです。
リベラルアーツ(全人的教育)を推進する早稲田大学人間科学部は、他学科の科目も受講できれば、他学科教員のゼミにも所属できることになっています。私は人間情報科学科の所属でしたが、この制度を利用して、積極的に他学科(健康福祉科学科、人間環境科学科)の科目も受講するよう心懸けました。
もっとも最初は所属する情報系の科目を中心に受講していましたが、コンピューターやインターネットに関する科目は既知のものが大半でした。そのような科目に学費を払うのがちょっとむなしくなり(eスクールの授業料は1科目単位ということもあって)、あまり縁のなかった分野の科目を受講することにしました。「発達生物学」「生理学」、そして、この「細胞組織学」あたりの科目は、将来、SFなどの作品を書くための知識が増せば……といった下心をもって受講しました。
とくにこの「細胞組織学」は、通常の講義科目だけでなく、4日間ほどキャンパスに通い、毎日顕微鏡を覗いては細胞の絵をスケッチする実験調査研究法(実調)という集中講義にも参加しました。つまりスクーリングによる授業ですが、この授業では電子顕微鏡を見せてもらえるとのことで、これも受講の大きな要因となりました。
集中授業の際は、最後に電子顕微鏡の見学をすませた後、担当のK先生に研究室に招かれ、おいしいアップルパイをご馳走していただきました。さらにその後、eスクールの懇親会が学内であったときには、有志がK先生の研究室に押しかけて二次会を開き、研究室の冷蔵庫にあったビールを空にして、さらに隣室の先生の冷蔵庫からもビールや日本酒をいただいてくる……といった大人のキャンパスライフを楽しみました(笑)。
eスクールにおける「細胞組織学」のK先生の授業は、ちょっと変わっていました。eスクールの授業スタイルは、
1)専用スタジオでパワーポイントのスライドを表示した大型ディスプレイの前で教員が講義をする放送大学スタイルのもの
2)eラーニング用授業コンテンツを使ってパソコンで自作した授業コンテンツを使うもの
3)通学制の授業を録画したもの(通学制の学生と一緒に受講しているような気分が味わえる)
あたりに大別されますが、K先生は、スタジオのTVカメラの前に黒板を置き、そこに講義の内容を板書していくというスタイルを採用していました。古典的な授業をネットを通じて見せてくれていたわけですが、資料の配付もなく、受講生は必死にノートを取らなくてはいけません。「書くことで記憶する」という古典的な方法で授業を展開していたのでしょうが、これはこれで普通の大学で学んだ経験のなかった私には、とても新鮮な授業でした。
レポートは2回あり、これは1回目のものです。「上皮組織の特性について説明し,分類,論述せよ」という課題でしたが、ノートを取っていれば書ける内容でした。しかし、自分の字がひどくて読めないところもあったりしたため(このようなときは講義コンテンツのバックナンバーを見ることもできる)、他の参考書やWebサイトも参考にして書き上げたものです。基本的にノートのまとめなので、とくに面白いといったものではありません。それでもよろしければ、ご覧になってみてください。
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細胞組織学 01クラス レポート
課題文:上皮組織の特性について説明し,分類,論述せよ
所 属:人間情報科学科
学籍番号:*********
氏 名:菅谷 充
上皮組織の特性と分類
●はじめに――組織とは?
上皮組織という言葉は,「上皮」と「組織」の2語からなっている。このうち組織という言葉は,英語ではtissueというが,この英単語には「絹のような薄い織物」「薄い布や紙が織り重なっている状態」という意味もある。つまり,生物学的な意味での組織も,細胞が幾重にも織り重なったり,集合した状態のものだと考えて問題はない。さらに精細に述べれば,「組織とは,細胞と細胞間物質が組み合わさってできたものである」ということになる。
また組織には,上皮組織,結合組織,筋組織,神経組織の4種類の組織があり,これらは4大組織と総称されている。このうち,これから述べる上皮組織は,細胞間物質が極めて少なく,細胞同士の密着度が高いところに特徴がある。反対に結合組織は細胞間組織が非常に多い。これらの現象は,それぞれの組織が果たす役割と大きな関連を持っている。
●上皮組織とは?
上皮組織とは,からだの内外の表面を覆っている組織である。からだの内外の表面とは,空気と接しているからだの表面(皮膚など)だけではない。消化器系(口腔,食道,胃,十二指腸,小腸,大腸,直腸,肛門など),呼吸器(口腔,鼻腔,気管支,肺など),泌尿器(腎臓,尿管など),生殖器(精嚢,輸精管,子宮,卵巣,卵管など),分泌腺(涙腺,汗腺など)を含む内腔もまた,外部と接点を持つ表面である。われわれヒトも,ナマコと同じような構造をしているのだと考えれば,わかりやすいのではなかろうか。
●上皮組織の性質
上皮組織は前述したとおり,細胞間組織が少なく,細胞相互の接着性が非常に強いのが特徴となっている。シート状の上皮組織には,上下の極性があり,皮膚や内腔の外部に接する表側を自由表面,または遊離縁という。また裏側は,基底膜(または基底板)を介して結合組織と接している。
●上皮組織の機能と,その分類
上皮組織の細胞間組織が少なく,細胞同士の密着度が高いのは,その役割と大きな関連がある。それは上皮組織に,さらに内部の組織を保護・保持する役目があるからである。
たとえば上皮組織の代表でもある皮膚を見てみよう。ヒトの場合,皮膚は柔らかな鎧のような役割を果たし,内部の組織を衝撃や傷から守る役目を担っている。サイやゾウ,ワニなどのように,さらに硬い皮膚を持つ動物もいる。
また皮膚には,体内の水分を保持する役目も持っている。たとえば,陸上に住む爬虫類のヤモリやトカゲと水中に棲む両生類のイモリは,どちらも似た形態をしているが,イモリが水中でしか生活できないのは,皮膚が薄く,体内の水分を保持する機能を持っていないからである(イモリは皮膚呼吸をするため,皮膚表面に粘液を出して保湿を維持している)。
上皮組織は,皮膚に代表される保護,保持の機能のほかに,吸収(小腸の粘膜),排泄(腎臓),分泌(汗腺,涙腺,内分泌腺),呼吸(肺胞でのガス交換),感覚受容(眼=視覚,鼻=嗅覚,鼓膜=聴覚,舌=味覚,皮膚=触覚)などの役割を持つ。また,これらの機能に応じて,被蓋上皮,腺上皮,吸収上皮,呼吸上皮,感覚上皮と分類されることもある。
●上皮組織の発生学的な分類
上皮組織を発生学的な由来の見地から分けると,内胚葉由来,中胚葉由来,外胚葉由来の3種類に分類される。
からだの表面を覆う皮膚は,外胚葉から発生したものであり,狭義の意味で上皮(epithelium)と呼ばれている。消化器系や呼吸器系の器官も同じ上皮であるが,内胚葉由来の組織である点に違いがある。
血管やリンパ管,心臓などの表面を覆う上皮組織は,とくに内皮(endothelium)と呼ばれている。これも上皮にふくまれる組織であるが,発生学的には中胚葉由来のものである。
胸膜や腹膜などの体腔の表面を覆う上皮は,やはり中胚葉から発生したものだが,とくに中皮(mesothelium)と呼ばれ,内皮とは区別されている。
●上皮組織の構造上の分類
上皮組織には,細胞の配列と形状による分類法もある。
まず,すべての細胞が基底膜に接している上皮組織は,総称して単層上皮と呼ばれている。
単層上皮には,細胞の形状が扁平な単層扁平上皮(血管,リンパ管,胸膜,腹膜,肺胞壁など),細胞の形状がサイコロ状の立方体をした単層立方上皮(分泌腺,導管など),細胞の形状が円柱状の単層円柱上皮(胃や小腸の粘膜など),円柱状の細胞の先端に繊毛のある単層線毛円柱上皮(運動性を持つ呼吸器系の鼻腔・気道・気管,卵管など)がある。
また単層上皮のなかには,一見すると後述の重層上皮に見えるが,実際には全ての細胞が基底膜に接している単層上皮であることから,多列上皮と呼ばれているものもある。
単層上皮に対し,細胞が複数の層に織り重なり,積み上げられた形状の上皮組織もある。こちらは重層上皮と総称され,細胞の形状によって重層扁平上皮,重層立方上皮,重層円柱上皮に分類される。細胞が重なっているために,単層上皮に比べて丈夫な点に特徴がある。重層上皮は,傷がつく機会の多い皮膚や食道などの表面に多く使われている組織でもある。
なお,重層上皮のなかに,とくに移行上皮と呼ばれるものがある。これは尿路系の膀胱や尿管内部の表面などに多くみられる上皮であり,内側の膨張・収縮に合わせ,入れ子構造のようになった細胞同士が,スライド移動できる構造となっている。
以上
参考資料
記述については授業のノートを基本にしたが,他に以下の書籍,Webサイトも参照。
(書籍)
『新・細胞を読む――「超」顕微鏡で見る生命の姿』,山科正平,
講談社ブルーバックス,2006.
(Webサイト)
関西医科大学 解剖学第1講座 組織学総論講義
http://www3.kmu.ac.jp/anat1/edu/histology/general/index.html
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※画像は、レポートを書いたeラーニングの「細胞組織学」ではなく、オールスクーリングの集中授業「細胞組織学実験調査法」で光学式顕微鏡を使って見た細胞をスケッチしたものです。初日は色鉛筆を使っていたのですが、時間がかかるので、2日目からは水彩絵具を持ち込みました。絵具を持ち込んだ学生は初めてだったそうで、担当のK先生があきれていました(笑)。
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