自由研究「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャルはなぜ面白いのか」

『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』、毎週楽しく聴いています。

田中樹さんの「『なんでSixTONESANNはこんなに面白いのか』っていう自由研究良くない?」という以前の放送での発言を受けて、十数年ぶりに自由研究をやってみました。
気付いたら8月終わっていましたが、夏休みの宿題は9月入ってからが本番だと思っているので……。

あくまでおふざけの文章なので、ちゃんとした学生さんや研究者の方は真面目にツッコまないでください。間違った記述もあると思うので、話半分で読み飛ばしていただくようお願いします。

「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャルはなぜ面白いのか」


1.目的

本研究(?)では、様々な「面白さ」に関する理論や研究と、SixTONESANNにおける共通点を探し、「なぜSixTONESANNは面白いのか」について考えていきます。


2.SixTONESANNにおけるユーモア

「面白い」という言葉には様々な意味が含まれており、英語でも「fun」や「interesting」など様々な言い方が存在します。
今回はその中から、特に「humor(ユーモア)」に関する3つの主要な理論である「優越理論」「不一致理論」「エネルギー理論」(Martin, 2007; 雨宮, 2016)に着目します。
では、各理論とSixTONESANNとの共通点を見ていきましょう。


① 優越理論
優越理論とは、他者の欠陥や失敗に対して優越感をもち、嘲笑することがユーモアの基礎となるという考えです(Keith-Spiegel, 1972)。

SixTONESANNでは、リスナーからのメールによるメンバーいじりがしばしば見られます。
例えば、2021年4月11日及び同年5月15日放送回では、樹の細身の体型について、リスナーのメールの中で深海魚のリュウグウノツカイにたとえられました。
翌週の5月22日放送回では、野球の始球式に参加した樹について「マウンドにもやしが生えているのかと思いました。」といじられていました。

優越理論では、加害者(いじる側)に対して肯定的であり、被害者(いじられる側)に対して否定的であるほど、 そのユーモア刺激によってユーモアを生起させられると仮説されています(上野, 1992)。
これをSixTONESANNに置き換えると、「加害者のリスナー=私たちと『同じ』立場の一般人でありラジオの聴き手」、「被害者のSixTONES=私たちと『違う』立場のアイドルでありラジオの話し手」という図式が成立することで、より面白さが生じているということになります。

また、SixTONESANN内ではこうしたリスナーvsSixTONESの構図の他に、SixTONESメンバー内でのいじりも見ることができます。
2021年7月10日の放送では、髙地のジングルについて、樹とジェシーが内容の虚偽(「あっちぃ~」と言っているのに冷房の効いた車内にいる、「水風呂入りまーす」と言っているのに実際は入っていない)を責め立て、喋り方を物真似したり京本大我作の楽曲ジングルとリミックスしたりするなどしていじっていました。

優越理論に基づいた場合、こうした「いじり」の存在が、SixTONESANNにおける「ユーモア=おかしさ、面白さ」が創出される要因のひとつであると考えることができます。


② 不一致理論

不一致理論は、通常は全く異種であり、関連がないと思われる思考や概念や状況が、意外な方法で結び合わされることがユーモアを生起させるとする考えです(上野, 1992)。この不一致理論は、さらに2つのモデルに分けることができます(Suls, 1983)。

ひとつは、まず不一致(=不適合)があることを認識し、その後その不適合が解決されることでユーモアが感じられるという「不適合一解決モデル」(Suls, 1972) です。
もうひとつは、不適合そのものがユーモアの基であるという考えの「不適合モデル」 (Nerhardt, 1970)です。

SixTONESANNにおける「不適合一解決モデル」としては、2021年1月16日放送回の事例があります。
ジェシーが意味もなく「ごめんな西郷隆盛」を乱発することで発生した不適合が、リスナーからの「西郷隆盛のイニシャルがST(※)である」という指摘によって解決されました。
また、同年6月12日の放送の、樹の「家の部屋を余らせていることがカッコいい、モテる」という独特な価値観の話(不適合)に対する、慎太郎の「キモイよ?」「いらなくない?」というごく一般的な反応も、不適合の解決と考えられそうです。

※ST:放送当時、SixTONESはグループ名にちなんだアルバム「1ST」(リード曲「ST」)のリリース月であり、STをもじったプロモーションを多く行っていました。

一方の「不適合モデル」としては、2020年10月10日放送の「ミステリー」をテーマにした慎太郎のジングルで、慎太郎ではない人の声が流れたものの、結局誰の声だったのか解決しないまま今に至っている事例があります。
このように、ジングルは制作したメンバー本人が不在のため、不適合が解決されないケースが多くあります。
ジングル以外では、2021年8月21日放送回で、京本さんが放送中にも関わらず、ブースに置いてあったさすまたを振り回して遊び出し、場をかき乱した事例がありました。

以上の事例ように、SixTONESANNの面白さは、この2つのモデルが共存することで成立していると考えることができます。

特に「京本大我のオールナイトニッポン」のコーナーは、京本さんの不可思議な言動によって次々と生じる不適合に対して、樹がツッコんだり、時には諦めて放置したりすることで、その不適合が解決されたりされなかったりという事象が立て続けに発生します。すき。


③ エネルギー理論

エネルギー理論とは、放出理論とも呼ばれ、おかしさと笑いにおける快を、内的なエネルギーや覚醒水準と関連付けて説明しようとする理論です(雨宮, 2016)。Spencer以降本格的に展開されましたが、それを継承して独自のユーモア論を展開したのがFreud(1905, 1970)です。
Freudの理論を簡潔に言うと、「心的エネルギーの消費が節約されることで快感を得、その節約された余分なエネルギーが笑いとなって放出される」というものです(柴原,2006)。
少し分かりづらいので、具体的にSixTONESANNに当てはめて考えてみます。

例えば、2021年9月11日の菊池風磨さんゲスト回ですが、この回はチ〇チ〇の皮の話など、いわゆる下ネタが頻繁に登場しました。
私たちの性的な欲求は通常は理性により抑圧されています。
そこで、こうした性的なジョークを聞くことにより、その抑圧のために費やされるはずだったエネルギーが節約されます。
それにより余ったエネルギーが笑いのためのエネルギーになる、というのがFreudの「機知」のユーモアについての考えです。

あるいは、2021年5月1日放送回でジェシーが「寝っ転がりながら」を言えず、「ねっこりながら」「ねっころがらりながら」と混乱してしまう出来事がありました。
これはFreudの分類によると「滑稽」のユーモアに該当すると考えられます。
私たちは物事を認識するために多くの表象を必要とします。しかし、幼児がするような未熟・素朴な動作や話に対しては、期待していたことが起こらず、認識のために準備していた表象についてのエネルギーが節約されます。
その節約されて余ったエネルギーが放出され、笑いが生じるということになります。


3.その他の観点

以上で、ユーモアに関する理論を軸としてSixTONESANNの面白さの理由を検証しましたが、ここからは少し異なる観点から考えてみたいと思います。

① 笑い声
SixTONESは笑い声に特徴のあるメンバーがいます。
例えばジェシーは、樹から「ホットドック好きそうな笑い方」と評され(2018年7月6日NHKBSプレミアム「ザ少年倶楽部」等)、ANN番組内でもリスナーから「悪魔の笑い方」と評されました(2020年4月11日放送分)。
そしてそのジェシー(2021)から「笑い方が変」と言われるのが高地優吾です。
さらに番組中には、メンバーの他にブース内にいる構成作家(トゥルさん)の笑い声もしばしば聞こえます。

他者の笑い声は、笑いを促進し、物事を面白く感じさせる効果を持ちます(Levy & Fenley,1979; Martin & Gray,1996)。
つまり、SixTONESANNにおいても、このようなメンバーやスタッフの印象的な笑い声によって、私たちリスナーは笑いを誘われ、番組をより面白く感じるのだと考えられます。

② 集団語
SixTONESANNでは、番組内のみで使われる独自の言葉がいくつか存在します。例えば「リトルストーン 」、「ひえおじ 」、「ファミサブ作家 」などです。
このような、特定の集団のみで通用する言葉は「集団語」と呼ばれることがあります。
この集団語の機能として、それを使うことで連帯感や親愛感を生み出し集団の結束力を強めるというものがあります(渡辺, 1981)。
Baumeister & Leary (1995)によると、人は他者や集団と社会的絆を形成したいという基本的な所属欲求を持っています。
リスナーは、SixTONESANNを継続的に聴き、これらの集団語を理解・使用していくことを通じて、この所属欲求を満たし、ポジティブな感情を得ることができるのです。

4.考察

アイドルファンが自分の好きなアイドルについて、パフォーマンス等を考察・分析した文章は数多く存在します。
しかし、小城(2004)によると、『作品の評価』はファン心理の主軸となっているものです。
つまりファンは、元々アイドルのパフォーマンス等についてポジティブな評価を持っているはずで、それゆえにこうしたファンが行うこれらの考察は客観性に欠ける可能性があるという懸念があります。
本研究の意義は、この客観性の欠如を補うために、先行研究や既知の理論を根拠として、検証を行った点にあると考えられます(結局主観まみれの文章にはなりましたが)。

しかしながら、今回触れることのできた「面白さ」は、ごく部分的なもののみです。前に述べたとおり「面白さ」にはたくさんの意味が含まれています。
ここでは社会学や社会心理学的観点からの検証を中心に行いましたが、もっと他にも例えば音声学や生理学的な分析もできるかもしれません。
表題の「なぜSixTONESANNは面白いのか」という問いに対して更なる検証を進めるためには、こうした多方面からの分析を行うことが今後の課題となると考えられます。


おわりに

色々ごちゃごちゃ書きましたが、個人的には面白さって理屈で説明できない部分もあるよね、と思っています。
私はきっとSixTONESが日本国憲法を音読しているだけでめちゃくちゃ笑うだろうし、たとえ1時間30分ずっと無言ラジオだったとしてもTwitterで大盛り上がりできる自信があります。
それに多分、ラジオの内容を文字起こしして台本にして、それをSixTONESではない他の人が、一字一句違わず読んだとして、同じように面白くはならないはずです。
にもかかわらず、こんなに長々と文章を書いて結局何が言いたかったかというと、「『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』面白いからみんな聴いて!」という一点に尽きます。
どうかSixTONESANNが長く愛され続いていく番組になりますように。

最後になりましたが、この記事を書くにあたって、過去の放送内容を思い出すのに、たくさんのリトルストーンの方のツイートやブログを参照させていただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。

引用文献
雨宮俊彦(2016). 笑いとユーモアの心理学: 何が可笑しいの? ミネルヴァ書房
Baumeister, R. F. & Leary, M. R. (1995). The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation. Psychological Bulletin, 117(3), 497-529
Freud, S. (1905). Der Witz und seine Beziehung zum Unbewussten. Fischer Taschenbuch Verlag. (中岡成文・太寿堂真・多賀健太郎(訳)(2008). フロイト全集第 8巻 岩波書店)
Freud, S. (1928). Der Humor. International Journal of Psychoanalysis, 9, 1-6. (高橋義孝・池田紘一(訳)(1983). ユーモア フロイド選集7 日本教文社)
ジェシー (2021). JESSEのズドン!BLOG Johnny’s web https://www.johnnys-web.com (2021年8月8日)
Keith-Spiegel, P. (1972). Early conceptions of humor: Varieties and issues. In J. H. Goldstein & P. E. McGhee (Eds), The psychology of humor: Theoretical perspectives and empirical issues. Academic Press.
小城英子(2004).ファン心理の構造(1)ファン心理とファン行動の分類 関西大学大学院人間科学 : 社会学・心理学研究,61, 191-205
Levy, S. & Fenley, W. (1979). Audience size and likelihood and intensity of response during a humorous movie. Bulletin of the Psychonomic Society, 13(6), 409–412.
Martin, G. & Gray, C. (1996). The effects of audience laughter on men's and women's responses to humor. The Journal of Social Psychology, 136(2), 221–231.
Martin, R. A. (2007). The psychology of humor: An integrative approach. Academic Press.
Nerhardt, G. (1970). Humor and inclinations of humor: Emotional reactions to stimuli of
different divergence from a range of expectancy. Scandinavian Journal of Psychology, 11(3), 185-195.
柴原直樹 (2006). 笑いの発生メカニズム 近畿福祉大学紀要, 7(1), 1-11.
Suls, J. (1972). A two-stage model for the appreciation of jokes and cartoons. In J. H. Goldstein & P. E. McGhee (Eds), The psycho1ogy of humor: Theoretical perspectives and empirical issues. Academic Press.
Suls, J. (1983). Cognitive processes in humor appreciation.  In P. E. McGhee & J. H. Goldstein (Eds), Handbook of humor research (Vol. 1). Springer-Verlag.
上野行良(1992). ユーモア現象に関する諸研究とユーモアの分類化について 社会心理学研究, 7(2), 112-120.
渡辺友左 (1981). 隠語の世界 : 集団語へのいざない 南雲堂

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