R4予備試験・国際法再現答案

※ディスクレーマー:再現の精度は保証できません。答案構成もしっかりやっていたわけではないのでうろ覚えのものとしてとらえてください。自己判断で参照のほどお願いします。


【R4予備試験国際関係法〔公法系〕・再現答案】


〔設問1〕

⑴B国はウティ・ポジディティス・ユリスによりαが自国領であると主張する。
 ウティ・ポジディティス・ユリスとは植民地独立に際して適用される原則であり、植民地時代の宗主国の行政区画の現状を尊重すべきとする考え方である。法的安定性と紛争の未然防止のために用いられる原則であり、元宗主国の行政区画に関する資料等が参照される。
 本問ではC国の植民地であったAB間の山脈の分水嶺がC国の国内法で行政区画線の一部としてAB間の境界線とされていた。そのため1960年の独立時点でAB国間の境界は同分水嶺であったものと考えられ、したがって、分水嶺のB側のα地域はBの自国領であるものといえる。
⑵A国からはエフェクビテが実効的に及んでいない旨の反論がありうる。
 しかしBはAに対して度重なる抗議をしておりエフェクビテがないとの旨の反論は失当である。
⑶そしてB国は黙認もしていないしA国はαを支配する権原もないのでB国領であると主張する。
 分水嶺のB側のα地域はBが1800年代初頭から130年にわたって支配しており、Aがαに税務事務所を置いた際もB州はA州とC州に抗議していたためB国は黙認していたとはいえない。また、1960年の時点でαはBの領有であったのであり、現在まで一貫してAの自国軍隊の駐留に反対しているのだから、A国に権原があるとはいえない。
⑷以上のようにB国は主張するものと考えられる。

〔設問2〕

⑴まず、B国は選択条項受託宣言(ICJ規程36条2項)につき留保を付しているが、A国はこの留保が有効ではないと主張できる可能性がある(昔のアメリカへの批判と同旨)。
⑵留保が有効である前提に立っても、A国は相互主義によりB国の付した留保を援用するものと考えられる。
 相互主義の趣旨は、対等な主権同士という当事者の関係を踏まえ、ICJの管轄権を及ぼす当事者間の公平にかんがみて紛争当事国の付した留保は相手国も援用できるとするものである。
 本問では、A国は「A国が本質上自国の国内管轄内にあると判断する紛争」として国の付した留保を援用ができる。そして、A国はα地域を領有していると考えているので、α地域の国境につき「A国が本質的に国内管轄内であると判断する」事項であるといえ、36条2項に基づくICJの管轄権は及ばないものといえる。

〔設問3〕

⑴C国はD国の付した留保がP条約の趣旨及び目的と両立しないと主張するものと考えられる。
 P条約は当事国の軍備拡大を防ぎ安全保障を趣旨・目的としていると考えられる。そのため核兵器の開発保有保有を禁止する2条の規定について留保を付すことは、軍備拡大防止の趣旨を損なうものとしてP条約の趣旨及び目的と両立性がないものと考えられる(条約法条約(以下「VLCT」)19条(c))。
⑵そして、このD国の付した留保につき、C国は「異議を申し立て」ているため、C国とD国の関係においてはP条約2条は「留保の限度において適用がない」とC国は主張することができる(VLCT21条3項、20条5項参照)。

〔設問4〕

⑴A国はB国の条約違反によって自国が条約の義務に拘束されない旨を主張する。
 兵士の上限を2万人とする軍拡を防ぐP条約の規定を無視して3万人に増員したB国の行為は条約の趣旨を否定する「重大な違反」(VLCT60条2項柱書、3項(b))であるといえ、Bの3万人の増員兵士はA国領であると主張するαに駐留しているのであるから、Aは国防上「特に影響を受けた」当事国として、Bとの関係において、当該違反を条約の一部の運用停止の根拠として援用するものと考えられる(60条2項(b))。
 そして「条約の運用停止」により、「条約を履行する義務は免除される」(VLCT72条1項(b)、同柱書)ので、AはPの「正規軍の兵員数の上限を2万人とする」義務を免れることとなる。
 そして、条約の運用停止はVLCTの適用によって行われ(VLCT42条2項)、VLCT45条のような事情もない。
 以上の事情を踏まえ、A国は自国正規軍の増員はP条約違反ではない旨を主張するものと考えられる。
⑵A国の自国正規軍の増員は、対抗措置(国家責任条文48条)で正当化する構成も考えられる。

〔設問5〕

⑴A国は、以下三点を指摘する。①B国は自衛権の行使を安保理に報告しておらず個別的自衛権行使の要件を満たさない(憲章51条)、②武力不行使原則(2条4項)違反である、③憲章上の平和的解決義務(2条3項、33条1項)に違反する、というものである。
⑵①について
ア.B国の軍事行動が個別的自衛権の発動として正当化されるためには、自衛権の他国からの武力攻撃の発生、安保理への報告、均衡性の要件を満たす必要がある。
イ.本問でB国は反政府デモに対して個別的自衛権を発動する際安保理に報告をした事情は見受けられない。
ウ.よって、B国の自衛権の行使は要件を満たさないから正当化できないとA国は主張する。
⑶②について
ア.仮に安保理への要請を満たしていたとしても、「他国からの武力攻撃」が発生していないのでA国に対する攻撃は自衛権で正当化できず武力不行使原則に反する旨をA国は主張する。
イ.反政府デモを指導していたSは私人であるからその行為は原則として国に帰属することはないとAは主張する。
ウ.もっとも具体的な指揮関係のような「実行的支配」の関係があれば当該私人の行為は国家に帰属すると考えられる(ニカラグア事件、国家責任条文参照)。なお、「全般的支配」を要求するいわゆるタジッチ基準は国家に帰属する私人の行為が広すぎるため採用できないと解する。
エ.本問ではAはSに武器や資金を供与し便宜を図ってはいるものの、具体的な指揮・指示などを与えているわけではない。そのため「実行的支配」があるとまではいえな(途中答案)

※設問1は21行書いた。設問2は多分7行程度、設問3は多分5行ほど、設問4は多分9行くらい、設問5は多分17行くらい書いた(ただし試験終了時全部で70行ちょい書いてあった記憶あり)


【感想】

・途中答案うわああ
・在テヘランかニカラグアが来ると思ってたのでドンピシャ。でも予習足りなくてきついかったw
・分量多すぎて草生えた
・終わったときの感想は「C答案かなぁ」、でも会場にはベテっぽいおじさんが多くライバルのレベルが低ければAまでワンチャンあるかも(自意識過剰)

【反省点】

・途中答案になってしまった。しかし設問5つは分量多すぎ感があり他の受験生も書ききれていない気はする
・「ウティ・ポジディティス・ユリス」「VLCT」「対抗措置(国家責任条文48条)」という誤記をしちゃった、あと選択条項受諾宣言…
・公法と刑事で1問目に偏重して時間つかってしまう悪い癖がある、と理解していたはずなのに設問1に結構時間をつかった(具体的には設問1書き終わった時点で残り40分ちょい)

【課題】

・時間配分が悪い
⇒①最初の設問は分量少なめに書く
②本番のミス修正力が低いから準備万端と心を整えて試験に向かう
・表現力不足
⇒こればかりは勉強を進めて解決、特に設問5なんかはニカラグア事件の判旨に沿って論述を展開すべきだが勉強量足りず
・事案の特殊性に気づいていない
‥‥(設問1)「税務事務所」、(設問2)領土紛争が「本質上自国の国内管轄内にある」とはいえないだろうという問題意識、(設問4)多国間条約の軍縮条約の違反という事案の特殊性(一体的義務の影響)
⇒これも勉強量不足。でも唐突にCD国出てくるから気づこうね^^っていう試験委員のヒント(?)はわかりやすくもあったかもしれん
ちなみに法学教室の後ろの方に七法の「演習」コーナーがあることは知られているがバックナンバーに国際法のものもあり、森先生が担当されてた回でこの類題があった(後で気付いた)
・伊藤塾の公務員試験1冊本と、司法過去問数年分の採点実感と出題趣旨を読んだだけで臨んだので知識量増やす必要あり
‥‥エフェクビテ、相互主義について論点があることは知っていたものの内容が全くわからずお茶を濁すか雑に現場で趣旨をでっちあげることとなった
⇒百選などを使って知識量と体系に沿った理解をする勉強を

以上です。受験された方はお疲れさまでした。



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