自慢の叔父

昨日の夕方おじが死んだとバイト先に
急に母から電話が来た
少しも泣けなかった悲しくもなかった
本当だとは思えなくて感情がなかった
45歳なんてまだ余裕で40年は生きるはず
まだおばあちゃんも元気に生きている
家に帰ると母が号泣していて
それを見たけどまだ実感がわかなかった

夜中12時頃にやっと会えるようになって
葬儀場に行って家族で会った
白い布団と白い布を顔に被ってた
叔父はとても太ってたからお腹の部分が
凄い膨らんでてこれは本当なのかと急に思った
叔父は独り身で土曜日に亡くなっていたらしい
心筋梗塞らしい。ドラマでしか聞いたことない

なんかもう着いてからはずっと
ドラマのワンシーンを見てるみたいだった
おばあちゃんも母も泣いてて
目の前に動かない叔父がいて。
やっぱり現実味が無い意味がわからなくて
今日今この瞬間も起き上がっているのでは
ないかとすら思える。

4年前ぐらいまで叔父は東京に住んでいて
4年前に静岡に帰ってきた。
叔父は本当にうるさかった。
昔から気難しくて、どこか厳しくて
昔帰省してた時とかに
私が嫌いな先生の事を呼び捨てにしたりすると
「本人の前でもそう呼べよそれが出来ないなら言うな」
とか言われてとっとと東京帰れやこいつ!!!って
思ってた事を思い出す。沢山口うるさいこと言われて
何度も喧嘩してた事を思い出す。

でも、それ以上に私の事を大好きだった人。
色々仕事上手くいかなくなってしまってプライドが高く
意識が高かった叔父は本当に苦しんでいたと思う。
生活も大変だったと思う。
でも私には全力で尽くしてくれた。
母から叔父の状況は聞いているのにそれを知らないと
思っているのか見栄を精一杯張って
ご飯に連れて行ってくれたり、修学旅行のお小遣いを
くれたり、毎年5千円だったお年玉が高校2年の時急に1万円になった。1番お金厳しかったのが高校2年の時なのに。それなのに私は何故か叔父に冷たかった。

嫌いじゃないのに、好きですか?嫌いですか?
と聞かれれば好きだと即答えるのに。
結局はそういうことなんだと実感した。
後から後悔するんだ。これもよくドラマで聞く。
これをしてあげれば、もっとこうすれば良かった。
やっぱりこれはドラマのワンシーンかなんかなのか?
と思った何度も思ったでも結局違うことなんか
分かってる。でも本気でそう思ってた。

亡くなった叔父は母ともう1人の叔父との3人兄弟で
母が末っ子でもう1人の叔父が1番上のお兄ちゃんだったから小さい方のお兄ちゃんで【ちいにい】って呼んでた

私は3歳の頃から俳優に憧れていて
成長してもずっと心のどこかで憧れを持ち続けてた
でもそれをちいにちに話したことは無いし
そもそも母に言ったのもつい最近の話なのに
私が小学生の頃からちいにちは
「美咲は芸能界に向いている!才能があると思う!」
って言ってた。姪っ子好きすぎのバカだから
鬼のようなひいき目で見てただけかもしれないけど
私は夢見てた世界に向いていると言われたのが
ずっと嬉しくて未だにはっきり覚えてる。

だから
俳優になりたいんだ
ミスiDにエントリーしてるんだ
上京するんだ
舞台に立つことになったよ
ドラマに出ることになったよ
夢が叶ったよ

って言うのを楽しみにしてた

叶わなかった。誰が予想できたの?
45歳のまだまだ若い叔父が急に死んでしまうなんて
誰が教えてくれたの、お母さんよりも早く死んでしまうなんて最高の親不孝じゃない。
お母さんすごい大切にしてたくせに、妹のことも
大好きで大好きでたまらなかったくせに。

昨日葬儀場に向かう途中に母から聞かされた事だけど
母は私が俳優目指して上京したいと言ってることを
おじに相談していたらしい。知らなかった。
そしたら叔父は

お前は母親だから娘の未来を案じて反対する気持ちも分かるけど応援してあげて欲しい。俺は中学生の頃俳優になりたくて親に言ったけど反対どころか取り合ってももらえず幼かったから大人の反対を振り切ってまで夢を追う勇気なんてなかった。でも今でも思う、あの時俳優を目指せばよかった。俺は美咲にはなにか才能がある気がする。たとえ上手くいかなくてもやらせてあげて欲しい。俺も東京にまた行くから美咲が上京したら何か協力できることがあると思う。

と言っていたらしい。
バカ過ぎないかな。なんでそれ私に言ってくれないの
真っ直ぐに応援してくれたのちいにいだけなのにと
思ったけど私も夢を言うのを焦らさずにとっとと
言ってしまえばよかったと思った。

ちいにいは母に

でも、こういうこと俺には相談してくれないんだね〜
相談してくれるような間柄でいたかったな〜

とボヤいていたらしい
言えよ。むしろ相談乗ってほしかったよ。
私はもう怖かったんだよ、
たくさんの大人から反対され友達からは笑われ
自分の決断が正しかったか悩むのすら怖かったんだよ。

でも、分かりきってたことだったんだよね。
ちいにいに相談したらやりなよ、頑張れ!って
言ってくれることなんて。それなのに言わなかったのは
私だ、結局私が悪い。後の祭りだこんなのは。

毎年誕生日になると電話がかかってきて
ハッピーバースデートゥーユーを歌ってくる。
だから電話に出ない。気持ち悪い歌い方するから。

ちいにちといるとまじで太る。
やっぱり太ってる人は食べるものが油っこい。
でも、私の好きな物とドンピシャ。

美咲は俺に似てるよな!!!ってよく言う。
やめろ、似てないそんなに私は太らない。
でも文才がある所、好きな食べ物、考え方、
そして夢が同じ。確かに似てるかもしれない。
不服。

ごめんね。冷たくして、最後まで幼い頃の可愛い姪っ子
じゃなくて本当にごめんね。好きだったのに
当たり前にいるはずだったから何も考えてなかった
部活の最後のステージも呼ぼうか悩んでやめてしまって
ごめんね。定演のチア見せたら号泣してたのに、
生で見せてあげなくてごめんね。
水曜日ステージに呼んだら最後に会えたのに。

ありがとう。決断できたよ。
本当にこのまま上京して女優目指すなんてぶっ飛んだことしていいのかとどこか悩んでたけど、
もう悩まないよ絶対に。
絶対に上京して養成所入って地を這うような生活でも
頑張るよ。ちいにいの夢も一緒に叶えるよ。
2人分の夢背負ってるから他の人よりも大変かもね。
その分はいつか請求させろ〜

私が俳優になって舞台に立ったらちいにいは客席から
じゃなくて私が見る客席の景色を特別に見せてあげられるね、特等席だね、ママたちですら見れないのに、
世界で1番最初に応援してくれたから特別。
何よりちいにいも夢一緒に叶える訳だから当たり前か。

悔しい、寂しい、なんで毎日LINEしてこなかったの?
めんどくさいしうるさいから返信はしないけど
毎日来てれば土曜日に来なかった事に気づいて
会いに行ったのにそしたらまだ生きてたんじゃないの?

私には昨日夢とは別に宿命が出来たよ。
私は俳優になったら、白い布団、白い布を顔にかけた
人を目の前にして目がパンパンになるぐらいまで
泣きじゃくる演技をするよ。
ちいにちのおかげですっごく上手く演じられそうだよ。
そういうことでしょ?そうしろってことでしょ?
俺を踏み台にしてでも飛躍しろってことでしょ?
そうでもしないといつか笑ってあげられる気がしないよ
でもやだなあ、私のこと世間が
【葬儀場泣きの脅威の演技力!!】で話題の美咲
とか言うようになったら。物騒だよ…
私それしか仕事無くなるよ…

リメンバーミーを見た次の日に
「俺の事を忘れないでね?
忘れられたら帰って来れないから」
って言ってたよね。
シャレになってません。ちいにいさん。

あんなに口うるさいおちゃらけたおデブさん
いやでも忘れられません。化けて出てきそうで怖いし!

だから見ててよ最後まで。
私が本当の意味で逢いに行く時まで見ててよ。
背後霊にでもなりなよ。
笑ってんでしょ今も、やっぱ文才あるな俺に似てるって
図に乗るな!!!私の才能は私のもんだ!

天国行ったら痩せなよ俳優になるにはさすがに太り過ぎ

私は今ミスiDにエントリーしてるよ
どうなるかは分からないけど昨日ちいにいに会って
思い出したの、私エントリーするとき
ミスiDで賞かっさらってミスiDの経歴踏み台にして
飛躍してやるんだ!!って強気だったこと
だから私は今はミスID、ダメだったとしても次
また次、そのまた次。頑張るよ。

ちいにい大好きだよ。