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あくまで個人的な、「2022年の代代代」


 2022年の、そして、コロナ禍での3年間の、グループが進んできた道のりの到達点のようなセットリストだった。

 パンデミックが始まり、ライブができない状況下で各グループが対応を迫られる中、代代代は3年連続でアルバムをリリースしてきた。人気グループでさえ音源は年にシングル数枚のところも多い中で、これは驚くほど多作だ。しかも「∅」「The absurd is the essential concept and the first truth」は、代代代サウンドという無二の個性が刻印されながら、それぞれの作品としての強度の集中力に貫かれたアルバムだった。そして、2022年の怪物的傑作「MAYBE PERFECT」は、前2作の広げてきた代代代の音楽世界を更に押し拡げ、深化させた。

 「2022年の代代代」を振り返ってみて、網羅的に答えることは難しいけれど、その答えの1つとして、今の4人体制の音楽とステージの確立、ということを挙げてもいいのではないか。もちろん、ヒメカノンが脱退した昨年の7月以降、ずっと4人で活動してきたのだけれども、今年に入ってあったのが、「MAYBE PERFECT」のリリースと品川ワンマンだった。

 「MAYBE...」は、小倉ヲージという恐るべき才能が創り出した傑作であると同時に、梨央・宮衣紗羽・丹南志穂・出雲なるの4人にしか現実化できない音楽でもある。美しいキメラのような曲「THRO美美NG」の、聴いている間にバラバラに瓦解しそうな全体をかろうじて繋ぎ止め、音楽たらしめているのは、4人のスキル、経験、チームワークと曲への理解なのだと思う。「破壊されてしまったオブジェ」のソロパートには、4人それぞれの歌の魅力が結晶化されている。各々が自分でしか歌えないフレーズを歌っていて、「今」の代代代に魅了されているヲタクにとって宝箱の中の宝石のような曲だ。

 2022年のステージでもまた、4人は毎回必ず強い印象を残すライブをしてきた。品川クラブEx.でのワンマンは、小倉氏の共演が急遽取り止めになったことによって逆に(小倉氏には悪いが)、4人がステージで実現できること、4人にしか実現できないことを目撃することができた。あの、メンバー以外何もない小さな円形のステージ上で「MAYBE PERFECT」の世界が現実化されていた。個人的には、ギュウ農フェス初日、夜の野外ステージも思い出深い。ほぼ暗闇の中で踊っていた「まぬけ」、「融解」のラスト、東京の夜空に舞い上がって溶けていく、なむちゃんの歌声…。

 ここでやっと「ゆく代くる代」のセットリストに戻るけれど、冒頭とアンコールを「むだい」以前の曲で挟んで、「∅」以降の3作の曲を中心に持ってきた、といったところで、これはやはり、現時点の代代代の総決算的なセトリだった(、ということにしておいて下さい)。そして、初披露の「フォロミー」で2023年の代代代を垣間見ることができた。それにしても、本当に曲が多くなった。多いだけでなく、どれもが個性的で、どれもが代代代にしかできない曲だ。2022年、メンバー、プロデューサー、スタッフは、いい音楽、いいライブを創り上げることだけを目標に、本当に愚直に進んできたのだ。そのことがヲタクとして誇らしい。

 


 

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