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ブルゴーニュ大好き男に「どこの造り手が好き?」と訊ねられたとき、女はどう答えたらいいの?

あ、まず前提として、
貴女がブルゴーニュ大好き男を夢中にさせることが、
はたして貴女を幸福にするかどうか、それはまた別問題だけれど。
とはいえ、ブルゴーニュ大好き男たちは玉石混交ながら、
IT系の超かしこい男なども多く、
したがって、釣り師たる女たちにとっては、
なかなかあなどれない釣り場です。




では、そのテの男に「どこの造り手が好き?」と訊ねられたとき、
貴女は、どう答えれば理想的でしょう?
まず最初に、その男が大手ネゴシアンと
あとは高コスパなボーヌあたりのワイン、そして(毎週行くほどではないけれど)ワイン居酒屋が大好きな、
そんなタイプの場合は、
貴女はかれの目を見て、微笑みとともに質問など無視して、こう言いましょう、
「わたしと家飲みしましょ♪」
これこそまさに必殺の答えです。
そこでブルゴーニュ大好き男が、えへへ、とやにさがったならば、
貴女は、ひそかに「ボルドーグラスとブルゴーニュグラスの違い」を
覚えておきましょう。
これで成功まちがいなしです。




しかし、ここでは、もう少しハイブロウな(?)いわゆるブルゴーニュ好きの男の落とし方をお伝えしましょう。
この場合、貴女は、こう答えましょう、
「わたしは、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌのアリゴテが好き。
お店で見つけたらいつも飲むの、甘みがあって、やわらかくていつ飲んでもおいしいし、
そうそう、アリゴテだけでなくてピノも大好き♪」
もしも貴女がそう答えたならば、
その瞬間、ブルゴーニュ大好き男の目はきらりと輝き、
かれの貴女への恋心は、
20%増量になるでしょう。


なぜって、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌは、
あのDRCの共同経営者が設立したドメーヌで、家庭用のDRCと呼ばれていて。
独特の果実味と甘みがありつつ、辛口にしあがっていて、
そしてお値段がそこそこで、香りが華やかな、誰もがうなずく美味しさ、
そこがまたちょっぴりレアなワインみたいなふんいきをかもしだしていて。
しかも、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌが出しているアリゴテは
コート・シャロネーズという地域のスタンダードを、質高くふるまっていて、なおかつ、
「ブルゴーニュ・アリゴテ・ブーズロン」というAOCを認定させた功績もあって。
したがってドメーヌ・ド・ヴィレーヌこそは、
本来なんの接点もないまったく縁もゆかりもない別々の世界に生きている、
岸本セシル似の綺麗系OLと、玉もあれば石も混じっている、そんなワイン大好き男たちが、
この世界で唯一意気投合しうるワインです。



では、参考までに、危険な回答を挙げておきましょう。
ブルゴーニュ大好き男に「どこの造り手が好き?」と訊ねられたとき、
貴女がこう答えたとしましょう、
「ブシャール社のワインが好き♪ 週3回は、ワインバーで飲むの。」
その瞬間、ワイン大好き男の貴女への恋心は消えます、
なるほどブシャール社は、ブルゴーニュでも人気のネゴシアン、
価格もお手頃なものから高価なものまで幅広くあり、もちろんおいしいものの、
しかし、1987年に「法律で禁止されている補糖と補酸の併用」という不正事件が発覚し、
ブルゴーニュ・ワインの信用を失墜させた罪がありますから、ブルゴーニュ大好き男にとっては天敵なんです。
また、もしも貴女が「モメサン社のワインが好き♪」
と答えたとしても同様の効果をもたらすでしょう、
なぜって、モメサン家は1932年から85年もの間、特級畑「クロ・ド・タール」を単独所有していた名門だったものの、
しかし、2018年にはクロ・ド・タールも売却し、
いまではブルゴーニュだけではなくローヌまで販路を拡げたネゴシアンに転落しました。




またもしもたとえあなたがブルゴーニュが大好きで、
「わたし、ジョルジュ・ルーミエが好き、村名も飲むけど、
最高に好きなのはミュジニィ♪ 香りもいいし、飲み口もすっごくおいしいの。」
と、答えたとしたらどうでしょう?
なるほど、貴女の趣味は高く、
たしかにルーミエは、ラベルがchicであるのみならず、
味も最高においしいんですけれど、
しかし、貴女の答えを聞いて、ブルゴーニュ大好き男はきっとおもうでしょう、
(なんだよ、お高くとまった女だな、カネかかりそう)って。




貴女が、ブルゴーニュが大好きで、名酒の名を挙げるにしても、
たとえば、「フェヴレ」の村名クラスならば安心でしょう、
なぜならば、フェヴレは、ふつうのOLにもマニアにもともに愛されるめずらしいワインで、
貴女がその名前を挙げても必ずしも、あなたがブルヲタ宣言をしているとは受け取られないでしょう。
しかし、たとえば、ほんのり甘口の飲み心地のドミニク・ローランにせよ、
甘酸っぱさがたまらないジョセフ・ロティにせよ、
鴨肉との相性抜群のジャン・グリヴォにせよ、
抜群の香りが広がるアンヌ・グロにせよ、
グラン・クリュがすばらしくうまいメオ・カミュゼにせよ、
飲みやすさ抜群のジスレーヌ・バルトにせよ、
ゆったりとした味わいのトロ・ボーにせよ、
優しい口当たりと甘みのドニ・モルテにせよ、
ブルゴーニュとは思えぬ力強さのフィリップ・シャルロパンにせよ、
安定の旨さのコント・ラフォンにせよ、
完成度抜群のエマニュエル・ルジェにせよ、
そういう造り手の名前をいきなり挙げるのは、ちょっぴり微妙。



ましてや貴女が、
「ギュファン・エナンが大好き♪ 
わたし、もうマコンのピエールクロ・ル・シャヴィーニュ、ピエール・クロ・トリ・ド・シャヴィーニュ、
サン・ヴェランのキュヴェ・ユニーク、クロ・デ・ポンセティ、プルミエ・ジュ、
プイィ・フュイッセ・レ・トロワCとか飲んじゃった♪」
と答えたならば、どうでしょう?
これはかなり博打な答え方で、
なるほど、ギュファン・エナンはブルゴーニュといってもコート・ドールの南にあるマコネー地区、
コート・ドールのシャルドネとは似ていながら違い、違っていながらどこか通じ合っているゆえ、
あなたがそう答えた瞬間、ブルゴーニュ大好き男がいきなり超笑顔になって、
鼻の下がだら~んと伸びちゃう可能性もあるにはありますが、
しかし、逆に、(なんだよ、この女、ブルヲタかよ)とおもわれて、どん引きされる可能性もまた大です、
なぜって、必ずしもブルゴーニュ大好き男がブルゴーニュ大好き女を好きになるとは、限らないですから。
しかも、この答えには、もうひとつ問題があって、
男たちは、女を導き高みへ引き上げてあげることが大好きゆえ、
もしも貴女が、「マコンの常識を変えたギュファン・エナンが大好き♪」なんて言ってしまうと、
そこにはもはや、男が貴女をブルゴーニュ教育する余地がまったく残されていません、
したがって貴女のその答えは、
ブルゴーニュ大好き男の貴女への夢を潰してしまうことに他なりません。



ま、ざっとそんな感じです、貴女の目には男たちはバカでスケベで鈍感に見えるでしょうが、
しかし、ああ見せて、男は男で繊細で、傷つきやすく、女に夢を持っています、
貴女の答え方ひとつで、男の貴女への夢は大きくふくらみもすれば、
一瞬で、しぼんでしまいもするでしょう。





では、スキットを繰り返しましょう。

「わたしは、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌのアリゴテが好き。
お店で見つけたらいつも飲むの、甘みがあって、やわらかくていつ飲んでもおいしいし、
そうそう、アリゴテだけでなくてピノも大好き♪」
そして、その瞬間、ブルゴーニュ大好き男の目がらんらんと輝いたなら、
貴女はこう重ねましょう、
「それからね、いま、わたしが行ってみたいのは、
ブルゴーニュ専門のワインバー。
もっとあなたと一緒にブルゴーニュワインのことを知りたいの。
あなたのお暇なときがあったら、わたしをワインバーへ連れてって♪」
これでもう完璧です。



そうなったらこっちのもの、
デートの日には、納豆と香水はもってのほか。
ジルスチュアートの可愛いワンピもいいですけど、ツヤ感のある白のブラウスに、ベージュ膝丈レーススカートで少し大人っぽい服装を着てゆきましょう。
その日から、ブルゴーニュ大好き男は貴女の虜になるでしょう。
では、釣り師としての貴女の、愛の幸運と幸福をお祈りします!

元ネタ:https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002457/dtlrvwlst/B113095398/

※もう9年も前になるんですね。月日の経つのは早いなぁ…

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