早稲田大学人間科学部eスクール「細胞組織学」レポート2

 こちらも早稲田大学人間科学部eスクール2年生の秋学期に受講した「細胞組織学」の第2回レポートです。1学期に2回のレポートがあり、これが期末課題となりました。

 前回も紹介したように、黒板にチョークで書かれる板書をノートに書き写すのがメインの授業で、それはそれで新鮮な授業でした。iPS細胞やSTAP細胞の話題についていけるのも、こんな科目を受講したおかげかもしれません。

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細胞組織学 第2回レポート
学籍番号:**********]
氏  名:菅谷 充

尿の生成過程に沿った腎臓の細胞組織学的構造

○腎臓の構造と役割

 腎臓は、天地10~12cm、左右5~6cm、厚さ3cmほどの大きさを持つソラ豆に似た形状をした臓器である。左右1対(計2個)で、血管で送られてきた血液から老廃物を濾過して尿をつくり、尿管に送り出す役目を担っている。尿の生産は、血液の濾過によって有害物質を除去するだけでなく、いちど濾過され排出された物質のうち、有用なものを再吸収することで、生体内の水や電解質を平衡に保つ役割も果たしている。
 腎臓は、外側に位置する皮質(腎皮質)と、内側に位置する髄質(腎髄質)とに分かれている。
 皮質には、尿を濾過する腎単位(Nephron,ネフロン)が集まっている。ネフロンは、腎小体と尿細管の集合体であり、その数は、ひとつの腎臓だけで、100万個から200万個になるともいわれている。
 また腎小体は、糸球体とボーマン嚢からなり、この部分で血液の濾過がおこなわれている。髄質は、腎臓の内部にある空洞部の腎同を囲んでおり、内側に向けて多数の腎錐体が延びている。腎錐体は尿細管と尿細管が集まった集合管で、先端にある乳頭(腎乳頭)から出た尿を腎洞内の腎杯が受け、腎盂を経て尿管に送り出されていく。
 この尿生成の過程を、次の項から、さらに詳細にたどってみることにする。

○血液から原尿へ――糸球体・ボーマン嚢間での濾過

 腎動脈で送られてきた血液は、輸入細動脈から腎小体内部の糸球体に送られる。糸球体は、毛細血管が文字どおり糸の球のように絡まりあったもので、ここで血液が濾過され、ボーマン嚢に送り出されていく。
 血液の濾過を担当するのは、糸球体とボーマン嚢を隔てる3層の細胞膜である。糸球体を形づくる毛細血管の内側は、無数の小孔が開いた内皮細胞で覆われている。
 ボーマン嚢に接する血管の外壁は、ボーマン嚢の表面と同じ足突起細胞(ポドサイト、たこ足細胞)で覆われており、長く延びた突起の間にも、やはり小さな孔が開いている。
 内皮細胞と足突起細胞の間には基底膜があり、この3種類の細胞が、血液を濾過するフィルターの役割を果たしている。この小孔のフィルターを通過できるのは、アミノ酸や糖、イオン、水分などの分子量が小さな物質だけで、大きな血球やタンパク分子は通過できない仕組みになっている。
 糸球体からボーマン嚢に濾過したものが原尿だが、その量は1日で200リットルにもなる。そのまま排出をつづけていたら、人間は、すぐに干あがり、死んでしまうことだろう。実際に排出される尿は、約1パーセントの2リットル/日程度だが、残る99パーセントの原尿は、腎臓内で再吸収され、血管を通じて体内に戻されていく。なお、糸球体とボーマン嚢の間にある3層の細胞膜のフィルター部分は、血液尿関門とも呼ばれている。

○有用な成分の再吸収――尿細管と「ヘンレのわな」のはたらき

 ボーマン嚢で受けた原尿は、長い尿細管を通って腎杯から腎盂に送られていくが、その途中で有用な成分の再吸収がおこなわれる。
 尿細管は、腎小体に近く、やや太い婉曲した部分が近位曲尿細管と呼ばれている。その先に接するやや細い直線部が、近位直尿細管である。
 これら近位尿細管の内腔は、消化器系の小腸内部を覆っていた吸収上皮細胞に似て、長い微絨毛に覆われている。この微絨毛は、尿細管を通過する原尿と接する面積を増やすためのもので、ここで水やアミノ酸、糖などが再吸収され、血管に送り返されていく。また、ここには再吸収のためのエネルギーを供給するミトコンドリアも存在する。
 近位尿細管には、ヘンレのわな(ヘンレループ)と呼ばれる長い尿細管がつづいている。ヘンレのわなは、下行脚によって皮質部から髄質部まで下降すると、突然Uターンし、上行脚となって髄質方向にもどり、遠位尿細管に接続する構造となっている。
 ヘンレのわなの上行脚部では、塩化ナトリウム(NaCl)が盛んに吸収されるため、周辺の髄質の浸透圧が高くなる。その結果、下行脚部から水分が吸収されるため、下行脚部の浸透圧が上昇する。しかし、下行脚部の上部には、絶えず新しい原尿が流れ込むため、浸透圧はもとに戻るが、その一方、ヘンレのわながUターンする底の部分では、浸透圧が高い状態に保たれることになる。
 この状態が繰り返されることにより、ヘンレのわなと周辺の髄質には浸透圧の勾配ができ、そのため、髄質の間質も浸透圧が高い状態に保たれる。

○尿生産過程の監視装置――緻密斑と傍糸球体細胞

 ヘンレのわなを出た尿は、遠位尿細管(遠位直尿細管と遠位曲尿細管)を経て、腎小体の糸球体につながる細動脈に接する。遠位尿細管のこの部分は、緻密斑と呼ばれる文字どおり緻密な構造(上皮細胞が細胞嵌合を失って小さくなり、核が密集して見える)を持つ細胞でつくられている。緻密斑は、それぞれのネフロンの単位が、どのように働いているかをモニターする役割を果たしているものと考えられている。
 また、糸球体に入る輸入細動脈、糸球体から出る輸出細動脈に接する部分は、傍糸球体細胞と呼ばれる細胞に変化している。これは輸入細動脈の平滑筋が変化したもので、血圧を上昇させるレニン(Rennin)という物質を出す。つまり傍糸球体細胞は、内分泌腺としての機能を果たしていることになる。なお、緻密斑は傍糸球体細胞の一部とみなされている。
 細密斑や傍糸球体細胞は、ネフロンでおこなわれている血液から尿を排出する循環機能の監視をおこないながら、血圧をはじめとする尿の生産活動のコントロールも担当していることになる。

○腎臓からの排出――集合管から腎杯、腎盂、そして尿管へ

 糸球体に出入りする細動脈に接した遠位尿細管は、他の尿細管と合流し、太い集合管となって、ふたたび髄質に戻っていく。髄質部は、ヘンレのわなが作り出した浸透圧勾配によって浸透圧が高まっているため、集合管でも水と電解質が再吸収されることになる。
 こうして人体に必要な成分は、最後の最後まで再吸収され、不要なものだけが凝縮されて、腎錐体の先端にある乳頭から腎杯に流れ出し、腎盂を経由して尿管に送られることになる。
 以上が、腎臓内で尿が生産される過程である。

○参考資料
 Oicの授業を聴講しながら取ったノートを基本に、以下の資料を参考にした。
・山科正平(北里大学医学部),新・細胞を読む――「超」顕微鏡で見る生命の姿,講談社ブルーバックス,2006.
・坂井建雄(順天堂大学医学部解剖学第1),初心者のための腎臓の構造(解説),社団法人日本腎臓学会会誌 (0385-2385)43巻7号 Page572-579(2001.10).
http://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/43_7.pdf
・その他、多数。

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